怪獣超無法惑星   作:フルメタル・ミサイル

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 やっぱり連載も大分経つとアイデア枯渇してくるな。一応最終回に向けて進んではいるのですが。
 時刻的に当たり前ですが、今年最後の投稿になります。
 ちなみに、あの怪獣と宇宙人が再登場…


帝王死すべし その3

 惑星アシヨシでのレイブラッド星人後継者レースもサードステージに突入してしばらく経った。この段階になれば弱者はふるい落とされ、残るはレイオニクスバトルに勝ち続けてきた精鋭のみ。レイオニクスの数は一層絞り込まれ、遭遇するのはより困難になりつつあるが、だからこそ出逢えば例外なく激しいバトルが繰り広げられている。

 勝者は生き、敗者は死ぬ。単純ながらも極めて厳しい弱肉強食の掟が今日もまた施行されている。

 

 ――とある高原――

 

『『バトルナイザー、モンスロード!』』

 

 時刻は昼頃。全域が玄武岩で覆われた、やや乾燥した気候のとある高原。

 運良くか、それとも運悪くか。そこで今日もまたレイオニクス同士が出会ってしまった。

 互いの身の上には興味なく、挨拶もそこそこに怪獣を召喚。血で血を洗うレイオニクスバトルが始まる。

 

「今日のこの出会いに感謝しよう。レイブラッド星人の後継者になろうという身の程知らずをまた1人葬れる!」

 

 空間移動宇宙人 ターラ星人(RB)

 

 ウルトラマンマックスと戦った宇宙人の同種族。かつて母星が深刻な食料不足に陥った際、転送ゲートを使って食料豊かな太古の地球へとやって来た種族だが、やがて互いに争い出した人類を力ずくで支配し争いを収めようとした。

 見た目は毛髪のないやや尖った肌色の頭部を持ったヒューマノイド。以前の個体同様、左右に張り出したウイング型の肩当てのついた全身を覆うプロテクター及び緑色のインナースーツを着用している。

 

「グオー!」

 

 戦神(せんじん) ギルファス

 

 ターラ星人の守護神的存在で、主人同様にかつてウルトラマンマックスと戦った怪獣。

 青みがかった灰色の、甲冑を纏った人型の石像のような姿をしている。最大の特徴として、頭頂部には【グラディウス】と呼ばれる、ウルトラセブンのアイスラッガー同様、刀剣兼ブーメランとなる巨大な刃物を装備している。左腕に装着した盾もマックスのマクシウムソードやマクシウムカノンすら完璧に防ぎ切る驚異の防御力を誇る上、胸部からは火炎弾を爆撃並に連射する。

 

「レイブラッド星人の後継者になろうとする身の程知らず、か。

 おいおい、それは自己紹介のつもりか?」

 

 出会って即殺意を隠さないターラ星人だが、そんな彼を敵レイオニクスはせせら笑う。

 

「そんな奴は殺してかまわんよなぁ!?」

 

 火炎人 ファイヤー星人(RB)

 

 かつてウルトラマンエースと戦った宇宙人の同種族。生物が棲む惑星の中で最も高温だというファイヤー星出身の宇宙人で、地球にやって来た個体は地球侵略のためにTACの秘密兵器であるシルバーシャークを破壊しようとした。

 全体の三分の一近くを占める独特な四角錐状の大きな頭部、ギョロ目、四本指の右手とペンチ状の左手、全身の突起が特徴の、何とも例え難い姿をした宇宙人。以前現れた個体は燃え盛る剣を所持しており、それを用いた剣術でエースを圧倒した。また地球人に変身することが可能であり、梅津姉弟の叔父に化けて卑劣な策略を用いた。

 

「ギェェェェェェ」

 

 火炎超獣 ファイヤーモンス

 

 かつてウルトラマンエースと戦ったファイヤー星人の操る超獣の別個体。

 青と赤の体色、頭頂部の巨大な角と嘴状の口、胸の大量の瘤、背中の棘付きの巨大な背甲、同じく棘付きの尻尾が特徴。嘴からは爆炎とミサイルを発射し、さらにはファイヤー星人と同じく燃え盛る剣を使う知能を持つ。この剣でメタリウム光線を難なく受け止め、一度エースの胸を貫いて倒している。

 この個体は剣でなく先端に槍の穂先が付いた大振りの両刃斧を所持しており、刃にはより強烈に炎が燃えている。そして武器の質だけでなく武器術自体も以前の個体と違い訓練を受けており、より巧みに操る。

 

「やれギルファス!!」

「殺せファイヤーモンス!!」

 

 主人の号令を合図に、両怪獣は雄叫びを上げて斬りかかる。振り下ろされたギルファスのグラディウスは大振りの刀剣だが、ファイヤーモンスの斧もまた同じく肉厚の刃であり、問題なく受け止めた。

 それからも両者は得物で激しく打ち合うが、やがて鍔迫り合って膠着状態となる。

 

「ギィィエェェェェ」

「なにっ!?」

 

 驚くファイヤー星人。突如両者の間で爆発が起き、悲鳴と共に押し負けたファイヤーモンスが吹っ飛んだのだ。

 

「どうやら剣術の方は互角のようだな。だが、ギルファスの武器はこれだけではないぞ!」

「グオー!」

 

 勝ち誇るターラ星人。倒れるファイヤーモンスに、ギルファスは追撃として胸部からの火炎弾を連射する。

 確かにファイヤーモンスは高熱属性の攻撃に高い耐性があるが、それでも火炎弾の威力は殺しきれない。一撃一撃は軽微なれども、段々ダメージが蓄積していく。

 

「チッ、味な真似を! だが、飛び道具ならこちらもあるぞ!」

 

 形勢不利となり舌打ちするファイヤー星人だったが、ここまでなす術もなくやられる超獣に行動させる。主の命令を受けた超獣は倒れたまま嘴の先から小型ミサイルを連射し、今まで一方的に攻撃していた戦神に反撃したのだ。

 戦神には確かに強固な盾があったが、当然それに防がれるような場所は狙わない。

 

「グオー!」

「ぬ!?」

 

 狙いは顔面である。そこへ小型ミサイルがまともに命中したことで、戦神は怯んで後ずさった。

 

「好機!」

 

 戦神の攻撃が止んだことで、ファイヤー星人は超獣に戦神目がけ斧を投擲させる。

 

「させん!」

 

 しかし、敵の意図を悟ったターラ星人の指示で、ギルファスも盾で弾き返す。そして自分も遅れてグラディウスを投擲するが、ファイヤーモンスは手に戻った斧を横薙ぎに振り、刀剣を叩き返す。

 

「やるな……さすがはサードステージ進出者だ」

「貴様らもな。褒めてやる」

 

 これらの見事な攻防に両者は敬意を表し、互いに称賛し合った。

 

「とはいえ、レイオニクスバトルを制し勝者となり、レイブラッド星人の後継者となって全宇宙を支配するのはこのターラ星人! 貴様らにはそれを思い知らせてやろう!」

「笑止! 貴様に宇宙は渡さん! 我等の実力を味あわせてやる!」

「グオー!」

「ギェェェェェェ」

 

 咆哮を上げ、ギルファスは胸からの火炎弾を、ファイヤーモンスは嘴からのミサイルを連射。それらが激突・相殺し、派手な爆発が巻き起こる。

 

「グオー!」

 

 その爆炎に紛れ、左側から勢い良く飛んできた斧をギルファスが盾で受け止める。ただし、マクシウムソードすら難なく受け止めた盾も、同じくメタリウム光線を難なく受け止めた斧を弾き返すとまではいかず、そのまま突き刺さってしまった。

 そしてその隙を突き、背後に回り込んでいたファイヤーモンスは嘴からのミサイルを再び連射。無防備となった背中に叩き込む。

 これにはギルファスも耐えかね、くぐもった悲鳴と共に前のめりによろけた。

 

「ギィエ!?」

 

 けれども、敵もやられっぱなしではない。背後から襲いかかろうとしたファイヤーモンスに、ギルファスは背中を向けたまま再びグラディウスを投擲。輪を描く軌道で勢い良く刀剣は飛来、意趣返しとばかりに背後より火炎超獣に襲いかかる。

 

「しゃがめ!」

「!」

 

 ところが、それも一応想定の範囲内だったのか。ファイヤー星人は危機的状況下でも落ち着いており、冷静にただそう呟く。超獣もそれに従い即座にしゃがみ、首を切断するはずだった刀剣は寸前で虚しく空を切る。

 

「うおっ!?」

 

 一方、ターラ星人とギルファスは渾身の投擲が避けられることを予測していなかったのか。戦神は戻ってきた刀剣を右手で掴み取るのではなく、慌てて盾で受け止める。しかし、斧が突き刺さって亀裂が入っていた盾はこのせいで限界を迎え、ついに真っ二つに砕けてしまう。

 

「クソッ!」

 

 一瞬驚愕の表情を浮かべるも、すぐこの事実に怒りを覚えたターラ星人。その腹いせとばかりに戦神に火炎弾を連射、周囲を爆撃させる。

 

「上手くいかなかったから駄々をこねる。まるでガキだな…」

「うるさいっ!」

 

 ところが、周囲一帯を火の海に変えた激しい攻撃も、皮肉にも母星が灼熱地獄であるファイヤー星人とファイヤーモンスにとっては命の危機というほどでもない。その余裕もあってか冷ややかにそう指摘され、ターラ星人はますます激昂する。

 憤怒の形相を浮かべるターラ星人に対して、ファイヤー星人はこの時無表情だったが、そもそも表情を変えられる種族であったら彼は冷笑を浮かべていたであろう。

 

「勝負は互角だったが、これで私の勝ちが見えたな」

「なにィ!」

 

 挙げ句、挑発までしてきたファイヤー星人に、ターラ星人の怒りのボルテージはますます増し、頂点となる。

 

「お前が如何に強力な怪獣を擁していようが、冷静さを失ったらそこで負けなのだ。

 こんな大炎上させては、周りは何も見えまい」

 

 そう言われ、途端に何か嫌な予感がしたのか。燃え盛る炎で冷涼な高原の周囲一帯が気温が急上昇したにもかかわらず、ターラ星人の額に流れた汗は()()()であった。

 

「グオー!?」

「な!?」

 

 燃え盛る火に紛れ四方八方からミサイルが飛んでくる。それにギルファスは対応出来ず、ミサイルをくらいまくってしまう。

 驚愕するターラ星人を、ファイヤー星人は笑いを押し殺すようにじっと見つめていた。

 

「ファイヤーモンスが()()なのは知っているだろ?」

「ギィエエエエ」

 

 種明かしをするかのように、ギルファスの少し前の空間がひび割れ、開いた次元の穴からファイヤーモンスが顔を出す。

 これこそが超獣に共通する次元移動能力である。切り札として隠しておいたのだが、この度ターラ星人が発動に有利な状況をわざわざ向こうが勝手に作り出してくれたためにファイヤー星人が解禁したのだった。

 確かに脅威の能力だが、サードステージ進出クラスのレイオニクスと怪獣ともなれば対応出来る者は珍しくない。そのため、下手に使って逆に危機を招かぬよう、ファイヤー星人は火炎超獣に安易な使用を控えさせていた。

 だが、周囲一帯が炎上して視界がほとんど利かない今、むしろ使い放題とでも言うべき状況である。燃え盛る火に紛れてしまい、敵主従にはファイヤーモンスが何処に現れるのかだけでなく、()()()()()()()()も全く分からないのだ。

 

「レイオニクスバトルで癇癪を起こすのは良くない。確かにそのギルファスが強いことは認めよう。

 だがな、その強さを活かすどころか殺してしまったのはレイオニクスである貴様なのだ」

「ク、クソッ! ナメるなっ!!」

 

 そう指摘されたターラ星人は憤るも、最早勝負は決していたも同然だった。

 ギルファスは胸からの火炎弾を連射するが、当たる前にファイヤーモンスは異空間に引っ込んでしまう。そうして再び離れた別の位置から現れてミサイルや爆炎を発射しては隠れるを繰り返し、戦神を追い詰めていく。

 

「グオー!」

 

 ギルファスは敵の先手を取ることが出来ず、盾を失っても尚その強固な体も超獣の執拗な攻撃を受けてダメージが蓄積。石像のような体は所々破損しひび割れ、今は辛うじて動いているだけにすぎなかった。

 

「ギエェェェェ」

 

 だが、有利な状況にあったにもかかわらず、今度は何故か正面に現れたファイヤーモンス。

 

「ナメるなァァァァァァッッ!!!!」

 

 それを侮りの証と見たのか。冷静さを失ったターラ星人はここで起死回生を賭け、絶叫と共にレイオニクスパワーを傷ついた相棒に流し込む。

 

「このまま遠巻きに殺すことも出来なくはないが、それでは味気ないと思ってな。

 故に最後に正面から現れたのはレイオニクスとしてのせめてもの礼儀だ! その勝負受けて立ってやる!!」

 

 自分達が圧倒的有利であり、このまま続ければ勝利は確定している。にもかかわらず、敵が発動したレイオニックバーストに合わせ、ファイヤー星人もまたレイオニクスパワーを火炎超獣に注ぎ込む。

 

「グオー!」

 

 戦神(せんじん) ギルファス(レイオニックバースト)

 

「ギェェェェェェ」

 

 火炎超獣 ファイヤーモンス(レイオニックバースト)

 

 両者の大幅なパワーアップと同時に、これで“真のレイオニクスバトル”が発動した。主従の生命活動はリンクし、怪獣の死が即自分の死に繋がる状況となった。

 

「ギルファス!」

「グオー!」

 

 ボロボロのギルファスだったが、グラディウスを振り上げ、最後の突撃を敢行する。

 

「くたばれ!!!!」

 

 立ちはだかるファイヤーモンス目がけ、大上段から刀剣を振り下ろす。

 

「!!」

 

 驚くターラ星人。ファイヤーモンスはそれを真正面から両手で真剣白刃取りしたのである。

 そのまま火炎超獣は奪ったグラディウスで戦神の胴体を横薙ぎに切り裂く。それがとどめとなり、戦神は無言で仰向けに倒れ、動かなくなった。

 

「起死回生は…ならなかったか……」

 

 そのままダメージがリンクして致命傷となり、ターラ星人もまた倒れる。しかし、燃え盛る炎に囲まれながらも、長い戦いの人生から解放された故か、不思議とその様子は穏やかであった。

 

「戦術ミスがあったとはいえ、お前達は決して弱くなかった」

「最後に慰められるとはな………敗北は悔しいが……ゲフッ!…悪くない最期だ……」

 

 レイオニクスバトルに敗北はしたが、ターラ星人としてはその最期は悪くないと感じたようだった。

 

「先に…地獄に行って…いよう………そこで貴様が…何処…までやれるのか……見せてもらおう……」

 

 最期にそう言い残して、ターラ星人は逝った。

 

「……男であったぞ」

 

 ファイヤー星人は最後にそう言葉をかけてやり、倒れるターラ星人の瞼を右手で閉じてやると、敵のバトルナイザーを拾い上げる。

 

「よく見ておけ。このファイヤー星人がレイブラッド星人の後継者となり、全宇宙を制覇する様を!」

 

 そう力強く、高らかにファイヤー星人は宣言する。そして、それは()()()()()()()()()()()()へ向けてもいた。

 

「ほう……よく分かったものだ。バトルナイザーにも感知されない距離で見ていたのだが」

「感覚はそれなりに鋭い方でな。いくら隠そうが、その溢れる邪悪な力は隠しきれん」

 

 虚空から現れた男は右手を振ると、戦いが終わった後でも未だ燃え盛る炎が途端に収まってしまう。そうして準備が整ったところで、男はファイヤー星人の前に降り立つ。

 

「お初にお目にかかるが、自己紹介は必要かな?」

「メンシュハイト…だろ?」

 

 目の前の男は何処となく大仏を思わせる三つ目のヒューマノイドだが、ファイヤー星人はその噂…悪評を前々から聞いていた。

 この男はレイオニクスをバトルで負かしては奴隷とし、自陣の戦力を組み込んでいるという。ただし、数こそ増えはしたが、結局ある程度以上の実力者を仲間に引き込むことは叶わず、遅々として上手くいっていないことも風の噂で知っている。

 

「だとすれば話は早い」

 

 何故ここにメンシュハイトがいたのか? それは最近現れたスフィアとかいう謎の生物に今の拠点を頻繁に襲撃されるようになり、鬱陶しくなって連中の目の届かないように拠点を変えようと近辺を移動中にここを通りがかった。そうして、そこでレイオニクスバトルが行われているのを見たからだった。

 その際、ふと戦う両者の実力が気になり、遠くから戦いを見物していたというわけだ。

 

「いいや、勧誘はお断りだ。宇宙の支配者になるのはこの私だからだ!」

 

 そうして勝者となったファイヤー星人に声をかけたわけだが――問う前にいきなり拒絶され、メンシュハイトは嘆息する。

 

「無駄だと思ってはいたが、またか」

「フン。貴様も正々堂々頂点を目指してはどうだ」

「くだらん。レイオニクスバトルなどという()()を真面目にこなすほど私は愚かではない」

 

 正々堂々戦いに臨み、素直にレイブラッド星人の後継者を目指すようファイヤー星人は提案するが、メンシュハイトはにべもなく撥ねつける。

 

「レイオニクスバトルはくだらん、か。それはレイオニクスに対する侮辱と受け取るが、如何に?」

「…私は事実を述べたまでだ。君はそれを侮辱と受け取るのか?」

 

 不快そうにそう言い返すメンシュハイト。その様を見たファイヤー星人は、この男のレイオニクスへの、いや全ての生き物を見下している差別意識を垣間見た気がした。

 

「侮辱……そうだな。レイオニクス(我々)が戦う理由はそれで十分だ」

「…やれやれだ。君も私の創る理想の世界に必要のない野蛮な生命体だったか!」

 

 共に全宇宙の覇者を目指している。そんな両者に元より共存の道などなかったろう。

 とはいえ、今まで失敗を繰り返してきた以上、メンシュハイトも“とりあえず”聞いただけで、勧誘はまず失敗すると考えて期待してなどいなかったが。

 

「だが、愚かだぞ! 私に屈すれば、君はこの先も生き延びられたのだから!」

「こちらにも意地というものがある! それに、宇宙の帝王を名乗る酔狂な馬鹿に使い潰されるのは心底御免でな!!」

「ギィィエェェェェ」

 

 今まで両者のやり取りを見ていたファイヤーモンスだが、ここで主がレイオニクスバトルを決断したのを見て、右手に持った戦斧と左手に持ったグラディウスを同時に振り下ろす。

 

「フン!」

 

 しかしメンシュハイトはここで強力な念動力を発し、斬撃を跳ね返す。初戦の疲れもあってか、ファイヤーモンスはひっくり返って倒れてしまう。

 

「おお、危ない危ない!」

 

 そう呟くが、メンシュハイトの顔は笑っていた。

 

「貴様も怪獣を出したらどうだ?」

「いいだろう。少しは君達のルールに則り、戦ってあげよう。

 実は最近()()()()()()()()がようやく完成してね。初陣にはちょうどいい機会だろう」

 

 そんな新兵器の投入の場に歴戦のレイオニクスであるファイヤー星人を選んだのも帝王の余裕の表れか。本来レイオニクスバトルなどというやり方にはこだわらないメンシュハイトも、ファイヤー星人の勧めに応じ、素直にバトルナイザーから怪獣を召喚する。

 

『バトルナイザー、モンスロード!』

「ガオオオオアアアアアア」

 

 帝王に召喚されたのは、なんとも禍々しい怪獣であった。筋肉の盛り上がったマッシブな巨体に、()()()()()()()で、両手には刃のような長い爪が生えている。そして同じく目立つのは、全身から尖塔のように映える灰白色の鋭い結晶体の数々であった。

 

『不明。該当データなし』

「!? バトルナイザーにデータがないだと…!?」

 

 目の前の怪獣のデータをバトルナイザーで検索するも、該当する怪獣は存在しない。そんな事態は初めてなので、ファイヤー星人も思わず怪獣を二度見する。

 

「当然だ。これは私の作り上げた新種の怪獣だからな。

 かつて身の程知らずにも私に歯向かい、討ち死にした哀れな怪獣。その遺骸の一部と暗黒物質(ダークマター)、さらには最近現れたスフィアとかいう生物との合作だよ」

 

 帝王は尊大な態度で怪獣を紹介する。けれども自慢するには非常に禍々しいその姿には、超獣という感情のない生物兵器であるはずのファイヤーモンスですら面食らっていたほどだった。

 

「ガウウルルルルアアアアアア!!!!」

 

 異形進化合成獣 スフィアティグリス

 

 かつて主人のファンタス星人(RB)を逃がすためメンシュハイトに単身戦いを挑むも及ばず自爆したティグリスの遺骸の一部よりメンシュハイトが複製したクローン怪獣。

 その過程で大量の暗黒物質と、さらにはメンシュハイトを襲撃するも返り討ちとなったスフィア合成獣の細胞を組み合わせており、元のティグリスとは似ても似つかない禍々しい怪獣となった。

 元となったティグリスは虎に似た四足歩行の怪獣であるが、このスフィアティグリスは似ても似つかない完全二足歩行の怪獣である。異常に筋肉の発達した虎型の獣人のような姿で、手からは刃物の如く鋭く長い爪が伸びており、体色も黒地に赤い模様が所々ついた禍々しいもの。

 頭部にはユニコーンの如くスフィア細胞と暗黒物質の混ざって出来た一本角が伸び、背中から肩にかけてハリネズミの如くスフィア細胞で出来た結晶で覆われている。尻尾も先端がスフィア結晶で出来たモーニングスターのような形状へと変化した。

 性格も元々悪意のない大人しい怪獣であったティグリスの面影は微塵もなく、ただメンシュハイトの命令で殺戮を繰り返す狂獣となってしまった。

 

「例えスフィア合成獣だろうと、超獣に勝てると思うな!!」

 

 ファイヤーモンスは戦斧とグラディウスを投擲。円を描く軌道を取りながら燃える斧は右側より、グラディウスは左側より合成獣に襲いかかる。

 

「ガアッ」

 

 硬質に発達した両手の甲殻でティグリスは2つの武器を受け止める。とはいえ、さすがにどちらもレイオニクスバトルで用いられる逸品だけあり、弾き返すとまではいかず、肉にこそ届かなかったものの、甲殻に深々と突き刺さっていた。

 そこへ背後から異次元ゲートより現れたファイヤーモンスが嘴からの小型ミサイルを連射、全弾ティグリスの背中へと命中する。

 

「なにっ!?」

 

 しかしティグリスには全く効いていなかった。背中の硬質なスフィア結晶が多少焼け焦げただけであった。

 

「だから降伏しておけばよかったのだ。そうすれば生き延びられたものを」

 

 勝ち誇る帝王はそう冷酷に言い放つ。

 

「…そう判断するにはまだ早い!」

「ガァッ」

 

 ファイヤーモンスは異次元ゲートを開き顔を突っ込み、頭がティグリスの前に飛び出す。そうして嘴からの全力の爆炎がティグリスの顔面に放たれ、さらには全身に引火する。

 炎でティグリスの視界が封じられた隙を突き、火炎超獣は敵の両手の甲殻に突き刺さっていた斧と刀剣を引き抜く。

 

「死ね!!」

 

 ファイヤーモンスはそのまま大上段に振りかぶった両手の武器をティグリスの頭目がけ、おもいきり叩きつける。

 

「フ……毛皮に隠れて分からないだろうが、頭部は特に硬いのだよ」

 

 しかし、メンシュハイトがそう含み笑いを浮かべる通り、2つの刃は頭部の硬質な体表に阻まれ、刃が通らなかった。

 

「ギィィエェェェェ」

 

 再びファイヤーモンスは武器を振るうも、体を燃やされながらもティグリスは両手の爪で受け止め、超獣を跳ね飛ばす。そのまま追撃として今度はこちらが両手の長い爪を振るい、超獣は慌ててそれを武器で受け止めるも、その威力に耐えきれず、戦斧と刀剣は粉々に砕かれてしまう。

 

「ば…馬鹿な!!」

 

 冷静な彼らしからぬ驚愕を見せるファイヤー星人。

 戦斧はレイオニクスバトル用に特別に拵えた逸品。グラディウスも恐らくは同様だろう。にもかかわらず、ティグリスの爪のたった一撃で砕かれてしまった。

 

「とどめだ!」

 

 主の命令通り、ガラ空きとなった胴体をティグリスはその右手の長い爪で刺し貫く。

 

「ギィィエェェ……」

 

 それでも超獣だけあり、即死しなかったファイヤーモンス。しかし、駄目押しの左手爪での薙ぎ払いをまともに首に受け、火炎超獣の首と胴は泣き別れする。

 

「挑む相手を間違えたな」

「………!」

 

 ファイヤー星人は続けて次の戦力を投入しようとするも、その前にティグリスが彼目がけ、切断した相棒の首を素早く投げつける。

 

「ぐぅっ……!」

 

 下半身はファイヤーモンスの首の重みで潰され、ファイヤー星人は多量の血を吐く。

 

「すまんな……地獄での再会は案外…早かったらしい……」

 

 そう死んだターラ星人に詫び、ファイヤー星人の目から光が消え、そのまま息絶えたのだった。

 

「何故こうもレイオニクスとは愚かなんだ? 意地を張らなければ死なずに済んだものを」

 

 息絶えたレイオニクスにそう侮蔑を投げかけるも、答えるはずもない。

 

「だが、お前の実力はなかなかだ。せいぜい頑張るのだぞ」

「グルルルル……」

 

 そう声をかけられ、ティグリスは唸り声を上げながら、忠誠の証とばかりに跪いた。

 その姿には、かつて主を守りきった勇敢で誇り高い怪獣の姿は何処にもなかった。




用語解説

 空間移動宇宙人 ターラ星人(RB)

 二つ名は“飛刃(ひじん)”。彼等の母星はかつて食糧危機に見舞われたが、転送ゲートを用いて食料の豊富な太古の地球に来訪、古代の地球人と交流し食料を分けてもらい、共存共栄の関係を築いた。しかし、やがて地球人達は武器を作り出して互いに争い合うようになり、それを見た彼等は地球人を“戦いを好む野蛮な種族”と見なし、そこで自分達がより強い力で地球の支配者となることで戦争を収めようとする。
 だが、そこで同じく地球を訪れていたM78星雲の恒点観測員=ウルトラマンマックスに妨害され地球支配は失敗、ゲートも封じられてしまう。しかも母星の食料問題はあくまで地球の助力ありきで根本的な解決はしていなかったらしく、ゲート封印で食料問題が再燃、種族は滅びかけてしまう。そのため、マックスへの復讐の機会を窺っていた。
 その後現代の地球で再びゲートが開かれ、DASHのミズキ隊員をさらって人質とし、ウルトラマンマックス=トウマ・カイトやDASH隊員達を誘き寄せ復讐しようとする。そうしてマックスにはギルファスを差し向けるも激戦の末倒され、それでも尚転送ゲート内で隊員達を襲うもコバ隊員に射殺された。
 見た目は毛のない硬い肌色の表皮が特徴のヒューマノイド。左右に張り出したウイング型の肩当て及び全身を覆うプロテクターと緑色のインナースーツを着ている。光線銃にもなる特殊なサーベル状の武器で武装している他、この武器と格闘術を用いて戦闘を行う。また地球と母星の間を繋ぐ転送ゲートを作るほどの高い科学力を持つ。
 本個体は以前の個体同様の格好だが、武器は所持していない。レイオニクスとしてはサードステージ進出相当の実力者ではあるが、割と短気で冷静さを失いやすいところがあり、それが原因で今回敗北することとなった。ただし、最期は特に見苦しさも見せず潔く逝ったため、ファイヤー星人(RB)からは簡潔ながら死後も敬意を払われている。

 戦神(せんじん) ギルファス

 かつてウルトラマンマックスと戦った怪獣の別個体。ターラ星人が対ウルトラマンマックス用に送り込んだ怪獣で、その見た目と能力からして生物でなくロボットのような存在だと思われる。
 甲冑を纏った人型の石像のような姿をした怪獣で、やはり生物というよりはロボットと言えるような見た目をしている。頭部にはウルトラセブンのアイスラッガーと同じような位置・用途を持った巨大な刀剣【グラディウス】を装備しており、その一撃は巨大な岩をも切断し、投げればブーメランの如く対象を切断する。胸からは超高熱の火炎弾を連射してマックスを怯ませ、さらには左腕に装備した盾はマクシウムソードやマクシウムカノンをも完璧に防ぎきった桁外れの強度を誇る。
 ターラ星人に誘拐されたミズキ隊員を救うため、転送ゲートを通ってターラ星にやって来たマックスとDASHを襲撃した。尚、カイト隊員は途中でマックスとギルファスが戦う光景を幻視したことから、かつてターラ星人が地球支配を目論んだ時、それを妨害したマックスと交戦したと思われる。高い攻撃力と格闘戦能力、防御力はマックスを苦戦させたが、最期はギャラクシーカノンで盾ごと胸を貫いて倒された。
 本個体も以前の個体同様ターラ星人(RB)に使役されている。高い戦闘能力も健在であり、グラディウスでファイヤーモンスの戦斧と互角に打ち合った。さらに火炎弾の威力自体はファイヤーモンスの飛び道具を上回っており、いくら火炎超獣の高い高熱耐性があったとはいえ、それでもダメージを蓄積させていった。
 ただし、敵の異次元移動能力発動後には翻弄されてしまい、大ダメージを負う。起死回生を賭けて繰り出したレイオニックバースト後の最後の一撃も真剣白刃取りで受け止められ、奪われたグラディウスで腹部を切り裂かれて倒され、主人もダメージがリンクし致命傷となった。

 火炎人 ファイヤー星人(RB)

 二つ名は“業火殺(ごうかさつ)”。かつてウルトラマンエースと戦った宇宙人の同種族。生物の棲む星では最も高温だというファイヤー星出身の種族で、地球征服のためにTACの開発した秘密兵器シルバーシャークの破壊を企んだ。
 赤い体色(手足は青緑の入った横縞模様)、四角錐状の巨大な頭部、四本指の右手とペンチ状の左手、手足の突起が特徴。ファイヤーモンスに炎の剣を投げ渡したが、自身もそれを用いて戦った。また、地球人に化ける変身能力を持つ。
 ウルトラマンエース=北斗星司と親しい梅津姉弟の生き別れた叔父に化け、お土産としてペンダント(型の盗聴器)を姉弟に渡し、シルバーシャークの情報を得ようとした。その後夜間に正体を現しパトロール中のTAC隊員達を襲撃し負傷させるも、北斗の銃撃を受け逃走。人間形態でも怪我が治ってなかったのと現場に落とした腕輪から正体がバレ、ファイヤーモンスを召喚。投げ渡した炎の剣により1度は火炎超獣がエースを撃破するも、その後ウルトラセブンが降臨、エースを復活させる。
 再戦時にファイヤーモンスはエースに敗れ、続いて自身が巨大化。激戦の末炎の剣を奪われて頭に突き刺され怯んだところ、とどめのメタリウム光線を受けて爆散した。
 本個体は以前同様ファイヤーモンスを使役している。レイブラッド星人後継者レースのサードステージに進出したほどのレイオニクスであり、ある時高原で出会ったターラ星人(RB)と激突、勝利するも、続いて現れたメンシュハイトのスフィアティグリスに敗れ去り死亡した。
 別名の割には冷静な性格をしている。そしてレイオニクスらしい残酷な面もあるものの、敵の実力を素直に褒め称え、有利な状況ながら敵の一騎打ちをわざわざ受けて立ち、敵が死んだ時も労いの言葉をかけるなど、誇り高い面もある。ターラ星人(RB)の遺言を聞き届けたが、直後自分も死ぬこととなったため、最期に彼に詫びていた。

 火炎超獣 ファイヤーモンス

 かつてウルトラマンエースと戦った超獣の別個体。ファイヤー星人と同じくファイヤー星出身のようだが、異次元人ヤプールとの関係は不明。
 主人とは逆の青い地に赤が混じった体色、デフォルメされたニワトリやタツノオトシゴのような嘴、頭頂部の巨大な一本角、胸部の並んだ瘤、トゲだらけの尻尾が特徴。上の嘴の先端からは小型ミサイルや火炎を吐くが、最大の武器はファイヤー星人から投げ渡された炎の剣。これでメタリウム光線を完全に防ぎ、さらにはエースの胸を1度貫き殺害している。
 正体のバレたファイヤー星人に召喚され、エースと戦う。その際1度はエースを倒すも、のちにウルトラセブンが降臨、エースを蘇生する。再戦時はファイヤー星人が梅津姉弟を人質にしたためエースが思うように戦えぬも、ここでTACはシルバーシャークを使用。放たれたレーザーによりファイヤーモンスは倒された。
 本個体は同じくファイヤー星人(RB)に使役されている。以前の炎の剣に代わり槍の穂先の付いた両刃斧を与えられており、さらには武器を扱う訓練を主人から施されており、武器頼みと言える以前の個体と違い、武器を巧みに操る。それはギルファスのグラディウスも難なく扱えたことからも分かる。
 また、以前の個体と違い超獣共通の次元移動能力を見せており、これでギルファスを翻弄、勝利した。しかし直後対戦したスフィアティグリスには根本的な強さの違いを見せつけられ、それでも奮戦するも敵わず、首を切断されて殺された。

 異形進化合成獣 スフィアティグリス

 かつて主人のファンタス星人(RB)を逃がすため、奮戦するも最後に自爆したティグリスの遺骸の一部(羽)からメンシュハイトの手で複製されたクローン怪獣。その過程で大量のダークマター、さらにはメンシュハイトを襲撃するも返り討ちにあったスフィア合成獣の細胞を掛け合わせており、スフィア合成獣にしてダークマター生物でもある。
 オリジナルのティグリスは灰色の虎のような四足歩行の怪獣であったが、こちらは完全な二足歩行の虎の獣人のような怪獣となっている。体型で言うならウルフガスやウルフファイヤーなどに近いが、より筋肉質で屈強な体格である。
 体色も黒地に赤と真逆の体色となっており、腕へと変化した前足からは刃物のような鋭く長い爪が伸びている。そして頭頂部からは暗黒物質とスフィア細胞の混ざったユニコーンのような一本角が伸び、肩から背中にかけては鋭いスフィア結晶がハリネズミのように覆い尽くしている。そして尻尾も先端がモーニングスター状のスフィア結晶に変化した。
 製作の意図はありものの有効利用も兼ねた(極めて悪趣味な)単なる気まぐれであるが、混ぜられたもののせいで元は大人しかったティグリスが破壊と殺戮のみに特化した狂獣へと成り果ててしまった。
 質が悪いのが、スフィア合成獣でもあるので亜空間バリアといった能力は備えており、さらにそれらが暗黒物質の力で一層強化されていることである。そして、暗黒物質で生まれた生物でもあるため、その究極体であるメンシュハイトに絶対服従するなど制御性においても優れている。
 今回性能評価も兼ねてファイヤーモンス相手に投入され、根本的な性能差を見せつけ、超獣を苦戦せず撃破した。その姿と戦いぶりは、かつての主だったファンタス星人を大いに嘆かせ、この上ない怒りを呼び起こすだろう……とメンシュハイトは考えている。
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