怪獣超無法惑星   作:フルメタル・ミサイル

46 / 55
 第5話目。ついに因縁の決着をつける時が来た。


帝王死すべし その5

 不意の遭遇からのレイオニクスバトル。そうして、ファンタス星人のパゴスとプラティーナのテレスドンが激突した。

 

「ギュイイアアアア」

 

 振り上げた右腕でテレスドンはパゴスの頭をぶん殴る。悲鳴を上げて吹っ飛んだパゴスに追撃をかけようとするテレスドンだが、体勢を立て直したパゴスから突進からの頭突きを腹部に叩き込まれ、こちらも転ばされる。

 倒れるテレスドンにパゴスは両前足での踏みつけを繰り返す。しかしテレスドンは倒れながらも右足でパゴスの左側頭部に蹴りをくらわせ反撃し、パゴスを再び転がす。

 

「くらわせなさい!」

「デェヤァァァァンン!!?」

 

 プラティーナの掛け声と共に、テレスドンは倒れるパゴスを両手で押さえつけながら、硬い鼻先を鳥の嘴の如く何度も腹部に叩きつける。テレスドン同様体表は硬いパゴスであるが、白金王女(プラチナプリンセス)はその巨大生物学者としての知識から、唯一腹部のみが柔らかいことを知っていたのである。

 パゴスは弱点を執拗に攻撃され、やがて出血。腹部の皮が傷つき破られた痛みで悶絶し、反撃どころではなかった。

 

「やるな…」

 

 “真のレイオニクスバトル”は発動していないため、ファンタス星人の方にダメージはない。とはいえ、自分の怪獣がいいようにやられるこの状況に焦りを感じないはずがなく、その表情は険しい。

 しかし、このまま何もしないままでは負ける。どうにか反撃せねばならない。

 

「デェヤァァァァンン!!」

 

 その思いが怪獣にも通じたのか。激痛に悶えながらも、パゴスは再び振り下ろされた頭部目掛け、両掌をおもいきり叩き込んで挟む。今度は向こうが痛みで怯んだところ、押さえつけた頭部を持ち上げながら巴投げし、テレスドンは受け身を取れず地面に叩きつけられる。

 

「へぇ、やりますのね…」

 

 優勢に持ち込んだかと思いきや、そう上手くはいかなかったため、プラティーナの目つきが鋭くなる。

 

「とはいえ、傷は向こうの方が深い! 一気に畳み掛けなさい!」

「ギュイイイイアアアアアア!!」

 

 プラティーナの命により、テレスドンは大口を開くと、とっておきである溶岩熱線を放射した。

 

「パゴス、こちらも光線で迎撃しろ!」

「デェヤァァァァンン!!」

 

 迫る溶岩熱線に、パゴスもまたとっておきである【分子構造破壊光線】を口から放射。光線と熱線は射線上で衝突、そのままスパークし爆発・相殺する。

 

「だが、これで終わりではないぞ!」

「! 一体なんですの!?」

 

 しかし、ファンタス星人がそう豪語する通り、パゴスの方はこれで終わりではない。

 パゴスの頭上の空間が揺らめいたかと思うと、発生した光線が螺旋状に変化。そのまま【ドリルビーム】として発射された。

 

「!? ギュイイイイ!!」

 

 遅れてテレスドンが回避のため右に跳ぶもタイミングが一瞬遅れ、左脇腹をかすめる。致命傷こそ避けたが、そこをおもいきり抉られ、テレスドンは出血した。

 

「パゴスにこのような技があるとは知りませんでしたわ。単なる力押しだけの怪獣ではないようですわね…」

 

 神妙な表情で呟く王女。称賛半分、危機感半分といった様子だった。

 

「姫様、持久戦は不利ですぞ」

「そうですわねセバスティアン」

 

 傍らに控える執事の提言を受け、王女も同意する。どちらも出血しているが、飛び道具に関しては向こうの方が得意らしい。このまま懐に入らせず飛び道具で嬲られれば、こちらの方にダメージが蓄積し、そのまま敗れるだろう。

 

「悪いが、その通りの戦法を取らせてもらう」

 

 ファンタス星人も敵の危惧を見抜いていた。故に、エネルギーの消耗は激しいが、パゴスには分子構造破壊光線の連射をさせ、テレスドンの体力を削る作戦を取ることにしたのだ。

 

「テレスドン! 地面に火炎を吐きなさい!」

「ギュイイイイイイ!!」

 

 しかし、白金王女もやられっぱなしではない。何らかの策を思いついたのか、テレスドンには地面に向かって爆炎を吐かせ、そのまま土煙と爆発を起こさせる。これにより、しばらく視界が封じられて敵の行動が分からなくなった。

 

(! 何かする気だな)

 

 無論、次の攻撃への布石であろう。すぐに煙幕は晴れたが、案の定テレスドンの姿はない。ファンタス星人とパゴスは油断なく周囲を警戒する。

 

「!」

 

 やがてパゴスの少し後方の地面にヒビが入ったかと思うと、そこからテレスドンが飛び出す。そしてテレスドンは錐揉み回転をしながらパゴス目がけて飛び込んでいくも、パゴスは慌てて横に転がってなんと躱したのだった。

 

「勘も良いのですのね。けれども、これで終わりではなくてよ?」

 

 白金王女が意地の悪い笑みを浮かべるように、着地したテレスドンは素早く反転、再びパゴスに襲いかかる。パゴスは慌てて分子構造破壊光線を照射するも、なんとテレスドンは錐揉み回転の勢いでこれを軽減。そのまま強引に突破し、パゴスに突っ込んだ。腹部でなく背部に当たったために、ダメージこそそこまでではなかったものの、パゴスは大きく吹っ飛ばされてしまう。

 

「まさかテレスドンにこのような隠し玉があったとはな…」

 

 ファンタス星人は改めて敵主従の実力の高さに驚嘆する。しかし、驚いてばかりもいられない。

 

「パゴス! 最大出力でドリルビームだ!」

 

 テレスドンの攻撃をなんとか躱し続けていく内、気付いたことがある。

 攻撃自体は高威力かつかなり速いが、軌道自体は一直線なこと。

 高速で回転している時には視界自体も回転している関係から、周囲で何が起きているかが分かりづらいこと。

 そして着地して反転する際の動作も驚くほど速いが、それでも()()()()()()()はあることだ。

 

「デェヤァァァァァァンン!!」

 

 今度もなんとかテレスドンの錐揉み回転突進を躱したパゴスは、先ほどよりも巨大なドリルビームを生成。そしてテレスドンが着地し振り返り、踏み込んだ瞬間を狙って発射した。

 その瞬間だけ、テレスドンは飛び出すための準備として力むことで全身が硬直、動きが止まる。ファンタス星人から秘密裏に指示を受け、パゴスはその瞬間を狙ったのだ。

 

「ギュイイイイイイ!!??」

「なぁっ!?」

 

 飛び出そうとした際の刹那の硬直、さらには先ほど負傷した左脇腹の傷に狙いを定め、発射されたドリルビーム。ファンタス星人からの指示を受け、パゴスは見事に合わせきった。

 ドリルビームはテレスドンの脇腹をさらに抉り、血が盛大に噴き出す。

 

「ギュウウウウ~~………」

 

 テレスドンは力なくそう声を漏らし、そのまま倒れたのだった。

 

「よくやった。パゴス」

「デェヤァァァァァァンン!!!!」

 

 レイオニクスバトルに勝利し、主からそう褒められ、パゴスは勝利の咆哮を上げる。

 

「負けた…」

 

 そう力なく呟くプラティーナ。この星にやって来て今まで全戦無敗とまではいかなかったが、それでもしばらくは黒星はなかったようで、呆然としている。

 

「ギュウウウウ~~」

「姫様、ボーッとしていてはなりませぬ! テレスドンはまだ死んではおりませぬぞ!」

「…ハッ! い、いけないっ!」

 

 テレスドンを倒したが、まだ息の根は止められていない。傍らの執事に叱咤され、殺される前に慌ててテレスドンをバトルナイザーに回収する。

 一方、ファンタス星人はあえて追撃をせず、回収されるのを黙って見ていた。そして敵が怪獣を回収するのと同時に、自分もまたパゴスをバトルナイザーに回収したのだった。

 

「気は済んだか?」

「な、なんですって!?」

 

 目の前の敵は凶悪なアンドロイドだが、何故かバトルの続きを行おうとしない。そんな敵の行動と発言の意図が分からず、プラティーナは上ずった声で言い返す。

 

()()()()()()()()()上で、そちらが怪獣を出してきたので、気乗りはしないがレイオニクスバトルを行なった。故に、これ以上レイオニクスバトルを続ける気はない」

「……?」

 

 相変わらずファンタス星人の発言の意図が分からなかったようで、王女は怪訝そうな顔でこちらを見ている。

 

「ハァ…()()があれば分からなくて当然か。そこのロボットに私の体をスキャナーで精査させてみろ」

 

 これでは埒が明かないと見たファンタス星人は、セバスティアンに自分の体をセンサーでスキャンするよう勧める。

 

「! これは…!?」

 

 敵からの勧めに応じ、執事が目のセンサーでスキャンすると、そこに映ったのはアンドロイドの機械の体ではなく、温かい生身の体を持った生命体の肉体であった。

 

「姫様。どうやら我々は勘違いをしていたようです」

「何ですの?」

「この方は生命体です。アンドロイドではありませぬ」

「なんですって!?」

 

 セバスティアンから調査結果を聞き、プラティーナは仰天する。

 

「では、貴方はファンタス星のアンドロイドではなく…!?」

()()()()()()()ファンタス星人だな」

 

 呆れた様子で王女にファンタス星人はそう告げる。

 

「!!!! まさかファンタス星人が生き残っていたなんてっ!!

 これは今度のフローレス星の異星生物学会で発表すべき事態ですわ~~!!」

 

 誤解が解けたプラティーナだったが、相手に非礼を詫びるよりも先に、『絶滅したと思われていたファンタス星人が生き残っていた』という驚愕の事実に大興奮。その大砲の砲身のようなプラチナ色の髪を振り回しながら飛び跳ねて喜んでいた。

 

「そうか、君はフローレス星人か。宇宙でも屈指と言われる“宝の山”の住人に、まさかこんな所でお目にかかれるとはな。

 まぁ、それはともかく。すまんが、それは絶対にやめてくれ。

 我々はアンドロイドの目を避けて、ひっそりと暮らしているんだ」

 

 無論、このフローレス星人の女に悪意はないことは分かっている。だがそれでも、ファンタス星人生存の事実を宇宙で大々的に発表されれば、今までアンドロイドから逃げ回ってきたことを始めとする努力が全て無駄になる。それ故、ファンタス星人はそんな真似はやめるよう要請した。

 

「姫様。彼の言う通り、そんな真似をすればファンタス星人という種族が今度こそ絶滅してしまいます」

「おおっと。これは失礼いたしましたわ!」

 

 執事にそう指摘され、プラティーナは慌てて見事なお辞儀で詫びる。

 こう見えて真面目な学究の徒ではあるが、相手の事情を無視してまで強行するほど人でなしではないのである。そこもまた、この王女の良いところではあろう。

 

「……って、セバスティアン!! 貴方が最初からセンサーでこの人をスキャンしていれば、こんな行き違いは起きなかったのではありませんの!?」

「…例えそうだとしても、姫様がレイオニクスバトルをやめるような御方でありましょうや?」

「…うっ」

 

 そもそも、セバスティアンがセンサーでの精査を怠ったから今回の事態が起きた。怒った主人がそう叱責するも、執事からは冷静に反論され、王女は途端に押し黙る。

 

「…我々はレイオニクスだ。出逢えばバトルを行うのは自然なこと。それについて今更とやかく言うつもりはない」

 

 行き違いからこのフローレス星人とレイオニクスバトルが発生してしまったが、それについて責める気は彼にはない。どうせレイオニクスが出逢えば争いになるのは決まりきった事なのだ。

 

「とはいえ、馴れ合いはお互いここまでにしておこう。

 君が何を目的に戦っているのかは知らん。だが、命を失っては元も子もない。出来るだけ速やかにこの星を去ることだ」

「っ!!」

 

 そう忠告し、踵を返すファンタス星人。しかし、まだ若い彼女を慮っての最後の一言は、むしろ王女の怒りを買った。

 

「余計なお世話ですわ!! 怪獣達に脅かされる我がフローレス星を救うために私は戦っているのです!

 命を失うことを恐れるのなら、最初からこんな危険な星になど来ませんっ!!」

「………………」

 

 珍しく毅然たる態度で叫ぶプラティーナ。厳密にはそれ以外の理由もあるのだが、故郷の危機を救いたいというのが第一であるのは間違いない。だからこそ、事情を知らぬ見ず知らずの他人からの中途半端な情けは彼女にとってはむしろ侮辱ですらある。

 

『『警告! 怪獣反応!!』』

 

 急に険悪な雰囲気になった両者だが、そんな2人を煽り立てるように、バトルナイザーが共に警告音を鳴らす。

 

「ちょうどいいですわ。レイオニクスとしての私の実力を貴方に見せて差し上げます!」

「姫様、どうか冷静に!」

 

 私の実力を見てから判断しろとばかりに、プラティーナはバトルナイザーをかまえて気負い立つ。しかし、ムキになって意地を張っているだけなのは一目瞭然。従者はそんな主人を見かねてなだめるも、興奮した王女は聞こうとしない。

 

「……仕方ない。君の実力を見せてもらおう」

 

 ファンタス星人もこの事態を好ましく思わなかったが、今はお姫様を落ち着かせている時間はなさそうだ。よって、むしろ彼女に怪獣を出させて気の済むまでやらせ、仮に敵が手に余るようであれば、自らも助け舟を出してサポートすることにした。

 

「ミュウ~~」

 

 地殻を突き破り木々を薙ぎ倒しながら、怪獣は地下から現れた。

 おそらく、ここの縄張りを争っていたズラスイマーとマグネドンがいなくなったことを嗅ぎつけ、縄張りを奪いに来たのだろうか。

 

「ゴロロロロ……ミュウウ~~!!」

 

 幻聖魔獣 ラフレシオン

 

 かつてウルトラマンネオスと戦った怪獣の別個体。ダークマターの影響で誕生した怪獣の一体である。

 暗い紫と黒い体色をした、長い首と尻尾を持つ二足歩行の竜のような怪獣。普段は目が青いが、興奮時には赤くなる。そして頭部には出し入れ可能な角、背骨に沿って長い棘が生え揃っている他、全身には開閉する鰭を備えている。それと、唸り声こそ怪獣らしい低音のものだが、一方で凶悪な見た目の割にはクジラのように甲高く可愛げのある鳴き声も発する。

 口から火球を吐いて攻撃する他、角を発光させてそこから光の粒子を放つ。これは枯れた植物を蘇らせる強力な蘇生作用を持つが、一方で(ウルトラマンを含む)動物には非常に有害であり、8ヶ月で地球の全動物を絶滅に追い込むという計算結果が出たほどである。

 

「これは…ラフレシオン!?」

 

 見覚えのない怪獣の出現を受けてバトルナイザーでデータ検索した結果、はじき出された結果にプラティーナは驚愕する。

 先述の2体と違い、野生怪獣だとしても明らかにこの場に似つかわしくない種。しかし、そんなことは些末な事だ。

 ラフレシオンはその能力故にこの惑星アシヨシの生態系を崩壊させるどころか、怪獣を含めた全動物を死滅させかねないほどの有害な種。被害が出る前に早急に捕獲か駆除する必要がある。

 

「くっ、今すぐ捕まえねば!」

 

 気負っていた王女だが、今回は失敗出来ないため余計に緊張する。

 

(何故ダークマター怪獣がここに…?)

 

 一方、ファンタス星人は何か違和感を感じていた。ダークマターと言えば、ファンタス星人が思いつくのは()()()しかいない。

 

(これもあの男の差し金だろうか)

 

 究極進化帝王メンシュハイト――ティグリスの犠牲と引き換えに逃げ出すことは出来たが、その後も帝王からの刺客は幾度も送られてきた。無論、その全てを返り討ちにしたからこそ、今日生きていられるのだが。

 そんな彼と関わりの深い怪獣の出現に、ファンタス星人は嫌な気持ちだった。

 

「悪いが、前言撤回する。今回は私に譲ってもらおう」

「!! なんですって!?」

 

 実力を見せてやると息巻いていたところで、急に前言を翻して自分が怪獣と戦うと言ってきたファンタス星人。また水を差されたプラティーナは当然憤慨した。

 

「姫様、今回は彼に譲りましょう」

「セバスティアン!? 貴方まで何を!」

「ファンタス星人殿。あの怪獣の駆除をお願い出来ますか」

「うむ。引き受けた」

 

 巨大生物学者故、あくまで生体の捕獲にこだわるプラティーナと違い、セバスティアンはあの怪獣の凶悪な能力を危険視し、捕獲より駆除すべきだと考えていた。駆除となると戦力増強にはならないが、それでも今回は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もう1人のレイオニクスがいる。故に、彼に任せるのが得策と考えたのだ。

 ファンタス星人もそんなロボットの思惑が見えていないわけではなかったが、元々気負いすぎていたプラティーナに任せるのは不安があったのも事実。故に、あえてその思惑に乗ることにしたのだった。

 

「勝手に話を進めないでくださいまし!! そもそも私は了承しておりませんわ!!」

「…悪いが、今回は私の方に()()というものがあってな」

 

 いまいち要領を得ない説明をするファンタス星人に憤慨し、尚も食い下がる王女。彼の言う因縁を知らないのだから、それも当然ではあるが。

 しかし、一行がラフレシオンと対峙する中で、再び大地が揺れ出す。

 

「グオオオオオオ」

 

 低い唸り声を上げ、ラフレシオンとは反対方面の地殻を突き破り、もう1体の怪獣が現れる。それは歪で無機質な見た目をしており、禍々しい見た目のラフレシオンとはまた別の不気味さがあった。

 

「ギュオオオオ」

 

 鉱脈怪獣 アーナガルゲ

 

 かつてウルトラマンネオスが戦った怪獣の別個体。ネオスが地球で初めて戦った怪獣で、ダークマターで変異したある微生物が鉱山の岩石に取り憑いて集結・合体し誕生した存在。

 鋭い槍のような両腕の生えた、歪で巨体の人型になった岩石とでも言うべき外見をしている。一見鈍重そうだが、動きは素早く高い格闘能力を持つ。そして元が微生物の集合体なだけあり、体の一部が破損し分離しても、破片を吸収して体をすぐさま再構築することが可能。

 

「またダークマターで変異した怪獣…!?」

 

 再びバトルナイザーでデータ検索するも、出てきた結果に驚愕と違和感を覚えた王女。さすがに2体続けてダークマターで変異した怪獣がいきなり現れることに、作為的なものを感じたようだった。

 

「これは妙ですぞ」

「私も同意見だ」

 

 執事も感じた違和感に、ファンタス星人は同意する。

 

「ダークマターで変異したということ以外に、こいつらに共通点はない」

 

 アーナガルゲもラフレシオンも、ダークマターで変異したこと以外に共通点はない怪獣である。本来、協力体制を取るような関係ではないのだ。にもかかわらず、彼等は争うことなく、まるで2人のレイオニクスを包囲するかのように佇んでいる。

 

「おそらく、こいつらは野生の怪獣ではない。ダークマター怪獣を操るのは…」

「その通り」

「「「!!」」」

 

 虚空に声が響き彼等の頭上の空間が歪むと、そこから三つ目のヒューマノイドが現れる。

 

「久しいな。ふと君の顔が見たくなったのでな、会いに来てやったぞ」

「メンシュハイト…!」

 

 不敵な笑みを浮かべる友の(かたき)に、ファンタス星人は彼らしからぬ怒りで歪んだ表情を浮かべる。

 

「ちょっと。急に現れて一体なんですの、貴方は?」

 

 急に現れた男が自分を置いてきぼりにして勝手に話を進めている。それを不快に思った姫は会話に割り込んできた。

 

「これは失礼した。では、名乗らせていただこう。

 私の名はメンシュハイト。ダークマターにより進化を遂げた生命体の頂点にして、宇宙に選ばれし者。そして全ての宇宙の秩序を守る使命と、理想の宇宙を創り上げる権利を持つ者だ」

 

 話に割り込まれた挙げ句咎められたメンシュハイトだったが、怒らず律儀にそう名乗った。

 もっとも、恥もせずそう大仰極まる肩書を名乗られたプラティーナは心底呆れたのだった。

 

「神にでもなったつもりらしいですわね…」

 

 皮肉を籠めてそう言い返すプラティーナ。その美しい顔には特大の嫌悪が浮かんでいた。

 

「で、この怪獣達は貴方の差し金かしら?」

「その通りだ。少し前までは従えたレイオニクスを使っていたのだが、どうも役に立たなくてね。

 これからは自分の生み出した怪獣を使うことにした」

 

 メンシュハイトはこれまで様々なレイオニクスを屈服させ従えていたのだが、あくまでそれは弱小の輩に限られた。ある程度以上のレベルの強者ともなるとプライドも高く、死んでも従わないのである。

 結局、多大な努力の果てに得られた戦力は、今まで帝王の味わった苦労とは全く釣り合わない貧相なもの。これ以上の努力を続けても見合わないと判断し、レイオニクスを味方につけるのは諦めたのであった。

 そして、その代わりとしてダークマターで怪獣を生み出し、自らそれらを操ることにしたのである。

 

「レイオニクスバトルをお望みなら、私がお相手仕りましょうか?」

「ッ! よせ! これは私と奴の問題だ!」

「姫様!」

 

 軽率にもメンシュハイトとの勝負を受けようとするプラティーナを、ファンタス星人とセバスティアンは慌てて制するも、彼女は聞く耳を持たない。

 

「無駄だと思うが一応聞いておこう」

「何でしょう?」

「私の部下にならないか? 君からは素晴らしい力を感じる。

 その力を、共に理想の宇宙を築き上げることに使ってみないかね?」

 

 今まで失敗し続けていたにもかかわらず最早ルーチンワークと化しているのか、あえてまた勧誘をするメンシュハイト。

 

「せっかくのお誘いですが、ご遠慮いたしますわ。貴方と私の理想はそもそも全く違うと思いますので」

 

 しかし、王女はにべもなく断る。もっとも、先述の通り帝王も期待してはおらず、予想通りの反応でしかなかった。

 

「残念だ。君もまた私の創る宇宙の未来に必要のない野蛮な生命体だったか」

「ミュウウ~~!!」

「ギュオオオオオオ」

 

 帝王が右手を掲げると、ラフレシオンとアーナガルゲが共に唸り声を上げ、戦闘態勢に入る。

 

「どちらが野蛮なんだか…」

 

 最初から怪獣を出して示威行為をしておきながら、こちらを野蛮だと詰る言い草に呆れ果てたプラティーナは顔をしかめた。

 

「君が関わる必要はない」

 

 なしくずし的とはいえ、わざわざメンシュハイトと戦おうとするプラティーナ。しかし、それを良しとしないファンタス星人は手を引くよう説得しようとする。

 

「貴方こそ私を止める権利などありませんわ」

「……!」

「私はあの()()()()()が気に入らないから戦うだけ。別に貴方の助けになろうなどとはこれっぽっちも考えておりませんわ」

(ああ、姫様も素直でない……そしてこうなった姫様は誰も止められない)

 

 彼女の身を案ずるファンタス星人に、そう冷淡に言い放つプラティーナ。

 そんな彼女の()()()を見抜き嬉しく思う反面、嘆きもするロボット執事。

 

「……後悔するぞ」

「私でなくあの男に後悔()()()のでしょう? 貴方もそれを望んでいたのではなくて?」

 

 真顔の王女にそう図星を突かれ、押し黙るファンタス星人。確かに彼女の言う通り、何をしていようが心の片隅ではいつも殺されたティグリスの復讐をし、仇を打つことを考えていた。

 

「…仕方ない」

「フフ、心は決まったようですわね」

「…ご武運を」

 

 覚悟を決めたファンタス星人。それを見た王女も満足気に笑う。そしてセバスティアンもここで覚悟を決め、2人を送り出すことにした。

 

「悪いが、今回は2対1だ」

「ほう」

「別に共闘じゃありませんので、あしからず。お互い好き放題やらせていただきます」

『『バトルナイザー、モンスロード!』』

 

 2人のバトルナイザーより、お互いの無二の相棒が召喚される。

 

「キヒャララララ!!」

 

 古代怪獣 ゴモラⅡ

 

「ピギャアアアアオオオオオオ!!」

 

 どくろ怪獣 レッドキング

 

 両怪獣は猛り狂っていた。ゴモラⅡは友の仇を討つため、レッドキングは先ほどのズラスイマー戦を経ても尚暴れ足りないが故であった。

 

「足を引っ張るなよ!」

「貴方こそ!」




用語解説

 幻聖魔獣 ラフレシオン

 かつてウルトラマンネオスと戦った怪獣の別個体。かつてダークマター研究の先鞭をつけた宇佐美教授の娘のミサキが密かに育てていた怪獣。宇佐美教授の著作に登場する地球を救う聖獣だとミサキは考えていたが、実際にはダークマターで誕生した怪獣で、教授の描いた聖獣とは無関係の存在。
 暗い紫と黒の体色で、全身に開閉出来る鰭を生やした、長い首と尾を持った二足歩行の龍のような禍々しい姿をしている。普段は青い目をしているが、角を伸ばした時は目つきが鋭くなると共に赤くなる。頭には出し入れ出来る前向きの角が生えており、ここから後述の光の粒子を放つが、弱点にもなっている。ちなみに、普段の唸り声こそ恐ろしいが、クジラのような甲高く可愛い鳴き声も上げる。
 口からは強力な火炎を吐く他、角からは光の粒子を放つ。この粒子は枯れた植物を蘇らせるほどの強力な効果を持つ一方、ウルトラマンを含む動物には非常に有害。地球上の全動物を8ヶ月で滅ぼすという計算結果が出たほどである。
 ミサキによって育てられていたが、やがて暴走。それでも信じていたミサキをも病院送りにするが、やがて父の描いた聖獣とは違う存在だと気付いた彼女に拒絶される。ネオスを光の粒子で苦しめ、さらには火球の連射で圧倒するも、角を折られて能力を封じられ、最期はウルトラ・ライト・ソードで袈裟斬りにされて倒された。
 本個体はメンシュハイトによってダークマターから生み出された使役怪獣である。アーナガルゲと共にファンタス星人(RB)を始末するため送り込まれ、ファンタス星人及びプラティーナと対峙する。その凶悪な能力はプラティーナにも恐れられ、早急な捕獲か駆除を望まれている。

 鉱脈怪獣 アーナガルゲ

 かつてウルトラマンネオスと戦った怪獣の別個体。ネオスが初めて戦った怪獣であり、その出自はダークマターで変異した発光微生物が阿賀鉱山の坑道内部の岩石に取り付き合体したもの。アーナガルゲの名は現地で崇められていた龍神の名(金属の鉱脈を龍に例えたらしい)である。
 元が岩石だけあり、それが歪で巨体の人型のような姿へと変貌し、頭部には口も目もない。両手は先端が鋭い槍状であり、これを用いて格闘戦を行う他、鈍重そうな見た目とは裏腹に素早く動く。また、元が微生物が岩石に取り憑いただけの存在であり、仮に体が破損しても破片を取り込み即座に体を再構築することが出来る他、破片の状態でも素早く動くことが出来る。しかし、発光微生物は低温が弱点であり、そうなると活動を停止する。
 阿賀鉱山内の異変を調査に来たHEARTの面々の前で坑道内の岩石に取り憑いた発光微生物が変化し出現。その際ナナ隊員と少年の乗ったハートビーターを体表に取り込んでしまっており、出現したネオスを苦戦させた。砲撃も通じない防御力を見せ、体内の微生物を狙った冷凍ミサイルの冷却液ですら一瞬の足止めしか叶わなかったが、2度目に発射されたミサイルの直後ネオマグニウム光線の直撃を受けて大爆発して木っ端微塵となった。
 本個体はメンシュハイトによってダークマターから生み出された使役怪獣である。ラフレシオンと共にファンタス星人(RB)を始末するため送り込まれ、ファンタス星人及びプラティーナと対峙する。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。