怪獣超無法惑星   作:フルメタル・ミサイル

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 今回登場したオリ怪獣の名前の由来はダンテ・アリギエーリの『神曲』に出てくるマレブランケ(地獄の悪魔とか獄卒みたいなもん)の1人、ドラギナッツォから。
 そしてドラギナッツォの名は『堕落した竜』という意味だそうです。


帝王死すべし その6

「キヒャララララ!!」

「ピギャアアオオ!!」

 

 ゴモラⅡはアーナガルゲを、レッドキングはラフレシオンを迎え撃つ。

 

「ギュオオオオ」

 

 鉱脈怪獣はその槍のような腕を素早く振り回すも、古代怪獣はこれをタイミング良くしゃがんで躱す。その上、スライディングでそのまま足元に滑り込んだところで、そのまますくい上げるように投げ飛ばした。アーナガルゲは1回転して宙を舞い、地面に叩きつけられる。

 慌てて起き上がった鉱脈怪獣が振り向いたところで、今度は振り回した尻尾が命中。今度はフィギュアスケート選手のように横に何回転もして吹っ飛ぶ。

 

「ミュウウ~~!!」

 

 早速光の粒子を放とうとするラフレシオンだが、溜めがいるため、その間無防備となる。そして、短気などくろ怪獣がその隙を大人しく見過ごすはずもない。足元の岩を拾い上げるとおもいきり角目がけて投げつけ、能力の出だしを潰してしまう。

 これに怒った魔獣の目が青から赤に変わって、目つきも鋭くなるが、だからどうしたと言わんばかりに咆哮しながらレッドキングは右アッパー。顎をかち上げられ、ラフレシオンもまた1回転して宙を舞った後落下する。

 

「ほう。どちらもやるな」

 

 自分の怪獣が手も足も出ずにやられておきながら、メンシュハイトは顎に右手を当て感心する余裕があった。

 

(この態度はハッタリではない。おそらく、この2体は捨て駒)

 

 惑星への到着が遅れ、セカンドステージからとスタートこそ遅かったものの、今ではもう()()()()のレイオニクスとなったプラティーナ。怪獣達の強さだけでなく、そんな彼女が経験から培ってきた洞察力も大分育ってきた。

 そんな彼女の目がすぐに見抜いた。いいようにやられても主が全く慌てていないことから、まだ小手調べで本気を出してはいない。そして何より、主はこの2体に対し愛着も何も抱いていない――ようするに、失っても何ら惜しくない。どうでもいい捨て駒でしかないのだと。

 

(…気に入らんな)

 

 今は優勢だが、ファンタス星人は内心不愉快だった。敵の戦力を見極めるためであろうが、メンシュハイトは配下にロクに指示も与えず、ただ眺めているだけである。自分の怪獣のはずなのにまるで他人事、見世物でも眺めているかのような印象だった。

 怪獣達にも友情をもって接し、それに怪獣達も応えてくれる。自分の怪獣と強い絆を築き上げたレイオニクスだからこそ、怪獣の犠牲を一切考慮しないというそのやり方――悪の帝王そのものの怪獣の使い方が見ていて気に入らなかった。

 

(ならば後悔させてやる!)

 

 しかし、レイオニクスバトルは非情なもの。敵がロクに指示も与えず放置するというのなら、それを黙って見逃す必要はない。

 そんな主達の意思に反応し、ゴモラⅡとレッドキングは攻めの手を緩めない。

 

「おお、怖い怖い」

 

 小手調べを終える頃合いと見たのか。不敵な笑みをニヤリと浮かべ、帝王の額の第三の目が光る。

 

「ミュウウ~~」

「ギュオオオオ」

 

 それに反応するかのように、今までやられっぱなしだった両怪獣がついにその気になる。

 レッドキングが右拳を振り上げてかまわず殴りかかるが、その前にラフレシオンは火球を連射。全身に被弾したどくろ怪獣がたまらず悲鳴を上げて怯んだところで、こちらのお株を奪うような尻尾振り回しの追撃をモロに左側頭部にくらい、レッドキングは吹っ飛ぶ。

 ゴモラⅡもアーナガルゲが繰り出してきた鋭い両手の刺突を躱し、逆に三日月角からの電撃光線と手からのロケット弾で攻撃、バラバラに破壊する。ところが、鉱脈怪獣はバラバラになっても死んでおらず、破片各自が高速回転しながら跳躍、今度はブーメランの如く襲いかかる。倒したと思った敵からのまさかの攻撃にゴモラは反応が遅れ、全身の皮膚を切られて倒れる。所々から血を流し苦しむゴモラを尻目に、アーナガルゲは再結合し復活したのだった。

 

「まぁ、こんなものだろう」

 

 そうして形勢は逆転したが、帝王からのダークマター怪獣達への評価は所詮この程度である。手駒どもが負けると思ってはいないが、仮に負けたところで惜しくもないし、こちらが不利になるというほどでもない。

 

「やれ」

 

 不気味な響きが伴う声で、メンシュハイトは怪獣達に敵へのとどめを刺すよう命ずる。

 

「ミュウウ~~」

「ギュオオオオ」

 

 ラフレシオンは口からの火球を連射しまくり、2体の怪獣を攻撃する。あまりの威力にゴモラⅡとレッドキングは反撃すら出来ず、辺りは凄まじい爆炎に包まれた。

 

「ッ! これじゃこっちまで危ないか!」

『バトルナイザー、モンスロード!』

 

 あまりの猛烈な攻撃の威力にレイオニクスである自分達まで巻き込まれることを危惧したファンタス星人は、即座にバトルナイザーから怪獣を召喚する。

 

「御用で!?」

「早速で悪いがバリアだ! 頼むぞ!」

「うん!」

 

 友好宇宙人のバトルナイザーから喚ばれたのは、二足歩行のワニのような姿をした等身大の怪獣――酔っぱらい怪獣ベロンであった。

 2人と1機の前に降り立ったベロンは早速バリアを展開。こちらまで流れてくる猛風と熱をバリアで遮断する。

 

「なかなか面白い怪獣を持っておりますのね!」

「話は後だ! ()()()()でいきたいが、どうかな!?」

「なるほど! それは面白いですわね!!」

「ならば早くやりましょう! 敵が攻撃をやめれば、途端にすぐ気づきますぞ!」

 

 ラフレシオンの火球のせいで森に急速に火の手が周り、バリアの周囲もまた煙ですぐ見えなくなった。そんな中でファンタス星人はプラティーナに策を持ちかけると、彼女と執事は二つ返事で了承する。

 

「ミュウウ~~」

 

 数十発も火球を撃ち、さすがに疲労したのか、幻聖魔獣は攻撃を止める。仮に生きていたとしても虫の息、そして弱ってしまった今回は角からの粒子を放出する時間も十分稼げるため、容易にとどめを刺せるだろう。

 

「ギュ!?」

 

 だが、ここで異変に気づいたのは当の本人でなく、隣にいた鉱脈怪獣の方であった。

 ようやく煙が晴れたと思ったら2体の焼死体はなく、代わりに地面にあったのは2つの穴。慌てて2体が駆け寄って中を覗き込むも、穴は深く底が見えない。

 

「ピギャアアオオ!!」

「キヒャララララ!!」

「「!!??」」

「ぬ!?」

 

 敵の姿が消えたことに困惑した2体だったが、何が起きたのかはすぐに思い知った。両者の背後の地面を突き破り、古代怪獣とどくろ怪獣が現れたのだ。何事だと振り返ったラフレシオンをレッドキングが、アーナガルゲをゴモラⅡがそれぞれヤクザキックで蹴り倒す。

 そうして、両者はまるで漫画のように、前の穴に上半身が埋まって逆立ち状態のまま固定されてしまう。この事態にはさすがのメンシュハイトも目を見開いて驚いたのだった。

 

「さぁ、やってしまえ!」

「やっておしまいなさい!」

 

 こうなればこちらのもの。さらに悪いことに、首が長く全身に鋭い鰭があるラフレシオン、全身に鋭い棘のあるアーナガルゲは共にそれらが穴に対するつっかえ棒になって引っかかってしまい、尚更脱出に難儀していた。

 

「ミュウウ~~!!??」

「ギュオオオオ!!??」

 

 逆さまになって下半身だけが聳えるダークマター怪獣2体は当然無防備である。そこへゴモラⅡとレッドキングは好機とばかりにあらん限りの殴打を加える。

 いくらこれらのダークマター怪獣が並の怪獣より強くとも、さすがに文字通りのサンドバッグとなればダメージは蓄積する。

 

「チッ」

 

 優勢になったかと思えば、この始末。その醜態にはメンシュハイトも舌打ちし、失望した様子である。

 

「私の手を煩わせるな!」

 

 手下がただタコ殴りにされ続けるのを嫌がった帝王は不甲斐ない配下達を一喝、第三の目を妖しく輝かせる。すると、配下の怪獣達が紫色の光に包まれたかと思うと、埋まっていた周りの地盤が砕けると共に浮遊し、くるりと縦回転し着地。脱出に成功して敵に向き直る。

 

「ちょっと! レイオニクス自らがそういうサポートをするのはルール違反ですわよ!!」

 

 これほど明確にレイオニクスが怪獣に直接支援(ダイレクトサポート)するのはレイオニクスバトルでは御法度。王女は怒って、そう抗議する。

 

「レイオニクスバトルなどというくだらない()()を大真面目にやるつもりはない」

「あら……貴方のその壮大な肩書も含めて、貴方がこれからやろうとしていること全てもまた負けず劣らずの()()ですわよ?」

 

 レイオニクスとしての自覚も誇りもないメンシュハイトはそう答えたが、王女もまた目を細めて冷笑を浮かべながら皮肉で返す。

 

「口だけは達者なお嬢さんのようだ」

()()()ですわ。()()()()()()!!」

「その男だけでなく、君もこの宇宙から消してほしいのか?」

 

 当初はファンタス星人とたまたま一緒にいただけの生意気な小娘としか思っていなかったが、此奴は全ての宇宙を支配すべき帝王である自身を、あろうことか『三下の小悪党』呼ばわりしてきた。この侮辱が腹に据えかね、メンシュハイトはとうとう小娘を本気で排除することに決めた。

 

「消えるのは貴方ですわ!」

「よくぞ申されました姫様!」

 

 執事もまた珍しく彼女の言葉に賛同し、お世辞の言葉を囃し立てた。

 

「フ……こちらも負けてられんな」

「ンヒヒ。そうだね~~」

 

 友好宇宙人と酔っぱらい怪獣は両者共思わず苦笑する。凶悪なる帝王に啖呵を切った白金王女(プラチナプリンセス)に驚かされはしたものの、その勇敢さにはファンタス星人もベロンも勇気づけられた。

 

「キヒャララララ!!」

「ピギャアアオオ!!」

 

 両者の闘志に反応し、両怪獣の闘争心もまた燃え上がった。それは今も森に燃え広がりつつある火にも負けてはいない。

 

「これ以上醜態をさらすな」

「「………ッ!」」

 

 敵が迫り来る中、背後に浮かぶ主からそう釘を刺され、緊張する2体。仮に敗北すれば、例え敵から情けをかけられようと、今度は主から粛清される。そこは理解していた。

 

「ギュオオオオ!!」

「ミュウウ~~!!」

 

 勝利とは生、敗北とは死。それを改めて実感したダークマター怪獣達は、先ほどまでとは気迫が違った。

 

「ピギャアオ!!??」

「キヒャ!!??」

 

 まず、アーナガルゲの全身がバラバラとなり、再び複数のブーメランとして2体を急襲。その全身を切りつけ、敵の足を止める。

 そうして時間を稼いだところでラフレシオンの準備が整い、角が伸びる。そこから眩い光の粒子が空に放たれ、敵に降り注いだ。

 

「ッ!」

「いけない!」

 

 急に呻き声を上げたかと思うと、ゴモラⅡとレッドキングはその場にへたりこんで苦しみ出す。いくら生命力に溢れる強靭な怪獣といえど、ラフレシオンの光の粒子が猛毒となることは変わりなかったのだ。

 しかし、同じくまともに浴びたアーナガルゲだったが、元は微生物の集合体が鉱物に取り憑いて生まれた怪獣。即ち動物ではないため効果がなく、敵が苦しむ中平然としていた。

 

「杞憂だったか」

 

 この結果を見て、帝王は満足気に頷く。とはいえ、一応発破をかけておいたのは無駄とは思わなかったが。

 

「ミュウウ~~」

「ギュオオオオ」

 

 しかし、自分の命がかかっているからこそ、アーナガルゲとラフレシオンは余計慎重になった。敵が弱っているからといって安易に接近戦を仕掛けず、遠巻きに攻撃を加える。2体はまたもや火球による爆撃とブーメランの連撃に苦しめられたのだ。

 ましてや毒で弱っている今、回避や防御行動を取ることすら出来ない。面白いように攻撃が命中し、2体の死は目前に迫っていた。

 

「君達を滅ぼすのは簡単だが、まずはこの者達から処分しよう」

 

 レイオニクスバトルのルールをまともに守る気がない帝王は、このままレイオニクス達をベロンのバリアを貫通して攻撃し、殺害すること自体は可能だった。しかし、それでは呆気なさすぎて面白くないのは事実。ましてや、ファンタス星人にはかつて一杯食わされている。彼をこの上なく絶望させ、苦しめて死なせてやらねば溜飲を下げることは出来ない。

 よって、まずは彼等の使役怪獣を嬲り殺し、苦悶と絶望を味あわせる。彼等を始末するのはそれからだ。

 

「そんな簡単にいくと思うか?」

「…なに?」

「レイオニクスとしての自覚がないだけではありませんわね。強敵との戦闘経験が不足してますのね、貴方」

 

 この絶体絶命の危機の中、何故か両者共不敵な笑みを浮かべたのを見て、帝王は怪訝そうな面持ちであった。

 

「熟練のレイオニクスなら!!」

「こういう手もありますのよっ!!」

「御二方の底力をご覧あれ!!」

「やっちゃえ!!」

 

 お供に囃し立てられながら、両レイオニクスはレイオニクスパワーを大放出。弱っていた配下の怪獣に注ぎ込む。

 

「……ピギャアアオオオオ!!!!」

 

 どくろ怪獣 レッドキング(レイオニックバースト)

 

「……キヒャララララ!!!!」

 

 古代怪獣 ゴモラⅡ(レイオニックバースト)

 

「なんだと!? 馬鹿な!! こいつらは弱って動けなかったはずだ!!」

 

 弱っていた両怪獣は主人からのレイオニクスパワーを受けて復活する。その様を見て、思わずメンシュハイトも驚愕で声を荒げた。

 

「ピギャアアオオオオ!!」

「ミュウウ~~!!??」

 

 弱っていたのに復活した敵に思わず驚いてしまい、ラフレシオンは反応が遅れた。確かに自分の光の粒子は効いているはずなのに何故なのか。けれども、そんな疑問は再びくらわせられたレッドキングの大振りの渾身の右アッパーにより、意識と共にかき消された。

 どくろ怪獣のアッパーで長い首を大きく後ろに曲げながら空中にかち上げられ、今度は縦に3回転した後、ラフレシオンは落下した。長い首により本来打撃の威力が分散されるはずが、それでも脳震盪を起こして体が痙攣してしまっているという恐ろしい結果であった。

 

「ギュオオオオ……!?」

 

 アーナガルゲもまた敵の復活に戸惑うも、こちらはラフレシオンよりは冷静であり、それほど反応が遅れずに再び分離してのブーメラン攻撃を複数見舞う。しかし、これは陰ながらのベロンの念動力の助力により、僅かに軌道がそれてしまって全弾外れてしまい驚く。それでも再び合体しようとしたところで、ゴモラⅡは手からのミサイル攻撃を放ち、各個撃ち落としていく。

 それでも元は微生物の集合体、致命傷には至らない。ところが、今度は地面に落下した破片の群れに、ゴモラⅡは角からの強烈な光線を放って次々に爆散させて粉々にしてしまう。そうして、死なないにしろ再合体には相当時間がかかる状況にまで追い込んでしまった。

 

「ゴブッ………ミュウウ~~………」

「ギュ…オオ……オオ………」

 

 口から血を流しながらも、なんとかラフレシオンは起き上がろうとするも、脳震盪のダメージは大きく、結局は膝立ちぐらいしか出来ない。

 アーナガルゲも破片同士が集まり、なんとか再構成を試みるも、肝心の各破片が小さすぎてパワーがなく手こずっていた。無論、そこを再び攻撃されれば、状況はさらに悪化する。

 

「使えない奴等め。結局は私の手を煩わせるのか…」

 

 心底呆れ果てた様子で帝王が嘆く。

 

「ここまで私がやってやるのだ。せめて奴等に一矢報いてみせろ!」

 

 メンシュハイトの第三の目が妖しく光ると、宙に浮く彼の頭上に5m大ほどの暗黒物質(ダークマター)の塊が突如出現。それがラフレシオンに降り注ぐ。

 さらに帝王は念動力を発動。再生に手間取るアーナガルゲの破片をラフレシオンに纏わせ、無理矢理融合させてしまう。

 

「2体の怪獣を融合した…!?」

「片手間でそんなことまで出来るのか…!?」

 

 新たに生まれたのは1体のダークマター怪獣。それを見た2人のレイオニクスは帝王の力に改めて戦慄する。

 

「ミュロロロロ!!」

 

 合体凶竜 ドラギナ

 

 ラフレシオンとアーナガルゲ、さらには大量のダークマターが追加で融合され誕生した合体怪獣。ラフレシオンの全身から所々アーナガルゲの岩石状の棘が飛び出すと共に、両手と胴体がやや伸びて四足歩行体型へと変化した。尻尾も半分近くが岩石質の棘で覆われ、殺傷力を増している。合体前の両者の能力は健在な上、2体の怪獣が合体したことで膂力も大きく増した。

 

「ここまでして戦わせるなんてひどいよ…」

 

 新たに生まれた怪獣を見て、ベロンが漏らした感想はそれだった。合体直前、ラフレシオンの青い目が無理矢理合体させられることへの恐怖に満ちていたのが見えていたのだ。しかし、今のドラギナに恐怖はない。だが、果たして今の怪獣の自我がラフレシオンのそれのままなのか、それとも最早違うのかはベロンには分からなかった。

 

「キヒャララララ!!」

「ピギャアアオオオオ!!」

 

 だからどうした。むしろ数が減ってやりやすい――とばかりに、両怪獣は咆哮し恐れずに挑みかかる。

 

「ミュロロ!!」

「!?」

 

 生まれたばかりながら、ドラギナは即座に戦闘へ移行。口からの火球の連射と無尽蔵に再生する全身の棘ミサイルを即座に繰り出す。

 慌ててゴモラⅡは角からの光線と手からのミサイルでこれを相殺、連鎖反応で爆発が起きる中、レッドキングが肉迫。敵に組みつき、その怪力でひっくり返そうとする。

 

「ピギャ!?」

 

 しかし、先ほどは身体能力では上回っていたはずのラフレシオンの力は相方及びダークマターとの融合で強化され、今は逆に自分を上回っていた。胸部にしがみつき、かなり本気でひっくり返そうとするも動かない。むしろ、後ろ足だけで立ち上がったドラギナによって逆に地面へ叩きつけられてしまう。

 思わず手を放してしまったところで、ドラギナは両前足での踏みつけを敢行。レッドキングは胸を強く踏みつけられた痛みで悲鳴を上げた。

 

「クソッ、なんて奴だ!」

 

 火球と棘ミサイルの爆撃にファンタス星人が苛立って叫ぶ通り、レイオニックバースト状態の両怪獣を相手にドラギナは優勢な戦いぶりを見せつける。

 

「ゴモラ! あれをやれ!」

「キヒャララ!」

 

 しかし、手がないわけでもない。ゴモラは両手から拘束光輪を発射。それがドラギナの両前足を封じ、その隙にレッドキングは横に転がってなんとか脱出する。

 

「ミュロ!?」

 

 両前足が封じられ一瞬驚くも、逆に固定されたそれを軸にドラギナはおもいきり振りかぶった棘付き尻尾を上から叩きつけるが、レッドキングはすんでのところでこれを躱す。

 そして敵の攻撃が外れて体が硬直した隙を突き、レッドキングは敵の頭部にしがみつく。

 

「ミュロロロロ!!」

 

 鬱陶しがったドラギナは頭部ごと敵を何度も地面に叩きつけるが、レッドキングは意地でも放さない。そんな中、どくろ怪獣はなんとか角で両手を掴み――

 

「ミュ!?――ガアアアアアア!!??」

 

 そのまま角を力任せにもぎ取ってしまう。ラフレシオンはかつてこれで戦意を喪失し弱体化、直後にウルトラマンネオスに倒されている。故に、これで勝負あったかに見えた。

 

「ミュガアアアア!!!!」

「ピギャアオ!!??」

 

 ところがドラギナは苦痛の余り絶叫し、馬鹿力でレッドキングを首の力で投げ飛ばす。先程よりさらに強化されたであろう光の粒子散布こそ封じられたものの、まだこれでも決着とはならないらしい。

 

「一応弱ってはおりますが、戦意はまだあるようですぞ!」

 

 頭を抱えて伏せるセバスティアンが叫ぶ通り、最強の必殺技こそ封じたものの、ドラギナは弱りこそすれ、まだ戦意があった。

 

「ミュオオオオ!!」

 

 怒り狂うドラギナは両前足を縛る拘束光線を力ずくで破壊し、全身から飛び道具を撃ちまくる。ゴモラⅡはこれを全力で迎撃・相殺しつつも、そのせいで大爆発が起きた。衝撃で倒れるもすぐ起き上がり、燃え盛る森と今の爆発のせいで視界が悪いのに紛れ、そのままドラギナの右側面に回り込む。

 それに敵は気づきつつも、左側からレッドキングが岩を投げつけてきたことに気を取られ、迎撃せずにそちらを迎え撃ってしまう。

 

「キヒャ!」

「ピギャ!」

 

 出会ったばかりにもかかわらず、この2体は意思の疎通が何故かよく出来ていた。ゴモラⅡが右側面に組み付いたのを見たレッドキングは自分も左側面に組み付く。

 共にウルトラ戦士を腕力で圧倒したほどの怪獣である。1体がかりでは持ち上げられなかった合体凶竜も、2体がかりならばなんとか持ち上げることが出来た。そして、2体はそのまま後ろへと倒れるツープラトンのブレーンバスターでドラギナを背中から叩きつけた。

 

「ミュロロロロガガガガ」

 

 四足歩行体型になってしまったが故、背面を攻撃するような技には弱い。そしてアーナガルゲの棘が背中側にもハリネズミのように配されていたのが災いし、それが森の大地に突き刺さって抜けなくなってしまう。必死でもがくが、脱出には時間がかかりそうだった。

 

「………………」

 

 心底不愉快そうであるが、それでもメンシュハイトは再び第三の目を光らせ、ドラギナを地面から引き抜き、再び空中に浮かべて体勢を立て直させようとする。

 

「――ぬっ!?」

「ピギャアアオオオオ!!!!」

 

 しかし、ここでゴモラⅡがレッドキングを持ち上げ、そのまま空中に投げ飛ばしたのが目に入り驚愕した。そして、その勢いでこちら側に跳んできたレッドキングは、両手を組んだダブルスレッジハンマーを、宙に浮かぶドラギナの腹部に全力で叩きつけた。

 

「ゲブッッ!!!!」

 

 守りの薄い腹部に今回最強の一撃を叩き込まれ、再び背中から地面に突き刺さったドラギナ。先ほどと同じく痙攣を起こすと、ついにその動きを止めたのだった。

 

「ミュ……ミュウウ~~」

 

 だがしかし、それでも絶命まではしておらず、弱々しく鳴き声を上げた。

 

「どうやらここまでのようだな」

 

 ところが、手駒を見下ろす帝王の視線はひどく冷たかった。ついに見切りをつけられたことに気づいたドラギナの目は合体前同様恐怖で怯えていた。

 

「私が再三手を貸しているにもかかわらず、こんな連中に敗れるとはな。

 ダークマターで生まれしものの恥さらしめ!」

「ミュ…ミュウウ~~………」

 

 そう面罵した帝王は第三の目を輝かせると、森で燃え盛る炎が一斉にドラギナに集束。合体凶竜は断末魔を上げながら火葬されてしまった。

 

「な…なんてことを……!」

 

 その様を見た全員が思わず固まっていた。特にプラティーナの心痛は計り知れない。

 

「何故自らの怪獣をわざわざ殺すのですか!! 彼は貴方のために懸命に戦ったというのに!!」

「君達レイオニクスにそんな説教をされるとはな。君達こそ、そういう輩の最たるものではないのかね?」

 

 敗れはしたが懸命に戦った自らの怪獣。それを労りすらせず切り捨てて処分したことを王女からそのように非難されるも、帝王は冷ややかに見つめる。

 

「よせ。奴にそのような慈悲の心などありはしない。

 所詮は宇宙征服を企む残忍な巨悪。ただ利用価値のなくなった手駒を切り捨てただけにすぎない」

 

 抗議する王女を止めるファンタス星人。彼らしくない、何処か妙に冷めた態度であった。

 

「知ったような口を利くのだな?」

 

 この宇宙に必要のない愚かで野蛮な生命体の分際で、妙に帝王である自分の心情を知ったかのような口を利くファンタス星人を帝王は揶揄する。

 

「当たっているだろう?」

 

 ファンタス星人らしからぬ、皮肉った返答だった。

 

「私はそうは思っていない。その見立てはむしろ心外なぐらいだ」

「先ほどの大仰な名乗りといい、自己評価は出来ていないようだな」

「君にはそう見えるのか? なるほど…やはり愚かで野蛮な生命体には私の輝かしい本質は見えないらしい」

 

 嘆息するメンシュハイト。実際、友好宇宙人の評価は簡潔ながら的を射ているのだが、帝王はそれを認めなかった。帝王自身の自己評価は極めて高いらしい。

 

「貴様の本質など知らん。どうでもいい話だ。

 貴様は我が友の仇! それだけだ…」

「なるほどなるほど。確かに、かつて君は()()を囮に、惨めに逃げ延びたものなぁ?」

 

 帝王が珍しくそうおどける姿を、ファンタス星人は殺気の籠った鋭い目つきで睨みつけた。

 

「そう怒るな。その懐かしい友と、今逢わせてやろうというのだ」

「何だと!?」

『バトルナイザー、モンスロード!』

 

 残忍な笑みを浮かべるメンシュハイトのバトルナイザーから光が2つ放たれる。

 

「ブオーッ」

 

 1つは最強のダークマター怪獣・暗殺怪獣グラールへと変化した。

 

「ガウウルルルルアアアアアア!!!!」

 

 そしてもう1つはスフィア合成獣と思しき、全身から白く鋭い結晶体を生やした異形の怪獣であった。

 

「「「ッ!」」」

 

 その怪獣が何なのか気付いたファンタス星人・ゴモラⅡ・ベロンは思わず硬直し呆然とする。そんな彼等の様を帝王は愉快げに眺めていた。

 

「フフフフッ。懐かしい()()と再会出来て嬉しいだろう?」

「まさか……!」

「そう、()()()()()だ」

 

 まさかこの怪獣の正体は…! 友好宇宙人がそう言いかけたところで、帝王の方からあえてその正体を告げた。

 

「奮戦虚しく死んだ君の友を、この私が手ずから蘇らせてやったというのだ。

 ちと()()()()()()()()()()()()したがな。ハハハハハハハハ!!」

 

 そう説明し哄笑する帝王の姿に、ファンタス星人は全身をわなわなと震わせていた。

 

「我が友を…貴様は……!」

「なぁに、こいつはクローン。あの日の戦いのただの残滓にすぎん。

 それでも、君をからかうにはこの上ないほど好適だろう?」

「なんて非道な……!!」

 

 2人の因縁自体を王女は詳しく知らないが、それでも今の短いやり取りから概ねどのような内容なのかは察することが出来た。そして、帝王がやったことが如何に非道で悪辣極まるかを悟り、戦慄する。

 

「何処まで最低なんですの貴方は!! 一体命を何だと思っているのです!!!!」

「フフフフッ。怪獣使い(レイオニクス)が吐く台詞ではないな」

 

 しかし、プラティーナの怒りの抗議もこの腐り果てた性根の帝王には届かない。

 そして、そんな彼女をファンタス星人は再び止める。

 

「君の憤りはありがたく思う」

「でも!」

「私が今から行うのは、ただの復讐だ。本来関係のない君がそれに付き合う覚悟はあるか?」

「……ッ!」

「いや…ここまで関わってしまったのだ。悪いが君にも最後まで付き合ってもらう」

 

 彼らしからぬ言葉を呟きながら、王女を見つめるファンタス星人の赤い目には悲しみと、そして果てしない怒りが宿っていた。

 

「……勘違いしないでくださいまし。私はただあの男が気に入らないだけですわ」

 

 こう述べたが、プラティーナもまたファンタス星人のこの復讐劇に最後まで付き合う覚悟を決めた。

 このような傲岸不遜で身勝手で邪悪極まる輩をこれ以上野放しにしておいて、仮にレイオニクスバトルで優勝するような事態になればどうなるか。火を見るより明らかだったからだ。

 帝王は絶対にここで抹殺せねばならない。ファンタス星人に同情したのもあるが、それがなくとも王女はそうするつもりだった。

 

「平和を愛するファンタス星人としてはまことに恥ずべきことだが――」

 

 ファンタス星人は目を瞑り、見開くと、メンシュハイトの方へ向き、宣言する。

 

「メンシュハイト!! 我等が友ティグリスの命を奪っただけでは飽き足らず、ここまで辱め弄んだ貴様の存在を私は絶対に許せん!!

 この果てなき怒りと恨みを晴らすため、今ここで私達は貴様を殺すのだ!!」

 

 あの日の敗北から時間が経った。だがそれでも、何をしていようが心の片隅にはいつも復讐を果たすことを思い続けていた。

 たった1体の怪獣の犠牲。されど、失った彼は大切な友だった。我が身を省みず、己を逃がしてくれたほどの友情が互いにはあった。

 本来、彼にはレイオニクスバトルで優勝し、ギャラクシークライシスによって怪獣の被害を受け続ける母星を救うという使命があった。たった1体の怪獣の犠牲は捨て置くべきなのかもしれない。だが、だがそれでも。彼は忘れることは出来なかった。

 

「君もそのように感情を爆発させることがあるのだな。だが残念、君の願いは叶わん」

「ガウウルルルルアアアアアア!!!!」

 

 スフィアティグリスは禍々しく咆哮する。

 

「私は君の惨めな死を眺めに来たからだ!」

「死ぬのは貴様の方だ!!」

 

 今こそ帝王への復讐を果たす時。ゴモラⅡ、そしてレッドキングは敵怪獣を迎え撃った。




用語解説

 合体凶竜 ドラギナ

 ゴモラⅡとレッドキングにとどめを刺される寸前となったラフレシオンとアーナガルゲ、そしてさらなる大量の暗黒物質(ダークマター)をメンシュハイトが合体させて誕生した合体怪獣。
 見た目は両腕と胴体がやや伸びたラフレシオンが四足歩行体型へと変化し、全身にアーナガルゲを思わせる岩石質の棘がびっしりと生え揃った姿。尻尾も前半分が岩石質の棘を隙間なく生やし、殺傷力を増している。合体前の両怪獣の能力は据え置きに、パワーはさらに強化されている。尚、体型の変化についてはキングダイナスⅡと共通点があることから、参考にした模様。
 武器は火球と全身に生える棘ミサイル、そして強化された光の粒子である。ただし、粒子散布に関しては発動前にレッドキングに角をもぎ取られてしまったため、お披露目はされなかった。それでも全身から放つ飛び道具の連射は脅威であり、怪力を誇るはずのレッドキング単体では持ち上げられなかったほどのパワーを誇る。
 ところがそれでもゴモラⅡとレッドキングのコンビの前では力不足であった。最初こそ圧倒はしたがすぐに逆転され、ツープラトンのブレーンバスターで背中から叩きつけられ、背中に生えた棘が仇となり抜けなくなってしまう。それを主のアシストで脱出するも、体勢を立て直す前に飛びかかったレッドキングのダブルスレッジハンマーを腹部にモロにくらい墜落、戦闘不能となる。
 そして見切りをつけたメンシュハイトに森の炎でそのまま焼き殺されて粛清されてしまった。その残忍な振る舞いにはプラティーナも猛抗議している。
 尚、合体自体は両怪獣共に不本意であったようだ。自我に関しては概ねラフレシオンのものだが、暗黒物質でさらに凶暴化しており、以前の弱点であった角の喪失もそこまで効いていなかった。ただし、メンシュハイトを恐れていたことについては共通している。
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