怪獣超無法惑星   作:フルメタル・ミサイル

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 おかげさまで50話目!
 根性なしで飽き性の俺様がよくここまで書けたもんやで…

 そしてサードステージ長編三部作の内二章目、2人のペルフェクト星人編が今回始まります!
 ペルフェクト星人とはどのような存在なのか、そして2人のペルフェクト星人はどのような経緯でレイオニクスとなったなどかを書きたいと思います。もっとも、今回のレイオニクスバトルはファムvsロックフォーヌなのでペルフェクト星人はまだ出てきませんが。

 それと新キャラのロックフォーヌですが、見た目はラストオリジンに出てくるバイオロイド、『レモネードデルタ』を想像していただければほぼ合ってます。ただ、あっちと違ってもっとデカパイだけどな!
 名前の由来は漫画ゴルゴ13に登場する世界最大の財閥を率いるロックフォード一族。それを語尾を女っぽく『ヌ』に変えたもの。


2人のペルフェクト星人 その1

 ついにメンシュハイトに勝利したファンタス星人とプラティーナ。両陣営の怪獣による死闘の末の勝利であり、どちらが勝ってもおかしくはないものであった。

 そして、お互い無傷で勝つことはありえない。即ち、疲労困憊で満身創痍である。確かにファンタス星人もプラティーナも繰り出した怪獣はゴモラⅡにレッドキングのみで、他の戦力は投入していないが、それでも両レイオニクスは相当疲弊していたには違いない。

 そんな強敵を討つ絶好の好機にファムが出くわしたのは()()()()である。両陣営のレイオニクスバトルが始まった後、その反応をバトルナイザーが拾えるぐらいには近い場所にファムは先日拠点を移していた。無論、全ては偶然で、彼女は事前に何らかの情報を持っていたわけではない。

 一々探す手間が省けてこれ幸い。喜んだファムはバトルの影響が及ばないぐらいに離れ、かつこちらからの狙撃が可能なぐらいに近い場所にうってつけの崖を見つけると、その上に陣取って戦いの成り行きを監視していた。

 そして、ついにその好機が来た――が、よりによってそのタイミングで思わぬ邪魔が入ったのである。

 

「面白くありませんね」

 

 突如現れたのは運営側の試験官レイオニクスとその使役怪獣。それに気分を害し、いつもとうって変わり、その端正な顔をしかめ不愉快そうに呟くファム。敵を暗殺する絶好の機会を潰されたのだ、怒るのは当然であろう。

 もっとも、目の前に立つ女はそんなエージェントの邪魔をしておいて尚、平然としているが。

 …しかしそれにしても、なんという格好の女だろうか。なんとも場違いというか、あまりにも派手でけばけばしすぎる。どう見ても、こんな未開の惑星には不釣り合いの格好であった。

 

「それはこちらのセリフよ? ねぇ、ヤプールのスパイさん?」

 

 そう嫌味を返す、真紅の瞳をしたこの女。一見地球人の白人種によく似た、目鼻立ちの整った極めて端正な顔立ちをしている。同時に身長が高めな上に肉感的なスタイルでもあり、際立った美貌の持ち主であるのはファムも認めるところ。

 とはいえ白い肌に塗りたくられた化粧は厚く、服装もオペラグローブにヒール、かなり大きいバストを強調する胸元を大胆に開いたショートイブニングドレス。そしてそれらは全て暗い紫色で統一されている。唯一、ドレスの上に羽織る分厚く長い毛皮のコートだけは白が主であるが。

 加えて多数の指輪や腕輪、イヤリングや金のネックレスなど、身に付けた装飾品は確かにふんだんに宝石や貴金属のあしらわれた非常に豪華な物で、本人の持つ富の度合いを象徴している。

 最後に、髪型はワンレングス気味のボブカット。腹立たしいことに、髪色はより暗い色合いのワインレッドだが、それでも同じ赤系統なのはなんとなくムカつく。女エージェントの呟きは、そんな不快感も含んでいた。

 総評すると『裕福な貴婦人』――と言えば聞こえはいいが、『高級クラブのママ』という方が的確であろう。

 

レイブラッド星人(御主人サマ)に選ばれてもいないのに、わざわざこの星にレイオニクスバトルしに来るなんてねぇ~?」

 

 そんな場違いに派手な女は呆れた様子で、何も無い空間から煙管(キセル)を取り出す。そうして一口吸うと、厭味ったらしく口から煙を女エージェントに吐きかけたのだった。

 

「…あまり良い葉ではありませんね」

 

 吐きかけられた副流煙に対し不快そうにやや顔を背けながらも、ファムはそう感想を述べた。

 こう見えて、彼女も地球産の葉巻の愛好家。煙の臭いからタバコに使われる葉の大体の質は分かるのだ。

 

「あら? はした金で汚れ仕事ばかりこなす薄汚い虫の分際で、普段から結構良い葉を味わってるのねぇ~」

「ご心配なく。貴方ほど精力的に働いてはおりませんので。ねぇ、“百万長者(ミリオネーア)”?」

 

 いつもの笑顔でそう揶揄し返す敵からの余計な一言に、先ほどまではやや刺々しくも余裕気な態度だった女の真紅の瞳が残忍そうな目つきに変わる。

 

「ああ、そうだ。アナタの方の自己紹介はいらないわぁ。

 だって、ここで殺しちゃうから」

 

 宇宙魔女賊 コボル星人ロックフォーヌ

 

 宝石惑星コボルのレイオニクス。レイブラッド星人に仕える3人の女幹部の内の1人であり、他の2人同様ネオバトルナイザーを所持する強力なレイオニクスである。

 “大魔術師”を自称する通り、多くの不可思議なる“魔術”を自在に操る天才的な魔女。しかし金銀財宝をこよなく愛し、凄まじい金銭欲を抱く俗物でもあり、そのための殺しや略奪などにも何ら躊躇を抱かない危険人物である。習った魔術を悪用し数々の悪事をなしたことで姉弟子のムルナウと共に悪名を馳せた。

 やがていつからかレイブラッド星人に仕えるようになり、その魔術の力で主人の宇宙侵略の手助けをした。そして主人が肉体を失ったあと、今度はレイオニクスとしての才を見出され、今は試験官の任務を遂行している。

 

「ザディーメ…!」

 

 宇宙獣 ザディーメ

 

 とある時空の宇宙にある『ソニア恒星系』に生息する、不気味な姿の宇宙怪獣。その名の通り『ザディーメ』という鳴き声であり、ここから名付けられたと思われる。

 ずんぐりした体躯、先端が鋭く尖った尻尾、ミトンタイプの手、背中に連なる複数の棘など、一見オーソドックスな恐竜体型の怪獣に見える。しかし灰色の岩のような質感の体表に、口のない顔面、胸部の多数の発光体、そして最大の特徴である顔面と頭頂部からそれぞれ伸びるU字磁石のような2対の落ち窪んだ不気味な赤い目などは、既存の生き物の特徴から大きく逸脱している。

 能力もまた多彩かつ特異であり、最大の能力は胸部の発光体から召喚する【四次元超立方体“テセラクトーン”】。これはウルトラマンの必殺技級の攻撃までをも反射や吸収し、さらには物体自体が物理攻撃までもこなす。

 本個体はロックフォーヌに使役されており、元々強力な怪獣にもかかわらず、彼女の強力なレイオニクスパワーでさらに強化されている。

 

「見たことない怪獣ですね…」

 

 ファムも見たことない希少種なのか、目の前の怪獣をバトルナイザーでデータを検索しようとする。

 

「ザディーメ!」

 

 敵が隙を晒したのを見て、ザディーメは手を叩くと、胸の発光部から金色に光る正八胞体(せいはちほうたい)を召喚。ファムに向けて飛ばす。

 

「! 最早怪獣を召喚させてもくれませんか!」

 

 これはレイオニクスバトルでなく、ただの粛清である。そう言わんがばかりのレイオニクス本人へのいきなりの直接攻撃(ダイレクトアタック)に、ファムは愚痴を零す。

 とはいえ、なんだかんだでさすがはヤプールのエージェント。大きく飛び退いて正八胞体の直撃を躱す――も、光る物体はどれだけ躱そうが逃げようが回転しながら執拗に追いかけてくる。

 

「ほらほら、逃げなさぁい♪」

 

 いきなりとどめを刺すような真似はせず、ロックフォーヌは厭味ったらしくニヤニヤ笑いながら、正八胞体がファムを追いかけ回すのを楽しんでいる。

 どうやら同僚のデルピューニと同じく、標的を嬲り殺しにする趣味があるらしい。

 

「チッ、さすがにジリ貧ですね……ここは超獣を召喚するしかありません………ッッ!!??」

 

 さすがに怪獣の攻撃に単身で立ち向かうのは自殺行為。ならばと自分の超獣を召喚しようとするも、手に持つバトルナイザーは何故か反応しない。画面も全て消えており、何度操作しても動かず壊れたかのようであった。

 

「逃げる自由は与えてあげたけどぉ、怪獣を召喚するのは許可していないわぁ~」

 

 そう告げ、煙管を吸うロックフォーヌ。そして煙を口から吐くと、それがなんとイラストのような形へと変わる。

 煙で出来た灰色一色の絵には、走り回るファムの姿と、バトルナイザーの絵が描かれている。そして前者には◯が付いているが、後者には×が付けられていた。

 ファムはそれを見た瞬間、敵が何をしてきたのかを大体は把握出来たぐらいには分かりやすい図であった。

 

「………!」

「せいぜい頑張りなさいねぇ。逃げれば逃げるほど寿命は伸びるわぁ~」

 

 お得意の()()により、既にバトルナイザーからの怪獣召喚(モンスロード)を封じていたロックフォーヌ。

 相手が手出し出来ぬよう徹底的に有利な状況を作り上げる。そして相手を嬲り殺しにするのがこの魔女の好きなやり方であった。

 

「マズいですね……こちらの怪獣が出せないのでは勝負になりません」

 

 本気で焦るファム。まさか怪獣召喚(モンスロード)を封じられるとは予想外である。

 

『おい、そちらで今何が起きている? ワシのバトルナイザーが異常な反応を拾ったぞ』

「!!」

 

 逃げ惑う中、左手首の腕時計兼用の通信機からの声。どうやらそちらの方の機能は魔女は封じていなかったらしい。この大ピンチの中藁にも縋る気持ちで、ファムは通信機を起動する。

 

「お忙しいところすみません、敵襲です! どうか手を貸してください!」

『何、敵襲? チッ…自分の(ケツ)も拭けんのか貴様は…』

 

 恥も外聞もなく、早速救援を依頼する。しかし聞いた途端相手は不快そうに舌打ちし、かつ現代基準では女性へのセクハラとなる発言までかましてきた。

 

『というか、貴様の超獣で戦えばいいだろう』

「今それが出来るならこんなことは頼みません!」

『分かった分かった。そう興奮するな。

 だがこちらも準備に若干時間がかかる。それまで時間を稼げ』

 

 最後にそう伝えて、通信は切れた。

 

「ふぅん……」

 

 一服しながら、今のやり取りの一部始終を眺めていたロックフォーヌ。通信機の機能までは封じなかったのは、窮地に陥ったファムが恐らく泣きつくであろう()()()()も誘き出したかったのもあった。

 

「でも、やって来る頃には別に貴方は死んでてもいいのよねぇ。

 じゃ、殺っちゃっていいわよザディーメ」

「ザディーメ」

 

 とはいえ、ファムはあくまで撒き餌。相手に連絡するまでは命を取らないでおいたが、もうその必要もなくなった。

 ようやく始末出来るようになったヤプールの手先を殺すよう、ロックフォーヌは宇宙獣に命じる。

 

「ザディーメ!」

 

 それまではただ付かず離れずの距離を追いかけて来るだけの正八胞体だったが、主からのお許しが出たということで、今までの()()()動きではなくなった。

 

「――――ッ!」

 

 高速でファムの周囲を回りながら、段々と円周が小さくなっていく。万事休すか――冷静でミステリアスな女エージェントの顔は引きつったものとなる。

 

「では、バイバ~イ♪」

 

 彼女の死を確信し、いやらしい笑みを浮かべた魔女は最後の別れの挨拶とばかりにひらひらと左手を振る。そして、正八胞体がファムを上から押し潰そうとした――

 

「ピョロロロロ」

「オオ~ッ!?」

 

 ――瞬間、正八胞体は突如空から舞い降りた何者かに蹴り飛ばされる。魔女とザディーメが驚くのも束の間、振り返った闖入者により今度は宇宙獣が右前蹴りで蹴飛ばされ、ゴロゴロと転がっていった。

 

「オォォォォ……ザディーメ…!」

「何者?」

 

 よろよろと立ち上がったザディーメと対峙するは、まるで銀灰色の鳥人間を思わせる姿をした異様な怪獣。処刑の邪魔をされご機嫌斜めのロックフォーヌはその美しい顔をしかめ、何者かを問いかける。

 

「私は姑獲鳥(こかくちょう)。以後お見知りおきを」

「「喋った!?」」

 

 怪獣の鳥のような口が開き、中の人間のような顔が露わになると、流暢に言葉を喋って魔女の疑問に答える。そんな予想外の展開に、地面に倒れていたファム、そして怪獣を睨んでいたロックフォーヌは共に仰天した。

 そんな彼女等に対し、怪鳥は恭しくお辞儀をしながら口上を述べる。

 

「ファム殿。テンペラー様の命により、この姑獲鳥が貴方様を助けに馳せ参じました」

 

 凶獣 姑獲鳥(こかくちょう)

 

 かつてウルトラマンダイナと戦った怪獣の別個体。姑獲鳥とは中国に伝わる人の死や国の滅亡を予言するという不吉な怪鳥であるが、その正体はクリッター=ガゾートと同じく地球の電離層に生息する悪意を持ったプラズマ生物。

 怪獣に分類される存在であるが、人語を解するほどの極めて高い知能を持つ。普段はプラズマ雲の中に潜んでいるが、餌である電気を摂食する際は地上に降りてくる。

 体色は銀灰色で、人間の女の体に太い鳥の手足と頭を持ち、肩から一対の鳥の翼の生えた不気味な彫像のような姿をしている。そして鳥の口の中には同じく人間の女のような顔があり、目を光らせて不気味な笑い声を上げる。

 鳥のような見た目だけあって高い飛行能力を持ち、プラズマ生物のためにビーム攻撃や電撃が通用せず、ダイナのソルジェント光線すら無効化した。さらには1度消滅しても体の再構成が可能など、既存の生物や怪獣とは異なる奇怪な性質を持つ。

 本個体はテンペラー星人(RB)に使役される“四凶”の1体。他の3体同様高い戦闘能力と、ダイナと戦った個体以上の高い知性を誇ると自称する。

 

「なんだ、テンペラー殿も人が悪いですね」

 

 テンペラー星人の返答からして、到着にはもっと時間がかかるのかと思ってやきもきしていたが、存外助けはすぐに来た。立ち上がって服の埃を払いながら、ファムは顔をしかめて愚痴る。

 

「すぐ助けに来たのです。御礼の一つもあってもいいのでは?」

「…ありがとうございます。おかげさまで助かりました」

 

 とはいえ、ファムのそんな態度を不快に思ったのか。助けに来た姑獲鳥はわざわざ御礼を言うよう求めてきた。これまた驚くファムだが、言って損はないということで渋々ながらも礼を述べる。

 

「無視してんじゃないわよっ!」

「ザディーメ!」

「ぐおっ!?」

 

 …が、こちらを無視しながらのやり取りを不快に思う敵主従。ツッコミとばかりに隙だらけの敵の背中にザディーメは蹴りを入れ、先ほどとは逆に今度は姑獲鳥がゴロゴロと転がる。

 

「うぅ、しまった……喋るのに夢中で敵の存在を完全に忘れておりました……」

 

 地面に這いつくばってそう呻く通り、ファムに御礼を要求するのに夢中な余り、後ろの敵の存在を完全に忘れていた姑獲鳥。

 人語を解するほどの知性と悪意を持ったプラズマ生物。その肩書の割には非常に情けない姿をさらしている。

 

「な、何をやっているんですか貴方は!?」

 

 せっかくの援軍のとんだ醜態に、ファムもいつものミステリアスな態度をかなぐり捨て、思わず目を釣り上げながらそう問い質してしまった。

 こいつはいわゆる()()()()という奴だろうか? しかし、よりによってこの絶体絶命の局面でそんな頼りない輩が派遣され、自分の命運がかかっているのかと思うと絶望しかない。

 

「何よコイツ? 弱いじゃない!」

 

 狙っていた片割れからの救援だったが、最初の不意打ちこそくらったものの、戦ってみればてんで弱い。そう判断した魔女はせせら笑った。

 

「ザディーメ! この女の処刑は後! まずはこのお笑い怪獣を始末しなさい!」

「ザディーメ!」

 

 弱いと分かれば何も恐れる必要はない。宇宙獣はミトンのような両手の先を姑獲鳥に向け、金色の光線を放射する。

 

「ピョロロロロ」

 

 しかし、待ってましたとばかりにここで姑獲鳥は立ち上がるが、無防備に光線を受けてしまう――も、なんとダメージを受けるどころか完全に吸収して回復してしまう。

 

「ザディーメ…!?」

 

 平然としている敵を見て驚くザディーメ。効かぬならばともっと出力を上げて光線を放つが、これもまた姑獲鳥は空間を歪ませながら吸収してしまう。

 

「不細工な見た目に違わず、学習能力は無いようですね」

 

 見た目の不気味さやセンスはどっこいどっこいながらも、敵を嘲笑う姑獲鳥。

 

「次はこちらの番です!」

 

 姑獲鳥は両手からプラズマ光弾を連射する。

 

「ザディーメ!」

 

 しかし、ザディーメは命中前に金色に輝く正八胞体を呼び戻す。そうして超次元立方体は本体に向けられたプラズマ光弾を全て吸収、逆に撃ち返した。

 

「キャアア!」

 

 光弾が跳ね返されて爆発が起き、珍しく女性的な叫び声を上げるファム。しかし姑獲鳥は彼女の前に進み出て覆い被さり、攻撃からかばった。

 

「…あ、ありがとうございます」

 

 一応敵の攻撃から助けてもらったため、素直に御礼を言うファム。

 

「ホホホホ。1つ学習しましたね」

(なんでしょう。どうも一言余計なんですよねこの鳥は)

 

 言われる前に御礼を言ったことを褒める姑獲鳥。このように助けてもらいはしたが、そんな高飛車な態度には女エージェントも内心不快さを感じたのだった。

 

「よそ見する余裕があるのぉ?」

「ザディーメ!」

 

 宇宙獣は今度は輝く正八胞体を投げつける。ザディーメの主な戦力は光線系に偏っているため、ならばとこの正八胞体を使って倒すことにしたのだろう。

 

「フンッ!」

「え!?」

「ハァ!?」

 

 素っ頓狂な声を両レイオニクスが上げたのも無理はない。

 投げつけられた正八胞体を、なんと姑獲鳥はやや怯みながらもなんとか右手で掴んで止めてしまう。普通の生物には絶対不可能だが、こいつはプラズマ生物という特殊生物の極致のような存在だからこそ出来たのか。

 

「ザディーメ…!?」

 

 この正八胞体がまさかこんな方法で止められたのは初めての経験らしく、宇宙獣も面食らって呆気に取られている。

 

「ウァァァァァァ!! エネルギーが吸われるゥゥ!!」

 

 …とはいえ、姑獲鳥も受け止めたはいいが、超次元立方体の性質故か、触れた途端に全身のエネルギーが吸われて悲鳴を上げる。

 絶叫を上げてやかましく騒ぎ立てる鳥の姿に、両レイオニクスと宇宙獣は「だったら放せばいいのに」と素直に思ったのだった。

 

「ああもう! 返します!」

「ザディーメ…!?」

 

 このままではエネルギーが吸い付くされて危ないとでも考えたのだろうか。姑獲鳥はそのまま翼でふわりと飛び上がると、ザディーメに接近。飛び降りながら、なんとそのまま右手に握った正八胞体で顔面をぶん殴った。

 呆れて見ていたために油断していたところへの急襲と、まさか自分の最強技が逆用されるとは思わなかったショックと、自分の最強技の威力が相当痛かったためという3つの要因によりザディーメは倒れる。

 

「フン! フン! フン! フン!」

 

 しかし、それは悪手であった。エネルギーを吸われ続けながらも、姑獲鳥は仰向けに倒れたザディーメに馬乗りになってマウントパンチを決行。そのまま正八胞体をメリケンサック代わりにして無慈悲に殴りまくる。

 

「ザディーメ!」

「おぅっ!?」

 

 しかし宇宙獣もやられっぱなしではなく、乗られながらも姑獲鳥の頭部に左張り手をくらわせる。こちらよりは打たれ弱いのか敵がのけぞったところで、元々仰向けに倒れるには全く向いていない自分の体の構造も利用しマウントポジションを跳ね飛ばす。

 だが、起き上がったところで姑獲鳥は奇声を上げながら、両手で持ち上げた正八胞体をザディーメの頭頂部におもいきり叩きつけた。この大ダメージにはさすがのザディーメもよろけたが、負けじと振りかぶった右拳で即座に殴り返し、さらには右前蹴りで追撃する辺りはさすが試験官の使役怪獣といったところか。

 

「ザディーメ! 戻りなさい!」

「ザディーメ…」

 

 しかし、長引けばこちらが不利だと思ったのか。ロックフォーヌはこれ以上バトルを続けるのを諦め、あっさりとザディーメを正八胞体ごと自分のネオバトルナイザーに回収したのだった。

 

「前言撤回よ。思っていたよりはやるわね」

「それはどうも」

 

 敵からの称賛に、自慢気に胸を張る姑獲鳥。

 

「ザディーメじゃ相性が悪い。次の子を出すわ」

「無駄だと思いますがね。まあ好きにしてください」

「何余裕見せてるんですか! さっさと攻撃しなさい!」

 

 怪獣も引っ込んだ今、交代するまでに僅かな隙があるにもかかわらず、わざわざ姑獲鳥は次の怪獣を出すのを待っている。これにはファムもさすがに苛立ちを爆発させ、自分の使役怪獣でないにもかかわらず敵を攻撃するよう急かす。

 

「お黙りなさい。私の主はテンペラー様であって、貴方ではありませんよ。

 私には貴方を助ける義理はあっても、義務はないことをお忘れなく」

 

 しかし、主人でもないのにあれこれ言ってくるのを鬱陶しく感じたのか。姑獲鳥はじろりと女エージェントを見やり、そう注意した。

 

「くっ…!」

 

 なんと腹立たしい奴だとファムは思ったが、自分のバトルナイザーを封じられている以上は今はこの腹立たしい鳥に頼るしかない。

 

「まあ私に任せておけば万事解決。貴方は黙って見ていればよろしい」

「…そうですか」

 

 この鳥のそんな高飛車な態度に反感しかないが、それでもファムは今は従うしかなかったのだった。だが、恐らくこのあとテンペラー星人がやって来るだろうから、その時に絶対こいつの文句を言ってやろう。そうファムは決意したのだった。

 

「調子狂うわぁ~……」

 

 そんな険悪な雰囲気の2人を見て、ロックフォーヌは怪獣の召喚もしばし忘れ、顔をしかめて呆れながらそう呟いたのだった。




用語解説
 宇宙魔女賊 コボル星人ロックフォーヌ

 二つ名は“大魔術師”及び“百万長者(ミリオネーア)”。しかし、後者に関しては気にいるどころか、言った者に殺意を向けるほど嫌っている。
 宝石惑星コボルのレイオニクスにして、運営側の試験官の1人。レイブラッド星人直属の“レイブラッド三幹部”が1人であり、犯した悪事の数々から宇宙Gメンに指名手配されているほどの犯罪者でもある。ちなみに年齢は地球人換算で37歳で、中年やおばさん呼ばわりされると激怒する。
 ネオバトルナイザーを所持し、強力な怪獣を複数使役するほどの実力のレイオニクスであると同時に、“魔術”なる超自然的な技を操る魔術師。そして数ある魔術師の中でもトップクラスの天才であるが、その天賦の才故に驕り、悪の道に走ってしまった。
 他の幹部2人同様、かなり美人。ただし体型は若干肉付きが良く、やや()()が立っているけばけばしい美女という印象。一応地顔であるが、魔術でアンチエイジングは欠かさぬらしい。
 目は真紅で、顔立ちは目鼻立ちがよく整った端正な美貌と胸のかなり大きな理想的なスタイルを持ち、全体的には地球の白人種の女性によく似ている。ただし、同じコボル星人のムルナウが黄色人種寄りの顔立ちであることから、コボル星人にも地球人同様身体的特徴の異なる複数の人種が存在するのかは不明。
 髪は暗めのワインレッドで、それをワンレングスのボブにしている。美女ながら全く化粧をしていないペルフェクト星人やデルピューニと違い、アイラインや口紅といった化粧は厚めである。
 黒い軍服のような服装のペルフェクト星人や、かなり簡素な格好をしていたデルピューニと異なり、紫色のオペラグローブと胸元が大きく開かれたショートイブニングドレス、ヒールに白い毛皮のコートという場違いなほどに派手な格好。また多数の豪奢な指輪や腕輪、ネックレスを身に付けているが、前述の服装も相まり、魔女や貴婦人というよりは『高級ナイトクラブのママ』っぽい印象となっている。
 性格は一見剽軽ながらも内面は驕慢、かつ破壊や殺戮にも一切躊躇を抱かないほどに冷酷残忍である。もっとも、それ以上に凄まじい金銭欲を抱く俗物であるのだが、自分の欲望を満たせるだけの狡猾さや抜け目なさ、卑劣さも備えている。とはいえ、一方で小市民・小悪党的な部分やセコさを垣間見せることも多々あったりする。
 レイブラッドに従うのもこよなく愛する金銀財宝を得るのに都合が良いと考えたからで、忠誠心は無いに等しい。もっとも、他2人同様主人との実力差は理解しており、またレイブラッドの遺伝子を与えられて魔術の実力をさらに上げてもらったことについては少しは感謝してもいる。
 コボル星人の魔術師の家系の出身。彼女の母は腕の良い魔術師であり、その弟子の1人にはムルナウという老いた魔女もいた。もっとも、ムルナウは結局魔術師としては大成せず、あるウルトラマンからは“インチキ魔術師”と呼ばれる程度の実力しかなかったようだ。
 尚、彼女が魔術を習う頃には既にムルナウは師の元を出奔し悪事を働いていたので、2人に面識はないとのことだが、悪の道に堕ちたのは皮肉にも共通している。また、ムルナウの所業は風の噂で聞いていたらしく、「生き物や星を宝石に変えたところで価値はない」と唾棄した。
 前述の通り魔術の腕は非常に高く、敵のバトルナイザーを使用不能にしたりするといった摩訶不思議な術を使う。また、特定の怪獣の特殊能力を再現した術を新たに開発するなど、魔術の研究・研鑽は怠ってはおらず、レイオニクスとしても魔術師としても未だ成長を続けている。
 ちなみに喫煙者であるが、ファム曰く(持っている資産の割には)あまり良い葉は使っていないとのこと。ただし使っている煙管は貴金属がふんだんに使われ装飾された特注品。とはいえ、成金趣味が垣間見えるデザインでもあり、見た者からの評判はあまり良くない。また、この煙管からの煙を媒介に魔術を発動することも多い。
 レイブラッドに従うようになったのは比較的最近の話であるが、前述の通り元々大金を得るために魔術を悪用する狡猾な犯罪者である。尚、悪事の積み重ねで得た財産は莫大であり、本来ならば百万長者(ミリオネーア)どころか億万長者(ビリオネーア)、いや京兆長者(トリリオネーア)に相当する存在であるのだが、前述の通り小悪党的な面を知る者からはあえて百万長者呼ばわりされている。本人もそれを嫌がっており、ファムに言われて途端に殺意を向けたのはこのためである。
 尚、三幹部は皆仲が悪く、特に残忍なデルピューニとは会う度罵り合い、時にはレイオニクスバトルで殺し合いになる。冷静なペルフェクト星人とは殺し合いにならないにせよ毎度嫌味の応酬という有り様で、あまりのまとまりのなさからレイブラッド星人を毎度苛立たせている。

 宇宙獣 ザディーメ

 とある時空の宇宙にある『ソニア恒星系』に住まう不気味な宇宙怪獣。文字通り『ザディーメ』と鳴くため、それが名前の由来だと思われる。
 灰色の岩のような体表に、ずんぐりとした爬虫類型の体型、他にミトンタイプの手、先端が鋭く尖った長い尾、内部が中空になった背中の棘、複数の発光体の付いた胸部などが特徴。ただし、顔面には口と鼻はなく、前面と頭頂部にそれぞれU字磁石のような形をした1対ずつ、計4つの赤い目を持つ、およそ感情の感じられない異様な見た目をしている。また二足歩行と四足歩行どちらにも適応しているようであり、顔と頭頂部の目がそれぞれの歩行に対応している模様。
 最大の能力は手を叩いて胸部から発射する“超次元立方体”である金色の正八胞体(テセラクトーン)。これはウルトラマンの必殺技級の光線の吸収や反射、さらには縦横無尽に飛び回り直接敵を攻撃する万能の物体である。体型通りあまり機敏には動けないザディーメであるが、この正八胞体を使用することで高い戦闘能力を誇る。
 また手先からの速射光弾や光線放射、背中の棘で光線を吸収し多数の光弾として撃ち返すなど、多彩な能力を持つ。そして尻尾の先端はなんと空間そのものを切り裂くことが出来、裂け目を手で押し広げて異空間に逃げ込むことが可能。さらには、透明化能力まで備えているが、これはあくまで隠密用で透明化しながらの戦闘は不可能な模様。
 本個体はロックフォーヌに使役されている。次元移動を始めとする多彩な能力は重宝しており、またそれらはレイオニクスパワーでさらに強化されている。
 ファムを襲うも、途中で送り込まれた姑獲鳥と戦う。しかし、光線を主体とするザディーメの能力は光線無効の姑獲鳥には相性最悪であり、ことごとく無効化された挙げ句、切り札の正八胞体すら逆用されてしまう。だが、手駒を失うのを恐れたロックフォーヌに回収され、死は免れた。
 感情のおよそ窺えぬ怪獣であるが、姑獲鳥の振る舞いに呆れるなど、こう見えて感情そのものは存在するようだ。

 凶獣 姑獲鳥(こかくちょう)

 かつてウルトラマンダイナと戦った怪獣の別個体。人の死や国の滅亡を予言すると言われる、中国に伝わる不吉な鳥あるいは妖怪だが、その正体は電離層に棲む悪意を持ったプラズマ生物。同所に生息していたクリッター=ガゾートと同じく喋るだけでなく、明確に人語を解するほどの高い知能を持つ。
 銀灰色の体色で、全体的に彫像のような細身かつ頭身の高い人間の女性のような体躯(明確に乳房がある)に鳥の足のような指と鉤爪をした太い四肢、背中に映える1対の翼、鳥のような頭が特徴。そして鳥の嘴の中には人間の女性あるいは日本人形のような顔面があり、不気味に光らせながら笑い声を上げる。
 プラズマ生物であり、電気や光線の類の攻撃が通用せず、ダイナのソルジェント光線すら無効化した。武器は手からのプラズマ光弾と、手から電気を放ったのち、空から降り注がせる落雷攻撃。また人の夢に現れて自分の意思を伝えることも出来るが、その際不吉な予言を伝えている。他には体が消滅しても再構成する能力もある模様。
 プラズマ生物のため電気を餌とするが、そのために中国各地で地震を起こして電気エネルギーを喰らいながら、同時に発電所も襲撃して同じく餌を喰らいながら移動していた。その際岩盤の破片が摩擦熱でガラス化した『シュードタキライト』という物質が全身に付着していたことで正体が露見する。初めはアンチプラズマ弾をくらって姿を消したが、のちに日本のマイクロ波発電施設跡地の超電導リングの電力を狙って再度出現。
 人類もダイナも滅びると嘲笑いながら出現したダイナにも攻撃を加えるも、放った電撃のプラズマエネルギーをミラクルタイプとなったダイナに吸収され回復される。そしてレボリウムウェーブで消滅したのだった。
 本個体はテンペラー星人(RB)に使役される“四凶”の1体。ダイナと戦った個体以上の知能を誇ると自称する通り、他の知的生命体と流暢に会話が出来る。悪意あるプラズマ生物というよりはまどろっこしく気障りな性格であり、要請を受けて助けに来たファムに対しわざわざ御礼を言うよう求めたりした。ちなみに性別は見た目通り雌とのこと。
 間抜けな面も多々あり、喋るのに夢中でザディーメの存在を忘れていたため無防備に攻撃をくらって倒された際はファムを絶望させている。しかし光線や電撃無効という能力は健在であり、光線主体の能力を持つザディーメを圧倒した。また正八胞体を手掴みで止められるなどの恐るべき能力を見せたが、エネルギーは吸われるらしくやかましく喚いていた。
 四凶の他の3体からはその性格からか敬遠されているが、本人は自分が1番優れているから嫉妬されているなどと見当違いな勘違いをしている。性格面ではこのように多々問題はあるものの、総合的な戦闘能力は高く、テンペラーからはこれでも信頼されている一方でファムからは激しく嫌われており、鳥呼ばわりされている。
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