怪獣超無法惑星   作:フルメタル・ミサイル

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 遅くなってすいません。色々悩んでるから執筆遅れる。


2人のペルフェクト星人 その4

「アオオオオ~~ム……」

「な、何だこれは!?」

「ギ、ギギ…」

 

 困惑するメドウーサ星人。それもそのはず、そこら中にファルドンが現れたからだ。

 よろよろと起き上がったムカデンダーもまた困惑し、辺りを見回す。すると、思い思いに行動するファルドンの群れが目に入る。

 

「ギ!?」

 

 右側から近づいてきた個体に右手指の鞭を振るうも、その姿が薄くなったかと思うと消えてしまう。その直後のタイミングで左手のビルの陰から現れた個体が代わって鼻先からの青い破壊光線を浴びせてきたがムカデンダーは躱せず背中に被弾、倒される。

 

「ギギギギ…」

「なかなか面白い能力だろう?」

 

 翻弄される敵陣営を皮肉るレギュラン星人。自陣の勝利を確信したのか、すこぶる余裕気な態度である。

 

「調子に乗るなよ…」

 

 それが気に入らず、メドウーサ星人は苛立ち気味にそう吐き捨てる。それと同時に、バトルナイザーを介して密かにムカデンダーに指示をした。

 

「アオオオオ~~ム」

 

 今度は真正面から鋏で殴りかかってきたファルドン。それを火炎放射で迎え撃つムカデンダーだが、今回もまた攻撃はすり抜けてしまう。代わって後ろから現れたファルドンが背中に右前蹴りを叩き込み、ムカデンダーは前のめりに倒されてしまう、

 悪いことに、倒されながらも火を吹くのはやめなかったため、引火して周囲は火の海になり、炎と煙のせいで百足怪獣もまともに見えなくなる有り様である。

 

「………………」

 

 炎上に巻き込まれまいとメドウーサ星人は浮遊能力で飛び上がって近くのビルの屋上に着地しながらも、黙ってそれを見ていた。じっと辛抱し、()()()()を待ったのだ。

 

「どうした? 降参するつもりなら黙っているだけでは伝わらんぞ?」

 

 レギュラン星人もまた同じく空中浮遊で飛び上がり、別のビルの屋上へと着地しながら闘いを見守るが、勝敗はほぼ決したも同然。何故なら、火の海の中でムカデンダーは起き上がることもなく倒れたままだからだ。そんな状態では、もうファルドンにムカデンダーは勝つことは出来ないだろう。

 それを理解したから敵は黙って見ていると考えたレギュラン星人はそう挑発するが、メドウーサ星人は応じなかった。

 

「……どうやら闘う意思はまだあるようだな。ならばファルドン! とどめを刺してやれいっ!」

 

 降伏勧告にも応じなかった以上、最早敵を生かしておく理由もなし。レギュラン星人は蜃気楼怪獣にとどめを刺すよう命ずる。

 

「アオオオオ~~ム――――――アオッ!?」

「ギィィィィィィィィ」

 

 倒れたままのムカデンダーの背中に向け、ファルドンは鼻先からの光線を撃とうとする。だが、ここでファルドンの足元の地面から何かが飛び出し、そのまま左足首におもいきり噛みついた。

 不意をつかれたファルドンは驚きとダメージのせいで思わず転倒。足元を見やると、なんと首だけになったムカデンダーが自分の足首に噛みついているのが目に入った。

 

「なっ…!?」

 

 見れば、倒れているムカデンダーの体には首がない。それなのに何故生きているのか、と驚愕するレギュラン星人。

 

「ドッキリ大成功……というところか。そしてその反応、どうやらムカデンダーの能力は知らんらしいな」

 

 今まで黙っていたが、ここでようやくまた饒舌に喋り出すメドウーサ星人。どうやら敵はムカデンダーの『頭と胴体が分離可能かつ別行動が可能』という能力を知らないようだった。道理で倒れたままのムカデンダーに警戒の目を向けず、追撃をかけようとしたわけである。

 百足怪獣は敵の攻撃をくらった際、自分の首が胴体に隠れるよう倒れていた。そしてそのまま首を分離して素早く地面に潜り、油断して近寄ってきた敵へと不意打ちを仕掛け、敵は見事に引っかかってくれたというわけだ。

 ちなみに倒れる際まで炎を吐いていたのもまたわざとである。ただ前のめりに倒れただけでは敵に首と胴が分離するのが丸見えになってしまうため、その目くらましのために周囲を燃やして視界を悪くしたのだ。

 

「アオオオオ~~ム」

 

 倒れるファルドンは何度も左足を地面に叩きつけ、さらには背中から閃光を発生させて目を眩ませることで、ようやく齧り付くムカデンダーの顎から逃れる。そうしてよろよろと起き上がり、再び蜃気楼を発生させ、複数の幻影で百足怪獣を取り囲む。

 

「アオオ~~」

 

 しかし、周囲に延焼した炎の影響を本体が受ける。それで即死するわけではないが、火の海の中を彷徨くせいで、燃え盛る炎で体の所々が炙られ、あるいは燃え移ってきた。

 

「クッ、クソッ! これでは!」

「確かに。これなら分かりやすいな」

 

 平然としている幻影に対し、本体は体に燃え移った炎に耐えかね身じろぎする。メドウーサ星人が首肯して呟く通り、こうなれば最早素人でも判別は容易かった。

 

「ギィィィィィィィィ!!」

「アオッ!?」

 

 そんな中、炎の海を平然と這いずり現れたムカデンダーの首が、ファルドンの左側から粘着性の毒糸を顔面目掛け噴射。両目にベットリくっつき視界を封じてしまう。

 そのまま左手首に噛みついて動きを封じたところで、今度は胴体の方も右側から接近。そのまま右手の鞭で散々殴打を加える。

 

「アオオオオ~~ム」

 

 両側からの攻撃に耐えかねたファルドンは蜃気楼と入れ替わり逃亡するが、視界は封じられたままである。さらに悪いことに逃げた先で躓き転倒し、身を捩って悶える始末。相変わらず平然としている幻影と見比べ、本体の位置はまたもや一目瞭然であった。

 目が見えない上に左足首のダメージのせいでこのように起き上がるのにもたついていたところで、全身に火が燃え移る。

 

「アオオオオ」

 

 全身の焼ける痛みに耐えかね、なんとか起き上がるも、ここで首と胴が元通り接合したムカデンダーが口から爆炎を浴びせかける。そうしてさらに火達磨となったファルドンはついに力尽きて倒れ、二度と起き上がることはなかった。

 

「勝負ありだ」

「………!!」

 

 自陣の逆転負けを信じられず、レギュラン星人は言葉も出ない。そしてファルドン以外の怪獣を持っていないのか、次の怪獣を出す気配もない。

 

「ギィィィィィィィィ!!」

「ッ!?――――ウワァァァァァァァァ!!!!」

 

 ならばもう用はないとばかりに、レギュラン星人の立つビルの屋上目がけ、ムカデンダーは爆炎を吐きかける。普段なら余裕で回避出来たものを、今の動揺した精神状態のせいで超能力の発動が遅れ直撃。哀れ絶叫と共に悪質宇宙人はファルドン同様火達磨となり、そのまま焼け死んでしまった。

 

「怪獣が負けた時点で、お前の死は決まっていたのさ!」

 

 敵レイオニクスを処刑し、メドウーサ星人は気分良くそう高らかに告げる。

 

「ギィィィィィィィィ!!」

「フハハハハハハ! では、次の獲物を探しに行くか!」

「いや、その必要はない」

「「!!」」

 

 燃え盛る街の虚空に響く声。ハッと上を見上げたムカデンダーに、“見えない何か”が別のビルから跳び上がって襲いかかり、そのまま燃える地面に薙ぎ倒す。鋭い爪に引っかかれ、ムカデンダーは一瞬呻くも負けずに右手の鞭で引っ叩いて反撃し、敵は恐竜のようなその姿を現す。

 

「何だコイツは!? どこから現れた!?」

 

 予想外の事態に驚くメドウーサ星人だが、そんな彼にレイオニクスバトルはまだ終わっていないことを思い知らせるべく、配下の怪獣同様すぐさま下手人も姿を現した。

 

「貴様等はここで死ぬからだ!」

 

 宇宙超人 スチール星人(RB)

 

 かつてウルトラマンエースと戦った宇宙人の同種族。地球人に当時大人気だった珍獣ジャイアントパンダに強い興味を持ち、母星へ連れて帰るためだけにわざわざ地球にやって来たというなんとも珍妙な宇宙人として知られる。とはいえ、耳の不自由な老人に化けて周囲の人間を欺くなどやり口は十分狡猾で、さらには目的を邪魔された際は巨大化して街を破壊するなど、その性格は十分凶悪な部類である。

 珍妙だった目的にある意味見合った、機械やロボットを思わせる独特な外見が特徴。断面が六角形の黒い頭部には顕微鏡のレンズのような目が左右に飛び出し、頭頂部には中央に赤丸の付いた回転鋸のような謎の部位が3つ付いている。また頭部と中央の回転鋸の境目には火炎放射器(機械なのか、それとも生来のものなのかは不明)が仕込まれている。細身の体躯は黄色く、それと何故か人差し指だけやたら長い。

 

「キュウウウウウウ!!」

 

 刃爪(じんそう)怪獣 テリジラス

 

 かつて白亜紀後期に生息していた恐竜テリジノサウルスの生き残りが進化したと言われる怪獣。植物食恐竜であったと推測される先祖と違い、人間をも捕食する獰猛な肉食恐竜怪獣である。

 赤いトサカ、青い目、鋭い牙のびっしり並んだ嘴状の吻、両手の鋭く長い赤い爪、全身を覆う青黒い大きな鱗(下顎から胸にかけてだけは逆に真紅色)が特徴。

 その別名通り両手の鋭く長い3本爪による攻撃を得意とする他、先祖どころかどの恐竜にもない『透明化』能力を持つ。これにより姿を消しながら相手への一方的な攻撃や獲物の捕食が可能。

 

「隠れて見ていたわけか!」

「そういうわけだ!」

 

 レイオニクスバトルは時に連戦となることもある。このように隠れて漁夫の利を掻っ攫おうという輩も中にはいるからだ。

 しかしながら、こんな真似をしても卑怯千万とは言われない。レイオニクスバトルにそもそも不意打ちを禁ずるルールなど無いからである。だからこそ、メドウーサ星人も驚きはすれ、レイオニクスバトルで疲労した隙を突いてきた敵を非難はしなかった。

 

 

 

 

 

「ちっ、まさか新手がいたとはな…」

 

 近場から電子双眼鏡でレイオニクスバトルで眺めながら、アロルム星人は舌打ちする。

 現在、ムカデンダーとテリジラスの闘いは、連戦の疲労により百足怪獣がやや不利か。テリジラスの刃爪の連撃に対し、防戦一方のムカデンダーの動きは明らかに鈍い。このままではいずれ刃爪怪獣の一撃により致命傷を負い、死ぬのは目に見えている。

 よそ者のレイオニクスの誰が勝とうが負けようが死のうが構わないが、レイオニクスの新鮮な死体が残らないのは困る。研究のために死体が必要なのに、今回レギュラン星人は焼き殺されてしまった。それ故にまた新たなレイオニクスの乱入は死体の入手率が上がるため、むしろ歓迎すべき事態ではあるが、戦場となった街の区画は今や火の海。勝負の行方次第では2人共こんがり焼けてしまうかもしれない。

 

「それに興味深い能力を持った怪獣だ。死体もそうだが、アレも欲しいな…」

 

 そして、このアロルム星人はテリジラスの方にも興味を抱いた。透明化能力を持った宇宙人はそれなりに存在するが、透明化能力を持つ怪獣は逆にかなり珍しいからだ。

 

「ナドキエ! 作戦変更だ。奴等の決着がつき次第、私も出る!」

『…かしこまりました』

 

 ウキウキした様子の主人とは逆に、暗い声でそう返事するペルフェクト星人の女。彼女にとって、主人の思惑などどうでもいい。さっさと用件を済ませ、この地獄のような場所からさっさと帰りたいというのが本音だった。

 

(………………)

 

 周囲に頓着せず闘うレイオニクス達により燃え盛る街。

 老朽化するも衰退した文明の科学力では最早修理もままならないため、日に日に失われていく人工太陽の輝き。

 それらが暗示するのはこの星の滅びが近いことだろうか。

 だがそれでも、この女の心には特に悲しみはなかった。

 荒っぽい主人の下で働くようになってどれほど経ったか。その荒んだ日々の中で、いつしか涙も感情も枯れ果てた。

 最後に残ったのは空っぽの自分だけだ。大切なものは涙と共に流れ尽くしてしまった。

 

(………………)

 

 けれども、そんな自分でも時折レイオニクスに憧憬というものを強く感じる時はある。

 レイブラッド星人の後継者となって全宇宙を支配したいという野望のために闘う“怪獣使い”。己が欲望のために怪獣を使役し、そのために大勢の誰かが死のうが、都市を破壊し燃やそうが全く意に介さない。そんな彼等は紛うことなき“悪”である。

 しかしながら、その()()()()()が、ナドキエにこの上なく羨ましく、そして眩しく映った。

 奴隷の身の上である自分にそのようなことは許されない。自分は死ぬまで()()()の中で生きるのだ。

 

(………私にも………)

 

 奴隷には分不相応の望みかもしれない。だがそれでも、だがそれでも。一度はあんな風に自由に、思うままに生きてみたかった。

 そして“力”さえあれば、それが叶うのだろうか? あのように怪獣を操ることが出来れば……

 

 

 

 

 

「ギィィィィ!!」

「キュウウ!!」

「ク、クソがッ!!」

 

 テリジラスはいくつもの燃えるビルを目にも止まらぬ速さで跳び回りつつ、その爪で切りつけることでムカデンダーを翻弄していたが、やがて背後からの一撃で百足怪獣に重傷を負わせる。

 先ほどの闘いの疲労に加えこのダメージによりムカデンダーはついにダウン。メドウーサ星人はこのどうしようもない状況を口汚く罵るしかなかった。

 

「悪く思うな」

 

 卑劣な行いだという自覚はあるのか。スチール星人はそう口走ったところで、透明化を解除して現れたテリジラスは倒れるムカデンダーの胴体に右手の爪を突き刺し、とどめを刺す。

 

「……これで勝ったと思うのか?」

「んん!?」

 

 スチール星人とテリジラスは不意打ちで圧倒的優位に立ってはいたが、だからこそその油断で最後の詰めが甘くなっていた。

 その言葉に何か嫌な予感を感じた宇宙超人がムカデンダーの胴体を見てみると、またもや首がなくなっている。

 

「……ギュガガガガ!!??」

 

 そして首のない体がまたもや動き、突き刺した右手を百足怪獣の左手が掴んだ。片手が封じられ身動きが取れなくなったところで、いなくなっていた首が燃える足元から現れて跳び上がり、テリジラスの喉元に思いきり噛みついたのである。

 

「き、貴様放せ!」

 

 思わぬ抵抗に狼狽するスチール星人。テリジラスも同様で爪でムカデンダーの首を掴んで引っ張るが、全力で噛みつくが故に牙は喉元に深く喰い込み、激しく出血し始める。圧倒的優勢の中突如訪れた命の危機に刃爪怪獣は動揺し必死で抵抗するも、皮肉にも右手は爪を深く突き刺したが故にかえって抜けなくなっていた。しかも相手が腕を掴んで押さえ込んでいるため尚更である。

 

「ギィィィィィィィィ」

「ギュアッ!?」

 

 残る左手で引き剥がそうとするが、自分の血で手が滑るため力を入れづらい。そんなところへ、ムカデンダーは右手の鞭の先端を顔面に巻き付けて引っ張り邪魔をしてきた。

 

「ギュアア…」

 

 出血多量で意識が朦朧としていたところでそんな真似をされれば抵抗も難しい。やがて限界を迎えたテリジラスは力なく倒れると、そのまま事切れたのだった。

 

「チィ! あと一歩というところで!」

 

 漁夫の利をかっさらおうとしたが上手く行かず、スチール星人は地団駄を踏む。

 

「ギィィィィ……」

(ムカデンダーはこれ以上は闘えんな…)

 

 とはいえ、メドウーサ星人もまたムカデンダー以外戦力がないのか、先ほどと違い次の怪獣を出すよう急かす真似はしなかった。ましてやムカデンダーは二連戦を乗り切ったものの、その代償に瀕死の重傷を負っている。仮にスチール星人がテリジラス以外の戦力を持っていれば、その時点で負けは決まっていただろう。

 だからこそ、これ幸い。本日はこの闘いをもって終いとし、引き上げようと考えたのだが――

 

「また君が勝ったか。とりあえずおめでとう。

 だが、大変お疲れのところ申し訳ないが、もう一戦してもらうよ」

「「!?」」

「テリジラスは死んだか。残念だよ。そちらの方も貰いたかったのだが仕方ない。

 君達の死体だけで今回は我慢するとしよう」

「誰だ貴様!」

「フフフフ」

 

 メドウーサ星人が激昂して叫んだが、声の主は笑うばかり。

 

「そう言いたいのは、むしろこちらの方だよ。

 我が母星でのこれ以上の狼藉はよしてもらおう」

『バトルナイザー、モンスロード!』

 

 声の主もまたレイオニクスであるらしい。燃え盛る街に、また新たに怪獣が召喚される。

 

「キシャアアアア!!」

 

 古代怪獣 ゴモラ

 

 南太平洋のジョンスン島で発見された、1億5千万年前に生息していた恐竜ゴモラザウルスの生き残りとされる怪獣。交戦した初代ウルトラマンを一度は退け、あの最強のレイオニクス・レイも相棒として使役して数々の怪獣を打ち破ったことから、最強の呼び声も高い怪獣として知られる。

 茶色い体色、三日月型の巨大な双角、鼻先の1本角、上顎先端の長い1本牙、腹部の松かさ状の鱗、長大な尻尾が特徴。

 地中を掘り進む際、鼻先の角から発する『超振動波』により地中の岩や岩盤を砕いて液状化し、障害物を排除しながら移動を行う。そしてこれは光線のような強力な遠距離攻撃として放つことも可能で、これを武器にレイのゴモラは数々の怪獣を倒してきた。さらにはレッドキングにも劣らぬ怪力に加え、長大な尻尾を初めとする格闘攻撃も非常に強力であり、初代ウルトラマンと戦った個体はそもそも超振動波を使わずに肉弾戦のみで敗退に追い込んでいる。

 本個体は四次元怪獣ブルトンによってこのアロルム星に召喚されたものをアロルム星人が捕らえたもの。

 

「な、なに!?」

「ゴモラだと!?」

 

 メドウーサ星人とスチール星人は共に仰天する。

 言わずもがな、レイの使役していた個体の大活躍により、ゴモラは並み居る強豪を抑えて最強の呼び声高い怪獣。2人が驚くのも無理はなかった。

 

「キシャー!!」

「ギィィ………!」

 

 連戦で疲労困憊どころか瀕死の重傷を負うムカデンダーでは最早対抗出来るはずもない。主人を守るために弱々しく立ち上がり、覚束ない足取りで挑むも、案の定簡単に蹴り倒されてしまう。

 

「ギィィィィ!!」

「!」

 

 ゴモラの両目目がけ、口から毒糸を吐くムカデンダー。しかし、衰弱した状態ではその勢いも弱く、ゴモラは首を傾けて簡単に躱してしまう。

 そうしてゴモラは打つ手のなくなったムカデンダーの胴体を容赦なく踏みつけ、鼻先の角を光らせ、早速超振動波を胴体に撃ち込もうとする。

 

「おっと! まだ動けるのか」

「グェェ……!」

 

 ここでムカデンダーは再び首を分離し、死角からの不意打ちを行おうとする。しかしゴモラの優れた反射神経にそれは通じず、背後から飛びかかった首はそのまま尻尾に跳ね飛ばされてビルに叩きつけられ、動かなくなった。

 

「ゴモラ! とどめを刺せ!」

「キシャー!」

 

 主の命令のまま、その光った鼻先の角を胴体に突き刺す。ムカデンダーの胴体は膨張・赤熱し、そのまま爆散したのだった。

 

「安心したまえ。殺しはしない」

「「………!」」

 

 竦み上がる2人のレイオニクスにそう告げるアロルム星人。では、彼は一体どうするつもりなのか。

 

(今だ、やれっ!)

(は、はい!)

「「ッ!」」

 

 右手首の通信機に向かってアロルム星人がそう命じたのはゴモラではなく、召使のペルフェクト星人の女に対してである。

 半ば呆然とする2人は隙だらけ。まさに捕らえるなら今をおいて他にはない絶好の好機だった。

 

「………!」

 

 主人の命令で別地点でエアカーに乗ったまま待機していたナドキエ。しかし主人のGOサインが出たことで、エアカーのルーフ後部に搭載されたガンランチャーより『ビームネット弾』を発射。

 高速で飛翔する弾頭はそのまま2人のレイオニクスのいる屋上で炸裂後、蜘蛛の巣状のビームの網となって覆った。

 

「そう易々と捕まってたまるか!!」

「こんなもの破壊してくれるわ!」

 

 虜囚の身は御免だと、メドウーサ星人とスチール星人は敵同士ながら即座に一時共闘の流れとなった。醜悪星人は触手状の両手から強烈な磁気を放ち光線に干渉。続けて宇宙超人もまた頭部の3つの丸鋸から破壊光線を放ち、そのままビームネットを破壊して脱出しようとする。

 

(ナドキエ! 催眠ガス弾だ!)

 

 ビームネットは内部からのテレポートなどの超能力は防ぐが、気体なら通る程度の“網目”はある。仮に獲物の抵抗が激しい場合、そこから追加で催眠ガスなどを吸わせることが出来る。

 

「あっ!? い、いけない!」

 

 エアカー操縦席でタブレット型端末を弄って次の発射弾を選択するナドキエだが、緊張から操作を誤ってしまい、うっかり別の弾種を選んでしまう。発射直前で気付いてキャンセルしたものの、着弾地点の設定からやり直しになったせいで2分ほど遅れてしまった。

 

(おい何してる! さっさと次弾を発射しろグズ!!)

(すみませんすみません!!)

 

 敵が思ったより激しい抵抗を行いビームネットを破壊しようとしており、いつまで保つか分からない状況。それに加え、ナドキエがミスするのは想定外だったのか、主人からは鬼の催促。

 主人の怒りを恐れるナドキエは必死に謝りながら大慌てでタブレット端末を操作し、次弾を発射させる。

 

「うぅっ…」

「く、クソッ…」

 

 半ばパニックになって撃ちはしたが、それでも催眠ガス弾は上手く飛んでいってくれた。そして燃え盛るビルの屋上で炸裂し、光の蜘蛛の巣の中に捕らえられた2体のレイオニクスを眠らせたのだった。

 

「帰るぞゴモラ!」

 

 後ろで待機していたゴモラをバトルナイザーに回収し、アロルム星人はナドキエの到着を待った。

 

 

 

 

 

「お待たせいたしました」

 

 そうしてエアカーを運転し、別地点で待つ主人を回収に現れたナドキエ。

 

「オイ!」

「きゃッ!?」

 

 レイオニクスとそのバトルナイザーの回収には成功したものの、主人は奴隷の犯したミスに怒り心頭だった。アロルム星人は運転席に座るナドキエの胸ぐらを掴み、そのまま引きずり出す。

 

「あのタイミングで失敗するな!! 馬鹿が!! グズがッ!! 

 お前は何度私を苛立たせれば気が済むんだッッ!!??」

 

 そして早速、アロルム星人は手にした細い革袋に砂を詰めた棍棒(ブラックジャック)で、怒りのままに面罵しながらナドキエを散々に打ちすえる。

 

「ごめんなさい!! 殴らないでッ!!!!……痛いッ! おっ、お願いやめてッ!」

「何だそのナメた口はッ!? そして役立たずの分際で生意気にも懇願か!!」

 

 せめて急所を腕で守りながらも、ペルフェクト星人の女は謝ることしか出来なかった。

 けれども、そんな態度が火に油を注いでしまい、主人の怒りはかえって増すばかりだった。

 

「無能のマヌケめ! お前が見栄えの良いペルフェクト星人だからこの程度で済ませて生かしてやってるんだ!!

 そうでなければ、とっくに叩き殺して怪獣の餌にしてるわッ!!!!」

 

 そう吐き捨てたところで蹴り転がされ、主人の折檻はようやく終わった。しかしながら、ナドキエはアロルム星人の馬鹿力で何十発も殴られ叩かれ、本来血や痣が出にくいはずブラックジャックでありながら、体のあちこちに青痣が出来、痛ましい姿となってしまっていた。

 

「うっうぅ……」

 

 全身の激しい痛みと悲しさ、悔しさで地面に倒れながら泣くペルフェクト星人の女。

 『地球人型種族では男女共に宇宙一の美貌の持ち主』と謳われるペルフェクト星人。にもかかわらず、このような明日自分が生きているかさえ分からぬ過酷な境遇に甘んじている者が多い。

 種族としては別段際立った特殊能力や超能力、あるいは高い科学力や洗練された文明を持たず、極めつけに()()までもがない。それでありながら容姿だけは宇宙一と謳われるほどには非常に美しい。

 そこに目をつけた異星人が彼等を奴隷として捕らえ、宇宙各所に売り飛ばすようになって久しい。この星に暮らすペルフェクト星人の一団もその奴隷のさらに子孫であり、かつてアロルム星人達が何処かの奴隷商人から()()()()()()()()()()購入出来たものだ。

 だが、残忍なアロルム星人のペルフェクト星人の奴隷に対する扱いはそれでも過酷だった。気に入らぬことがあれば、例え女でも容赦なくブラックジャックで殴り、躾ける。痛みは強いが流血や痣になりにくいブラックジャックで殴るのは、単に死なれてはそれはそれで面倒だし損だからと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。使い物にならなくなった時は転売するが、その際美貌が色褪せているのは彼等にとってもよろしくないのだ。

 

(い…痛い……痛いよぅ……)

 

 使った鈍器がブラックジャックとはいえ痛みは本物、それに耐えられずむせび泣くナドキエ。とはいえ、見る者が眉をひそめるようなこの激しい虐待も、『骨折がなかっただけそれでもまだマシ』とナドキエが後で思うような事態であり、そして()()()()()なのだ。

 

「いつまで寝てるんだ! 早く運転しろッッ!」

「あうっ…!」

 

 ひとまず気は済んだものの、主人は倒れるナドキエの背中を踏みつける。そして無理矢理引きずり起こして運転席に放り込み、そのまま自宅へと送らせたのだった。

 

 

 

 

 

「痛た……」

 

 その夜(――と言っても人工太陽の輝きが褪せつつある今、昼とそこまで変わらないが)。

 その日の仕事と主人の用事は全て済ませ、トレードマークのロシア帽も脱ぎ、自分の部屋で今日はもう寝ようとしたナドキエだったが、殴られたところが痛くて寝られない。

 

「あ~ぁ。これじゃすぐには治らないか…」

 

 ため息をつくナドキエ。鏡の前で服を脱いで裸になると、その美しい体のそこら中が痣だらけである。仮に地球や同等の倫理観のある星ならば紛うことなき通報案件で主人は虐待の罪で逮捕されるのだろうが、この星にそんな気の利いた法律などない。異星の奴隷など叩き殺そうが、死体を食おうが何のお咎めもないのだ。

 だが、それでも幸運と言えば幸運なのかもしれない。ペルフェクト星人に限らず、この星で暮らす奴隷は明日をも知れぬ命だ。今日命があっただけマシなのだ。

 

「ふぅ……」

 

 そう思ったし、そう思わないとやっていけない。自分も幼い時に奴隷居住区から連れて来られて毎日がこんなものだったが、いい加減もう慣れた。叩かれてもその場は痛いが、少し経てば気持ちは落ち着く。

 

「………………」

 

 ふと、ナドキエはベッドの上の壁を見上げる。するとそこには1枚の大きなポスターが貼ってあった。このポスターを寝る前、あるいは悲しくなった時に眺めるのが彼女の日課と言っても良かった。

 

「いつかきっと、ウルトラマンがペルフェクト星人(わたしたち)を助けに来てくれる……」

 

 ポスターには初代ウルトラマンからメビウスまでのウルトラ兄弟達が数多の怪獣や悪の宇宙人達と戦う姿が描かれていた。

 ウルトラマン――宇宙の平和、力なき弱き人々を守るため、人々を脅かす凶悪な怪獣や邪悪な侵略者達と戦い続けてきた正義の使者。闇を祓い、希望を灯す光の戦士。

 いつかきっと、彼等はこの星にも現れる。凶悪なアロルム星人達を打ち倒し、ペルフェクト星人を救い出してくれる。彼女はずっとそう信じていた。

 

(でも……)

 

 しかし、彼女が昼間のレイオニクスバトルを見て感じた“憧憬”もまた本音である。

 自らに“力”があれば、今すぐにでも“自由”が手に入るだろう。

 もしレイオニクスになれるのなら、ウルトラマン達の到来を待つ必要もなくなるのだ。

 そう考えている内に、彼女はようやくベッドで眠りにつくことが出来たのだった。




用語解説

 宇宙超人 スチール星人(RB)

 かつてウルトラマンエースが戦った宇宙人の同種族。当時地球で大ブームとなっていた珍獣ジャイアントパンダに強い興味を持ち、母星に連れて帰るだけためにやって来たという、かつて地球にやって来た宇宙人の中でも屈指の珍妙な目的の持ち主。それだけならまだ可愛げはあったが、そのためのやり口は狡猾で、目的が失敗したと思った途端に巨大化して街で暴れたため、十分凶悪な性質の持ち主である。
 機械やロボットを思わせる、生物らしからぬ独特な外見が特徴。断面が六角形の黒い頭部には顕微鏡のレンズのような目が左右に飛び出し、頭頂部には中央に赤丸の付いた回転鋸のような謎の部位が3つ付いている。また頭部と中央の回転鋸の境目には火炎放射器(機械なのか、それとも生来のものなのかは不明)が仕込まれている。細身の体躯は黄色く、それと何故か人差し指だけやたら長い。3つの部位からの破壊光線や火炎放射が戦力。
 地球来襲時は黒いマントの男に化け、各地でパンダグッズを盗みまくった。北斗星司=ウルトラマンエースにも追いかけられるが時速60kmものスピードで走り逃走。逃げ込んだ倉庫街で耳の遠い老人に化けてやり過ごしていた。その後ついに本物のパンダを盗んで同じ場所に逃げ込むが、前回と違い声掛けや発砲音には普通に反応してしまい、宇宙人の正体を現す。巨大化して街で暴れ、エースも軽妙な体術や火炎放射で一時は圧倒するが、最後はメタリウム光線をくらい炎上、爆死した。
 本個体はレイブラッド星人の後継者となって全宇宙を支配するためレイオニクスとなって戦っている。ちなみにエースと戦った個体は度を越したパンダ好きだったが、こっちは恐竜が大好きとのこと。テリジラスを使っているのはその趣味の一環であるが、レイオニクスとしてあまり実力は高くないのか、連れているのはこの怪獣1体のみである。
 もっとも、その実力を補うべく、レイオニクスバトルを発見しても片方が倒れるまで静観し、勝者が弱ったところで仕掛けるなどやり口は卑怯狡猾。実際、テリジラスは疲労したムカデンダーを追い詰めたものの、敵の囮に引っかかり呆気なく敗れてしまう。しかしアロルム星人のゴモラが乱入してムカデンダーが倒され、メドウーサ星人共々自分も敵の囚われの身となるなど、いいところはなかった。

 刃爪怪獣 テリジラス

 白亜紀後期に生息していた獣脚類の恐竜テリジノサウルスの末裔が進化したと推測される怪獣。テリジノサウルス自体は植物食恐竜と推定されるが、この怪獣は真逆の獰猛な肉食獣であり、人間も捕食対象とする。
 赤いトサカ、青い目、鋭い牙のびっしり並んだ嘴状の吻、両手の鋭く長い赤い爪、全身を覆う青黒い大きな鱗(下顎から胸にかけてだけは逆に真紅色)が特徴。テリジノサウルスと違い、怪獣らしく完全な直立二足歩行体型であり、大きさも他の怪獣と同等となっている。
 テリジノサウルスの末裔らしい長大な3本爪で餌場となる場所に傷をつけマーキングをし、縄張りを主張する性質を持つ。そして最大の特徴の1つが『光学迷彩』能力によって姿を完全に透明化することであり、他のどの恐竜も持たないこの能力は怪獣化する際に得たと考えられる。
 本個体はスチール星人(RB)に使役されている。恐竜好きな主人のお気に入りで、疲労した敵のムカデンダーを透明化しながら周囲のビルを跳び移っての切りつけというヒット・アンド・アウェイ戦法で翻弄する。しかし、胴体を囮にするという敵の捨て身戦法に引っかかり、胴体に爪を深く刺し過ぎて抜けなくなってしまう。そこへ喉元に噛みつかれ出血多量を狙うという持久戦に持ち込まれ、呆気なく失血死してしまった。
 宇宙人に透明化能力を持つ者は珍しくないが、怪獣の場合は珍しい。そのため、アロルム星人(RB)にレイオニクスの身柄共々狙われていたが、その望みは叶わなかった。
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