怪獣超無法惑星   作:フルメタル・ミサイル

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 2人のペルフェクト星人の章ももう6話目です。前章のファンタス星人と同じで思ったより長引きましたが、もう少しお付き合い願います。


2人のペルフェクト星人 その6

「グウウアアアア!!」

「キシャアアアアオオオオ!!」

 

 アロルム星人のゴモラは召喚されるなり、レッドキング(パワード)と取っ組み合った。

 

(ま、まずい! 御主人様のゴモラ相手ではこの子でも勝てない!)

 

 主人のゴモラ召喚という想定外の事態に動揺するナドキエ。

 彼女はゴモラという怪獣について詳しく知っているわけではないが、それでも強力な怪獣だというのは知っていた。当時は興味がなかったせいで話はテキトーに聞き流していたので名前は忘れてしまったが、かつて最強だと謳われたレイオニクスも使っていた怪獣なのだという。

 事実、レイオニクスバトルにおいて、毎度双方の消耗を見計らっての途中乱入という姑息な戦法ばかり採っていたとはいえ、その事実を差し引いてもこのゴモラは今まで負け無しであったのだ。

 

「ピギャアアオオ!」

 

 とはいえ、このレッドキングもまた強いのは間違いない。ナドキエのサポートがあったとはいえ、つい今昆虫型甲殻怪獣(インセクタス)を撃破したばかりである。

 そして彼女の知らぬ事実であるが、最強のレイオニクス(レイ)のゴモラもレッドキングとは何度も交戦し、撃破してはいるものの、いずれも簡単に倒せる相手ではなかった。さらには、グランデのゴモラとの闘いでは逆に圧倒されており、勝利出来たのも紙一重の差であった。

 さすがにグランデの個体ほど強いわけはないが、この亜種のレッドキングはそれらの個体より体格が大きい分、膂力で上回っていた。

 

「キシャー!」

「ッ!」

 

 とはいえ、それでもゴモラはゴモラ。原種より体格の大きいこのレッドキング亜種相手に組み合って全く力負けしないどころか、右掌底を顔面にくらわせてよろけさせた。

 そうして敵が体勢を崩したところで、さらにゴモラは左肩をぶつけて倒し、起き上がろうとしたところを容赦なく顔面を蹴り飛ばして転がす。

 その残虐戦法には、この治安の悪い星で育って荒事には慣れっこのはずのナドキエも思わず顔を両手で覆ってしまった。

 

「ピギャアアオオ!!」

 

 ところが、この強烈な一撃をくらい、かえってどくろ怪獣の闘争心に火が点いた。すぐに立ち上がるとゴモラの顔を右手で張り、反撃をくらった古代怪獣もまたあまりの威力に地面に転がされた。

 

「やるな…」

 

 エアカーの操縦席で観戦していたアロルム星人も、その互角の様相を見せる闘いに思わず唸った。

 

「よかろう。こいつは戦力になりそうだ。

 ゴモラ! そいつは生かして捕まえろ!」

「!」

 

 主人からそう指示が下ったが、ゴモラは意外そうな様子だった。

 一方、敵の主人の言葉を理解出来ていないのか。レッドキングは構わずゴモラに襲いかかる。

 

「キシャー……」

 

 しかしながら、アロルム星人の今の指示は()()であったと言えるだろう。

 生け捕りとなると、“超振動波ゼロシュート”のような、敵が確実に絶命するような手段は取れない。ゴモラは的確に指示を理解出来る怪獣だからこそ、そこを意識してしまった。

 ましてやこのレッドキングは飛び道具こそ持たないが、だからこそ近接戦闘特化かつ、自分と同等以上の怪力と体力、戦闘センスを誇る。故に、半端に手加減出来るような相手ではない。

 

「ピギャアオオ!」

「キシャ!?」

 

 そして何より、相手の方は手加減をしてくれないのである。

 アロルム星人の言葉を理解出来る知能がレッドキングにはなかったし、そもそも向こうの小さな生き物の言葉(鳴き声)など気にもしていなかっただろう。だがそんな彼でも、この時点からゴモラに何処か躊躇いのようなものが生まれたのは敏感に感じ取った。

 その攻防の中の一瞬の隙を突いて、両手でゴモラの角を掴む。そしてなんとそのまま古代怪獣を頭から持ち上げ、滅茶苦茶に振り回した。

 

「うおっ!? な、なんて奴だ!」

 

 ゴモラを軽々振り回すこのレッドキングの怪力は予想以上であり、これにはアロルム星人も心底仰天する。ゴモラもまた自分と同等の怪力の持ち主とは戦うのは初めてで戸惑うと共に、なす術もなく振り回されている。

 そうして思う存分振り回したところでレッドキングは両手を放す。そのままゴモラは投げ飛ばされ、ちょうどナドキエがレイオニクスの遺体を捨てる予定だった崖のすぐ直前に落下する。

 

「キシャー!?」

「ス…スゴい…」

 

 崖は古代怪獣の体重に耐えきれず崩落しそうになり、落下しそうになったゴモラは必死で這い上がりながら形の変わった崖に慌ててしがみつく。

 闘争に巻き込まれるのを恐れて遠巻きに見ていたナドキエだったが、彼女もまたレッドキングの強さに感嘆していた。

 

(これならゴモラに勝てる…!)

 

 ゴモラに勝てば、アロルム星人を守る者は誰もいない。それからレッドキングが彼も始末してくれれば、自分はすぐに自由の身である。

 その気持ちを反映してか、ナドキエの顔には臆病な彼女らしからぬ悪い笑みが浮かんだ。

 

「!」

 

 一方、そんな従者の表情の変化をエアカーから目撃した主人。今のこの異常な状況に浮かぶ疑問はいくつもあるが、少なくとも彼女の心情というものについては見えた気がした。

 

(あの女め……まさか私が殺されるのを望んでいるんじゃないだろうな……)

 

 このレッドキングとナドキエの関係はさだかではない。少なくともレッドキングはナドキエに従って戦っているようには見えず、ナドキエもまた怪獣に命令する様子は見られない。だとするとたまたまそこに居合わせただけと考えるのが自然だが、彼女は特に逃げようともせず、またアロルム星人を助けようとする様子もない。

 しかしながら、あの邪悪な笑みからして、ナドキエは主人の死を望んでいるように見えた。

 

「今まで良くしてやったというのに。恩知らずめ!」

 

 運転席のアロルム星人は一気に怒気が増す。そう思っているのは彼だけで、むしろ他者から見ればナドキエは哀れとしか言いようないほどに主人に酷使され、さらには度重なる暴行・虐待を受けていた。けれども彼からしてみれば、あんな鈍臭い無能を今まで生かしておいただけ自分は慈悲深いと悪びれないし疑わないだろう。

 

「ゴモラ! 前言撤回だ! その怪獣はこの際殺してもかまわん!」

「!」

 

 レイオニクスバトルで優勝し、レイブラッド星人の後継者となるのを目的とするレイオニクスでありながら、アロルム星人は戦力の確実な増強でなく、目先の怒りの発散を優先した。

 レッドキングは戦力として有用でありながら、獲得の機会をわざわざ放棄したわけであるが、星人は別に戦力獲得の機会はいくらでもあると考えていた。なにせ四次元怪獣ブルトンのせいでこのアロルム星は怪獣の巣窟と化し、さらには宇宙中からレイオニクスが殺到しレイオニクスバトルの会場にもなってしまっている。彼からすれば、別にこの機会を逃したところで特段問題にはならないのだ。

 

「キシャー!」

 

 崩壊しそうになった崖から這い上がったゴモラは、そのまま待ち構えるレッドキングに突進する。しかし体格差を活かしどくろ怪獣はそれを受け止めるも、ゴモラはそのまま頭を持ち上げ頭部の双角で相手の顎をかち上げ、さらには鼻先の角を相手の下顎に当てる。

 

「超振動波だっ!!」

 

 狂喜しながらアロルム星人は必殺技発動を命令する。

 

「それをくらってはダメっ!!」

「!」

 

 ゴモラの鼻先の角が輝き出すが、ナドキエの必死の叫びがレッドキングに届いた。それが功を奏したのか、ダメージが伝わりきる前にどくろ怪獣の右掌底が古代怪獣の横っ面を張って角が離れたことで、必殺技は不発に終わる。

 

「あ…あのアマ~~!! やはりこの怪獣とグルだったのか!!」

 

 バトルナイザーこそ出さなかったが、ナドキエはレッドキングに命令を下し、怪獣はその通りに動いた。少なくともアロルム星人にはそう見えたのだった。

 

「この裏切り者めっ! 無能な貴様を今まで養ってやった恩義を忘れ、怪獣を使って私の命を狙うとは許せん! 貴様も殺してやるぞっ!」

 

 レッドキングを始末した後はナドキエに折檻するつもりであったが、ここで頭に血が上った主人は奴隷の抹殺に方針を切り替える。

 本来、奴隷の中でもペルフェクト星人はその容姿の圧倒的な美しさから本来かなり高価な部類である。もっとも、このアロルム星人は生来の凶暴かつ陰湿さからナドキエを手酷く扱ってはいたものの、それでもまず手に入らない奇貨という認識であった。仮に使い物にならなくなっても転売して元は取れるほどであり、死なせるという選択肢はなかったのだ。

 ところがここに至り、ナドキエは何故か怪獣使いとしてレッドキングを使役しており、一転して自分への脅威と化してしまった。例え極めて希少で売り飛ばせば金になる種族といえど、自分の命を狙う敵となった以上、最早生かしておくことは出来なくなったのだ。

 

「えっ!? い、いや私はそんなつもりじゃ……!」

 

 ナドキエは主人の態度の豹変を見て、ここでまたいつもの臆病さが顔を出してしまう。確かに主人の死を望んではいたが、あくまで『そうなればいい』程度の話。レッドキングにそう命じたわけでも、誘導したわけでもない。どくろ怪獣が戦意を見せたのは、アロルム星人がゴモラを召喚した故である。

 

「ゴモラ! あの女ごとレッドキングを殺せ!」

「! キシャー……」

 

 怒り狂う主人にそう命じられたものの、意外にゴモラは気乗りしない様子を見せた。普段のように即座に襲いかかるのではなく、一旦主人の方を見やり、何処か躊躇う様子を見せたのだ。

 レイの使役していたゴモラの例があるように、ゴモラは単に凶暴なだけでなく、怪獣にしてはある程度高い知性や感情があり、同時にそれなりにプライドというものも持っていた。戦意のない小さな生き物を殺せという主人の命令は、彼には承諾しかねるものであったのだ。

 

「!………………グウウアアアアオオオオ!!!! グウウアアアアオオオオ!!!!」

 

 そんなゴモラを見て、レッドキングは天に向かって強烈な咆哮を上げる。しかしこれは威嚇というよりは、何らかの“宣言”にも似た音量と長さを誇るものであった。

 

「………………」

「ん!?」

 

 レッドキングの“宣言”を聞いた途端、ゴモラは敵を睨みつける。先ほどまでとは違い、明確な“敵意”である。

 

「な、何?」

 

 前回と違い、今回は距離を取っていたため、ナドキエは吹っ飛ばずに済んだ。さらには、臆病さが顔を出したことがかえって功を奏し、慌てて耳を塞いで地面に伏せていたため、聴覚も無事であった。

 ……しかし、ここで急に地面が振動し始めたことでさらに恐怖・動揺しながら、辺りを忙しなく見回している。

 

「キシャー……」

 

 レッドキングへ明確な敵意を見せたゴモラだったが、そんな中急に発生したのは辺り一帯の地面の振動。この異常事態に、ゴモラは敵主従の始末よりもそちらへの警戒・対処を優先する。

 

「キュオオロロ」

 

 ほどなくして、その原因となる存在がちょうどゴモラとレッドキングの間の地点の地表を突き破ってその姿を現す。

 

「キュオオロロロロ!!」

 

 幻視怪獣 モグージョン

 

 モグラのような見た目をした地底怪獣。ただし、その戦闘能力は地底怪獣の中でも指折りのもので、他種の地底怪獣を常食し、地底に餌がなくなれば地上に進出し家畜や人間を含んだ地上生物をも襲撃するほどの貪食で知られる。

 鋭く長大な爪の生えた大きな手と、細長い吻はモグラによく似ている。その他、頭部は(ノミ)のような多数の突起に覆われた厳めしいもので、蛇腹状の体表をした腹部と長い尻尾に、背中に生える複数の長い棘、無数の小さな瘤が寄り集まった体表の手足を持つ。また手は桃色、腕と足は青もがかった黒、腹部はクリーム色と、地底生物の割には派手な色彩。

 腕は伸縮自在であり、意表を突いた攻撃が可能な他、頭部の無数のトサカは回転させて斬りつけることも出来る。しかし最大の武器は掌の肉塊状の発光器官であり、ここから特殊な光を放って見た者に幻覚を見せて動きを封じることが可能。

 

「キシャアアアアオオオオ!!」

 

 新たに現れた敵はモグージョン。その姿を見た途端、今度はゴモラはレッドキングよりもこちらに敵意を向けた。

 

「何だこいつは!? レッドキングが呼び寄せたのか!?」

 

 新たに現れた怪獣に驚くアロルム星人。出現時にバトルナイザーは介していないため、どうやらナドキエとは無関係のようではある。とはいえ、ゴモラの警戒具合からして、こいつが敵であることは明白。

 

「キュオオロロロロ!!」

「キシャアアアアオオオオ!!」

 

 明確な敵意を向けるゴモラはモグージョンに突進を仕掛ける。幻視怪獣もこのイキの良い獲物を捕食すべく、両手を前に向け閃光を放った。

 

「キュオオ!?」

 

 しかし、ゴモラはそのタイミングで尻尾版浴びせ蹴り【大廻転打】を発動。閃光を躱しながらおもいきり尻尾を敵の脳天目がけ叩きつけた。

 まさかの頭部直撃に、古代怪獣をいつもの餌と同様に甘く見ていたモグージョンは気が動転。棒立ちになったところで目の前に転がり込んだゴモラに右前蹴りを腹に叩き込まれ吹っ飛んだ。

 

「きゃ!?」

 

 そうして三つ巴となったかと思われた戦いにナドキエは伏して怯えるしかなかったが、ここで一騎打ちから逃れたレッドキングが彼女を右手でひょいと拾い上げ、この場から逃げようとする。

 

「あっ! あ、あのアマ!!」

 

 幸い、こちらも閃光の被害は何とか逃れていたアロルム星人だったが、逃げようとする奴隷と怪獣に気づく。バトルをゴモラに任せ、エアカーで追いかけた。

 

「…あの怪獣はあなたのお友達?」

「グオ………」

「…違うのね」

 

 逃げながらナドキエはレッドキングに問いかけたが、彼の素っ気ない態度が答えの全てであった。なるほど、これで得心がいった。あのモグラのような怪獣は友達どころか敵なのだろう。

 ナドキエは知らなかったが、あのモグージョンという怪獣は極めて凶暴かつ貪食な地底怪獣で、自分の特殊能力を用いて他種の地底怪獣を無力化して餌としている。当然、同じく地の底に棲む怪獣であるレッドキングやゴモラとは完全な敵対関係であり、ゴモラが姿を見た途端即座に襲いかかったのもまた当たり前と言えばの話ではある。

 しかし、何故そもそも地底怪獣であるモグージョンがいきなり現れたのか?――それはレッドキングの咆哮による“縄張り主張宣言”のせいだった。

 モグージョンは地下生態系の頂点だけあり、それだけにプライドが人一倍高いのだが、そこへいきなり何処の馬の骨とも知れぬ輩に付近一帯の縄張りの領有を宣言されて無視出来るはずがない。地下で聞きつけてすぐ怒り心頭で地上に飛び出してきたところで、同じく宣言に苛立つゴモラと鉢合わせれば、元々捕食-被食関係にある地底怪獣同士。ぶつかり合うのは当然の帰結である。

 そして驚くべきは、この事態をレッドキングが()()()()()()()()()()ことだ。レッドキング種は知性が低いという見解が一般的で、それを証明するような行動記録も多々ある。ところが、このレッドキングはその常識に反し、わざとモグージョンを呼び寄せてゴモラにぶつけ、自分とナドキエが逃亡する隙を作った。まさに今までの常識を覆す、驚くべき狡猾な策を実行したのだ。

 

「逃がすかーっ!」

 

 しかし、ゴモラの足止めには成功したが、アロルム星人は怒り心頭でエアカーのアクセルを全開にして追いかけてくる。

 

「!」

 

 そんな小さい者の存在に気付いたレッドキングは鬱陶しそうに尻尾を横に振る。彼にとってはなんてことのない動作でしかないが、人間大の者にとってはそれだけで致死的な威力を誇る攻撃である。

 

「うおっ!? ク、クソッ!」

 

 慌ててハンドルをきり、慌ててレッドキングの尻尾を躱す。だがその勢いを逆用し加速すると、エアカーはレッドキングの前へと先回りする。

 

「逃げられると思うなよ!」

 

 アロルム星人はバトルナイザーを掲げ、ナドキエごとレッドキングを仕留めるべく、バトルナイザーから次の手駒を召喚する。

 

『バトルナイザー、モンスロード!』

「ピャララロロロロ」

 

 さぼてん超獣 サボテンダー

 

 かつてウルトラマンエース、ウルトラマンタロウが戦った超獣の別個体。異次元人ヤプールがサボテンとハリネズミを合成して作った超獣である。

 全身緑色であらゆる所に棘が生えているという、まさにサボテンが怪獣化したような見た目が特徴。特に頭部から脊椎・尻尾にかけては棘が1列に生え揃い、尻尾の先端と手と足先には特に棘が密集し殺傷力を高めている。また体の正中線から生える棘は自在に射出・装填が可能な飛び道具であり、他には長い舌で相手を絡め取ることも出来る。

 本個体は四次元怪獣ブルトンがアロルム星に召喚したもので、それをアロルム星人がゴモラを使ってなんとか打倒して捕獲したもの。

 

「は、初めて見た…」

 

 主人がゴモラ以外の戦力を持っていたことはナドキエも知らなかったため驚愕する。しかし、呆けている暇はない。

 

「ピャララロロロロ」

「グオ!?」

 

 サボテンダーは体の正中線に生える棘を早速射出。幸いそこまで弾速は速くないため、レッドキングは慌てて身を翻して躱すも、ナドキエは振り落とされそうになり、慌てて右手にしがみつく。彼女の危機に気づいたレッドキングが一旦動くのをやめると、好機と見たサボテンダーは突進を仕掛け、どくろ怪獣に組み付く。

 

「~~ッッ……」

 

 敵が思うように動けぬのをいいことに、組み付いたサボテンダーの全身の棘がレッドキングにくい込む。今思うように動けばナドキエが振り落とされるため、レッドキングは健気にも歯を食いしばって耐えた。

 

「しかし所詮は悪あがきだ!」

 

 主人がせせら笑う通り、今のままではナドキエとレッドキングの死は目前である。

 

「ピギャオオ!」

「………きゃああああ~~~~ッ!?」

 

 しかし、ここで何を考えたのか。レッドキングは大切に手に置いていたナドキエを突如天高く放り投げ、彼女は甲高い悲鳴を上げながら真上へと飛んでいく。

 

「フン、ナドキエは諦めたか――なぁっ!?」

「ピャララロロ!?」

 

 乱心したかと思われたレッドキングだが、おかげで手は自由になった。そして、そのままサボテンダーの頭の両側を万力の如く両掌で全力で挟む。

 超獣に勝るとも劣らぬパワードレッドキングの凄まじい腕力で頭を押し潰されそうになったサボテンダー。当然抵抗しようとするも、痛みを感じないはずの超獣という生き物でありながら襲い来る凄まじい圧力による激痛で動けなくなり絶叫を上げる。そして直後、頭部はそのまま濡れた紙箱の如くグシャッと潰れ、脳天と後頭部から脳味噌を勢いよく噴出。

 

「ピャガッ」

 

 サボテンダーはそのまま後ろに倒れて痙攣すると、二度と動かなかった。こうして、超獣は哀れにも真の力を見せる間もなく、召喚されてすぐに絶命したのだった。

 

「あうっ!………乱暴すぎるよ……」

 

 遅れて空から落下してきたナドキエを、レッドキングは優しくキャッチする。さすがに予告なしで天空に放り投げられて死を覚悟していたようであり、ナドキエは命を拾いながらもまず第一声はレッドキングへの文句であった。

 

「なっ……なっ……」

 

 ゴモラと並ぶ奥の手の超獣の瞬殺・絶命という事態にアロルム星人は信じられず茫然自失となる。彼がナドキエと同じく地球人型種族であったなら、それこそ顔面は蒼白となっていただろう。

 唯一、不幸中の幸いと言うべきは、彼がレイのような実力あるレイオニクスではなかったことか。だから“真のレイオニクスバトル”の発動はなく、サボテンダーの死は彼とリンクしなかった。

 だがそれでも、そこらの怪獣に自分の超獣が簡単に殺された事実はショックであった。

 

「………………」

 

 一方、ゴモラは同僚があっさり戦死したのが見えたにもかかわらず、特に気にする素振りは見せなかった。

 やはり怪獣と超獣では解り合えない部分があったのかもしれない。

 

「キュオオロロ」

 

 むしろサボテンダーの死に関心を寄せたのはモグージョンの方である。他種の地底怪獣を捕食するという生態から、サボテンダーの死体は労せず目の前に現れた上等な餌であった。

 だが、ここでつい気を取られたのは失態であると言えよう。確かにモグージョンは地底生態系の頂点ではあるが、相手はかの古代怪獣ゴモラ。これもいつも通り餌と考えているが、油断すれば逆に殺される相手であることはいまいち実感していなかった。

 

「キシャー!」

 

 よそ見していたモグージョンにゴモラは再び突進。今度こそはとモグラ怪獣は両掌から閃光を発するが、これをゴモラはスライディングに切り替えて視線を足元に伏せたことで躱す。そうして、そのまま敵の足元に滑り込んだところで、倒立気味に尻尾を持ち上げ、そのままモグージョンの脳天に再び尻尾を叩き込む。

 

「キュオオ!」

「キシャー!?」

 

 しかし、今回はやられっぱなしではない。モグージョンは脳天に叩き込まれた尻尾にトサカを回転させて切りつけ反撃する。ゴモラの尻尾は柔軟に動く分神経が多く、同時に痛覚もかなりあるため、思わぬ反撃に怯んだゴモラは後ずさる。

 

「キュオオロロロロ!!」

 

 三度目の正直とばかりにモグージョンは掌の閃光を放ち、ついにゴモラがこれをくらってしまう。

 

「クソッ、しまった!」

 

 さすがに知的生命体だけあり、あまりに閃光を乱発する敵に不審さを覚えていたアロルム星人。敵の攻撃の発動タイミングを見切り、目を伏せはしたものの、ゴタゴタしていてゴモラにその情報を伝えるのを失念していた。結果彼は助かったがゴモラはモロに閃光を浴びてしまい、ついに幻覚を見てしまう。

 

『ヴァ~~~~』

「キシャアアオオ!!??」

 

 ゴモラが見た幻覚は『自分と同じ大きさに巨大化したアロルム星人』であった。こんなものを見たからには、今は大人しく従ってはいても実際にはゴモラは主人に嫌悪感を抱いていたのは明白である。

 

「うおっ!? や、やめろ暴れるな!!」

 

 巨大化した主人に襲われる幻影に苛まれ、狂乱して地団駄を踏みながらゴモラは暴れる。ナドキエ達を追いかけた主人は離れていたからそもそも巻き込まれない位置にはいたが、今のままではモグージョンに餌として喰われるのを主人は理解していた。

 

「キュロロ!!」

「キシャー!?」

 

 案の定、喜んでモグージョンはゴモラの首筋に噛みついてきた。それでも運良く頸動脈の負傷は避けられたが、このままでは喰い殺されるのは時間の問題であろう。

 

「世話の焼ける奴め!」

 

 サボテンダーに加えてゴモラまで失ってはたまらないと、アロルム星人は一旦ナドキエの追跡を断念。代わりに自身の搭乗車がナドキエの乗るエアカーと同じ装備なのを活かし、ガンランチャーをゴモラの背中に向けてロックオンする。

 

「発射!」

「キュロ!?」

「キシャー!?」

 

 ガンランチャーに装填されたの砲弾は2発。1発目の徹甲弾はモグージョンの頭部、そして2発目の電撃弾はなんとゴモラの背中に命中する。

 徹甲弾は頭部のトサカに阻まれ、モグージョンに致命打を与えるには至らないどころか、これによりモグージョンは標的をアロルム星人に変える。しかし電撃弾の方はゴモラに上手いこと“気つけ”となり、なんとかゴモラの意識を現実へと引き戻した。

 

「キシャー!」

「ギュボッ!」

 

 正気を取り戻したゴモラは首の痛みに気づいて無理矢理モグージョンを引き剥がし、顔面に左掌底を叩き込む。一方、モグラ怪獣も負けじと左手でゴモラを張り倒す。

 

「やって!」

「ピギャアオオ!!」

「!? うわあっ!」

 

 ナドキエとレッドキングも敵の闘いを見ながら様子を窺っていたが、ここでアロルム星人の意識が向こう側に向いたのを見て、千載一遇の好機と考えた。

 ナドキエに言われるまでもなく、レッドキングは岩を投げつけ、アロルム星人のエアカーを攻撃。岩は車体後部に落下し、そのままグシャグシャに破壊してしまう。

 足を潰せば、アロルム星人がナドキエ達を追いかけるのには時間がかかる。それを計算してのものだった。

 

「さよなら!」

 

 主人にそう一言告げてナドキエ、彼女を右手に持ったレッドキングは走って逃げてしまった。

 

「キシャアアアアオオオオ!!」

「キュロロオオオオ!!」

 

 一方、ゴモラはもうそれどころではなく、モグージョンと激しい殴り合いを展開していたのだった。そして、アロルム星人は奴隷が逃げるのを最早見ているしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「ここよ」

 

 レッドキングに指示を下し、ナドキエは主人達よりかなり早く研究所へと戻ってきていた。本来レイオニクスでもない者が見ず知らずの怪獣と意思疎通を図るなど大分難易度が高いはずなのだが、ナドキエはその辺で才能があるのか、比較的スムーズに事態を進めていた。

 

「ここで待っていて。私は()()()()があるの」

「グウ」

 

 そう怪獣に告げて、ナドキエは研究所に入り、最下層にある実験室へと向かう。

 

「ッッ……」

 

 主人は冷酷で残忍な反面、非常に不用心だった。ナドキエが臆病だからこそ必ず言いつけを守ったのをいいことに、最重要区画にもかかわらず扉には鍵をかけていなかったのだ。

 

「………………」

 

 主人が不用心なのは機械の操作についてもだった。ナドキエは扉の窓越しに主人の機械の操作を盗み見ており、初歩的な動かし方は学んでいたのである。

 

『御用ヲオ申シ付ケクダサイ』

「……私の体にレイオニクスの遺伝子を注入して!」

『カシコマリマシタ』

 

 そして、手術機器を音声認識によるオートモードに切り替える。自分しか操作しないとタカをくくっていたからこそ、音声認識についてもナドキエの声でも反応するザルさであった。

 

『服ヲ脱イデクダサイ』

 

 ナドキエはオートオペマシーンの指示に従い、服を全て脱いで手術台の上に寝転んだ。

 

 

 

 

 

「………!」

 

 

 何かに気づいたレッドキングは空を見上げる。まだ夜にもなっていないにもかかわらず、空にはいつの間にか不気味な緑色のオーロラが煌めいていた。

 同時にアロルム星の衛星軌道上で小さなワームホールが開くと、そこから灰白色の球体が無数にそこから出現。そのまま惑星全土の空へと群れは迅速に散っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルトラマンダイナの活躍により、ネオフロンティアスペースから撤退した()()。しかし逃げ込んだ先の新たな次元宇宙を拠点とし、長い時間をかけて以前以上に勢力を盛り返した。そして彼等自身の()()を叶えるべく、各次元宇宙への侵攻を開始。その魔手はここM78スペースにも伸ばされた。

 それに呼応するかの如く、既にこの宇宙の各地でレイオニクスバトルが再び勃発。転移してきた怪獣とレイオニクス達により破壊と殺戮がもたらされ、被害を被った人々の悲しみ、恐怖、憎悪、怨念といった負の感情によるマイナスエネルギーは最高潮に達しようとしていた。

 そしてそんな時だからこそ、彼等は現れた。『心があるからこそ争いが生まれる』、『全ての生命が一つになれば、争いはなくなる』――それを是とし、絶対とする彼等がこの星にも現れたのは必然だったのかもしれない。




用語解説

 幻視怪獣 モグージョン
 
 ユーモラスな外見とは裏腹に、地底生態系の頂点に立つ凶暴かつ貪食な肉食性の地底怪獣。他の地底怪獣を常食しており、移動時に使っていた穴は餌にしたと思われる地底怪獣マグラーを始めとする怪獣の骨が発見されている。また、地底に餌がなくなると今度は人間を含む地上生物を襲うようになるという非常に危険な怪獣である。
 モグラのような細長い吻、ノミ状の鋭い突起で覆われた頭部、鋭い5本爪の付いたモグラのような手、蛇腹状の腕、長い尻尾などが特徴。地底怪獣であるが頭部、四肢、胴体中央はそれぞれ異なった色合いで割と派手な見た目をしている。
 蛇腹状の手は伸縮自在で、意表を突いた攻撃が可能。トサカも回転鋸のような回転して切りつけが可能と遠近共に隙がない。しかし1番の武器は両掌の肉塊状の部位から放つ閃光。これは見た相手の脳の扁桃体を刺激し、苦手とするものの幻覚を見せる効果がある。これは非常に強力な作用を持ち、訓練を受けた者が高い精神力をもってようやく打破可能というレベルであるが、大抵の者は抗しきれずそのまま喰われてしまう。
 本個体は四次元怪獣ブルトンによりアロルム星に召喚された。ちょうどアロルム星人の研究所近くの地底を拠点としており、付近一帯の地下の地底怪獣を能力を利用して喰い付くし、餌がなくなったので今度はレイオニクスやその使役怪獣を襲っていた。
 しかし最近は収穫がなく空腹で苛立っていたところ、ゴモラとレッドキングの闘いにおいて、レッドキングの縄張り主張宣言を聞き、怒って地底から飛び出してきた。そこで目についたゴモラに襲いかかり、危うく捕食しかかった上、サボテンダーの死体に関心を示すなど、恐ろしい暴れぶりと捕食者ぶりを見せた。

 さぼてん超獣 サボテンダー

 かつてウルトラマンエース、ウルトラマンタロウと戦った超獣の別個体。異次元人ヤプールが超獣合成装置でサボテンとハリネズミを合成して作った。
 全身緑色をした、手足の付いた二足歩行のサボテンのような姿をしている。ただし針自体はかなり太く、そちらはハリネズミの要素が出ている。他には内側に鋭い棘の生えた口、赤い目、拳と爪先に密集した針、体の中心線に生えた1列の針が特徴で、合成前のどちらにもないはずの長い尾も生えている。中心線の棘は自在に飛ばせて飛び道具となり、戦闘機を撃ち落とす精度を誇る。ちなみに棘はエースが普通に体を殴っていたことから、攻撃面ではともかく防御面では意外に役に立っていない模様。長い舌を伸ばすことも出来、これで相手を絡め取る。
 町中に出現し、エースにメタリウム光線でとどめを刺されそうになるが、その時は青い煙と共に消え去る。その後は普通の鉢植えサボテンに化け、サボテン売りの露天商の息子に拾われるが、夜な夜な人間や家畜を襲って捕食しエネルギーを蓄えていた。その後自分を自動車で轢きそうになったカップルを捕食しようとしたところをTACに見つかり確保される。宇宙昆虫ノコギリンの例からその轍を踏まないよう宇宙空間で始末されることになったが、そこでスペースミサイルで攻撃されるも死なずに巨大化する。
 エースとの再戦時は丸まっての攻撃や棘からの閃光などで苦しめるが、舌をダブルビームで焼き切られ形勢逆転。丸まって再度逃亡を図るも、サーキュラーギロチンで四つ裂きにされ、遺骸は地面に叩きつけられた。
 その後タロウの地球防衛時代、改造巨大ヤプールに送り込まれた改造個体が改造ベムスターの支援のため改造ベロクロン二世と共に出撃するも、あっさりタロウに叩きのめされストリウム光線でとどめを刺されたのだった。
 本個体はアロルム星に召喚された個体をアロルム星人がゴモラと闘わせて捕らえたもの。ナドキエとレッドキングの始末のため、追いかけてきたアロルム星人に召喚されるが、レッドキングに組み付いた後は頭を万力のように両手で押し挟まれ、そのまま頭部を潰されあっさり死亡してしまった。
 超獣だけあってアロルム星人もかなり期待していたようだが、秒殺されたことにはショックを隠せなかった。また仲間のはずのゴモラからは超獣であったためか内心かなり嫌われていたようで、その死に何ら感ずるところはなかったようである。
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