惑星アシヨシにやって来たレイオニクス達の中には切実な事情を抱えている者もいる。レイブラッド星人の後継者の座を望むのは単なる欲望や、あらゆる力への渇望からではなく、個人あるいは種族特有の事情が絡んでいる場合もあるのだ。
――どこかの森――
「♪~~」
森の中の小川のせせらぎに混じり、美しい歌声が響き渡る。
「♪~~」
沢の岸辺の岩に腰掛け、女が唄を歌っていた。
「キュ~~♪」
そしてそのすぐ隣で沢の冷たい水に浸かりながら、幼体と思しき小さなーーといっても10mぐらいはあるがーー怪獣が機嫌良く唄のリズムに合わせ、体を揺らしている。
「キュ~~♪」
蛸怪獣 ミニガイロス
かつて地球に出現し、ウルトラセブンと戦った蛸の怪獣。立ち上がった人型の黒い蛸とでも言うべき姿をしており、吸盤の付いた8本の触手で船を襲撃し、ウルトラセブンと海で二度の死闘を繰り広げた。
ただしこの個体はまだ幼体。当然ウルトラマンや他の怪獣と戦えようもない。
「♪~~」
地球原人 ノンマルト(RB)
マスクメロンのような皺に覆われた薄緑色の頭部に落ち窪んだ両目が特徴的な、かつて人類によって海底に追いやられたという種族。本当の地球人は自分達であり、人類は侵略者であると主張する。
追いやられた海底で文明を築き繁栄していたが、人類の魔の手が海底にまで伸びたため、自分達の今後の生存権を懸けて人類への攻撃を決意。怪獣ガイロスを操り戦艦や潜水艦を強奪、漁港と町に攻撃を仕掛けた。
これらをきっかけにウルトラ警備隊から反攻を受け海底都市は壊滅、海は人類の物となった。そして彼等の主張が真実だったのかどうかも闇の中となってしまった。
「♪~~」
ウルトラ警備隊によって殲滅されてしまったノンマルトであったが、極僅かだが生き残りは存在していた。彼等はどうにか人類の探索の目をやり過ごし、その子孫達も雌伏の時を過ごし続けた。
そして遥かな時は流れ、人類は宇宙時代を迎えた。だが、ノンマルトは常に人類からの発見、攻撃を恐れ、目を避けながら細々と暮らさざるをえなかった。
あれから数千年が経った今でも勢力の回復など見込めず、科学技術を増々発展させていく人類とは裏腹にこちらは文明・技術の進歩などもなく、人口も文明も現状維持が精一杯である。
「キュ~~♪」
このままノンマルトは何も出来ぬまま衰退し滅びるのを待つだけかと思われた――が、そこでレイブラッド星人からの接触があった。そうして、現在の首長の娘である彼女がレイブラッド星人の遺伝子を与えられレイオニクスとなったのだ。
彼女は滅びゆく種族の期待と未来全てを背負い、悲壮な覚悟をもってこの惑星アシヨシでのレイオニクスバトルに臨んでいる。
「♪~~」
しかし、そんな彼女も時折ミニガイロスに唄を聴かせることがあった。
レイブラッド星人の後継者の座を懸け競い合う敵が多数いる環境の中、無防備とすら言えるこの時間であった。だが、地球に酷似した星ではあってもそれでもここは遥か遠い異星、時折深い寂しさを感じることがあった。故に、得意な唄を歌うことはそれを紛らわす唯一の方法にして楽しみと言っても過言ではなかった。
「シギャアアアア!」
「!」
「キュ?」
凶悪なレイオニクスや狂暴な怪獣の戦いが繰り広げられる殺伐とした日々の中での、僅かだが穏やかな時間。しかし、それも森に響き渡る怪獣の唸り声によって唐突に終わりを告げる。
即座に歌うのをやめた彼女は腰のホルスターからレーザーガンを抜き、付近を警戒する。
「キュ~?」
「ごめんなさいね、ミニガイロス。今日はもうおしまい」
まだ幼い故か事態を呑み込めていないミニガイロスに主人は詫びる。
「バトルナイザーに戻ってね」
ミニガイロスを回収しようと、幼獣にバトルナイザーを向けた。
「なんだ、そいつは戦わないのか?」
「!」
声のした方にレーザーガンを向けるが、誰もいない。
「フォフォフォフォ!」
森の中に不気味な笑い声が響く。
「ここでお互い戦うのも悪くはないが、我々はレイオニクスだ」
「怪獣同士を戦わせるのが筋ってものだろう?」
「まぁ、オレの方が勝つがね」
「………!?」
声はそこかしこから響き渡り、敵の位置を特定出来ない。
「フォフォフォフォ!」
「キュ!」
「!」
ミニガイロスが触腕の一つを向けた方向に、ノンマルトはレーザーガンを撃つ。
「フォフォフォフォ! おぉ、危ない危ない!」
レーザーは木に当たり、幹をぶち抜く。そのまま木はメキメキ音を立てて半ばから倒れた。そうして残った木の幹から灰色の体色をした宇宙人がひょっこり顔を覗かせる。
「そっちのはガキかと思っていたが、さすがに甘く見すぎていたか」
分身宇宙人 フリップ星人(RB)
かつてウルトラマンレオと戦った宇宙人の別個体。赤い目、象のような耳、同じく象の長い鼻に似た口を持った灰色の体の宇宙人で、分身能力を持つ。
集団行動を極端に嫌い、各自が単独でよその星に侵入しては破壊活動を行なっているという傍迷惑な性質の宇宙人。ただし動きは身軽な上、テレポートと得意の分身能力により侮れない戦闘能力を見せた。
そんな傍迷惑な種族の端くれである彼だが、夢はレイブラッド星人の後継者となり全宇宙を支配することである。
「まずはそいつから殺った方がいいかな?」
やり方は分からないが自分の撹乱を見破ったミニガイロスを警戒し、フリップ星人は彼を指差す。
「このっ!」
怒ったノンマルトはフリップ星人に向けてレーザーガンを再び撃つが、光線はなんと彼の体をすり抜けてしまう。
「フォフォフォフォ! どれが本物だと思う?」
「オレかな?」
「いやオレだよ!」
「オレオレ!」
フリップ星人は既に何体にも分身しており、全員が思い思いの体勢を取りながら、嘲笑うかの如くノンマルト達の周りに現れては消える。
「キュ…」
先ほどは幼く非力な生き物特有の危機感知能力によってか本体を当てたものの、フリップ星人の今度の撹乱は素早い身のこなしとテレポートも織り交ぜた高度なものであったせいか、ミニガイロスも今度は翻弄されていた。
「フォフォフォフォ! このまま手出しもさせずに皆殺しにするのも可能だが、それはそれで一方的すぎて面白くはない。
だからいいぜ、お前の怪獣を出しても! そいつはあくまでペットか何かで本命じゃないだろう?」
フリップ星人はミニガイロスがノンマルトの本命の怪獣でないことをひと目見た瞬間に分かっていた。
そして実力に自信があるのか、あえてそれ以上の攻撃をせずノンマルトに怪獣を召喚するよう促した。
「……もう出しているわよ」
「ほう! やはり
ノンマルトの返答に、フリップ星人はかえって得心が行ったらしい。そんな中、轟く足音が段々近づいてくる。
「シギャアアアア!!」
「遅いわよ!」
そして彼等の真上を怪獣の顔が覗き込む。
「シギャアアアア!」
守護神獣 ザバンギ
かつて別個体がウルトラセブンと戦った、ノンマルトの守護神と呼ぶべき怪獣。口から吐く強力な破壊熱線を武器とするが、身体能力自体も非常に高い。カプセル怪獣ウインダムのレーザーが直撃しても大したダメージにならず、カプセル怪獣ミクラスの怪力をそれ以上のパワーで圧倒、角をへし折り両者を撃破している。
守護神獣というだけあり、首長の娘である彼女にノンマルトという種族の威信と未来を懸けて託された。だが、元々彼女とはレイオニクスになる前から祖父と孫娘のような関係であり、家族同様の固い絆で結ばれている。
「フン、囮に撒いておいた分身は無視してこっちに来たか」
「シギャアアアア!」
囮として撒いておいた分身に先ほどまで翻弄されていたためかザバンギは怒り心頭、踏み潰そうと右足をフリップ星人に振り上げる。
「ミニガイロス!」
「キュ!」
小川に浸かっていたミニガイロスは水平の姿勢となり、そこにノンマルトはすぐさま飛び乗ると、幼獣はそのまま素早く泳いでザバンギの足から逃げる。
「ほぉ、さすがに自分の怪獣に踏み潰されるほど素人じゃあないか」
「シギャアアアア!」
呑気に感心しているフリップ星人だが、そこへザバンギはおもいきり右足を叩きつけた。
「残念、オレはそこじゃない」
そう皮肉げに呟く通り、ザバンギの足の真隣にフリップ星人は立っていた。
「一方的な虐殺もワンサイドゲーム過ぎてつまらんが、オレがひたすら狙われるばかりってのも面白くはない。ここらでオレも反撃に移るとしよう」
フリップ星人もバトルナイザーを取り出し、天に掲げる。
「いけ!」
『バトルナイザー、モンスロード!』
バトルナイザーから光が放たれ、それが怪獣の形へと変わる。
「ゲァアアアアアア!!」
一角紅蓮超獣 バキシマム
異次元人ヤプールが芋虫と宇宙怪獣を合体させて造った一角超獣バキシムがさらに強化改造された超獣。
重厚だったバキシムの体はさらに炎を思わせる意匠が加わり、角は刃を思わせる形状に、両腕は強力な火炎を発射するバーナーユニットへと変化している。さらには武装だけでなくあらゆる能力も向上しており、超獣の中でも最強クラスの存在である。
「あれはバキシム!?……いや、違う…!」
召喚された超獣を見て驚愕するノンマルト。彼女はバキシマムの存在を知らなかったが、バキシムとの外見の類似から強化型であることにすぐ気づいてしまった。
「ゲァアア!」
「ギャオッ」
挨拶代わりとばかりに、現れたバキシマムはザバンギの顔を右手でぶん殴る。超獣のあまりのパワーに、ザバンギは短い悲鳴を上げながらぶっ飛んだ。
「ギュゥ~~………」
そのまま地面に叩きつけられ、痛そうに呻き声を上げる。
「ゲァアアアアアア!!」
「フォフォフォフォ!」
ザバンギが一発でグロッキー状態になったのを見て、フリップ星人は高笑いを上げる。
「フォフォフォフォ! その怪獣もなかなか強いみたいだが、オレのバキシマムには勝てんよ!」
フリップ星人はバトルナイザーでザバンギの概要データを取得し、強い怪獣だと把握した。だが、それでも自身の使役超獣であるバキシマムには敵わないと断言する。
「く……!」
ノンマルトは悔しそうに歯噛みする。超獣は怪獣を上回る強さを持つ上、ただでさえ超獣でも上位の強さを誇るバキシムのさらに強化種が出てくるとは夢にも思わなかった。
「ザバンギ! 立って!」
「キュー!」」
「フォフォフォフォ!」
懇願するようにそう叫ぶノンマルトとミニガイロス。一方、その様子を余裕ありげに眺めながら、フリップ星人はザバンギ同様に敵レイオニクスのデータをバトルナイザーで検索する。
「ほぉ! 今まで見たことない種族だと思っていたが、お前はまさかあのノンマルトだったとはな!」
「!」
検索はすぐに完了し、敵がどういう種族なのかをフリップ星人は知る。
「フォフォフォフォ、思い出したぞ! ノンマルトといえば、地球の人間どもに滅ぼされかけたという前代未聞の恥を宇宙中にさらした情けない弱小種族だったっけなぁ!!
そんな奴等がレイオニクスになってこの星へ何しに来たんだ? まさかレイブラッド星人の後継者になろうなんて言うんじゃないだろうなぁ!?」
フリップ星人はノンマルトの姿形こそ知らなかったが、ノンマルトに起きた悲劇そのものは知っていた。しかし、凶悪宇宙人である彼にとっては『あんな遅れた文明の地球人達に滅ぼされかけた、さらに劣った連中』という程度の認識でしかない。憐れむどころか侮蔑の対象であったのだ。
「レイブラッド星人の後継者になったところでどうするつもりだ? その力で人間どもを滅ぼして地球を奪い返すつもりか?」
「………そうだけど?」
フリップ星人の問いかけに渋々そう答えるノンマルト。
「フォフォフォフォ! 図星だったか! しかし、お笑い草だなぁ!
お前みたいな地球人にも劣る弱小種族風情が、レイブラッドの後継者になろうなどという身の程知らずの望みを抱いているとは!」
「………………」
地球を人類から奪い返し、再びノンマルトの世界を築く。風前の灯と言っても過言ではないほどに人口も文明も衰退させたノンマルトがその悲願を達成するには、最早レイブラッドの力に頼る以外にはない。
「実に見苦しい。これは現実を思い知らせてやる必要があるだろう」
しかし、フリップ星人はそんな彼等の悲願という名の身の程知らずさが大いに気に入らなかった。
「お前達のくだらん望みなど永遠に叶わん」
「ゲァアアアアアア!!」
「オレとバキシマムによって、今日この場で死ぬからだ!」
倒れるザバンギに咆哮を上げながらバキシマムが迫る。
「シャアア!」
しかし、ここでザバンギはなんとか持ち直し、起き上がる。
「シギャアア!」
そしてすかさず、口から得意の破壊光線を敵にお見舞する。
「ゲァ!」
だが、バキシマムは巨体に似合わず機敏な動きで高く跳躍、光線を回避する。
「ゲァアアアア!!」
「グェ!?」
バキシマムはそのまま落下の勢いを利用し、両腕を振りかぶり、頭上からダブルスレッジハンマーを頭部に叩きつける。さらには追い打ちで、倒れたザバンギを右足でおもいきり蹴り飛ばす。
ザバンギは強烈な回転をしながら地面に何度もバウンドして再び遠くまで吹っ飛び、また倒れた。
「グ……グェァァァァ………」
超獣の強烈な攻撃を受け、ザバンギは先ほどよりもさらに苦しそうな呻き声を上げる。
「フォフォフォフォフォフォフォフォ!! もうちょっと楽しませてくれよ! こっちはまだ飛び道具だって使っていないんだぜ!」
バトルの一方的な展開を見て、長い鼻(口?)を左右に振りながら愉快げに笑うフリップ星人。
「フォフォフォフォ! いやいや、オレのバキシマムに3回殴られ蹴られてまだ息があるだけ持ちこたえている方か!」
しかし、それも時間の問題であった。
「とはいえ、虫の息ではもう遊べん。ここらでとどめといくか!」
これ以上遊ぶ気は起きなかったフリップ星人は、バキシマムにとどめを刺すよう命ずる。
「ゲァアアアアアア!!」
バキシマムは腰を低く落として頭頂部を突っ伏すザバンギに向け、そのまま角ミサイルを発射する。
「ザバンギ――――!!」
「キュ――――!!」
ノンマルトとミニガイロスの絶叫が響く。
「!」
しかしここで、彼女の感情の昂りがザバンギに影響を与えた。
「シギャアアアア!!」
咆哮と共にザバンギは起き上がる――も間に合わず、角ミサイルが胸に突き刺さる。
「フォフォフォフォフォフォフォフォ!!――――フォ!?」
「ゲァ!?」
無駄な足掻きだとせせら笑うフリップ星人だったが――胸に突き刺さった角ミサイルが爆炎を噴射しながらそれ以上進めないのを見た星人も超獣も仰天する。
「シギャアアアアアア!!!!」
守護神獣 ザバンギ(レイオニックバースト)
角ミサイルの突き刺さったザバンギの胸にノンマルトの紋章が浮かび上がると同時に、全身が炎のような閃光に包まれた後、体色が赤みを帯びたものへと変化した。
「まだやれるのねザバンギ! ならやっておしまい!」
「フン、弱小種族のくせにレイオニックバーストが使えるとはな!
だが、それでも! 怪獣と超獣の差は覆せんことを思い知らせてやる!」
レイオニックバーストを見ても尚、フリップ星人はそう断言する。
「ザバンギ! ノンマルトの守護神である貴方の力を見せつけておやり!」
「シギャアアアア!」
胸部で未だ爆炎を噴き続ける角ミサイルをザバンギは右手で掴み、そのまま引っこ抜いてしまう。
「ゲァ!?」
バキシマムの【一角紅蓮ミサイル】は強化前のバキシムの物と違い、一度限りの切り札ではなく、命中後もブーメランのように戻ってきて頭に装着され、何度でも使用出来る武器である。しかし、ザバンギはこの戻ってくるという点を逆用した。
掴んだ角ミサイルをバキシマムの方に向け、勢いを利用しそのまま引っ張られる。それは跳躍、いや飛行と言ってもいいだろう。
角ミサイルと一緒に凄まじい勢いでやって来たザバンギに面食らったバキシマムは、そのままレイオニックバーストのパワーと8万6千tの重さが乗った飛び蹴りを顔面に叩き込まれ、今度は自分が地面に転がった。
「ゲァアアアアアア!!??」
超獣には痛覚や恐怖というものがないと言われている――が、明らかにこのバキシマムは狼狽、痛みで悶絶しているように見えた。
「おい、何やってるんだ!」
「キュー!」
「うぉっ!? 危ねぇ!」
主人の方もまさか自分の超獣が地面を這いつくばることになるとは思わず狼狽えていたところで、隙を見てミニガイロスが口から墨を吐いてきたのを慌てて躱す。どうやら、余裕ぶっていたのと体力の消耗を抑えるために今は分身をやめていたらしい。
「クソガキィィィィ!! お前から殺した方が良さそうだな!」
攻撃されたことでミニガイロスに激昂するフリップ星人。だが――
「あっ!?」
本体には当たらなかったが、手に持ったバトルナイザーの画面とボタンには蛸墨がベットリかかっている。
「これでもう命令は送れないわよね?」
「貴様~~!!」
超獣でなく、自分がこの1人と1匹を手ずから殺すことをフリップ星人は今決意した。
「ちょっとパワーアップしたのと、オレが指示出来なくなったぐらいでバキシマムが負けると思うのか!」
「……あれを見てごらんなさい」
「あぁ!?」
フリップ星人は怒声を上げながらバトルの様子を窺う。
「なにィ!? バキシマムが押されているだと!?」
驚愕する星人。ザバンギはバキシマムの角をナイフ代わりに攻撃を加えている。一方のバキシマムは地力の差が大分埋められた上に接近戦を挑まれ、得意の次元移動も飛び道具を使う暇も与えられず防戦一方となっていた。
どちらの手段も使う際に一瞬の“タメ”が必要なのだが、自身の角を奪って激しい攻撃を加えてくるザバンギには技の隙を尽く潰されており、結局肉弾戦でしか闘えていないのだ。
「超獣は案外“指示待ち”が多いと噂で聞いたけど本当のようね」
超獣は全てではないが、飼い主から常に指示を受けて動く者が多い。生き物である以上は知能が全くないわけではないが、このバキシマムに関しては飼い主から常に指示を受けることに慣れきっていたようだ。だから主人の指示及び支援を受けられない今の状況に混乱しているらしく、動きに精彩がない。
「逆にうちのザバンギは私の指示を受けず、自分で考えて動くことが多いのよ」
一方、ザバンギはノンマルトから簡単な指示を与えられる以外は全て自分で判断して動くことが多かった。このノンマルトとザバンギは主人が幼い頃から絆を育んできた祖父と孫娘のような関係である。だから、ザバンギは言葉で言われずとも主人の意を汲むことが出来るのである。
そして、ザバンギはこのアシヨシに来てから戦闘経験も順調に積んでいた。バキシマムのようにただ能力の強力さで圧倒、何も考えずに勝利してきたのとは違い、それなりに苦戦することも多かった。だからこそ単独でも知恵を働かせ、弱点を分析するなど、常に考えて戦っている。
「初めはどうなるかと思ったけど、勝ちは見えてきそうね」
「キュ!」
ミニガイロスは嬉しそうに体と触腕を揺らす。
「クソがァ! 弱小種族風情がナメやがってぇぇ!!」
バトルナイザーも封じられ、使役超獣も劣勢ときては、フリップ星人の苛立ちは頂点に達していた。
「ルール違反だろうと関係ねぇぇ!!!! 貴様らは絶対にブッ殺す!!!!」
「あ!?」
「キュー!?」
フリップ星人は即座に巨大化し、レイオニクスバトルでの御法度である『レイオニクス自身が巨大化しての戦闘』に踏み切った。
「キュー!?」
「あっ、ミニガイロス!?」
「おいザバンギ! これを見ろ!」
巨大化したフリップ星人はミニガイロスを右手で鷲掴みし、激しい戦闘を繰り広げるザバンギに見せつける。
「ギュア!?」
ミニガイロスが人質ならぬ蛸質に取られたことで驚くザバンギ。
「ゲァアア!」
「グオ!」
動きを止めたため、チャンスとばかりにバキシマムは再び強烈な前蹴りをザバンギに叩き込み、ぶっ飛ばす。
「ギュ~~……」
「フォフォフォフォ!」
ザバンギが再びグロッキー状態に陥ったのを見て笑うフリップ星人。
「バキシマム! なぶり殺しにしてやれい!」
「ゲァアアアアアア!!」
再び受けた主人の指示に安心したのか、バキシマムは喜んでザバンギを打ち据える。ウインダムの攻撃にも耐えたザバンギだが、さすがに超獣の連続殴打にはかなりのダメージを負っていく。
「やめなさい! アンタ卑怯よ!」
「正々堂々戦えなんてルールはレイオニクスバトルにはねぇ! どんな手段でも相手をブッ殺して勝ちゃいいのよ!!」
元々悪名高き種族ではあるが、このフリップ星人はさらにゲスな本性を露わにする。
「フォフォフォフォ! お前も主人ももう終わりだな~~♪」
「キュー!」
「うぉっ!? こっ、このガキャァ!」
そう機嫌良く哀れな蛸質を見つめたが、その途端蛸墨を顔面におもいきりぶっかけられ、視界が奪われる。
「こっ殺して――」
「シギャアアアア!」
視界が奪われた今、分身もテレポートも使えない。ミニガイロス救出のための絶好の機会をザバンギは逃さなかった。
「!? グアアアアアア――――!!??」
ボコボコにされていても放さなかったバキシマムの角。それをナイフ代わりに振りかぶり、フリップ星人の右手に叩きつけ切断する。
「キュ――ン!?」
解放されはしたが、そのまま星人の右腕ごと落下していくミニガイロスを、ザバンギは素早く飛び込んでキャッチする。
「よくやったわね!」
「ゲァアアアアアア!!!!」
喜ぶノンマルトの隣にミニガイロスを降ろすも、背を向けたその隙に、主人を害され怒ったバキシマムの両腕から【紅蓮火炎弾】が発射された。
「ギャオ!」
しかし、バキシマムと違いザバンギは至って冷静であった。
「グァアアアア!!!!」
目が見えず、さらには右腕を失った痛みで未だのたうち回るフリップ星人をザバンギは蹴り飛ばし――
「グア――――――!!!!」
「ゲァ!!??」
火球目がけて叩き込まれたフリップ星人は爆死した。
「ゲァ、ゲァアアアアアアアアアアアア」
自分で主人を爆殺してしまい、バキシマムは混乱、その頭脳にエラーを起こす。
「ギシャアアアア!!!!」
「ゲァアアアア――――――!!!!」
エラーを起こしている以上、最早次元移動能力を使うことなど出来ない。その隙を逃さず、バキシマム目がけザバンギはレイオニックバースト状態での最大出力で破壊光線を叩き込む。そうしてバキシマムも光線の威力に耐えきれず大爆発し、主人の後を追ったのだった。
「~~♪」
「キュ~~♪」
ノンマルトは今日も唄を歌う。一見すれば無防備なその時間だが、彼女がこの星に来て以来、唯一の心安らぐ時だった。
「ギシャアアアア」
彼女が歌う時、いつもザバンギがその近くで見守っている。だからこそ、彼女は安心して歌えるのだ。
用語解説
蛸怪獣 ミニガイロス
かつてノンマルトの手先としてウルトラセブンと戦った蛸怪獣ガイロスの幼体で、現在のノンマルト達がレイオニクスとなった首長の娘にザバンギの補佐として託した。しかし補佐とはいうがレイオニクスの使役怪獣としては実質戦力外であり、あくまで水上の移動手段ぐらいしか役に立たない。
幼い故か純真で健気な性格で、主人の役に立とうと行動する様は主人とザバンギに温かく見守られている。ちなみに手足と触腕の吸盤にある毒は今の時点で健在であり、格上の怪獣にも通用する。
地球原人 ノンマルト(RB)
かつて人類に地上から海底に追いやられた地球の先住民と主張する種族の末裔。ウルトラ警備隊にほとんど滅ぼされたノンマルトだが僅かな生き残りが存在し、彼等の子孫が人類の目を避けながらこの時代まで細々と存続していた。
この娘もその末裔の一人で、現ノンマルト首長の娘であると同時にレイオニクスである。しかし、ミニガイロスとザバンギを託され惑星アシヨシにやって来たはいいが、ライバル達は地球人以上の極悪宇宙人と凶悪怪獣ばかり。そのため、レイブラッド星人の後継者の座など夢のまた夢だと内心気づきつつある。とはいえ同胞達の期待は裏切れず、彼等に一縷の望みを与えるべく戦い続けている。
殺伐とした日々の中でミニガイロスに唄を聴かせることを唯一の楽しみとしているが、今回のフリップ星人のように敵を呼び寄せる事態にも繋がりかねない。
外部の者には人類を滅ぼして地球を奪い返すつもりであると述べている。しかし実際には人類に対して複雑な思いこそ抱いてはいるが、彼等と共存の道があると信じている、一族の中でもかなり穏健派の立場である。
尚、ウルトラセブン達と戦った『ノンマルトの使者事件』の顛末を聞かされて知っているが、「最初から最後までやり方がお粗末で杜撰極まりない」「勢力で圧倒的に人類に劣るこちら側が対話路線を早い段階で放棄するべきではなかった」と冷ややかに評している。
分身宇宙人 フリップ星人(RB)
かつてウルトラマンレオと戦った宇宙人の別個体。集団行動を極端に嫌い、各々が他の惑星に単独で侵入し破壊活動を行うという傍迷惑な性質の宇宙人。別名の通り分身能力とテレポート能力を持ち、動きも身軽。また、等身大時と巨大化時で容姿が若干異なるという珍しい特徴がある。
ウルトラマンレオと戦った際にはその分身能力で追い詰めたが、レオが心眼に目覚めてからは形勢逆転し、そのまま倒されている。
種族の悪名に似合わず、この個体は超獣使いであり、それも一角紅蓮超獣バキシマムを使役するという実力派のレイオニクスである。ちなみにバキシマムを何処で手に入れたのかは不明だが、その圧倒的な実力には全幅の信頼を寄せている。しかしバトルの末、バキシマムの攻撃を誤射され爆死する哀れな最期を遂げた。
尚、バキシマムを使役しているが、バトルナイザーはネオでない普通のタイプのままである。
守護神獣 ザバンギ
ノンマルトの守護神獣で、頭頂部に刀状の角を生やし、甲冑を纏った二足歩行の恐竜のような見た目をしている。別個体はウインダムのレーザー攻撃を物ともせず、ミクラスの怪力をさらに上回るパワーで逆に角をへし折り撃破している。
ノンマルト(RB)及び一族の主戦力であり、惑星アシヨシでも並大抵の怪獣やレイオニクスを圧倒してきた。彼女とは祖父と孫娘のような信頼関係を結んでおり、彼女が唄を歌う時には付近の警備を担っている。しかし、今回のように警戒をくぐり抜けて敵が接近してくることも多く、強さはともかく警備能力に関しては守護神獣の別名の割にはあまり高くない。とはいえ、いざという時には頼りになる存在であること自体は間違いない。
一角紅蓮超獣 バキシマム
一角超獣バキシムの強化改良種。超獣の中でも上位の部類に入るバキシムがさらに強化された姿。
頭部のミサイル角は刃物のような形状に変化すると共にブーメランのように戻ってくるようになった。両手も鋭い爪とバーナーユニットが追加で加わり、特にバーナーからは凄まじい強力な火炎を放射出来る。
ザバンギとのバトルは初めこそ優勢であったが、ミサイル角を逆用されて反撃をくらうなど、今回はいまいち実力を発揮しきれていなかった。ノンマルト(RB)からは「指示を受けて戦うのに慣れすぎて自分だけで考えて戦うのが苦手」と評されている。
その入手経路及びフリップ星人がヤプールと関係があったかどうかも不明。