ONE PIECE ~Song for You Days for You~ 作:重石塚 竜胆
━━━━富、名声、力。
この世の総てを手に入れた男、海賊王《ゴールド・ロジャー》
彼が死に際に放った一言は、人々を海へと駆り立てた。
━━━━世はまさに《大海賊時代》。
◆◆◆◆◆◆◆
━━━━だが、世の喧騒と熱狂とは裏腹に、そこから取り残されたようにひっそりと暮らしを営む村があった。
《東の海》で最も美しいと謳われる世界政府加盟国、ゴア王国。
その首都の栄華の光と闇からも離れた場所にある《フーシャ村》。
《海軍の英雄》であるガープの故郷という事と《とある海賊》が一時期逗留していた事、そして《とある少女》が住んでいる事以外に特徴と言える物も無いその村の外れには、打ち捨てられたように骸を晒す風車の残骸が立ち並んでいる。
かつては回り続ける事で人々の暮らしを豊かにしていたその羽根も、今やその輪郭を僅かに残すのみとなり、石造りの本体だけが、差し込む夕陽を浴びて赤く苔むした姿を見せている。
━━━━しかし、その中に一つだけ。人の営みを宿す風車があった。
「いや~、しかしようやくだなァ~!!」
「そうだね~……十年、か……」
《宝払い》で買った(と少年は主張する)酒を酌み交わす少年と少女。二人の名は、ルフィと、
ルフィは昔からフーシャ村に住んでいた少年であり、対して少女は十年前にこの村にやって来た《とある海賊》の船員であった。
「しっかし、シャンクスもな~んでいきなりウタを置いて行ったんだろうなァ?」
少年が言う通り、少女を乗せて村へとやって来た、どこか似合わない麦わら帽子を被った赤髪の海賊━━━━シャンクスは、略奪もせずに毎日飲んで騒いでを繰り返すだけという不思議な海賊であった。
「ホントにね!!……そりゃあ、エレジアで
なのに次の航海からは『すまん』の一言で置いていくなんて紳士どころか人としてどうかと思わない!?」
「紳士かどうかはわかんねェけど、シャンクスにしちゃ珍しかったな~」
「……しかも?その恩を返そうと私がマキノさんのお手伝いをしてお酒のお使い頼まれてる間に?誰かさんが私が貰えなかったゴムゴムの実を勝手に食べちゃうし?」
じとり、とした目で少女は少年を見る。
「あったあった。ハハハ!!ルゥが気づいて、シャンクスも俺もみんなビックリして大声出しちまったもんなァ!!」
「笑いごとじゃないでしょ……それに……」
━━━━少年が食べたのは、この村に着く直前に赤髪海賊団が《世界政府》の船を襲撃して手に入れた宝、《ゴムゴムの実》。
ウタの頼みなら大抵なんでも叶えてくれる赤髪海賊団が、唯一彼女にあげる事の無かった《宝》。
……そして、その行動が切っ掛けで起きた事件があった。
「……シャンクスはさ。やっぱスゲェ男だよ。」
結い上げられたウタの髪が、纏う空気の重さに従うように垂れ下がるのを見て、ルフィは改めて口を開く。
海の怖さ。男の背中の偉大さ。そして、なによりも……自らの片腕を犠牲にして《未来》をくれたシャンクスを想って。
「……うん。
━━━━だから、ね?私は、シャンクスを恨んでるとか、そういうんじゃないの。ただ……
なんで?どうして?って……聴きたいんだ。あの日、エレジアで本当は何があったのか……フーシャ村に私を置いて行ったのはなんでなのか……他にも、色々。
━━━━ルフィ。」
「おう。」
「━━━━私を一緒に、海に連れてって?」
「にっしっし。当たり前だろ?
━━━━だって、海賊は歌うんだ!!やっぱり仲間には音楽家が居ねェとな!!」
太陽のようにルフィは笑う。それを見て、ウタも笑う。
それは、この十年で何度も繰り返された光景で……きっと、これからも続いていく、彼等にとっての当たり前。
「あ、でも私は《赤髪海賊団の音楽家》を辞めるつもりは無いからね?他の船に乗るだけならまだしも、そっちでも音楽家~ってのは不義理じゃない?
━━━━だから、ルフィの船に乗る私は、歌で世界を平和にする《
「お、それなら他に音楽家も仲間にしねぇとな!!どんな奴がいいかな?デッカイ奴がいいぞ、おれ!!」
「んー……楽器の演奏が巧くて、私の歌いたい歌に合わせてくれる紳士的な人がいいな~、私は。」
━━━━夕陽に照らされて、取り留めもない話を続ける二人。
焼き付ける光を、窓の桟に座るルフィは背負うように、ウタに語り掛ける。
その赤が、ウタは好きだった。
まるで、
「じゃあ改めて━━━━明日の出航に……」
「明日の出航に……」
こうして、夜は更ける。どんな日にも、どんな場所でも。また変わらぬ朝日が昇り来るのを待つように……
◆◆◆◆◆◆
━━━━明けて、翌日。
コルボ山の山中で。
ルフィとウタはお世話になった人達へと挨拶回りをしていた。
「なぁダダン!!お前等は見送ってくれねぇのか?」
「村長とマキノはよくても……フーシャ村の奴等がビビっちまうだろ、
「ん、わかった。じゃあみんな!!今まで色々ありがとうな!!」
「私からも、ありがとうね、みんな!!」
「そんな照れるじゃねぇか礼なんて……!!ウタちゃんが居るとこの男やもめの
ゴムゴムの実をルフィが食べてしまい、シャンクスが出航してから暫くして、ガープがルフィを連れて来たのがこのコルボ山に棲みつく山賊達の所だった。
━━━━此処で、色々な事があった。
ルフィが年上の義兄弟たちと暴れまわったり、山に棲む獰猛な獣に殺されかけたり。
酒場のマキノがおいて行かれて御立腹なウタを連れてやって来てルフィたちの世話を焼いて、案の定義兄弟たちと喧嘩になって歌声一つで鎮圧されたり。
山賊共がみんなウタの歌の虜になって応援のポーズを練習したり、こっそり義兄弟たちも練習していたり。
━━━━義兄弟たちが二人とも居なくなっても、此処では色んな事があったのだ。
「━━━━ダダン!!おれ、山賊嫌いだけどよ!!」
「うるせェクソガキ!!」
「お前等は好きだ!!」
「バカ言ってねぇで早く出てけ!!チクショー!!!!どいつもこいつもォ!!!!」
「アハハ!!ダダン達も元気でね!!」
━━━━今日、彼等は出航する。
フーシャ村の港から。小さな使い古しの漁船に乗って。
「ホントはボートから始めたかったんだけどな~!!」
「文句言わないでよ!!漁師のおじさんがくれるって言うんだし貰っておいて損はないでしょ?
だいたい、レディと二人での航海なんだから部屋の一つくらい無いとダメに決まってるじゃない!!」
「そっか?それならしょうがねぇか。仲間の為だしな。
━━━━サボ~~~~~ォ!!見ててくれ!!
「……」
甲板で急に大声を張り上げるルフィの叫びに出て来た名は、ウタにとっても忘れられない名前。
━━━━目の前で理不尽な砲撃の炎の中に消えていった、幼馴染の名。
「サボが一番……エースが二番!!おれ達は三番目だけど負けねェ!!待ってろよエース!!すぐに追いつくぞ!!」
「そうだね。仲間を集めて、海を渡って……《
ねぇルフィ?」
「ん?」
「━━━━色んなステージを見つけようね?」
義兄弟たちはもう、とっくの昔に船出した。
二番目のエースもウタを誘っては来たけれど、ウタにはルフィとの
「にっしっし。おう!!」
「━━━━なんだルフィ!!いきなり叫んだりぶつぶつ言ったり……なんかのまじないかァ!?」
「エースって誰だ?」
「聴いた事ねぇな……」
「まじないじゃねェ!!挑戦状だ!!
じゃ!!おれ達行くからよ!!」
「じゃーねーみんなー!!」
━━━━斯くして、船は往く。
けれど、その道を阻むように水面から顔を出すモノが居る。
「わっ。
出たか《近海のヌシ》!!」
「うーん……こんなのにシャンクスが片腕取られたとかやっぱり信じられないんだけど……やっぱりわざとだったのかな……」
「けど、相手が悪かったな!!十年鍛えたおれの技を見ろ!!
ゴムゴムのォ……!!」
━━━━ゴムのように伸縮した拳が顔を出した海王類の顔面を捉え、一撃で
「思い知ったか、魚め!!
なぁウタ、見たか?おれのパンチはピストルみてぇにつえェんだ!!」
「フフッ……うん。知ってるよ。ルフィのパンチがピストルみたいに強い事。」
「にしし……まずは仲間集めだな。十人は欲しいなァ。そして海賊旗!!」
「船もちゃんとしたのを手に入れないとね~。漁船じゃあグランドラインを往くなんて夢のまた夢だよ?」
「じゃあそれもだな。
━━━━よっしゃ、いくぞ!!
海賊王に、おれはなるッ!!」
━━━━
━━━━そう、コレは運命の悪戯で共に歩む事を選んだ、未来の海賊王とその幼馴染の物語……
Q:幼馴染を完遂したウタとかただの最強無敵幼馴染ヒロインなのでは?
A:そうだが……?