“軌跡”的な世界   作:怪獣馬鹿

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これでナバロン編は完結です。
次回はW7編です。
これはアラバスタと同じでライブ目的なので少し長く行きます。

※この話は2年間の間の話です。麦わらの一味はそうそう出てきません。


Navy

ジョナサンの朝は早い。

元々、野生児のようなガープに新兵時代から目をつけられてというか可愛がられて強くなったし、動じなくなった。そして釣りが趣味なのも野生児のガープに振り回され続けてせいで落ち着いて楽しめる物をやりたくなったからと云うのが本音だった。

そんなジョナサンは今日も釣りをしていると歌声が聴こえてきた。柔らかくて暖かい歌声で心地よく、朝霧のナバロンだと幻想的にも思えた。

朝霧が晴れて見えてきたのは朝から岩場で歌うウタだった。

 

『あの子の歌は天使の歌声なんです!』

 

ゴードンが泣きながら捜索を頼んだ時に言った事をジョナサンは思い出していた。

 

「なるほど確かに天使の歌声だ」

 

ジョナサンはそう呟くと歌い終わったウタはジョナサンに気づいて手を振った。

 

「おはようございます!」

「あぁ、おはよう。昨日はよく眠れたかな?」

「はい・・・ジョナサン中将は釣りですか?」

「まぁね。ボウズだけど」

 

一匹も釣れなかった事を自虐するジョナサン。するとカンカンと鐘が鳴った。

 

「これなんですか?」

「起床の時間の合図だね」

「へぇ~」

 

海賊の生活は遭難時に経験していたが海軍の生活は知らないのでウタは新鮮な気持ちで鐘の音を聴いていた。

 

「もし良かったら、今日一日見学するかい?」

「え?良いんですか?」

「勿論だよ、私が案内をしてあげよう」

「あ、ありがとうございます!!」

 

頭を下げてお礼を言うウタ。ジョナサンはニッコリと微笑んだ。

 

 

〇〇〇

ゴードンは遭難から無事に帰ってきたウタを見てビックリした。エレジアを出た時はどこか危うさを残していたが今は一回りも二回りも成長していた。

やれ、サルベージを手伝ったとか海賊から金塊を取り戻したとか七武海のバギーと4日間無人島に居たとかよく無事に戻ってきたと感動して泣いた。

 

そして今日は久しぶりに一緒に音楽の事でもやろうか聴いたらジョナサン中将直々にナバロンを案内してくれるとの事で喜んでいた。その姿は昔、エレジアに来た当時の彼女の姿を見ているようでゴードンは大号泣していた。

 

こうして、今日1日暇になったゴードンは何時もだと誂えるジョナサンに逃げられて暇になったガープと一緒にチェスを指していた。

 

「チェックメイトです」

「あぁ!?ちょっと待ってくれ!」

「待ったはもう無しです」

 

そしてガープがかれこれ20回目の待ったをかけて一局を長引かせていた。

 

 

 

 

〇〇〇

ウタは麦わらマークの手袋の中に海楼石を忍ばせてるので幾ら歌ってもウタワールドが開かないので上機嫌で鼻歌を歌いながらジョナサンに付いて行く。

ジョナサンは更に後から監視しているCPを警戒していた。

 

(CPはまだ調査中か・・・)

 

まだ、ウタに疑いの目を向けるCP。ガープも気に入ってるし、罪を犯してない一般人に対して不義理は通したくないジョナサンはCPからウタを守るために護衛も兼ねていた。

 

(ウタにはジョナサン中将、ゴードンには英雄ガープ。下手に踏み込めないが昨日と今日を合わせて既に何十回と歌いながらもウタワールドに入った者は確認できず。身体検査や持ち物を調べようにも中将の妨害で出来ないとなると俺に出来るのはここまで。後は上の機関に頼むほかないな)

 

CPの男はそう判断すると報告書の作成の為に去った。

ジョナサンは去っていくCPを一目見るとさっさと施設の案内に戻った。

 

 

 

〇〇〇

「ここが海兵たちの食堂だ」

「うわぁ〜、広い!」

 

ジョナサンが案内したのは海兵達の食堂で妻のジェシカの主戦場であり、ナバロンの裏のボスの巣窟だった。

既に朝御飯を食べてる大勢の海兵がいた。ウタやゴードンは食べる時間が決まってる海兵と一緒だと気が重くなるかも知れないので別の部屋で食べてるが大勢の海兵達が急いで食べて休んでるのは壮観だった。

 

「ここの管轄は総料理長であるジェシカが仕切ってる」

「会ってみたい!」

「今は忙しいからなぁ・・・」

 

苦笑いをしながら言うジョナサン。

 

「誰が忙しいって?」

 

しかし、後から聴こえてきた声に顔を固めた。ギギギっと音がなりそうなほどぎこちなく振り向くとそこにはフライパンを持ったジェシカがいた。

 

「やぁ、ジェシカ・・・どうしてここに?」

「こうやって若い娘と一緒に食堂に来れば逃げられるとでも思ったのかい?朝飯は勘弁してやるが昼飯は覚えときなよ・・・」

 

ジェシカはそう言うと厨房へ戻っていった。ジョナサンは暗い顔で打ちひしがれていた。

 

「どうしたの?」

「・・・最近、歳だからって野菜が多くてね。昼飯はきっと野菜地獄だ・・・」

 

落ち込むジョナサンにウタは何も言えず、食堂を出た。そしてそのまま修理ドックや医療室、資料室などを回り、昼になったのでウタとジョナサンは折角だから一緒に食べることになった。

司令室でジェシカが料理を持ってきてくれてウタは海鮮チャーハンだったが、ジョナサンは野菜炒めに米に生サラダと本当に野菜地獄だった。

 

 

 

 

 

〇〇〇

ジョナサンが1時間くらいかけてなんとか野菜地獄を食べ終わるとウタはまた案内をしてもらった。ナバロンは広い海軍基地。鉄橋だったり、居住区だったり、海軍に所属しているが海兵ではなかったりと様々な人がいた。クリケット達やバギー達よりも遥かに多い人達。本の知識ではない実際にみる海軍の生活は少し海賊に比べて窮屈そうだったが暖かい印象を受けた。

そんな中で2人はある場所に入った。

そこは一年前にルフィ達が暴れて壊れた牢屋だった。色々と直されているがまだ壊れている場所もあり、少し今までとは異質だった。

 

「ここなら良いかな?少しだけ聴きたいことがあるのだけど質問していいかな?」

「何?」

「君は麦わらのルフィと何処で知り合ったのかな?」

 

ジョナサンの質問はウタにとって予想してない物だった。咄嗟に歌ってウタワールドに飛ばそうか考えていたが手袋に入れてある海楼石で出来なかった。

 

「下手な事は止めなさい。海楼石を持って自分の能力を抑えてるのは知ってる」

「ば、バレてたの?」

「私とガープ先輩は分かってたよ。別に取って捕まえるつもりもあまりない。だが麦わらのルフィは今では4億の賞金首。その知り合いと云うなら多少は話を聞かないといけないからね」

 

あっけらかんに言うジョナサン。常に笑ってるガープとは違う意味で感情が読めず、人生経験の浅いウタには真意が全くわからないので不気味に見えた。

 

「もう一度聞く、麦わらのルフィと何処であった?」

 

ジョナサンの質問にウタは正直に話すことにした。

 

「ルフィとは・・・子供の時に・・・会って友達に・・・」

「では、今の麦わらは知らないんだな?」

 

ジョナサンの問いにウタは首を縦に振った。するとニッコリと笑って歩き始めた。突然の事にウタは困惑したがジョナサンはなんてことない雰囲気だった。

 

「それなら別に良い」

「えっ?いいの?」

「この世界で海賊と知り合いなんてザラにいるからね。一々そんなんで捕まえていたら牢屋が幾つあっても足りないし、ましてや子供の時なんてもう関係ない」

「海軍がそれで良いの?」

「海軍の目的は平和維持。過激な上司の下に着いてるけど線引はしないと。何でもかんでもやってたらそりゃ権力を持ったただの“悪党”になってしまう。あくまでも私の思想は“正義”。悪ではない」

 

独特な人だとウタは思った。海軍と云うからにはザ・正義の人で悪党に繋がるものは全て潰すという印象を持っていたが飄々なジョナサンはそれらとは違っていた。

 

「ただ、あくまでも君が一般の有名人だからというのもある。下手にそれは言わないほうが良いし、予想以上に世間はそういった情報が拡がりやすい。注意した方が良いね」

「?」

「独り言」

 

ウタはジョナサンの真意が分からずに首を傾げたら、そう言われて2人はその場から外に出ると鐘の音が鳴っていた。

 

「あぁ、もうあの時間か・・・」

 

ジョナサンはそう呟くと胸に手を当てて黙祷し始めた。先程までの飄々としていた雰囲気ではなく重々しくウタは何をしているのか分からなかった。そして海軍の歌として有名な『海導』がナバロンに流れ始めた。

 

『海は見ている 世界の始まりも 海は知ってる 世界の終わりも』

 

荘厳な音楽で紡がれている曲。海賊と戦う海兵を称える為に作られた曲。

 

『だからいざなう 進むべき道へと だから導く 正しい世界へ』

 

ビンクスの酒が誰もが知ってる海賊の曲ならこれは誰もが知ってる海兵の曲で最後まで明るい雰囲気で終わるビンクスとは対照的で非常に重々しい。

 

『もしも自分が消えたとしても 全て知ってる海の導き 恐れてはいけない あなたがいるから』

 

ウタは自分がいつも歌ってる歌とは違う雰囲気の曲を確りと聴きながら、ジョナサンを見ると泣いているようにも見えた。

 

『怯えてはいけない 仲間も待つから 進まねばならない 蒼きその先へ』

 

歌が終わるとジョナサンも黙祷を止めた。ウタは思い切って何の黙祷だったのか聴いてみる前に答えられた。

 

「頂上戦争で死んだ仲間達へ全海軍基地がやっている事だ」

「ここの人も行ったの?」

「あぁ、私の他にも数十名が行った。私が推薦して私以外“全員死んだ”」

 

ジョナサンの言葉から後悔と苦しみが溢れていた。幾ら、経験してる事が足りないウタでも分かるほどに言葉が重かった。2人はそのままナバロンを歩いていってまた彼方此方を回った。

 

 

 

〇〇〇

夜になり、ウタは眠れなかった。

明日の朝には近くの島に送って貰ってそこからまた客船に乗り、海列車のある所まで行ってW7に向かうのだがウタには色々とありすぎた。

遭難で初めてあった自由を求める海賊、王下七武海、そして海軍やそこで生活している人達。どれもウタには良い人に見えた。何処でズレて争ってるのかウタは分からなかった。

 

「眠れないのかい?」

 

するともう眠っていたと思ったゴードンが話しかけて来たのでウタは体をゴードンの方に向けた。

 

「うん、色々とあって色々と知ってなんでこうなってるのか分からなくて私には皆が良い人なのに・・・」

「ウタは優しいな・・・」

「ねぇ、ゴードン。私、世界一の歌姫になったらライブをしたい」

「ライブ?」

「うん、世界中の色んな人を集めたい。海賊とか海軍とか王族とか革命軍とか一般人とか関係なく、色んな人達に歌を楽しんでほしい。ウタワールドじゃなくて現実で」

 

ウタの語ったことは無茶にも程があった。海賊と海軍程争い合ってる物が無いのに一緒にライブを楽しむなど不可能だと思った。おまけに王族の中には人を徹底的に見下す下賤な輩もいる上にそんな輩から世界の解放を謳っている革命軍も一緒になどありえない。しかし、ゴードンは否定しなかった。ウタワールドに頼らずに現実でそれを夢見ているウタは以前とは違ったからだ。知らないうちに成長していた彼女の夢にゴードンも掛けてみたくなった。

 

「きっと出来る。君の天使の歌声ならきっと出来る!」

「ゴードン・・・ありがとう」

 

 

 

 

 

 

〇〇〇

また、濃い朝霧に包まれたナバロンの岩場にウタはいた。そして『海導』を歌った。曲として知っていたがそこまで歌った事がない歌なのでウタは下手だなと内心自虐しながらもナバロンを見た。

 

「いつか、この霧が晴れて澄み渡る景色が見れるように世界中の人を笑顔に出来る“新時代”を私の歌で作りたい」

 

バギーにあって大きすぎた夢だと自覚したがそれでも幼い頃からの夢だった。地に足が着いてない状態ではなくもっと色々と世界を知って実現したくなった。そこにはルフィもシャンクスもバギーもビビ達やクリケット達にガープ達。まだ見ぬ世界の人達と笑いたいという純粋な願いがあった。

 

「やるよ、私は・・・世界一の歌姫に絶対になる!!」

 

ウタはそうナバロンでまた誓った。












ウタがまた夢を願いましたが今までとは色々と違うので叶うかどうか分かりません。
『海導』は好きな歌なので出しました。ZもREDを見るまでは1番好きなワンピース映画だったので。

次からはW7編です。
あの麦わらヲタクとウタが再び出会うのでお楽しみに。
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