それではどうぞ!!
全ては1年ほど前、そうウタとバギーが出会う少し前まで遡る。
『そういうのちゃんと言えよ!!前から!!』
『うるせぇ!!辛えのは俺だクソガキ!!』
シャンクスは懐かしくそして悪い夢を見てその日は起きた。昨日飲みすぎた酒のせいなのかそれとも違うなにかかフーシャ村で起こった事を思い出していた。
それはウタを置いて言ってルフィに詰め寄られていた時に酒に酔ってブチ切れた時の事だった。ウタと突然訪れてしまった別れに苦しくて悲しくて全ての罪を被ってウタをカタギにしようと決めたのに未練がたくさん出て酒に溺れて、ルフィと大喧嘩した。
あの時はルフィが一歩大人になって仲直り出来た。
「酒を飲みすぎたか・・・頭が痛え」
シャンクスはそうボヤいていると外が騒がしかった。古参の仲間達が騒いでいて慌ただしい声も聞こえてきて外に出ると皆がある新聞を読んでいた。
「お頭大変だ!!ウタが!!」
シャンクスはルウの言葉を聞くと新聞を奪うように取った。大事なウタに何かあったのかと不安になったが記事に載っていたのはアラバスタでのライブが成功したとの事だった。
シャンクスはそれを読んで泣きそうになった。あれだけ辛い別れをしたがやはり自分の娘は想像通り自分達の事を忘れて歌姫としてカタギになったのだと嬉しくなった。
「よし!宴だ宴!!やるぞ!!」
「ってあんたは飲み過ぎだ!!」
「うるせぇ!!飲ませろ!!」
シャンクスはホンゴウの止めも無視して酒を飲んだ。祝の酒で縁が切れたとは言え大事な自分の娘が頑張っているのだ。飲まずにはいられなかった。
そんな風に騒いでいたシャンクスだがその2日後にシャンクスは地獄を味わう羽目になった。
『歌姫UTA、行方不明!!』
シャンクスはこれを読んだ瞬間に頭が真っ白になる感覚が襲った。ウタが生死不明の行方不明になった。エレジアに置いた時以上の喪失感をシャンクスは味わった。
「お頭・・・」
「止めろ、何のために別れたんだ」
「俺達が行くとウタの11年が無駄になるぞ」
仲間達が言い合っていた。シャンクスはそれを聞くと冷静に場を何とかしようと声を出した。
「お前ら、落ち着け!!ウタは・・・大丈夫だ!!だって俺たちの船で育ったんだ、絶対に無事だ!!」
シャンクスの言葉に仲間達は言いたいことが無い訳では無いが黙り、笑みを浮かべた。なぜなら全員良くも悪くもシャンクスのこの前向きさに対して嫌いじゃないからこそ集まった赤髪海賊団。彼らはとことん
シャンクスはそうやって考えて伝えると流石に酒は飲まずに自分の部屋へ戻っていった。戻るとシャンクスは自分の部屋に置いてある荷物の中から大きな鞄を出して開けた。中にはウタが着ていた服や綺麗と思って貰った宝石などが入っており、シャンクスはそれを大切にしまっていた。
「ウタ・・・会いた・・・ダメだ、何を言ってんだ俺は・・・ウタの邪魔をするな・・・あいつはカタギで俺は海賊なんだ・・・」
シャンクスはそう言い聞かせるように呟くとすぐにウタの荷物を全て戻して片付けた。持ち前の前向きさで何とか気持ちの整理をつけるとシャンクスは皆の元へ戻っていった。
〇〇〇
状況が変わったのはそれから3日後だった。ウタがとある島で発見されたと記事に載った。そうこの時、ウタはクリケット達に助けられて少し大きな島に送られていたのだ。
それを見た瞬間、シャンクスは安堵して赤髪海賊団の面々もホッと一息つけた。
「ほらな!!ウタは強えんだ、俺達が心配しなくたって生きていける!!」
「だな!」
「たしかにな!!」
「よし、ウタが無事だった事を祝って宴だ!!」
『おぉ!!』
赤髪海賊団はウタが無事だった事を祝って宴を始めた。それは心の底からウタの事を思ってやった事だったがシャンクス達はこの時、ウタがどんな状態だったか知らなかった。ルフィの死亡説を読んで気が動転していた事、それを狙ってトットムジカが動き始めた事、シキもウタの存在に気づいて狙い始めていた。
そんな中でこの日を境にシャンクスはある夢を見始めた。
〇〇〇
『止まれウタ。こんなのは自由じゃねえ。こんなのは“新時代”じゃねェ!!・・・お前が誰よりもわかってんだろ!!』
(何なんだこれは・・・)
シャンクスはある夢を見ていた。それはトットムジカの中にいたUTAが体験した事・・・エレジアでライブを行い多くの人達とウタワールドに永遠に居ようとした事だった。目の前でウタとルフィが対立している光景はシャンクスにとって辛かった。
『私は赤髪海賊団の音楽家ウタだよ』
(ウタ・・・なんでそんな死にそうな顔をしてるんだよ・・・なんで俺は・・・)
それはUTAがケジメをつける為に歌った最後の瞬間、シャンクスは別の世界の自分や仲間達を見ていた。そして最後に見たのは自分の腕の中で息を引き取るUTAだった。
(何だよこの夢は・・・)
混乱するシャンクス。
この夢はUTAがトットムジカの中にいてウタが取り込まれそうになるのを防ぐためにやった一種の救難信号に近かった。早く行かないとこうなる可能性があるとUTAはシャンクスに送っていたのだ。父親と娘として繋がりがあるからこそUTAはシャンクスにだけ送れたのだ。
シャンクスはそれを受けて目を覚ました。
最悪の目覚めも良いところだった。折角、ウタが無事だったのにそれを台無しにする程の悪夢だった。
「何を見てるんだ俺は、ウタは大丈夫だ。酒を飲みすぎてナイーブになるなんて・・・暫く控えてみるか・・・」
しかし、シャンクスはそれをただの夢だと思って処理した。何故ならシャンクスは壊滅的と言える程に
そんな風にさっさと起きてみるとまだその日の朝は皆疎らに起き始めていた。ルウは朝飯を作っていて美味そうな匂いがしてくる中でシャンクスは悪夢によるものか酒によるものか分からないが頭痛がして頭を軽く抑えた。
「お頭、二日酔いか?だから酒を控えろってあれ程言ってんだよ」
「止めろホンゴウ、朝っぱらから説教は勘弁してくれ」
「おう、説教されたくなかったら飲酒を控えるんだな」
船医であるホンゴウのありがたい説教を子供のように受けたくねぇと頭を振ってるシャンクス。いつもの光景の中で他の面々もぞろぞろと起きていく中でニュース・クーが新聞を持ってきたのでスネイクがそれを買い取って読むとすぐにシャンクスの方へ新聞を持ってきた。
「お頭、大変だ!!ウタがまた!!」
ウタの名前を聞くとシャンクスは今度は何だと思ってスネイクから新聞を取るとそこに載っていた記事に目を回しそうになった。
『歌姫UTA、死亡か?海賊に襲われ行方不明!!』
シャンクスは今度こそ本当に倒れそうになった。なぜ、また行方不明になってる?しかも経ったの1日の間に一体何が起こったのか理解出来なかった。
この時、ウタの乗っていた船はシキに従われていた“深手”のアルビオンによって襲われてそれを助ける形で人気取りをしようとしたバギーと戦闘になって主にバギーのマギー玉で船が沈んだのだがそれは当事者でないと分からない事だった。
「何が起こってんだ?」
混乱の中でシャンクスはそう呟くしかなかった。
『シャンクスは私を捨てた!』
『あいつは私を愛してなかった!』
『助けて・・・誰か・・・助けて・・・』
シャンクスの悪夢は終わらなかった。自分の経験では無理だとUTAは理解したのか彼女は別世界の自分の体験をシャンクスに見せた。少しでもシャンクスに早く来てほしかったからだ。
海兵の自分、ゴシック服の自分、そして子供の自分とUTAは出来る限りの事をやってシャンクスに伝えていたがその全てを悪い夢だと捉えていた。
何故なら
(また目覚めが悪い・・・ウタに何か・・・いや、俺が行ったら・・・けど・・・)
しかし、何日もかけてUTAに悪夢を見させられてきた影響か流石のシャンクスも少し後ろ向きに考え始めていた。終わらない悪夢に嫌な気配を感じた。仲間達は自分を気遣ってくれてか何も言わないし、騒いでなかったが内心ウタを心配してるのは見聞色を使うまでもなく分かった。
シャンクスには2つの道があったこのままウタを探しに行くかそれとも行かないか。
(11年前に決めたんだ。ウタの人生を邪魔しねぇって・・・恨まれても憎まれても邪魔しねぇって決めたんだ・・・でも・・・)
シャンクスは自分に言い聞かせるようにそう内心思っていた。しかし、悪夢のウタを見て他人事のように思えなかったのも事実。シャンクスは意を決して赤髪海賊団の仲間に向けて声を出した。
「お前ら、ウタを探しに行くぞ」
シャンクスのその言葉に皆は笑って応えた。なんだかんだ心配なのは変わらない。ウタがピンチなのだ、助けに行きたかった。シャンクスは皆の優しい行動に嬉しさを感じで船を出した。
「ウタに会ったら、殴られるんじゃ?」
「いや、殺されるかもな」
「酷いくらいに恨まれて銃でも向けられたらどうする?」
「ウタはなんだかんだ優しいからそこまでは・・・しないよな?」
「飛び蹴り・・・とか・・・」
「兎に角、一生恨まれても仕方ねぇことやったんだ。助けて話をやるしかねぇだろ」
ウタに対してそれぞれ思った事を口にしてる中でルウがニュース・クーから新しい新聞を買って読んでると叫び声を上げた。
「えぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜!?」
「どうした?」
「ウ、ウタが見つかったって・・・」
『えぇぇぇぇ!?』
ルウは新聞をシャンクス達皆に見えるように向けるとそこにはウタが無事に救出された事が載っていた。
『歌姫UTA発見!!助けたのは“王下七武海”のバギー!!』
「バギー!?」
シャンクスはその見出しを見るや否や取り乱した。そういう事はやらないタイプのバギーがウタを助けた事に混乱を隠せなかった。実際はなし崩し的に助けただけだったがそれを知るすべはなかった。
折角、ウタを助ける為に決心したシャンクス達は悪い事に出遅れてしまった。
〇〇〇
それから2日後、シャンクスはある場所に連絡していた。
「えっと、番号はこれであってるか・・・」
ぷるるるるると電伝虫特有の音が鳴る中で掛けた相手が出た。
『はい、こちらバギーズデリバリー』
「おっ?掛かったな、バギーの所か?俺だ、俺」
『誰だ?』
「だから俺だって、バギーの友達だ」
『・・・まさか“赤髪”のシャンクス!?』
「おう!そうだ!!バギーを出してくれねぇか?」
シャンクスは向こうが気づいてくれた事に嬉しさを少し感じていた。ドタバタと慌てる音が聞こえてくる中でシャンクスはどうやって話を切り出そうか悩んでいた。
(ウタの事・・・教えてくれるかな・・・まぁバギーなら大丈夫だろう!)
漸く少しだけ
『シャンクス、てめぇこの野郎なんのようだ!?』
「ちょっと話がしたくてよ・・・なぁその・・・」
『お前の娘の事か?』
「・・・ウタに聞いたのか?」
『あのバカ娘が自分から言いやがったんだよ・・・馴れ馴れしく猫なで声でおじさん呼びしやがって・・・なんてムカつく似たもの父娘なんだよお前らは・・・」
「・・・」
『おい、聴いてんのか!?』
「わ、わりい・・・な、なぁ・・・ちょっと会わねぇか?昔みたいに色々と話がしてえ・・・」
『はぁ!?そんな事、誰が・・・』
『おい、聞いたか今の話!?』
『あの“四皇”が座長を食事に誘ったぞ!?』
『そんな“七武海”聞いたことがねぇ!』
『ドフラミンゴはどっちかって言うと下っ端だしな!』
『やっぱし、俺達の座長は凄え!!』
「???」
シャンクスは電伝虫から聞こえてくるバギーズデリバリーの社員の声を聞いて首を少し傾げていた。すると苦虫を噛み潰したようなバギーの声が聞こえてきた。
『・・・くそ・・・なんでこんなに持ち上げんだよ・・・わかったよ!!晩飯でも酒でも付き合ってやら!!その代わりてめぇ、酒と晩飯・・・半分は用意しろよ!!』
「本当か!?晩飯や酒くらい俺が全部用意してやっても良いのに」
『ぶざけんなバカシャンクス!!お前にだけはそんなのされたくねぇ!!』
『おぉ、座長が“四皇”に対して啖呵を!!!』
『凄え!!凄え!!』
『しかも“四皇”が奢ると言うのに断るとは!!』
『かっけぇ!!座長かっけぇ!!』
『ええぃ、ハデに喧しいぞてめぇら!!』
「ふ、ふふふふ・・・だぁーはははは!!!!」
『何笑っとんじゃお前は!!』
「わ、悪い・・・昔と本当に変わってねぇなって・・・最近、色々とあったからよ・・・懐かしいよ」
『止めんか辛気臭え!!兎に角俺の条件はわかったな!?』
「分かった・・・じゃ待ち合わせは・・・エルバフから少し行った島に良い感じの島があるんだよ・・・エターナルポーズは後でニュース・クーに頼んで送る」
『ったく、何でお前ら父娘にまた振り回されなきゃ・・・分かったよ・・・ちっ』
「・・・ありがとうなバギー」
シャンクスはそれを言うと電伝虫を切った。久しぶりに兄弟分であるバギーと素で話せて嬉しかったのもあるがそれよりもウタがシャンクスの娘だとバギーに教えた事に対してシャンクスは涙が出そうになっていた。
「早くウタの話が聞きてぇな・・・」
シャンクスはそれだけ呟くとバギーと会うための準備を始めていった。
というわけで始まりましたシャンクス編・・・ここから万国編のカタクリに負けないレベルの地獄と苦しみがシャンクスに襲いかかってきますのでご覚悟下さい。
今話の曲は『未来航海』とシューベルトの『魔王』です。
このままだとシューベルトの『魔王』よろしく死に別れする運命にあるシャンクスとウタに対してバギーが何をやってきたのかシャンクス目線でやりますのでお待ちを・・・また1週間掛かるかも知れませんがなにとぞよろしくお願いします。