歌詞は思いっきり引っかかるのでタイトルだけです。
ではどうぞ。
昨日の晩のバルトロメオの騒動のせいで色々と疲れたウタだったが、疲れは次の日に来ることなく元気に起きれた事を嬉しく思いつつ、準備を始めた。
昨日までの服とは違って、この日の為に準備した白い服。そして大切なルフィから貰った麦わらマークを印した長い左手袋。大事な物は全て揃った。後は自信を持って歌うだけ。
ウタは鏡の前でイメトレをしていた。
「皆、私に注目してる。舞台は大勢の人で賑わってる。最後のトリで皆に喜んで貰う。私は歌姫・・・」
そんな風に自分を盛り上げようとするが忌々しいトットムジカの記憶が出てくる。
『悪魔の娘だ!!』
目を閉じて消そうとするも浮かび上がるのは電伝虫に記録されていた火の海となったエレジアだった。
(大丈夫・・・大丈夫・・・皆が私の歌を待ってる)
落ち着いて冷静になろうとするが動機がドンドンと早くなっていた。苦しくなって自分の歌にも縋れないウタは唯一の縋れる物である麦わらマークを大事に胸に当てて落ち着こうとしていた。
(私は歌姫・・・ルフィに負けられない)
ウタは仕舞っていたルフィの手配書をもう一度見た。凄くいい笑顔のルフィは昔見た頃みたいでそれを見てるとウタも段々と元気になっていった。
コンコンッと扉が叩かれる。
ウタはいそいそと手配書をまた仕舞った。
「ウタ、準備は出来た?」
「うん、大丈夫!」
ビビはその返事を聞くと部屋の中に入る。ビビも復興祭には王族として参加するのでめかしこんでいた。ウタもビビの綺麗さにときめいていた。
「ビビ、凄い綺麗だね!」
「ウタの方が綺麗よ」
「そう?」
「えぇ、今日を皆が楽しみにしてたから」
ビビの言葉にウタもルフィの手配書の効果もあって元気な笑顔で返す。
「任せて!緊張凄いしてるけど絶対に楽しませるから!」
ウタの言葉を聞いてビビがウタの右手を握った。それもギュ〜っと握ってきて暖かかった。
「ビビ?」
「緊張が解けるかと思ったけど・・・どう?」
ウタは自分の右手の暖かさが心地良かった。ルフィの笑顔や麦わらマークだけじゃない。友達の温もりはかなりあった緊張や不安、そして忌々しい記憶すらも薄くさせた。
「ビビ、ありがとう!」
ウタは優しい笑みをしてくるビビに同じ笑みを返した。
〇〇〇
ユバの復興祭。クロコダイルが倒されて1年。ボロボロになったオアシスのユバが完全に復興された事を祝う大事な式典。アラバスタ中の老若男女が集まっていた。何故なら音楽の国エレジアの国王にして有名な音楽家のゴードン。そして最後のエレジア国民にして今話題中の歌手UTAが初の客前のライブをするのだ。
そんな大事な事を復興祭でやってくれてアラバスタの国民は盛大な感謝の意を示していた。
「アラバスタの国民達よ、クロコダイルの仕組んだ内戦から1年、傷跡はまだあちこちに残っているがこの一度は砂に沈んだオアシスのユバが復活した。まだまだ皆には苦労を掛けてしまうが私もこの国がより良い国に戻るまで全力で皆の前を走ることを誓おう!それではアラバスタの国民達よ、このユバの復興祭を楽しもう!!」
コブラの演説が終わり、ステージには楽器が並び、ウタの舞台の準備が整えつつあった。
「それではまずはエレジアより来てくれたゴードンによるアラバスタオーケストラ!!」
ゴードンが指揮を取るアラバスタオーケストラは開幕曲にアラバスタ国歌からアラバスタに伝わる昔ながらの交響曲を6曲。いつも以上に真剣なゴードンを見てウタは来てよかったと心から思った。本来ならウタの曲から始まる予定だったがウタウタの実によるウタワールド形成と強制的にそこに心を送る能力のせいでウタはトリになった。
ゴードンの指揮によるオーケストラが終わるとウタの番だった。
「それでは復興祭のトリを飾るのは今話題の歌姫UTA!」
最後のトリでもあり、花形。
ウタがステージに上がる前に観客は盛り上がっていた。
「「「「「U・T・A!U・T・A!U・T・A!」」」」」
1年ほどしか配信してないのにこんなにも熱狂的に迎え入れてくれるファンがいた。観客が楽しみに待っていてくれた。その事実と麦わらマークにビビから貰った暖かさがウタの力になって彼女は元気よくステージに上がった!
そして彼女は自分の代表曲である『新時代』を歌った。
エレジアから配信して海賊被害に合う人の言葉を聞きながら書き上げた曲。色んな感情が込められた。自分の11年間や人の声、そして夢など色んな事を込めて作り上げた代表曲。
初めての観客がいてのライブは何時もよりも凄く、自分も興奮していた。自分の中にあるモヤモヤを吐き出すようにウタは全力で『新時代』を歌う。
ラストのサビが終わり、曲が終わると観客はテンションが高い新時代につられたのか凄くハイテンションで応えた。
もう既にウタのウタワールドの中に入っているが誰もそれに気づかない。全員がウタの曲を楽しんでいた。ウタは次に『逆光』を歌おうとしたが止めた。『逆光』は海賊行為に対する嫌悪が込められた曲であり、人気の曲だが今は歌えなかった。
シャンクスが守ってくれたこと、そしてルフィが海賊になったこと、海賊嫌いなのに海賊であるシャンクスやルフィに会いたがってる自分。
そんな矛盾の気持ちで歌う歌はこれではない。
ウタは覚悟を決めて『風のゆくえ』を歌った。
ルフィの故郷のフーシャ村で何度も歌った思い出の曲。今あるUTAではなく、ウタとしてもう一度新しい生き方を探してみたい。この11年間は何だったのか答えを知りたい。前に進みたいという思いがぐちゃぐちゃになったまま歌った。
上手いのか下手なのか誰にも分からなかった。
だが、今までで1番心に響く歌だった。
ウタワールドの管理人たるウタなら観客に幻想的な描写を見せてより楽しませられた。だがウタは心の底からウタウタの実は関係なく歌った。
歌い終わり、ウタの顔は凄く満足していた。観客は拍手で応えた。ビビもコブラも拍手し、ゴードンはウタの天使の歌声に涙をまた流していた。
〇〇〇
楽しかったライブは終わり、ウタが眠ると皆は夢から覚めたように起きた。知らない間に夜になっていたが誰もそれに対して不気味さは感じていなかった。良い夢を楽しい夢を見たと誰もが感じ、復興祭の夜を楽しんでいた。
ゴードンはコブラに感謝の言葉を述べてからホテルの一室に戻るとウタが眠りから覚めていた。
「ウタ、もう大丈夫なのかい?」
「勿論、元気一杯だよ!それにちょっと聞きたいことがあるから行ってくる!」
ウタはベットから飛び起きてゴードンを除けてある人の所に向かう。復興祭で盛り上がっているユバの中をウタは走り抜けてユバの街の事務所に着くと中ではトトが荷造りをしていた。
「トトさん!」
「おぉ、ウタちゃん。良い歌をありがとう、これでエルマルでも頑張れるよ」
「それ!私、それが聞きたかったの!」
ウタはそう言うとトトの前に座った。トトも真剣な目つきをしてくるウタに真剣に応えようと座った。
「ねぇ、どうしてここから離れるの?私、来るときにエルマルを見て凄い砂に覆われて枯れ果てた土地だってのは分かった。どうして彼処に行くのか気になるの」
「・・・そうかい・・・1つは私達の土地だからと言うのもあるし、彼処が緑の街だった頃を知ってるからもう一度取り戻したい」
「・・・でも、無理かも・・・」
「そうかもしれないね」
「なら、どうしていくの?このユバは凄く良い所だって数日しか居ない私でも分かるのに」
「そりゃ、私が開拓した所だからね。それに開拓してここを復興させて何でも出来るって思った。雨だって降ったんだ。きっとエルマルも蘇ることが出来る」
「・・・私には分からない。幸せな場所から離れるのが・・・」
ウタは幼い頃からシャンクス達が戦ってる間、ウタワールドへ行っていたし、シャンクスと離れてから事あるごとにウタワールドに行っては幸せを感じていた。ゆえにウタの価値観では肉体の死は死ではなく心の死こそ本当の死だと思っている。
そんなウタにとってわざわざ心が死にそうな場所に行こうとするトトの行動は不思議だった。
「会った時に言ったように辛い分幸せが一気に来るんだ。それに幸せなままで止まってたら開拓者としてここに来たときの自分に嘘を付いてしまいそうなんだ」
トトの表情は優しく輝いてるようにウタからは見えた。そして幸せそうだった。
「あ、あの。もしも幸せな夢みたいな世界でずっと過ごせたらって考えたことある?」
「あぁ、あるよ。何百回もあるよ」
「なら・・・」
「けど、それじゃ駄目だと思うんだ」
「えっ?」
「“幸せ”に慣れたら“幸せ”が分からなくなるかも知れない。私は今が1番に幸せを“感じてる”。ウタちゃんの歌は凄く心地良くて楽しかったよ。ありがとう」
最後にウタと握手をするトト。
ビビと同じような暖かさをウタは感じていた。その後は夜も遅くなってきたのと先日のバルトロメオみたいな事もあるのでトトがホテルまで送ってくれた後でウタはベットの上に横になるがトトの言われた“幸せ”がわからなくなるという言葉がわからなかった。
ウタは悩みながらも自分なりの答えを探そうと深く深く瞑想し、時が経った。
〇〇〇
翌朝の早朝。
トトとその息子のコーザに数十人のチームが大荷物を持ってヒッコシクラブに乗っていた。
コブラやビビもこれからエルマルを完全に蘇らせるために頑張る師団の見送りをしていた。
「コーザ、体には気をつけてね」
「お前もな、ビビ」
「済まないなトト。いつも苦労ばかり掛けさせてしまって」
「いえ、コブラ王。まだまだ私は頑張れますよ!」
アラバスタの中で行われる内政なのでここにウタやゴードンはいない。トト達はヒッコシクラブに乗ってユバを出た。いくら速いヒッコシクラブでも野郎しか乗ってないのが不満なのか少しだけ遅かった。
コーザは現金なヒッコシクラブに呆れつつもトトは折角なのでのんびりと外の砂漠でも見ながらと頬に手を付けてると後ろから何やら走ってくるのが見えた。
「ヴォー!!!!」
「な、何だ?」
それはマツゲで背中にはウタが乗っていた。いくら、女好きマツゲが背中に美人のウタが乗ってるとはいえ、ヒッコシクラブに少しは追いついても全然、遠かった。
「ウタちゃん、何をやってるんだい!?」
「トトさん、私、トトさんの言ってること一晩考えたけど分かんなかった!!」
「そんな簡単に答えは出んよ!」
「うん、だからもっと悩んでみる!もっともっと悩んでいつか私なりの答えを見つける!」
ウタの表情は悩んでいる若者とは思えないほど爽やかだった。
「私、約束する!エルマルが戻ったら絶対にエルマルの復興祭で歌うから!!絶対に来るから・・・頑張ってね!!」
思いっきり叫んだウタ。
昨日の復興祭でウタの曲を楽しんでいた師団の面々は盛り上がっていた。それにウタのように綺麗な娘に言われて頑張れない男などこの師団の中には居なかった。
「お前ら、歌姫との約束を絶対に守るぞ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
コーザがそう叫ぶと男達も応えた。
ウタにはその師団の面々が凄く輝いて格好良く見えた。今まで幸せに感じていたウタワールドの中では見たことなくて新鮮だった。
やがてマツゲも限界が来て、ヒッコシクラブとドンドン離れていき、遠目にしか見えなくなった。ウタは完全に見えなくなるまで手を振っていた。
「今度は世界一の歌姫になって来るからねぇ!!」
そう叫び、ウタはヘロヘロのマツゲに謝りつつ、ユバに戻っていった。
〇〇〇
2日後、ウタとゴードンは次のライブ会場があるW7までゆっくり船旅をすることを決めて、W7行きの海列車があるところまでの客船に乗ることを決めた。
アラバスタまで足に使った「世経」は移動を全て自分達で賄うと言ってきたがウタはゆっくりと世界を周りたいと言ったのでゴードンはそれを認めた。
「ビビ、ありがとう。色々と教えてくれて」
「良いのよ。私も凄く楽しかった」
笑顔で話し合う2人。ウタは周りに聞かれないようにコソコソと話しかけた。
「ねぇ、ビビの仲間の海賊の船長って誰?」
ウタはビビの話を聞いてもしかしたらその海賊はルフィではないかと思った。何かと引っ張って行動する記憶があるルフィならあり得た。
ビビは大っぴらに言うべきか迷っていた。ウタは友達だし、こういう事を言いふらさないと思うが折角、皆が海軍や世界政府にバレないようにしてくれたからビビもそこらへんは大切な記憶で慎重だった。
「大っぴらに言えないけど、今は4億の大物海賊なの」
(4億・・・ルフィは1億だったから違う人か・・・)
ビビとしては4億きっかりの賞金首なんてルフィ以外知らないので分かるかと思ったがウタは想像以上にそこらへんには疎くて、おまけに1億ベリーの古いルフィの懸賞金を今でも一緒と勘違いしていた。
「へぇー、いつか見てみたいな」
「きっと気にいるわ」
ビビはウタにそう微笑んだ。やがて、船が出発しウタは港で手を振ってくれてるビビやカルーに手を振り返していた。2人の姿が見えなくなるまで手を振った。
見えなくなり、ウタは手を振り終えてゴードンに微笑んだ。
「どうしたんだい?」
「ううん、何でもない!」
ウタは今回の旅を薦めてくれたゴードンに笑顔を見せて笑った。
(ルフィ、私の旅も始まったよ!)
長手袋の麦わらマークをウタはただ胸に当ててそう心で言った。
〇〇〇
「ビックニュース・・・ビックニュースが・・・」
一方、行きは支社を使ってくれたのに次は断られたモルガンズはビックニュースが取れる状況だったのに取れなかったショックで寝込んでいた
はい、えぇ、ウタは懸賞金1億ベリーと書かれた手配書のルフィしか知らないので世間とズレが出てますw。
折角のウタの“幸せを探す”旅でもあるのに軌跡だけがメインになるのはもったいないのでしばらくはズレさせます。では次回の章でお会いしましょう!
次の舞台はジャヤです!