「「めんそーれ‼︎‼︎」」
沖縄の澄んだ空に若い男女の声が響いた。
「まさか盤星教信者……非術師にやられるとは、自分が情けない。」
「不意打ちなら仕方ないですよ。私の責任でもある。」
黒井の言葉に傑がそう答えた。
*
「なんにしても、黒井が無事で本当によかったのじゃ。」
海の家で昼食を摂りながら、理子がそう言って、花が咲いたような笑みを浮かべた。
「……なぁ」
それまで理子と一緒にはしゃいでいた悟が真剣な顔で口を開いた。
「ずっと気になってたんだけどさ、ソレ、何?」
「それ?」
「財布の中に妙なモン入れてるよな?」
「財布……特に何も入れてなかったと思うのじゃが。」
理子が怪訝な顔をして五条の顔を見た。
「なんか有名な神社のお守りとか入れてるんじゃねーか?」
「えー?」
理子が自分の荷物の中から財布を取り出して悟に見せた。
「中身見てもいいか?」
「べつに構わんが……汚すでないぞ?」
「汚さねーよ。」
悟は顔を顰めながら理子の財布を受け取った。
「何かあったのかい、悟?」
悟が理子の財布を覗き込むのを見て、傑が悟に尋ねた。
「ん、いや、悪いモンじゃねぇよ、多分。……傑、コイツの近くで術式……呪霊が使いにくいと思ったことあるだろ?」
「ああ、まぁ……たしかに。」
思い当たる節があるのか、傑は悟の言葉を聞いて顔を引き締めた。
「それ、多分これのせいだぜ。」
悟が理子の財布から取り出したものをひらひらと振って傑に見せた。
「羽根、かい?」
傑が戸惑ったようにそう言った。
周囲に金色の鱗粉のようなものを落としている純白のそれは、心なしか淡い燐光を発しているように見えた。
「の、のう、その羽根に何かあるのか?」
理子が、不安そうな顔で悟と傑の顔を見比べた。
「天内、コレ、どこで手に入れたんだ?」
理子の質問には答えずに、悟は理子に問い返した。
「せ、先輩にもらったのじゃ。妾が先輩からもらったのはその一枚だけじゃが、先輩はもっと沢山の羽根を持っておったぞ。」
「その先輩の名前、分かるか?」
「枷場先輩じゃ。」
「ハサバ……枷場、ね。」
悟が険しい表情のまま黙ったのを見て理子が声を荒げた。
「五条!この羽根が一体なんだと言うのじゃ!」
「悪いモンじゃねぇって言っただろ。ちょっと強めに霊力が付いてるだけだ。」
そう言って、悟は理子の財布に羽根を戻した。
「五条様、その霊力と言うのは一体……?」
黒井が悟に尋ねた。悟は面倒そうに眉を動かすと、口を開いた。
「あー……まぁ、簡単に言うと呪力を完全に消し去る力、だな。反転術式とも違う、根本的に呪力とは異なる力だ。」
「そんなものがあるのですか?聞いたことがありませんが……。」
「いや、今は使える人間がいねぇはずだ。大昔の偉い坊さんや神主なんかは使えたらしいけどな。……もし使える人間がいれば、腐ったミカン共が目の色変えて保護するはずだぜ。」
悟がそう言ったあと、理子に財布を手渡したのを見て、傑が理子に尋ねた。
「ねぇ、理子ちゃん、そのハサバ先輩って大人しそうで髪が長くて直毛で、低い位置で髪を一つ結びにしている小柄な子かな?」
「知っておるのか⁉︎」
理子が目を見開いた。
「……合ってるんだね?」
「ああ、先輩は小柄で大人しそうな人じゃ。髪型はわからんが、髪は長かったはずじゃから多分合っておるぞ!」
悟が不思議そうに傑を見た。
「知り合いか?」
「いや、悟には話しただろう?呪力と術式を持った廉直女学院の生徒のことだよ。彼女の名前がハサバだったんだ。」
「あー、なるほどな。……天内、その先輩は羽根についてなんて言ってた?」
「拾ったと言っておったぞ?校内で拾ったから天使の羽根かもしれんと冗談を言っておった。」
理子の言葉を聞いた悟が苦笑した。
「案外ホントかもしれねぇけどな。……傑の話だと、その先輩は呪術師なんだろ?」
「ああ。術式らしきものも使っていたから間違いないと思うよ。」
傑の言葉を聞いた悟は箸を皿に置いて頬杖をついた。
「一度その先輩を見てみたいな。……こんなモン拾えるだけの何かがあるんだろうし。」
悟の青い瞳はまるで宝石のようにキラキラと輝いていた。
主人公は、呪術高等専門学校に……
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