「あ〜、たゆたえ、ほら七色僕らを海岸線に映して〜…」
今俺は、1人歌いながら、のんびり釣りをしていた。
漁師の息子である俺は昔から、父さんとよく釣りをしたもので、今でもよく暇つぶしに釣りを良くする。
釣った魚はもちろん自分で捌いて調理をしてそのまま実食。お陰様で、料理の腕は回数を重ねる毎に上達して行った。
「今日もそこそこ活きのいい魚が釣れるな〜、今日は特にクロダイが釣れるな…晩飯はこいつをメインに作るか…」
既に俺のバケツの中にはクロダイが5、6匹入っている。揚げて食うのも良しだし、刺身にするのもよし。魚と言う生き物はほんとに偉大だと思う。
「にしても、風花さん…すごく美人だったな、今度魚料理を作って食べさせたいな………」
って、俺は何を考えているんだ!!それより新しいバイト先を探さなきゃって……
「そうだ、俺、昨日、風花さんに、がまがまで働かないか?って誘われたんだった…」
正直な話俺は魚の飼育なんて1度もやった事ない。寧ろ俺は命を殺める立場であって、全くもって正反対だ。
それに一番の問題は、海咲野さんの所の娘さん、くくるさんに会ったことがない。
櫂曰く俺の家から結構近い場所に住んでるらしいけど、俺は1度も会ったことがない。
「俺と同い年とは聞いてたが………」
正直会うのはちょっと怖い。俺はあんまし女子慣れしてないし、何より魚や海の生き物を愛する人と仲良くできるかが一番の問題だと思う。
「それに…櫂が言うには、めっちゃおてんば娘って聞いたことがあるさ…」
正直、会わないのが吉だと俺は思う。いや、さ?俺は魚を殺めるような仕事をしてるさ。
そんなのが水族館で働くなんて…とてもじゃなくても、受け入れ難いと思うんだ…
「やっぱり別のバイトを探すしかないさ…絶対気が合わん…」
「そんなことは無いよ」
「いやでも、俺は漁師の息子で………ってうわぁ!!!」
突然横から声が聞こえたもので、ビックリしてとんでもない声が出てしまった。
横に座ってたのは、髪の青い制服?を着た女の子だった。しかも中々の顔立ちだったさ。
「驚きすぎだよ〜!って、ホントに櫂の言う通りだったなー」
「か、櫂?なんで、櫂…?もしかして…」
青い髪の女の子はそのもしかしてだよ!と、言わんばかりにニコニコしながら、俺に近寄ってきた。
風花さんとは違いかなり肉食系か?と疑うくらい近い距離まで来た。
「私の名前は海咲野 くくる!宜しくね、波音っ!」
やっぱり海咲野さんだったか…でもよかった。もっときつい性格の人かと思ってたけど、割とフレンドリー?で、怖がらなくて済んだ。
「ねぇねぇ!波音!このクーラーボックスの中見てもいい?!」
「え…あぁ、構いませんけど…」
突然、海咲野さんは自己紹介を終えたあと、俺の横に置いてあるクーラーボックスに食いついた。
にしても、ほんとに距離が近くて困る。普通の男なら、勘違いして好きになるよ。
「うわぁ…!!クロダイが沢山いるね!これ全部、波音が釣ったの?」
「え、あ、はい、そうですけど」
「良いな〜!私、魚は好きなのに釣りとかあんまりしないからさ〜!」
海咲野さんはすごーいと言わんばかりに、俺の釣った魚に食いついた。
にしても、何しに来たんだ…?まさかとは言わないけど、勧誘しに来たのかな?
だとしたら断ろう、正直絶対に俺に向いてないと思うし、待ち構えて、捌きそうで怖い。
「えっと…なんの用で俺に声を…?」
「あ!ごめんね!本題にじゃあ入るね!」
どうやら、当の本人は話す内容を完全に忘れていたらしい。と言うか俺が正確には俺のクーラーボックスが忘れさせたのだろう(知らんけど)
海咲野さんは準備が整ったと言わんばかりに、1度咳払いをしてこう言った。
「波音!君をがまがまのスタッフに任命します!」
「は?」
理解すんのに少々、時間かかった。え?スタッフ?何のがまがまの?
「いやいやいやいや!無理無理無理です!」
「そうは言わないでさ〜!頼むよー!!」
海咲野さんは泣きつきながら俺に懇願するが、俺は頑固に、断りの返事を返したが…
「いま、スタッフ私や風花、櫂を入れて6人しかいないんだよー!」
「いやでも…魚を飼うのではなく…捌いたり釣ったりするのが専門で」
「それでもいいから!頼むよー!風花も来て欲しいって言ってるしさ!」
「えっ…それは…」
風花さんが来て欲しい…?!俺が…?!そんなの…そんなの…断れないだろ〜!!
「ね?!良いでしょ?風花もきっと喜ぶよ!」
くうううっ!風花さんの喜ぶ顔が見たい…!!よし……
「やります」
「ほんと!?やったぁ!これで仕事も大分楽になるよー!ありがとうね」
そう言うと海咲野さんはルンルンとスキップをしながら、走り去っていった。
そしていなくなったあと……
「風花さんと同じ場所で働くのか……って!」
別に、風花さんのことが好きな訳では無い!それに俺達は知り合って全然時間も経ってないし…でも……
「めちゃくちゃ綺麗だったなー…」
って、そんなキモイ考えをしてたら……
ポケットに入れてるスマホが突然震え出した。
珍しく通知の音が聞けたから開くとそこには、風花さんからメッセージが届いていたり
「アルバイトする気になったんだね!宜しくね、波音君!」
と、一言メッセージが送られていた。そして、俺は一つ思い出した。
俺、実は風花さんと連絡先を交換していたんだった。
「まぁ…後で試しに行くか……」
俺は立ち上がりそのまま、がまがまの方へ足を運ぶのだった。
ねむ