コンビニでの一悶着の後、予定より一人増えてカフェに入店し、窓際の席に座る。
「私はこちらの紅茶を」
「私はコーヒーで」
「俺は、ソフトドリンクで」
それぞれが注文終え、メニューを閉じて注文を受け終えたウエイトレスが他のテーブルへ向かうと、少し意外そうに坂柳が尋ねてくる。
「坂井くんはソフトドリンクですか......」
「確かに少し意外......」
「生憎、コーヒーや紅茶はさっぱり飲めなくてな......それで、態々カフェに呼ぶような話ってなんだ?」
その問いを聞くと、坂柳の顔がいつになく真剣なものへと変わる。それに引き連られて神室と俺の顔も少し引き締まる。
「単刀直入にお聞きします。坂井くんに真澄さんは、この学校のSシステムについてどうお考えですか?」
坂柳の質問に神室と顔を見合わせる。確かに思い当たる節は複数あるが神室はどちらとも言えない表情だ。再び、坂柳の方に向き答えを述べる。
「そうだな......まず毎月ポイントは入るんだろうが、10万ポイントと言うことではないんだろうな」
「私もそれは思った。毎月10万は流石に怪しいと思う。先生もそこまでは断言はしてなかったし......」
俺たちの回答に坂柳はお気に召したようで、興味津々でこちらの話の続きに耳を傾ける。
「あと、そのポイントの増減はクラスによって違う可能性が高い......その増減は多分、授業態度とかで決まるんだろうな......そうすれば監視カメラの多さも納得が行くな......」
「そう言えば、先生がこの学校でポイントで買えない物は無いって言ってたってことは何か裏があるのかも......」
「具体的には......明日、先生にでも確認するか?」
「そうしましょうか......真澄さん、明日もついてきて貰えますか?」
「分かった、あんたについてく」
そこまで話すと大方、話したかった内容は終わったのだろう。坂柳の顔が少し緩み、真剣さが薄れていく。ため息を吐くように坂柳はポツリと呟いた。
「しかし、予想外でしたね。坂井くんや真澄さんがここまで頭が切れるとは......」
「私は大してすごくない......坂井がそこまで頭が切れるように見えないのは同感だけど......」
「二人とも酷くないか......確かに俺は器用貧乏だけどさ......」
肩を竦めながらため息をついて、自分の無力感に浸っていると神室が少し物言いたげな雰囲気を醸し出し、ジト目でこちらを睨んでくる。
「どうした神室?」
「坂井のレベルで器用貧乏なら、私は何も出来ないことになるじゃん......」
「そんなことないだろ?神室は頭もその気になれば俺より切れるだろうし、見た感じ運動神経も悪くなさそう、何より美人だから、その時点で十分俺なんかより優れていると思うけど......」
この言葉に、二人はそれぞれの反応を見せる。坂柳は少し驚いた後に、不気味に微笑んでいる。一方の神室と言うと恥ずかしいのか、顔を少し赤らめながら明後日の方向見ている。俺が状況が飲み込めずキョトンとしていたため、暫くの間沈黙が三人の間を支配する。そして最初に沈黙を破ったのは坂柳だった。
「いやはや坂井くんには毎回、想像を裏切られますね......まさか出会って初日の真澄さんを口説こうとするとは......思っていたより積極的な方のようですね......」
坂柳は不気味な笑みを浮かべながら、端末に先程の録音画面を表示して、こちらを揶揄って来ている。
『神室は頭もその気になれば俺より切れるだろうし、見た感じ運動神経も悪くなさそうだし、何より美人だから......』
真意が読めなかった俺は、すぐにその音声の意味を理解する。
「坂柳、落ち着いて今すぐその音声データを消してくれ......そんな口説き文句みたいな発言を広められたら社会的に死ぬから!」
「嫌ですよ。いくら坂井くんのお願いとはいえ、それは譲れませんね。殿方なのですから、発言の責任はしっかり取って頂かないと」
せめてもの請願すら虚しく拒否され、慌てふためいている俺を見てクスクスと笑いを抑えきれていない坂柳。ここで今まで沈黙を貫き通していた神室が一言、呟く。
「別に私は気にしてないから......」
「神室......会って初日から恥ずかしい思いをさせてしまって......」
「だから気にしてないって......後、真澄でいいよ。坂柳と呼び方違うと気になるし。私も侑己って呼ぶから」
「お、おう。分かった、改めてこれからよろしくな真澄」
「こちらこそよろしく、侑己」
「おや、お二人が仲良くなったようでなによりです。よろしくお願いします、真澄さん」
こうして、神室真澄は友人を二人得た初日であった。
神室好きだけどキャラの描写が難しい。何でも屋要素はしばらくはお預けの予定です。