翌日、少し余裕を持って寮の自室を出て、学校に向かう。寮から教室までの距離は近そうで意外と遠いので、少しまだ眠気の残る両目を擦りながら呑気に歩いていると、後ろから聞き覚えのある声がかかる。
「おはようございます、坂井くん」
「おはよう、侑己」
昨日、友人となった坂柳と神室の二人だった
「おはよう、二人とも」
「昨日と同じ冴えない顔で安心しました」
「酷い言われようだな......冴えない顔ってなんだよ、冴えない顔って」
「そのままの意味ですよ、一言で言ってしまえばモテなさそうな顔ですかね?」
「もっと酷くないかそれ!?イケメンじゃない自覚はあるけどさ......」
呼応するように始まった坂柳の突然の辛口の顔面評価に、内心精神がへし折られそうで戸惑っていると、流石に可哀想に感じたのだろう。神室が坂柳を止めに入る。
「坂柳、そこまでしておいたら?流石に冗談でも可哀想だし......」
「おや、真澄さんは坂井くんの味方ですか......意外ですね、てっきりこのまま加勢してくると思っていました......」
坂柳が神室の裏切りに驚いている間に、いつの間にか教室まで着いていたようだ。三人で教室に入ると、幾つかの視線がこちらを向く。だがAクラスの雰囲気的に色恋沙汰には興味は薄いのだろう。特に非難の視線が向くという訳ではなく、俺は自分の席に座って今日の予定を確認する。後ろでは坂柳と神室が談笑している様子だ。ていうか、神室って俺の隣だったのね。気づかなかったわ。
「今日の予定は......オリエンテーションと部活紹介か......」
そう呟くと、先程座ったばかり席を立ってトイレに向かう。トイレに向かうついでに他クラスの様子を偵察してみることにした。他クラスの偵察と言えば聞こえは良いが、実際は興味本位で覗きに行っただけである。
「えっと......そんな感じか......」
他クラスを全て見た感じの総評は、
Bクラス:全体的な団結度は高い
Cクラス:特徴的な点は無いが、怪しいくらい何も無いのが少し気になる。
Dクラス:とても騒がしく、まさに動物園。
こんな感じの印象を持った。そのままトイレを済まし、教室に戻ると、入口を入ってすぐに金髪の男子に話しかけられる。
「よお!坂井侑己であってたか?」
「そうだが......俺になにか用か?確か......橋本正義だったか?」
「おう、正解だ!よく覚えてるな、俺の名前!」
「自己紹介の時、少し特徴的な雰囲気を醸し出していたからな。何となく覚えてた」
「そりゃ光栄だ!よろしくな坂井!」
橋本は、笑いながら手を差し出してくる。
「お、おう。よろしく橋本」
応じて俺も手を握り、軽く握手する。
「で、用件はなんだ?ただ自己紹介のために話しかけてきたわけでは無いようだし......」
「そうだな、ちょっと来てくれ」
手招きされて廊下に出ると、橋本が口を開く。
「坂井ってさ......神室と仲良いのか?」
「まぁ一応、話したりはするが......会ったのは昨日だから、そこまでだと思うが......」
橋本はおそらく、神室に自分を紹介してくれとでも言うのだろう。
「神室って他の女子と話さないじゃん」
「別に紹介しても良いが、上手くいくとは思えないぞ。ただでさえ、坂柳以外と話してるの見たことないが......」
「そうかー......また機会があったらでいいわ。すまんな、わざわざ呼び止めて......」
橋本は少し手を上げながら教室に戻って行く。教室に戻り、午前中は軽い説明を聞くだけだったので、体感的に直ぐに昼休みになった。俺は坂柳と神室の三人でクラス担任である真嶋先生に質問のため、教員室に向かう。
「失礼します、真嶋先生はいらっしゃいますか?」
「ここにいる!用件はなんだ?」
「Sシステムについて少し質問があります」
俺の放った一言で真嶋先生の、そして教員室の雰囲気がガラッと変わり、真嶋先生の表情が真剣なものに変わる。
「そうか......すまないがあそこに移動しよう」
そう言って真嶋先生が指したのは、教員室に隣接している生徒指導室だ。
「分かりました」
真嶋先生を含めた俺たち四人が生徒指導室に入ると、真嶋先生は扉を閉めて真剣な表情でこちらに質問を投げかける。
「改めて聞くが、質問はなんだ?」
「Sシステムについてですが、毎月のポイントを決める査定の基準を教えて貰えますか?」
「いつからその事に気づいていたんだ?」
「昨日です。先生が説明した際に毎月10万ポイントを貰えるとは明言しなかった時に気づけました。学校側がもし俺たちに毎月10万ポイントを送信するなら、普通は明言しますよね?でも先生はそれをしなかった。つまり、毎月配られるポイントは変動するということだと考えました」
「質問に関しては、すまないがそれに答えることは出来ない。学校の規則で生徒には教えられないんだ」
「そうですか......」
評価査定が授業態度であることを確定出来れば良かったのだが、Aクラスは比較的他クラスよりも真面目な生徒が多い。授業態度の悪さによって、クラスポイントの下降は回避できるだろうが、他の要素でも変動するのであれば確定させたかったが、規定なのは仕方がない。
「先生、私からも質問あります」
「次は坂柳か......質問はなんだ?」
「先生はこの学校でプライベートポイントで買えない物はないと言いました。でしたら、普通ならありえないものでも買えてしまえるということでしょうか?」
「ありえないものとは具体的には?」
「例えばテストの点数とか......他にはそうですね......クラスを移動する権利とかでしょうか......」
先生は目を見開いて少し驚いた後、質問に対する返答をする。
「今言った物は購入可能だ、ただしかなりの高額になるがな」
「そうですか、ありがとうございました」
「私からも以上です。ありがとうございました」
「神室は何もないのか?」
「いえ、私はただの付き添いで来ただけなので......」
「そうか......分かった、戸締りはしておくから教室に戻っておけ」
この後、俺はこの学校で気づいたのは氷山の一角である思い知ることになった。
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