Double Cross、それは、裏切りを意味する言葉。彼は今回、何に裏切られ、何を裏切るのか──
登場人物(というか同卓者PC)はこちら(名前をタップすればキャラシに飛べます)
葉月御影
新条翼
如月瑠唯
来路野静治
浅樹佑月
「オーヴァードだと思われる人物の尾行…っすか」
つい最近、とある「事故」によってオーヴァードとなった男子高校生、
「あぁ。こちらの調査したところ、今のところファルスハーツとの関係性は未確認、所謂フリーのオーヴァードであると考えられる。葉月、君にはこいつを追ってもらいたい」
そう言って如月は、サングラスにマスク、厚手のロングコートにハンチング帽を被った、性別も何も掴めそうもない、背の高い痩せた人物の写真を葉月の前に出した。
「フリー…浅樹サンみたいな、ってことか」
「あぁ、そういうことだな」
「なるほどなぁ…」
葉月はそうつぶやきながら、あの気まぐれな猫を思わせるしたり顔を浮かべた「彼女」を思い出して顔をやや強ばらせる。
「安心してくれ。何も戦闘をやってくれを言うわけじゃない。あくまで今回は尾行、つまり調査がメインだ。それ以降のことはこちらでしっかりと手配する。何よりこれは葉月、君の初任務になるわけだからな。あまり気負いすぎることなく、フラットな気持ちで臨んでくれ」
「あぁ…そうさせてもらうぜ。ま、やらなきゃならないってなったら流石にやるけどな」
「そうならないようこちらでも手配する。それでは、健闘を祈る。葉月御影、いや、『
「…で、その『手配』ってのがアンタなのか」
噂をすればなんとやら、とは正しくこのことか、と初任務の開始ポイントに到着した葉月は、そこで待っていたある人物の登場に、呆れたような表情を浮かべた。
「やぁ、葉月君。ふふ、今日はよろしくね?」
黒い長髪、
「ふふ、戦闘方面はもちろん、これは結構真っ当な人選なんだよ?私はフリーだから顔は割れてないし、尾行は探偵の専売特許だからね。私の動きを見て、ノウハウを学ぶといい」
「あぁ、そういう理由も含まれてるのか…まぁ、そういうことなら、よろしく頼む」
「任せてくれ。佑月おねーさんが何でも教えてあげよう。それこそ手取り、足取りに……ね?」
ズイ、と葉月の方へと接近し、彼の手を取る浅樹。相応に近寄った浅樹の鼻先が、葉月の鼻先と触れ合うその直前まで近づいたその瞬間、ふわり、と花のような柔らかい香水の匂いが、葉月の鼻腔を擽った。
「っ…アンタ、何を」
「ふふ、何事にも冷静沈着に、そして動くときは大胆に…これも探偵の心得だよ?この程度で取り乱してちゃだ〜め♡ほら、
「ぐ…おう、よろしく頼むぜ」
たじろぐ葉月を軽くからかった後、すぐに何事もなかったかのように離れ、件のターゲットの方へと目線を向ける浅樹。葉月は、からかわれたことを察して顔をしかめたが、すぐに任務であることを思い出し真面目な顔に戻った。
「さて葉月君。彼の姿から、何かわかることはあるかな?」
「う〜ん…この時期にあの厚手のコート、真っ黒なサングラス、黒手袋、マスク、帽子…あからさまに不審だな」
「そうだね、その通りだ…でもそれは、もしかしたら
「そうせざるを得ない…?どういうことだよ」
「うん、そうだね。例えば…『オーヴァードとしての力をまだ使いこなせていない』、とか」
「!それって…」
「あぁ、君のように、覚醒した時期が最近なんだろう。あんなふうに体を隠してるってことは、シンドロームは君と同じキュマイラかもね」
「俺と同じ…バケモノの姿になってるのか。…で、戻れなくなってると」
「その可能性はあるね。…それと、寒すぎて着込まなきゃいけない、という理由も考えられる。熱気と冷気を操るシンドロームとして、『サラマンダー』というのがあるんだ。その冷気側に特化したタイプ、ってパターンかも」
そう言いながらターゲットの能力を推察する浅樹の姿は、まさしく名探偵のようだった。普段はあまり見れない真面目な、探偵らしい彼女の姿に、葉月は驚きを隠せなかった。
「アンタが真面目な顔してるの、なにげに始めて見た気がするぜ…」
「ちょっとちょっと〜?それは酷い言い草なんじゃないかな?まるで私が日頃不真面目なだけのかわいいおねーさんみたいじゃないか。私だって傷つくんだよ?」
「えっ…いや、そうだよな。悪ぃ」
「ふふ、いーよ。それより尾行を続けよう」
そう言われてターゲットを確認すると、どうやら曲がり角を右に曲がろうとしているところだった。長いコートの裾がどんどんと見える面積を小さくし、姿を消そうとしている。
「まずい、見失うぞ」
「大丈夫、安心して葉月君。私達の足なら彼を追えないことはないし、これ以上は逆に気づかれやすくなる。この距離感は大事だよ」
そう言って浅樹は、軽やかに、しかし、それでいて静かな足取りでターゲットの後ろを追う。曲がり角の先には、確かに、コート姿の不審者が歩いているのがわかった。
「ね?」
「確かに…ん?そう言えば、何で」
アイツが
「!バレたのか!?」
「カーブミラーで私達が
「気にするなよ、それよりも今はアイツを追わねぇと!!」
ターゲットを追い、走り出す二人。フラフラとした動きながらも、思いの外速く走るターゲットだが、運動が得意な現役男子高校生と、調査で仕込んだ健脚を持つ探偵には敵わずどんどんと距離を狭められる。しかし、
「ぐおッ!?」
「ッ!」
振り返ったターゲットが掌をかざした瞬間、まばゆい光が二人を襲った。思わず葉月達は目を覆う。目が慣れ、見えるようになった頃には、ターゲットの姿は消えていた。
「いねぇ…!」
「あの強烈な光…ターゲットのシンドロームには『エンジェルハイロゥ』があったようだね。してやられたよ」
いつものように笑みを浮かべている浅樹だが、その顔には僅かに悔しさが見て取れた。
「私は空から奴を探す…見つけたら指示を出すから、葉月君は地上から探して」
「空から…あの攻撃の時に使ってた奴か!」
「うん、空なら周囲を一望できるからね。……ターゲットはまだ遠くには行って無いはず、エンジェルハイロゥ、加えてさっき言った2つのどちらかのシンドロームを持っていたとしたら、相手には攻撃の手段がある!気をつけて探して!」
「了解…浅樹サンも気をつけろよ」
「大丈夫、おねーさんに任せなさい、ってね」
そう言うと浅樹はエフェクト『イオノクラフト』を使い宙へと飛び上がる。そしてその瞬間、周囲の人が、時間が止まったかのように停止する。ワーディング、全てのオーヴァードが持つ、オーヴァード以外の全ての動きを止める力だ。葉月は止まった人を避けながら、ターゲットが行ったであろう方向へと走り出す。しかし、どこを見てもターゲットの姿はない。
「畜生、何処に行きやがった…!どうにかして探せれば…」
葉月は走りながら考える。浅樹の持つ
『俺と同じ…バケモノの姿になってるのか』
バケモノ──キュマイラ。そう、葉月の持つ能力、肉体を、獣に変える力だ。もしかしたら、自分を怪物に変えるこの力なら、ターゲットの場所を探ることができるかもしれない。
「やってみるしかねぇか…!」
そう、覚悟を決めた葉月は、肉体を獣へと変化させる。浅黒い肌、白く掠れ透けた髪、額より生えた鋭い双角、まさしくその姿は──『鬼』だった。
「さァ、鬼ごっこの時間だぜ、ってな」
そう言った後、鬼は街中を駆けていった。
「……」
ターゲットは、街中を上手く隠れながら走っていた。マスクで制限された呼吸は荒く、足取りはやはりフラフラと覚束ない。ふと周りを見ると、そこには地下へと続く階段が見つかる。その先にあるのは、バーか、それとも仮倉庫のようなものか。何であれあそこであれば、暫くは休めるかもしれない。そう考えたのか、ターゲットは階段の方へすぐに向かい、階段を何段か下った、その時だった。
「──見つけたぜ」
「!」
そんな葉月の言葉によって、ついに鬼ごっこは、終わりを告げた。
「……最初は少し手こずったけどな。でも、よく考えて、じっくり探せば、お前を見つけるのは簡単だったよ」
「……」
「
葉月は、ターゲットの体から放たれた、香水の匂いを辿り、ここまで来たのだ。匂いを最初に感じ取ったのは、ターゲットに極光を浴びせられた時だった。コートの奥から感じられた、ミントのような爽快感のある匂い。それを、確かに嗅ぎ取ることができたのだ。
鬼となった葉月の強みは、その圧倒的な身体能力のみではない。獣に近い存在へと変貌したことにより、五感は鋭敏に強化され、街中の音を、匂いを、景色を、つぶさに聞き取り、嗅ぎ分け、そして視認することができるようになった。浅樹が得られる情報が上空からの視点、視覚的情報のみだとすれば、地上にいる葉月の得られる情報は視、聴、嗅の三つ。単純な効率はそのまま3倍だ。それ故に、ターゲットをいち早く発見することができたのだろう。
「すぐに他にも救援が来る…余計な抵抗はしねぇ方がいいぜ」
「……」
「手前が何を考えてんのかは知らねぇが、大人しくしてくれてりゃこっちも何も危害は加えねぇ。一旦、俺に従ってくれ」
そう言う葉月を見上げながら、ターゲットは何かを考えているかのような、微妙な空白のあと、重々しく口を開いた。
「……私が、何を考えているか、知りたければ、ついてくるといい」
男の声と女の声、嗄れた老人の声と幼い童子の声、その全てが
「は?どういうことだ」
「来れば、わかる」
そう言ってターゲットはついに階段を下り終え、そこにあった扉の中へと入っていった。ガチャリ、と扉が閉まる音のみが響いた。
「……行くしか、ねぇな」
続くように階段を降り、扉を開ける。葉月がその先で見た光景は────
「「「初任務
そんな、陽気な掛け声と、パン、パン、パァン、という、どこか気の抜けた、軽快なクラッカーの音で迎えられ、大量の料理と飲み物が置かれた数多くのテーブルが所狭しと配置された、まさしく『宴会会場』と言える場所だった。
「……………は?」
思わず
「へ…?いや、これ、どういう……?」
「すまない、葉月。所謂、『ドッキリ大成功』、という奴……だそうだ」
状況が飲み込めない葉月に声をかけたのは、自分に初任務の依頼をした本人である、如月だった。
「支部長…!いや、ドッキリってどういうことだよ!」
「君のUGN入隊の歓迎会だよ。最初から全部、君を歓迎するために仕組まれてた、ってことさ」
「!浅樹サン!」
「やっほー葉月君。途中で分かれたところから、こっちの準備を進めさせてもらってたよ」
「貴方はいきなり来て先に料理をつまみ食いしていただけでしょう…」
いつの間にか既に歓迎会の輪の中で料理を食べている浅樹を見、更に驚いた葉月。
「まぁ、簡単に言うと、UGNでの任務に慣れてもらうための、いわゆる『チュートリアル』、というやつだ。支部職員を相手の鬼ごっこで、シンドロームの操作に慣れてもらう訓練も兼ねている、というわけだな」
「そ、そんなんアリかよ……」
どっと疲れた、といった表情でため息をついた葉月だったが、しかし、そこであることを思い出す。
「そ…そうだ!あのターゲットは…!確かにここに入って来てたはずだ!アレは誰だったんだ!?」
「あぁ、
そう言って浅樹は指を指した先には、
「ハァ…ゼェ……グフッ………し、死ぬ………」
そう言って汗だくになりながら、『ハンチング帽』を被り、『サングラス』を額にかけ、『マスク』を顎下まで下げて息荒く咳き込みながら呼吸し、ヒールの高い『シークレットブーツ』を脱ぎ捨て、『ロングコート』を背もたれに掛けて、蹲るように座る
「あ、アンタは…えーと、来路野サン…だ、大丈夫か……!?」
「おう…安心しろ…無事絶命まっしぐらだ……はは、歳は取りたくねぇもんだな……」
「大丈夫じゃねぇじゃねぇだろソレ!!」
息も絶え絶えに返答する来路野はほぼ瀕死に近かった。それでも葉月の方へサムズアップをしつつ受け答えをするあたり、来路野の根の真面目さが見て取れる。
「…ってか、アンタがターゲット役だったのか…じゃあ、浅樹サンが最初、ターゲットが男だってわかってたのは」
「ヒント出しのつもりで、ちょっとね♡」
「あのフラッフラの歩きは」
「……おそらく、丈にあっていないシークレットブーツと初夏の暑さが原因だろうな」
「変な声は…」
「マスクに仕込んだ……ゼェ……変声機だ……ガフッ」
上から浅樹、如月、来路野のそれぞれによる答え合わせに、開いた口が更に塞がらなくなる葉月。
「な、ならあの光は何だよ!?来路野サンの能力って…確か回復とか補助に特化してるやつだろ!?」
「あー…それはだな…」
「俺が発光機を作ったんだ。中々いい出来してたろ?」
「!お前、その声は……!」
来路野の返答に割って入るように、新しい声が聞こえてくる。
エプロンを掛け、両手に大皿の料理を乗せた、紫髪紫眼の少年、
「ま、相手に実害がなくてオーヴァードだと思わせるもんだと、やっぱ光が便利だからな。上手く引っかかったようで何よりだぜ」
「お前も
「てか支部のほぼ全員仕掛け人だぞ?ここに来てるのも特にノリノリだった一部と今日任務がなかった連中だけだし」
「これそんな1施設ぐるみでやることか!?」
ドヤ顔でサムズアップをかましながら言う新条に思わずそんなツッコミをキメる葉月。しかし、そんなツッコミも素知らぬかのように、新条は笑って向き直った。
「ま、
「そうそう、部外者の私からしても、オーヴァードの雇用口としてはかなりの優良物件だと思うよ」
「アンタは部外者なのになんでそんな我が物顔なんだよ情報屋…」
「ほら、こんだけ好きに出入りしてたら私もう組織の人間みたいなものじゃない?」
「好き勝手言ってんなぁ…」
そんな風に、談笑する新条、来路野、浅樹達を見て、呆れたような笑みを浮かべる葉月。それを見て、如月は新条に代わり葉月の前へと行き、手を彼へと差し出した。
「それでは改めて、宜しく頼むよ葉月御影。──いや、『
「……あぁ、この力を手に入れた時から、もうとっくに覚悟は決まってる。この力を、バケモノになった俺の力を、誰かのために使えるなら、思うまま振るってやるさ。そのためにも、宜しく頼む」
そう言って葉月は如月の手を取り、固く握手を交わした。それを見た周りの職員は拍手と共にまたも葉月に対し歓迎の言葉を送る。確かに葉月が、UGNのメンバーとして迎え入れられた、その瞬間だった。
葉月御影の初任務──『オーヴァードの尾行』もとい、『新人歓迎会に出席する』、無事、クリア。
To Be Continued…?
ネタが浮かべば多分続きます。あと私はやっぱりギャグの類の才能がねぇ