一匹狼の大海賊   作:篤志

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一匹狼の大海賊、ウォルフ・D・ヒュー

 世界最大の大監獄インペルダウン。海軍本部マリンフォードのすぐ近く、カームベルトと呼ばれる巨大な海中生物の住処のど真ん中にそれはある。

 

 下に降りるにつれて犯罪重要度は重くなり、その最下層の地下6階、通称レベル6には大犯罪を犯した億越えの海賊達が幽閉されている。ここに入ったが最後、一生日の目を見ることはできない。海軍に捕まった海賊がこの階に連行されるということは死刑または終身刑であるということを意味していた。

 

 レベル6のフロアは静かだ。まるで誰もいないかのように海楼石の手枷を付けられたまま物音一つすることはなく海賊達は息を潜めている。

 

 しかし今、インペルダウンはその機能を果たしていなかった。世界的大犯罪者であった海賊王ゴール・D・ロジャーの血を引くポートガス・D・エースの処刑を阻止するために単身でインペルダウンに侵入したモンキー・D・ルフィを皮切りに、レベル6に幽閉されていた名だたる海賊達が揃ってインペルダウンを脱獄したのだ。

 

 そして、その混乱の中レベル6で息を潜めていた男がいた。

 

周りの囚人達が脱獄していく姿をじっと座ったまま見ていた男。レベル6で一番の古株である。男の名はウォルフ・D・ヒュー。通り名は“虎狼”。20年以上前からインペルダウンに幽閉され、今もレベル6にいる男。海賊王と呼ばれたゴール・D・ロジャー、現在世界最強と称されるエドワード・ニューゲートに並ぶ一時代を築き上げた海賊の一人である。痩せこけ、髭は伸び、服はボロボロだが、体は丈夫そのもの。目はギラギラと生気を帯び、彼が放つオーラは気絶するほどに強大だった。

 

「若造が...俺も血が疼いてきやがったじゃねェか。」

 

海楼石の手枷と足枷を難なく粉々にし、牢屋の檻を捻じ曲げて外に出る。上を見上げると、地上まで続く穴がぽっかりと空いていた。ヒューは足に力を入れると、その穴に向かって飛び上がった。各層を足場に軽い身のこなしで地上まで登りつめるヒュー。

 

 看守達は目の前に現れたヒューを見て固まる。しかしすぐに目つきを鋭くして声を発した。

 

「誰だ貴様!」

 

看守達はヒューの姿を見てもわからなかった。ボロボロの老人が脱獄したように見えていた。それも無理はない。このインペルダウンに幽閉されて20年以上。レベル6の最深部に近い場所でヒューは今まで息を潜めていたのだから。名前は知っていても、顔までは20年以上経っているうえに浮浪者のような容姿は歴戦の海賊とは程遠いものだったからだ。

 

そこに大きなけがを負った大男が入ってきた。

 

「き...貴様は脱獄させんぞ。」

 

満身創痍の男の名はインペルダウン所長マゼラン。体を毒に変えて戦うドクドクの実の能力者である。

 マゼランはヒューを見て一瞬目を見開いたが、すぐに体を毒に変え戦闘態勢を取った。一方のヒューは構えもせずただ立っているだけ。そんなヒューにマゼランは言う。

 

「なぜ今になって脱獄なのだ。ウォルフ・D・ヒュー!」

 

ボコボコと毒が発生する中ヒューは涼しい顔でマゼランを見据えた。

 

「海が俺を呼んでいるのさ。昔俺はお前に言っただろうマゼラン。俺もロジャーと同じように処刑すればよかったってな。海賊はどこまで行っても海賊だ。テメェだってわかってるはずだぜ。」

 

周りの看守達がバタバタと倒れていく。マゼランの毒によるものではない。原因はヒューにあった。その証拠にマゼランも看守達と同じく意識を失いかけていた。

 

「こ...虎狼...きさ...。」

 

限界だったのかマゼランは前のめりに倒れる。その横を何事もなかったように通り過ぎるヒュー。マゼランが倒れたことによって監獄の機能は完全に停止し、インペルダウンが事実上崩壊した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 船着き場に出たヒューは船が一隻もないことを確認する。遠くのほうに海軍の軍艦が見えるが囚人が乗っ取っているのだろうと推測できた。ヒューは久方ぶりの海を見て笑いを抑えられずにはいなかった。心の底から喜び、これからの冒険に想いを馳せる。

...また海に出ることができる。馬鹿共と酒を酌み交わし喧嘩をし、馬鹿をやりあえる...

老体と呼ばれる年齢となった今でも体力はまだ有り余っていた。海を見れば海賊の血が疼いた。

 ヒューは頬を緩める。まずはリハビリがてら世界の中心にでも行ってみようかと画策する。

 

「待ってろ、ニューゲート!ダーッハッハッハ!死に急ぐんじゃねェぞ!兄弟ィ!」

 

世界が変わろうとしている時、一匹狼の大海賊が復活した。




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