一匹狼の大海賊   作:篤志

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早まるエースの処刑!白ひげ海賊団の猛攻!

マリンフォードはかつてない戦いに崩壊の一途を辿っていた。逃げられようもない三大将の能力による攻撃は海賊達を海の藻屑へと変えていく。そんな中、処刑台には新たに2人の処刑執行人がエースの横に立った。

 

センゴクの声が世界中に響き渡る。

 

「これより、ポートガス・D・エースの処刑を行う!」

 

手に持っていた電伝虫の通信を切り、近くにいた赤犬に指示を出す。

 

「サカズキ、手筈通りに頼んだぞ。」

「わかっとります。ヌン!『流星火山』!」

 

サカズキは身体をマグマに変えると、そのマグマを巨大な塊にして凍っている海に向かって放った。無数のマグマの塊は禍々しい拳の形をしており、湾内にいる海賊はなす術もなく氷が溶けた海の中へ落ちて行った。

 

海軍はマリンフォードの広場に海賊を上がらせないように波打ち際に巨大な壁を自動的に構築する。そして逃げられなくなった海賊達を一網打尽にする作戦だった。しかし、ここで海軍の思惑は思うようにいかなかった。正面の壁が一つだけ構築されなかったのだ。

 

それを食い止めているのは、

 

「エーズぐん!だずげにぎだど!」

 

見上げるような巨体。巨人族よりもはるかに大きいその男の名は、リトルオーズ.Jr。伝説になっている、かつて国引きと呼ばれた魔人オーズの子孫であり、白ひげ海賊団傘下の海賊を率いる船長である。

 

湾内が壁に囲まれるのを防いだのはよかったものの、広場にいる海兵からの攻撃を全て受けることになった。オーズにとっては痛くも痒くもない攻撃ばかりだった。しかしそれがオーズの油断を招いた。広場の海兵達を腕の一振りで潰すオーズはそこから、そのまま処刑台へ向けて手を伸ばす。

 

「おでがエーズぐんを助げるんだ......!」

 

目の前にはエースがいた。しかしその表情は助けられると分かっている嬉しそうなものではなく驚愕の表情だった。刹那、オーズの視界が真っ赤に染まった。

 

「オーズッ!!!」

 

ほんの数メートルでエースに手が届いていたはずだがオーズは何かの衝撃で後ろへと仰け反り、処刑台から離れた。エースは横に立つ男を睨みつける。

 

「邪魔じゃァ。処刑時間を早めた意味が無くなるじゃろうが…。」

 

サカズキがマグマの拳をオーズの顔面に叩きつけていた。そして睨むエースに言い放つ。

 

「ワシがこの場で貴様の首を狩ってもええんじゃが、ワシにもやらにゃあいけんことがあるんでのォ……惜しいのォ。」

「処刑は執行人の仕事じゃ。それより、早う白ひげを止めて来たらどうじゃサカズキ。あやつはすぐにでも広場に乗り込みよるぞ。」

 

湾内に少しだけ残る氷の上に立つ白ひげを険しい顔で見ながらガープがそう言うとサカズキは無言で踵を返し、処刑台から降りた。

 

ガープは一点を見つめたまま手から血が出るほど拳を握りしめ、何かに耐えているようだった。

 

 

 

 

オーズの様子を見ながら白ひげは子電伝虫を取り出し、一言呟いた。そして、海賊団の船員を氷が残った少ない一ヶ所に集めるように近くにいたマルコに支持を出す。

 広場に一番近い場所にあったモービー・ディック号はサカズキのマグマによって破壊されていたために白ひげ達は移動手段を失っていた。そして、今まさに残った氷を解かし白ひげ海賊団を襲うかのごとくマグマが目の前に迫っていた。

 

「跳べェ!野郎共ォ!!」

 

白ひげの声に躊躇することなく海賊達は氷のない海へと跳んだ。能力者であれば海の藻屑となってしまう行為だが、その中に白ひげやマルコ達の各隊長までもがいた。

 

 

 

海に飛び込みかけたその瞬間、突如として海面が揺れ始める。小さな波しぶきだったものが徐々に大きくなり、巨大な何かが姿を現した。

 

海兵の一人が叫ぶ。

 

外輪(バトル)(シップ)だァ!!!」

 

白ひげはあらかじめ海底にコーティングしておいた外輪(バトル)(シップ)を待機させ、広場に船ごと乗り込むために用意しておいたのだ。海へと跳んだ海賊達は全員船に乗り込み、あとは広場へ乗り付けるだけとなった。

 

 再び白ひげが叫ぶ。

 

「オーズ!!!わかってんだろうなァ!!!!」

「オ゛ォ!」

 

モクモクと顔から煙を出すオーズにその声が届いたのか、唸りとも取れる声を上げてオーズは広場へ乗り上げようとする外輪(バトル)(シップ)を両側から掴み、壁がない隙間に持ち上げた。

 

「この死にぞこないがァ!!!」

 

船が広場に上がったと同時にドゴオォォォンという爆音が響き渡った。白ひげは何が起きたのか分からないままオーズを見上げる。

 

焦点があっていない眼。何かを言おうとするが声にならない。口からは大量の血が出ていた。オーズの腹には大きな穴が開き、貫通して向こう側が見えていた。普通の攻撃では有り得ない。

 

「エ...エーズぐん...。」

 

オーズは船から手を放すとそのまま後ろ向きに倒れ、海に沈んだのだった。

 

「広場に乗り込めェ!エースを奪還しろォ!」

 

海賊達は倒れたオーズを気にしている余裕はなかった。白ひげの声に反応し、広場に降り立つ。その間、白ひげは船首から一人の男を睨みつけていた。

 

「なんじゃァ、その眼は...。」

 

オーズに致命傷を与えたのは紛れもなくサカズキだった。オーズに風穴を開けた煙の上がる腕は今にも白ひげに牙を剥けようとしている。白ひげは鬼の形相でサカズキを睨みつける。

 

「いずれは倒されるべき存在......お前も道連れじゃァ白ひげェ!!!」

 

マグマの拳を白ひげへと放つサカズキ。白ひげは薙刀を構えてそれを迎え撃つ。そして次の瞬間、轟音がマリンフォードに響き渡った。

 

 煙で視界が遮られ、両者がどうなったのか周りからは見えなかった。そんな中、笑い声が響き渡る。

 

「ダーッハッハッハ!ダハハッ!」

 

立ち込めていた煙が晴れると白ひげとサカズキの間にかヒューが立っていた。ヒューの拳はサカズキのマグマと化した拳に突き刺さっており、驚くサカズキをよそに素早く蹴りを放ち吹き飛ばす。

 

「邪魔すんじゃねェアホンダラァ!」

 

突然現れたヒューに薙刀を振り回して白ひげは叫ぶ。ヒューは笑いながらその攻撃を避けていた。白ひげは何度も振り上げていた薙刀を降ろし、舌打ちをしながら処刑台を見た。ヒューも同じ方を見て口を開く。

 

「ロジャーに全然似てねェなァ。処刑台のあの姿......あいつに似ても似つかねェぜ。」

「あれは俺の息子だ。ロジャーじゃあねェ。」

 

白ひげは白い歯を見せながら笑う。ヒューも処刑台を見てニヤリと笑った。

 

そんな様子を見て海兵達はどよめいていた。2人の大海賊が並ぶことなどそうそうありはしない。巨人族には及ばないものの海兵を見下ろす巨体の白ひげ、白ひげには劣るが決して小さくはないヒュー。白ひげの実力は言わずもがな。ヒューはその実力をあまり知られていないとはいえ、最高戦力である大将を一蹴りで吹き飛ばしている。その光景を見て、これから起こる惨劇を想像せずにはいられなかった。そして、その予想は遠からずとも当たってしまう。

 

船首から飛び降りるヒューと白ひげ。降り立った瞬間から空気が変わる。海兵も海賊もそれが分かるほどの威圧感だった。

 

「覇気垂れ流してんじゃねェぞ。」

「ダハハハ!うるせェ!てめェも人のこと言えねぇだろう!」

 

伝説と言われるだけの存在感は圧倒的だった。体は若くないものの、身体全体から放つ覇気は誰にも負けないものが2人にはあった。

 

 動けない海兵達にヒューと白ひげは問答無用で攻撃を繰り出していく。白ひげの薙刀一振りで吹き飛んでいく海兵。ヒューは誰彼かまわず殴りかかっていた。血の海に染まるマリンフォード。そんな大海賊2人の前に轟音と共に何かが地面に突き刺さった。

 

「いッてててて....着地失敗しちまった。ん?あれここどこだ?」

 

そこに突如現れたのは麦わらのルフィだった。麦わら帽子を大事そうに手に持ち、周りを見回している。

 

「ダハハハハッ!なんでこんなところにガキがいるんだ?」

 

ルフィを見て一層笑い声を大きくするヒュー。ルフィはそんなヒューと横に立つ白ひげを見つけて口を開く。

 

「おっさん!俺は子供じゃねェ!!海賊王になる男だぞ!!!子供扱いすんな!」

 

ヒューは笑うことをやめてルフィを見た。海賊王と言う言葉に反応し、ヒューの表情が消える。白ひげは呆れたようにため息を吐く。

 

「海賊王?あぁ、ロジャーが呼ばれてたあれか。おい、ニューゲート。海賊王ってェのはこんなクソガキにもなれるもんなのか?」

「んなもん知らん。時代が決めることだ。」

 

そう言うと薙刀を振り海兵を吹き飛ばす白ひげ。ルフィは2人に対してまだ何かを言っていたが、ヒュー達は聞く耳も持たず再び周りの海兵を蹴散らし始める。

 

「小僧、海賊なめんじゃねェぞ。アホンダラァ。せいぜい生き延びて見せろ。その気があるんならナァ!!」

 

ルフィが答える間も無く白ひげは空いた腕に力を入れるとそのままグラグラの能力で大気にヒビを入れた。するとマリンフォードは壊れそうなほどに揺れ、海兵達が地震によって割れた地面の隙間に落ちていった。ヒューは白ひげが能力を使うと分かった瞬間からその場から一瞬で跳び上がって運悪く処刑台に着地した。

 

「チッ、野郎、相変わらずバカだぜ。」

「貴様も相当のバカだと思うがな。......虎狼。」

 

ヒューが後ろを振り向くと背後には目を見開いているエースと、今にもヒューに襲いかかりそうなセンゴクとガープがいた。ヒューの笑みが大きくなる。

 

「ダハハハハッ!久しぶりだなァガープ!センゴク!」

「ガハハハハ!まさかここで会うとは思わんかったわい!」

 

指の骨を鳴らしながらガープはヒューに近づいた。そんなガープにセンゴクが待ったをかける。

 

「待てガープ。其奴のことは放っておけ。優先すべきはエースの処刑だ。」

 

戦闘態勢に入っていたヒューはセンゴクの言葉を聞いてすぐに海軍に捕まることはないと確信し、戦闘態勢を解いてその場に座り込んであぐらをかいた。しかし、ガープは止まることなくヒューの胸ぐらを掴み上げ拳を振り上げる。

 

「ワシは止まらんぞセンゴク......。此奴を一発殴るまではのう!」

 

そう言って間も無く、黒く変色した拳がヒューに襲いかかった。生きる伝説となっている海兵の一撃。それをヒューは涼しい顔で見ていた。一方でセンゴクの怒声が響く。

 

「処刑執行だガープ!持ち場に戻れ!!!その男などいつでも捕まえられるだろう!」

 

ガープの動きが止まり、ヒューはガープの腕を振りほどく。

 

「ダハハハハッ!まぁ、俺はここからは動かねェからよ。処刑でなんでもさっさと済ませてくれや。」

「貴様ァ!!!!」

 

ガープの怒りが覇王色の覇気となってヒューに向かった。ヒューは笑みを浮かべたまま拮抗するように覇気で応戦する。バチバチと稲妻が走るように空気が揺れた。処刑台の周りの海兵や海賊達が次々ととてつもない覇気によって気を失っていく。

 

「老いぼれがァ!!!!貴様はここで潰しておかにゃあならん!!!」

「ダハハハハッ!!そう言うお前もジジイじゃねェか!おうガープ、年の数え方も忘れたかァ?」

 

エースは目の前のガープが別人に見えていた。普段はマイペースでルフィの祖父らしく自由なジジイとしか認識がなかったエース。キレると何をするかわからないが、それはエースの幼少期に説教としてであり、今のように怒りに任せて力をふるっているのは見たことがなかった。そして何故こんなにジジイはキレているのかと、エースには分からなかった。

 

ガープがヒューを潰そうとしている中、センゴクは覇王色の覇気の余波を受けて意識を失った執行人を下がらせて、控えさせていた別の執行人を処刑台に呼んだ。

センゴクが目の前のヒューよりエースの処刑を優先するのはヒューにとってエースの処刑など興味も示していないと言う理由だからである。今この時は世界にエースの公開処刑を見せる場。もうすでに準備は整い、あとは処刑執行するだけとなっていた。

 

執行人が2人、エースの横に立つ。エースは歯を食いしばり、下を向いた。執行人が持つ柄の長い長剣の剣先がエースの首元めがけて振り下ろされようとしたそんな時、

 

 

マリンフォードを揺るがす叫びが突風と共に響き渡った。

 

「やめろーーーーーーーッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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