一匹狼の大海賊   作:篤志

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立ちはだかる英雄ガープ!目指すは処刑台!

「やめろーーーーッ!!!!」

 

マリンフォード全体に響き渡るような声がすると同時に、空気が一瞬にして様変わりした。処刑執行人が泡を吹いて倒れたかと思うと、それにとどまらず何人もの海兵や海賊が倒れた。ヒューはその光景を処刑台の上から静かに見ていた。ヒューと対峙していたガープは驚きの言葉を口にする。

 

「やはり持って生まれたか......。」

「覇王色か......あんなガキがなァ。」

 

ヒューは笑みを浮かべて麦わら帽子の少年を見る。ガープもまた振り上げていた拳を下ろし、ヒューと同じ場所を見た。

 

「虎狼、貴様を殴るのは一旦お預けじゃ。ワシにはやることができた。」

「ダハハハハッ、いつでも歓迎だァ!」

 

笑うヒューを無視し、冷静にルフィの方を睨みつけながらガープは拳を握る。そして何かを決心したようにその場を離れた。

 

「最後の説教じゃ......覚悟せいルフィ!」

「待てガープ!」

 

センゴクがガープの行動を予測してか、制止する。しかしガープは止まらなかった。

 

白ひげ海賊団もルフィが起こした今の光景に驚いていた。海兵と戦うのをやめてルフィの方を見る。

 

「グララララ。」

「マジかよい!?エースの弟...!」

「オヤジと同じ覇王色の覇気を?!」

 

白ひげ傘下の海賊団と戦う海軍将校や王下七武海までもがルフィの力に言葉を失っていた。

 

「これはマズイねェ〜。」

「オイオイ、マジか。」

「フッフッフ......面白くなって来たぜ...」

「流石はわらわのルフィ......♡」

 

エースが処刑されるのを見て焦った麦わらのルフィは無意識の内に覇王色の覇気を覚醒させていた。そのため処刑が行われなかったことを幸運にしか思っておらず、ルフィは周りで起こった事を気にすることなく処刑台に向かって駆け出していた。そして、ルフィの後ろにはエンポリオ・イワンコフとその配下であろうサングラスを掛けた男が走っていた。

 

「イナズマ!麦わらボーイの援護をおし!......それにしてもヴァなた、いつの間に覇王色の覇気を?」

 

イワンコフは革命軍の上司であるドラゴンの息子のルフィが覇王色の覇気を扱えることに何ら不思議はなかったが、それでも自覚することなくこれほどの覇気は数百万人に一人と言っても過言ではないことに驚いていた。もし、自在に制御できたなら彼はさらに高みへ登るだろうとも確信した。

 

 ルフィは走りながらイワンコフの言葉に返事をする。

 

「何言ってんだイワちゃん?ハム食?ハム好きだぞ俺!」

「そうそう、ハム美味しいッチャブルわよね......って、誰がハムの話をするかァ!」

 

イワンコフのノリツッコミが炸裂する中、ルフィの前にイナズマが躍り出て地面をハサミ状にした手で切って行く。これがイナズマの能力、チョキチョキの実の能力である。紙のようにペラペラとした石畳がまるで蛇のように動き始めて間も無く処刑台までの橋を作り上げた。

 

「麦わらのルフィ、ここを登っていけ。ここは私達に任せろ。」

「おう!ありがとな!」

 

ルフィは海兵達の攻撃をくぐり抜けてエースがいる処刑台を目指す。そして、それを黙って見過ごすほど海軍は甘くない。走るルフィの目の前に一人の男が轟音とともに降り立った。思わず立ち止まり、ルフィは叫ぶ。

 

「そこどいてくれじぃちゃん!!!エースを助けにいけねェ!」

 

ルフィを足止めした海兵は先ほどまでヒューと戦っていたガープだった。ガープの額に血管が浮かび、巨大な拳がルフィを襲う。

 

「ここを通りたくば、ワシを殺してから行けェルフィ!」

 

間一髪でガープの拳を避けると、ルフィは体勢を立て直した。しかし次の攻撃に躊躇してしまう。

 

「できねぇよじぃちゃん!頼む!そこをどいてくれ!」

 

ガープの拳は勢いを止めることなくルフィに降りかかる。攻撃をする意志のないルフィにとって避けることしかできなかった。頬に掠って血が流れ、当たるか当たらないかのスレスレで躱すためパラパラと髪の毛が落ちる。

 

「貴様らはいつもそうじゃ......ワシの言うことを一つも聞かん。説教じゃルフィ!これがお前が選んだ海賊の道じゃ!じぃちゃんを殺す気がないのならワシがお前を殺すまでじゃァ!!!!」

 

今までで一番鋭く速い拳がルフィを襲った。ルフィは歯を食いしばり、叫ぶ。

 

「『ギア・2(セカンド)』」

 

ルフィの身体から途轍もない圧力と共に蒸気が辺り一帯に立ち込める。ガープの拳が目の前に迫った今、避けることはできないと誰もが思ったが、そうではなかった。

 

ルフィの体が消え、ガープの拳が空を切る。そしてガープが気づいた時には既に真横に移動しており、攻撃の構えをとっていた。繰り出されるルフィの拳。軌道を肉眼で追うことすらできず拳を放ったことさえも分からないほどルフィのパンチは速かった。

 

しかし、ガープは並の海兵ではない。20年以上も前線で戦って来た海軍の英雄。伝説の男。ルフィの攻撃は読めていた。

 

「ワシにそんな攻撃は効かんぞルフィ!!!」

 

ガープの覇気を纏った拳が再びルフィを捉えた。すかさず逃げようとするが、ガープは咄嗟にルフィの服を掴み、逃げられないようにする。そして思い切りルフィを殴った。

 

「じ....じぃちゃん......」

 

ガープは何度も何度もルフィを殴った。掴んだ服を離すことなく、ルフィの戦意を消失させるまで止めようとはしなかった。

 

ガスッ!ゴツッ!と言う鈍い音が響く。

 

ルフィが打撃に強いゴム人間であるにも関わらず血が流れるほどにガープの拳をくらっているのはガープの覇気によるもの。次第に虚ろになっていくルフィの目。もはやどこを見ているのか分からないほどだった。

 

 ガープは次第に動かなくなっていくルフィを直視できなくなっていた。現実逃避するかのように眉間にしわを寄せて目を閉じながらルフィを殴る。ガープに迷いが生まれていた。目の前にいるのは敵である海賊だが、自分の命より大切な孫であり、家族である。そんな矛盾がガープを迷わせていた。

 

「海賊なんぞになりよって!!!なんでワシの言うことを聞かんかったんじゃァ!!!」

 

カッと目を開いたガープの目には溢れんばかりの涙が流れていた。ルフィはこんなにも泣いているガープを見たことがなかった。しかし、ルフィには夢がある。

 

「お......俺は海賊王になる...!いつも言ってるじゃねぇかじぃちゃん!」

 

焦点の合っていなかったルフィの目に光が灯る。

 

「まだ言うかルフィ!!!」

 

 ガープは思う。今となっては仕方のないことかもしれない。ルフィが赤髪に会った時から、ルフィは海軍より海賊に憧れを抱いていた。子供の純粋さは子供の特権だ。ルフィを海賊の道に引き込んだ赤髪を恨むことはあっても、あの頃のルフィを悪くは言えなかった。ある男の言葉が思い浮かぶ。

 

『子供に罪はねぇんだぜガープ。』

 

しかし自分が海軍の素晴らしさを教え、ルフィが海兵になっていれば、エースが海兵になっていればと後悔にも似た感情がガープを支配する。それでもルフィへ攻撃は止むことはない。今現在、自分は海軍でありルフィは海賊だ。ルフィは孫だがもう子供ではないのだ。これはワシらに与えられた宿命なのだと心の中で自分に言い聞かせる。

 

 そして、とどめを刺そうと思い切り振りかぶった拳がルフィに当たる瞬間、突然ガープが横に吹き飛ばされた。思わずルフィから離れ、何が起こったのか辺りを見る。

 

「しっかりしろエースの弟。エースを救えるのはお前しかいないんだよい......。」

 

そこに立っていたのは青白い炎を纏う能力者。白ひげ海賊団1番隊隊長、不死鳥のマルコだった。

 解放されたルフィは咳き込みながらマルコを見た。

 

「ここは俺に任せろよい!」

「あ.....あァ。」

 

マルコは立ち上がったガープと対峙する。体を不死鳥へと変化させガープに攻撃を仕掛ける。ルフィは深呼吸しながら息を整える。

 

「邪魔じゃ小僧!!!」

 

ガープの怒声が響き渡る中、ルフィは2人の戦闘が始まるや否や、ギア2を使って身体能力を上げる。そして瞬時にエースの元へ飛び出した。ガープは逃がさないと言わんばかりに懐をすり抜けようとするルフィに蹴りを放とうとする。

 

 しかし、マルコがそれを許さなかった。ガープの動きを止め、ルフィに向かって叫ぶ。

 

「エースを頼んだよい!!!」

「小賢しい真似をしよって!!!」

 

ガープはマルコを殴り飛ばし、橋から落とす。そして再びルフィに襲い掛かる。ルフィはもう迷わなかった。・・・エースを助けたい!たった一人の兄ちゃんだ。誰にも俺を止めさせない!・・・

 

「『ゴムゴムのォ・・・ジェットバズーカァ!!!』」

 

高速でルフィの両腕が突き出され、ガープの腹を打ち抜いた。ガープはくの字に体を折り、口から血を吹く。そして、橋から落ちて行った。

ルフィは一目散にエースの元へ急ぐ。もう、邪魔をする者はいなかった。ルフィには処刑台の上にいるエースだけしか見えていない。

 

「エーーーーーースーーーーーーーーッ!!!」

 

それまで沈黙を貫いていたエースがルフィの姿を見て叫ぶ。

 

「ルフィ!!!」

 

そしてルフィは処刑台へとたどり着いたのだった。

 

 

 

 

「ポートガス・D・エースの処刑は邪魔させんぞ、麦わら......!」

 

知将、仏のセンゴクが動き出した。

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