一匹狼の大海賊   作:篤志

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最終決戦?!襲いかかる黒ひげ海賊団!!

「ウォルフの兄貴ィ!!!オヤッさんを止めてくれェ!!!」

 

スクアード始め、白髭海賊団の船員達はサカズキとヒュー達の戦いを見て叫ぶ。

 

「ダハッ!愛されてんじゃねェかニューゲート!」

「俺の息子達だぜ。当たり前だろうがよアホンダラァ!」

 

眼前に広がるマグマの塊を白ひげはグラグラの実の能力を使って粉々に粉砕する。

一方のヒューは振り絞った拳を地面へと叩きつけた。

 

「『豪覇震!!!』」

 

ヒューを中心に地面がひび割れ、その瓦礫が意思を持ったかのようにサカズキを襲う。

 

「効かん!まずは貴様からじゃ!虎狼!」

 

難なく瓦礫を融解させ、拳のマグマがさらに巨大化する。しかし、その先にはすでにヒューの姿はなかった。

 

「オイ小僧、悪魔の実に頼りすぎなんじゃねェか?ダハハハハハァ!下っ端からやり直したほうがいいぜェ!ニューゲートもそう思うだろう?」

「グララララ!死んでやり直せクソガキが!」

 

気がついた時にはすでにサカズキの視界は天地が逆転していた。ニューゲートのグラグラの実の能力を纏った拳とヒューの武装色で硬化した蹴りがサカズキを襲う。

 

「グヌゥ………!」

 

血反吐を吐きながら地に沈むサカズキ。ヒューは逃さんとばかりにサカズキの胸ぐらを掴み、手刀を振り上げた。

 

「ダハハハハハァ!」

 

袈裟懸けにサカズキの体をヒューの斬撃が襲おうとしたその瞬間、ヒューの見聞色の覇気の範囲内に突如として何者かの存在が現れた。

 

「ダハハハ、面白くなって来たぜ兄弟。」

 

その存在がいる方向を見上げ、頰を緩めるヒュー。意識を刈り取られ、ボロボロのサカズキを離すとニューゲートに話しかけた。

 

「まだ暴れる力は残ってるか?ニューゲート。」

「………舐めんじゃねェ。」

 

そう言うものの、ニューゲートの身体は限界を超えている。気力で立っていると言っても過言ではない有様だった。海軍から受けた攻撃はじわじわとニューゲートの体力を奪っている。

だが、ヒューはニューゲートの様子を見て心配などしない。歯を見せて大声で笑う。

 

「ダハハハハハ!!それでこそ兄弟だぜ!だがなァ………」

 

ヒューの言葉に疑問を浮かべたその瞬間、ニューゲートの視界が歪んだ。

鳩尾に深々と刺さったヒューの拳。いつもなら何と言うことはないただのパンチが今のニューゲートにとっては何よりも重い一発だった。

 

「死に急ぐんじゃねえぞ兄弟。まだお前の航海は途中だろうがよ。」

 

ヒューの言葉がはっきりと聞こえたニューゲートはヒューの胸ぐらを掴む。

 

「親が息子達より長生きしてどうすッてんだ………なァ?」

「ダハッ!今更だぜニューゲート!俺達が何人見送って来たと思ってる。まだガキだった奴も居ただろう?俺達は奴らの分生きて来たじゃねェか!これからもそうさ!老い先短い人生?ハッ!まだまだだぜ兄弟!奴らの分の冒険をまだやってねェだろう!」

 

ヒューも負けじとニューゲートに向かって吠えた。

 

「オメェ、散々戦場引っ掻き回しといて俺に生きろだァ?呆れたぜ………さっさと引っ込んどけアホンダラァ!」

「ダハハハハハ!俺は本気だァ!」

 

2人が笑みを深くした瞬間、マリンフォードの一角に巨大な影が現れた。どよめきが起こる。

 

「あら、見つかっちった。」

「あ、あいつは…!?」

 

海軍将校達はその巨大な男を見て驚愕の表情を浮かべた。そして、海賊達もその存在に気付く。

 

「彼奴はインペルダウンに収容されているはず………何故ここにいる?!まさか!?」

 

ふとセンゴクはマリンフォードの防護壁の上へ視線向ける。そこには大男と同じ囚人服を着た集団が立っていた。その全員がインペルダウン最深部レベル6に収容されていた最悪の犯罪者だった。

 

「ゼハハハハハ!久しぶりだなァ!オヤジ!死に目に会えてよかったぜェ!」

「ティーチ………!」

 

中心で笑い声を上げている髭を生やした男。かつて白ひげ海賊団2番隊隊員だったが、一味の鉄の掟である仲間殺しを行い、当時4番隊隊長だったサッチを殺害し白ひげ海賊団を抜けた男。

2番隊隊長のエースは元隊員である彼を追っていた。そしてグランドラインのとある島で交戦し、エースは敗北。身柄を海軍に引き渡した後、王下七武海に名を連ねた。

 

この頂上戦争の引き金を引いた男がまさにそこに居た。

王下七武海の一角。黒ひげ海賊団船長、ヤミヤミの実を食べた能力者。

 

マーシャル・D・ティーチ

 

その場にいる誰もが驚きの表情を浮かべる中、一人ヒューだけは笑ってティーチを見ていた。

 

「ダハハハハハ!そうか!オメェの息子だったか!ありゃア!」

「もう息子じゃねェ。殺された息子達の仇だ。」

 

ニューゲートは自身の薙刀をマリンフォードの広場へ突き刺し、今にもティーチへ襲いかかろうとしていた白髭海賊団の方を見た。

 

「手ェ出すんじゃねェぞ………お前達。」

 

そう宣言すると薙刀を一振りした。斬撃が発生し、防護壁を粉々に破壊する。そして、ティーチを含む囚人達を巻き込んだ。

 

「ゼハァ!容赦ねェな!」

「ここで死ねティーチ!」

 

広場に降りたティーチとニューゲートが対峙する。囚人達もニューゲートを囲んでいるが、動くことはない。否、得体の知れない圧力に動くことができない。

 

「なんだ?オメェ等何で動かねェ?」

「白ひげの隣にいる男のせいですよ。奴が私達を釘付けにしてるんです………まさか、ここまでとは。」

 

ティーチの疑問にシルクハットの男が答えた。黒ひげ海賊団の船員であり鬼保安官の異名を持つ男。ラフィット。普段冷徹な彼がヒューを前にして冷や汗をかいていた。

 

「親子ゲンカに他人が突っ込むなんて野暮なことはしねェよな?オメェ等の相手は俺がしてやらァ………」

「インペルダウンの囚人服?ゼハハハハハ!老いぼれジジィだな!ゼハハハハハ!」

 

笑うティーチだが周りは笑えなかった。囚人達の内の一人、元インペルダウン看守長であり、レベル6に収容されていた雨のシリュウが口を開く。

 

「アンタは知らねェのか船長。奴はインペルダウン最深部で最古参の男だ。俺が看守になる前から今までずっとレベル6で息を潜めていた。」

「何ィ?」

「ムルフフフ………一筋縄ではいかないわよ。船長、助太刀は難しそう。」

 

カタリーナ・デボンがヒューから目をそらさずに呟く。ティーチには目の前のヒューがそこまでの男なのか疑問に思っていた。だが周りの反応は自分とは異なり畏怖を覚え、動けないでいる。その様子にティーチは閃いた。

 

「ゼハハハハハ!そんだけ強ェならアンタも俺の船に乗らねェか!待遇は良くしてやるぜ!」

 

その言葉がきっかけか、空気が変わった。

 

「俺を舐め腐ってるようだなクソガキが………。」

 

暴風のような覇王色の覇気がティーチを襲う。今まで感じていなかったその圧倒的な覇気がティーチを震わせる。

 

「な、なんだ?このジジィ?!」

「アイツを下に置くなんて考えんじゃねェ。俺が知る限り今まで一度も誰の下にも付いたことがねェ男だ。聞いたことくらいあんだろ。虎狼のウォルフだぜ。この男は。」

 

シリュウの言葉にティーチは一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐに笑みに変わった。

 

「ゼハハハハハ!そうか!アンタがあの虎狼か!アンタとは会ったことは無かったが、よく聞いてたぜ!オヤジからなァ!」

 

そう言うや否や腕が闇のように黒く変化した。腕に始まり、ティーチの身体全体、立っている地面までもが闇に変化する。

 

「見ろ!これが最強の悪魔の実の力!ヤミヤミの実を食って手に入れた能力だ!ゼハハハハハ!俺の闇はあらゆるものを引き寄せる!」

 

その闇はニューゲートをも飲み込もうとしていた。

 

「どうだァ?!オヤジ!アンタのグラグラの能力も俺の闇の前では無意味なのさ!」

 

勝ち誇ったように笑うティーチとは裏腹にニューゲートは表情を一切変えることなく仁王立ちで睨みつけるだけだった。

 

「アンタは老いた!一人の息子を助けれねェ程になァ!時代は変わったんだよオヤジ!これからは俺の………ッ?!」

 

ニューゲートの薙刀がティーチの肩を切り裂く。武装色の覇気で纏った薙刀は自然系悪魔の実の能力であっても確実に実体を捉え、ダメージを与えた。

 

「ざまあねェなティーチ。オメェの性根は死んでも治らねェだろうよ。」

「クソがァ!イテェエエエエ!もう関係ねェ!オメェ等やっちまえ!」

 

ティーチは切られた痛みにのたうち回りながら叫ぶ。その言葉に各々が銃を持ち、ニューゲートへと向けた。

 

「ダハハハハハァ!言ったはずだぜ!この俺が相手だァ!」

 

銃口が火を噴く前にヒューはニューゲートの前に躍り出る。

 

「俺の兄弟はもう一人たりとも殺させねェ!」

 

そう言い放ち、ヒューは地面に拳を突き立てた。


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