一匹狼の大海賊   作:篤志

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世界最強の力

 海中では存分に力が発揮できないと踏み、大人しくカームベルトの主に食われたヒューは丸呑みにされた後、腹の中にいた。まるで洞窟かと思うくらい広く、そして深く続いている肉の壁。胃まで到達し、そこであり得ないものを見つけた。ただの海王類の腹の中と侮ることなかれ。驚くべきことに海王類は船を一隻を丸々飲み込んでいた。しかもそれが3隻。さすがにヒューも苦笑いしかできない。

 

「雑食っていうレベルじゃねえぞ。ガープ以上だぜこりゃ。」

 

胃液の海に浮かぶ船のひとつに乗り込み、何か武器はないかと船室を漁る。すると、なぜか海賊船だというのに海軍コートを着た白骨化した死体を見つけた。首をかしげ、ヒューはそれを見る。

 

「もしかしてこの船に乗り込んだ後に食われたのか。ダッハッハ運悪ィぜ海兵ちゃん。」

 

何の躊躇もなくそのコートを羽織るヒュー。海賊が海軍の服を着るなどと他の海賊が知ったら怒り狂うだろう。プライドはないのかと殴りかかってくるかもしれない。しかし、ヒューは気にしない。この船にある服でヒューが一番気に入ったのが海軍コートだっただけだ。年期の入ったボロボロのコートはヒューにものすごく似合っていた。

 

 その後、手頃な剣を見つけて手に取ったヒューはニヤリと笑い腕を振り上げる。ブゥンという音がして剣に武装色の覇気が纏われた。

 

 肉の壁に向かって剣を振る。刃だけでなく斬撃も飛ばした。血しぶきが上がり、返り血でヒューが真っ赤に染まる。それがヒューの中で眠る虎を呼び起こすことになる。笑みをさらに深くし、斬撃の量が急激に増えた。

 

 しかし突然攻撃を止めた。

 

さすがは海王類。内側からもなかなか攻撃は通らないようだった。息を整えると甲板から海賊船のマストへと飛び移る。

 

「仕方ねえか......。」

 

そう呟くと剣を横薙ぎにする。剣先から放たれる斬撃。先ほどまでとは比べ物にならない威力だった。豆腐を切るように肉の壁が切れる。血が飛び散る間も無くその場に光が差し、気がついた時には海の上だった。

 

それはそのはず。切ったのは胃だけではなかったのだ。ヒューは何気ない一振りで胃の中から尾ビレまで一刀両断していた。

 

頭を残して真ん中から真っ二つになった海王類。何事もなかったように静まり返る海。ヒューはそのまま船に乗って正義の門を突破する。舵取りの必要はなく海流に乗ったまま航行する船。古い船の割によく進んだ。

 

 

 

正義の門の内側へ入ってしばらく、今度は船を飲み込みそうなほどの巨大な波が襲いかかって来た。まずあり得ない光景だ。船のマスト以上の高さの波がこちらへ向かってくる。思わず舌打ちをしてしまう。

 

「チッ、今度はなんだ。クソ野郎が。」

 

船首に立ち、先ほどの海王類を倒した斬撃を波に向かって放つ。轟音が響き、水の塊である巨大な波が左右に割れた。一息つく暇もなく難を逃れたヒューは次の正義の門へと船を進める。

 

ヒューには巨大な波の原因を知っていた。実際に体験したこともある。自然によるものではない人為的に起こされた波だ。この世界でこんなことを起こせる人間は1人しかいない。最強の悪魔の実の能力を持つ男......世界を破壊できるとまで言われるその能力は、

 

「グラグラの身を食べた地震人間。てめェか、ニューゲート。」

 

つまり、あの波はただの波ではなかったということだ。全てを飲み込み破壊し尽くす。船も、島も全て。逃れる手立てが無いに等しいその波はいずれ戻っていくだろう、白ひげの元へと。

 

「津波たァ、面倒臭えことしてくれるじゃねえか。」

 

マリンフォードへと続く正義の門を見上げる。今日は本当に運が良かった。インペルダウン脱獄成功に続き、正義の門の開場。そして今度も正義の門が何もせずに勝手に開いた。

 

 

 

 

 

 

 

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