一匹狼の大海賊   作:篤志

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到着、インペルダウンの囚人達

 マリンフォード湾内。白ひげ海賊団と海軍の睨み合いが続く中、白ひげがその沈黙を破った。

 

「海軍!俺の息子は無事なんだろうなァ!」

 

下を向いたまま歯を噛みしめるエース。嬉しさと悔しさが入り混じる感情の中、涙の滴が落ち、何かを決心したように前を向いて叫んだ。

 

「なんで......なんで来たんだ!オヤジィ!俺みたいな奴なんて放っておけばいいだろう!!」

「俺の息子が殺されかけてんだ。助けに行かねえ理由はねェ!待ってろエース......今助けてやらァ!」

 

白ひげはモビー・ディック号の船首で右の拳を握り、何もない空間に叩き付けた。叩き付けたところの空気がヒビが入ったように割れ、そこからすべてが振動し始める。海が荒れ狂い、マリンフォードが崩壊しそうなほどの揺れ。これが白ひげのグラグラの実の能力だった。本気を出せば世界を崩壊させるということは過言ではなかった。

 

 しばらくして海が静かになる。安堵したのもつかの間。沖の方から無数の波がマリンフォードへと向かってきていた。全てを飲み込みそうなほど巨大な波。白ひげが起こした地震によって発生した津波だった。唖然とする海軍。白ひげの能力を目の当たりにし、とんでもない男とこれから戦争するということを改めて実感させられる。

 

「アーララ、不味いなこりゃ。」

 

薄い青色のスーツを着た男がそう呟き、襲い掛かろうとしている波のど真ん中に出現した。

 

男の名は海軍最高戦力、海軍大将の一人である『青雉』ことクザン大将。ヒエヒエの実の能力者であり、すべてを氷に変える氷人間である。

 

 クザンは襲い掛かる津波に向かって手を掲げる。そして呟いた。

 

「『アイスエイジ』」

 

クザンの両手から四方の波に氷が放たれる。するとあっという間に津波が凍った。そのままモビー・ディック号ら白ひげ海賊団がいる湾内、そして白ひげ海賊団傘下の海賊船団が浮かぶ海まですべてを凍らせた。

 

今度は海軍から歓声が飛び、白ひげ海賊団はその能力に言葉を失った。しかし、湾内に氷が張ったことにより白ひげ海賊団はそこを足場に広場へと乗り込むことができるようになった。

 

「氷を足場に広場へ乗り込み、エースを奪還しろォ!」

 

指示が飛び、白ひげ海賊団が動き出す。船から飛び降りて広場へ一直線に駆け出す。海軍は広場に絶対に上げないと湾内に降りて白ひげ海賊団を迎え撃った。

 

世界を変える世紀の頂上決戦がここに始まった。

 

 

 

 

 

 湾内で両者がぶつかり合う中、白ひげは未だに動かず仁王立ちしたままエースがいる処刑台をじっと見つめていた。

 

「オヤジ、とうとう始まったよい。」

 

マルコが隣に立つ。白ひげは笑みを浮かべ答える。

 

「海軍のハナッタレにエースの命はやれねェ。どうせなら立ち直れねェぐらいにブチのめしてやらァ。」

「エースは俺達の命にかけても救い出してみせるよい。だからよオヤジ、あんたはそこで黙ってみててくれよぃ。」

 

いつも冷静な1番隊の隊長であるマルコはその瞳に怒りをにじませていた。その様子を感じ取った白ひげは大きく笑う。

 

「グララララララ!いつになくやる気じゃねェかマルコ。まァ無理もねェ......だが俺だってなァ黙って見てるだけなんざ無理ってもんよ!!!」

「オヤジならそう言うと思ってたよい。」

 

マルコも白ひげの答えに笑い、湾内へと飛び降りた。そして海兵をどんどん倒していく。その姿を見て白ひげは笑みをさらに深めた。

 

「息子が俺の心配するなんざ100年早え。グララララララ!クソッタレな世話焼きはテメエだけで十分だ。なァ...兄弟。」

 

仁王立ちしたまま不動の白ひげはそう呟いた。

 

 

 

 

 次の瞬間、白ひげに向かって一筋の斬撃が放たれる。騒然となる湾内。白ひげ海賊団の船員は白ひげを守ろうとモビー・ディック号へ走り出す。真っ先に斬撃の線上に立ったのは光り輝く巨大な男だった。斬撃を体で受け止めると余裕の表情で耐えた。

 

驚きの声を上げる海兵。驚いていないのは白ひげ海賊団と斬撃を放った男、王下七武海の一角、世界一の大剣豪と呼ばれるジュラキール・ミホークだけだった。

 

「流石、白ひげ海賊団といったところか。」

 

斬撃を受け止めた男の名は白ひげ海賊団3番隊隊長、ダイヤモンジョズ。キラキラと光り、その名の通りダイヤモンドと同じ硬さの身体を持つ能力者である。

 

「親父には指一本触れさせねえ!」

「不甲斐ないネェ。チャッチャと敵の頭を取りゃ終わりでショォ〜。」

 

次に白ひげに襲いかかったのは海軍三大将の1人、『黄猿』ことボルサリーノ大将である。黄色のボーダーのスーツを着ており、目にも留まらぬ速さで白ひげに攻撃を放つ。

 

「『八尺瓊の勾玉』」

 

眩しいほどの光が集まる。海賊も海軍も目が眩んだ。そして、白ひげに向かって光線が放たれた。これが黄猿の能力。ピカピカの実を食べた光人間の力である。

 

無数の光線が白ひげを襲う。しかし、白ひげは微動だにしなかった。まるで自分だけは当たらないと言うかのように。そして、それは現れた。

 

光を包む青い光。鳥のような形をしている巨大な炎が八尺瓊の勾玉を消し去る。その事実に驚く黄猿。

 

「厄介だネェ。1番隊隊長マルコ〜」

「厄介なのはどっちだろうよい!」

 

蹴りを放つマルコ。ボルサリーノはそのまま広場へと飛ばされた。

 

「今の内に広場へ乗り込むよい!」

 

マリンフォード湾内が戦場となる中、白ひげ海賊団は未だ広場に上がることはできていなかった。マルコの声に白ひげ海賊団の声が湾内に響く。これを皮切りに海軍が押され気味になる。

 

ダイヤモンドジョズが湾内に張った分厚い氷を巨大な氷塊にして放り投げる。なす術もなく氷塊が海兵達を襲うかと思ったその時、一瞬にして氷が蒸発した。海軍三大将の最後の1人、『赤犬』ことサカズキ大将だった。

 

「勝手に持ち場を離れおって......誰がこの場を守るんじゃァ!」

 

サカズキ大将の腕がボコボコという音と共に原型をとどめない形になる。水蒸気が発生し、真っ赤に燃え上がった。

 

「ここが死に場所じゃァ!白ひげェ!」

 

岩石の塊が白ひげの視界を埋め尽くす。白ひげは左手に持った薙刀を横に薙いで飛んで来た岩石をぶった切った。

 

「グララララララ!誰かと思えばハナッタレ小僧じゃねえか。」

「派手な葬式は嫌いかァ?」

 

マグマグの実を食べたマグマ人間であるサカズキは体をマグマに変え、湾内の白ひげ海賊団を襲った。

 

 

 

 

 

 

 そしてついに白ひげが動き出そうとしたその時、どこからか誰かの叫び声が聞こえてきた。両者の攻撃がぴたりと止んだ。

 

「おちるーーーーーーーーーーっ!?!?」

「馬鹿野郎!もう落ちてんだよォ!つーか、これぜってぇ死ぬだろーーっ!」

「ニッシシシシシ!俺ゴムだからだいじょーぶだ!」

『お前だけ助かるつもりかよっ!』 

 

その場にいた誰もが声の主を探す。叫び声は一人ではなかった。まるで何人もいるかのような.......

 

「あ、あそこだーーーーーっ!!!」

 

一人の海兵が空を見上げ、指をさす。全員空を見上げると、そこには驚くべき光景が広がっていた。

 

 海軍の軍艦と一緒に何十人もの人が空から降って来ていた。海軍の奇襲かと白ひげ海賊団は身構えるが、どうも様子がおかしかった。

 

その正体を確かめる間もなく軍艦と共々、落ちてきた人達はそのまま湾内の氷に突き刺さる。状況を飲み込めない海軍と白ひげ海賊団。

 

処刑台にいたエース、センゴク、そして海軍中将で英雄と呼ばれるモンキー・D・ガープの3人も唖然としていた。特に驚いていたのはエースとガープの二人だ。

 

センゴクは苦虫を潰したような顔をして言う。

 

「またお前の家族だぞ!ガープ!」

 

落ちてきた軍艦の船首から姿を現す正体不明の人達。麦わら帽子の少年や、顔が異様に大きいオカマ、魚人や、囚人服を着たピエロまでいた。

 

その光景を見て海軍の顔色が変わる。ガープが異様な集団を見て冷静に言った。

 

「あ奴等はインペルダウンの囚人達か...元七武海サー・クロコダイルに革命軍エンポリオ・イワンコフ。現七武海、海侠のジンベイ...到底同じ目的でこの場にいると考えられんな。」

 

センゴクは拳を握りしめ、ガープの前に行くと頭を思い切り殴った。横にいたエースが目を見開いて驚いている。

 

「奴らの中心におるのはお前の孫だろう!ガープ!鉄壁の大監獄と言われたインペルダウンに侵入し、こうして今、脱獄に成功している!お前が一介の海兵ならばただでは済んでおらんぞ!」

 

ガープは煙が出る頭をさすりながら豪快に笑っていた。

 

「ガッハッハハハハハ!流石わしの孫じゃ!」

「笑いごとで済むか馬鹿者!」

 

もう一発拳骨を落とすセンゴク。ガープの頭に大きなたんこぶがもう一つ追加された。

 

 

 

騒然とするマリンフォード。軍艦の船首に立っている麦わらの少年は大きく息を吸い込んだ。彼は海賊王を目指す幾多の海賊の一人。ルーキーでは数少ない3億の賞金首、英雄ガープの孫でもあるモンキー・D・ルフィ。

囚人たちを引き連れてインペルダウンを脱獄し、ようやくマリンフォードへとたどり着いた。目的はただ一つ。世界でたった一人の大切な家族を助けるため。

 

ルフィは力いっぱい叫んだ。

 

 

 

 

「エーーーーーーーーーーースーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!助けに来たぞーーーーーーーーーっ!」

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