一匹狼の大海賊   作:篤志

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二人のジジイ、暴れる

「な......何であんたがここに居る!?ウォルフの兄貴!」

 

スクアードはマストに腰を掛けているヒューにそう言った。

 

「おう!スクアード!おめェ、ニューゲートに随分でかい口叩けるようになったじゃねェか!」

 

まるで友人同士のような会話。それもそのはず、二人は旧知の仲だった。20年以上前にスクアードが所属していた海賊団が当時最強だったロジャー海賊団に戦いを挑み、結果スクアードを残して全滅。一人になった所をヒューが拾ったのだ。一時期行動を共にしていたが、それから間も無くヒューはインペルダウンへ幽閉。ヒューはインペルダウンに入る前、白ひげにスクアードを託し、今に至るというわけだ。

 

「そりゃあ、白ひげのオヤッさんには大恩がある!だがそれとこれとは話が違うじゃねェか!俺は知らなかったぜ......エースがゴールドロジャーの息子だってなァ!」

 

叫ぶように怒るスクアード。仲間達を殺されたあの時の記憶が蘇る。今になっても怒りは無限に湧いてきた。ロジャーが死んでいても尚、恨みは晴らされないままだった。

そんな時、白ひげがスクアードの目の前に立った。スクアードを見下ろしながら睨む。

 

「アホンダラァ......おめェもエースも俺の家族だろうが。誰が誰の血を引こうともこの船に乗ったその時からそんなもんは関係ねェ。おめェ、スクアード......今までエースと過ごして来た時間は偽りだったって言いてェのか?」

 

スクアードの表情が変わる。白ひげの巨大な拳で殴られると思い目を閉じたが、衝撃は襲って来なかった。代わりにスクアードが感じたのは白ひげの温かい体温だった。膝をつき、スクアードを抱きかかえる。

 

「子が親に刃物を突き立てるってのは許されねェ事だ......おめェは筋金入りのバカ息子だぜ...スクアード。だがな......それでも親は子供を命がけで愛すんだよアホンダラァ」

 

白ひげは立ち上がるとを薙刀を甲板に叩きつけた。視線は処刑台にいるエースに向けられる。そして白ひげはスクアードにしか聞こえない声で言う。

 

「俺ァ白ひげだ。腹を刺されたくらいで痛くも痒くもねェ、ナメんじゃねェぞスクアード!」

 

薙刀の先にグラグラの実の力を集中させる。そして湾内の海兵達に向けて横薙ぎにした。衝撃波が海兵達を襲う。笑みを浮かべる白ひげ。

 

「スクアード、死んでもエースを助けろ......これは船長命令だァ!できねェならここで俺の戦いを見ておけェ!」

 

モビー・ディック号から湾内へ飛び降りる白ひげ。海兵達に緊張が走る。センゴクが叫んだ。

 

「動くぞ世界最強の海賊が!気を引き締めろ!」

 

残ったスクアードは海兵達を圧倒している白ひげを見て固まっていた。

 

 

 

スクアードは下を向き涙をこらえた。白ひげが嘘偽りを言うはずがなかった。海軍の白ひげへの対応を見て確信する。

 

・・・自分は海軍の思い通りに動いただけに過ぎない。・・・

 

その事に気付いた時、海軍への怒りと自分への怒りが入り混じり声にならない叫びをあげるスクアード。これからどうすればいいのか分からなくなっていた。

 

「迷ってる暇があったら海兵の一人や二人ぶちのめして来たらどうだ。」

 

いつの間にか隣にヒューが立っていた。下に落ちている野太刀を手に取ってスクアードに渡す。スクアードからの返事はなく、無言でそれを受け取り、前を向いた。そして戦場へ再び走り出そうとしたその時、前を向いたままスクアードは口を開く...

 

「ウォルフの兄貴の言葉......俺ァ忘れたことなど一度もねェぜ。」

 

そして雄叫びを上げながら戦場へと駆けだした。ヒューはモビーディックの船首にドカリと座り込む。ヒューは戦場を見下ろしながら近くにいたマルコに話しかける。

 

「ダッハッハ!スクアードの奴、昔と全然変わらねェじゃねえか。おい、マルコ。ロジャーの息子ってぇのはあの処刑台の上にいるガキのことか?」

「そ...そうだよい。」

「ダーッハッハッハ!!!なんだァ!あのちんちくりんはァ!ロジャーに全然似てねぇじゃねェか!生意気そうなガキだぜありゃァ!」

 

マルコはエースのひどい言われ様に少し頭にくる。

 

「......母親似なんだろうよい。」

 

マルコの言葉にヒューはじっとエースの姿を見る。

 

「ロジャーもやるこたァやってたんだなァ...」

 

何がしたいのか、この男は何をしにここへやって来たのか訳が分からなくなる。マルコは能天気な言動にため息すらつきたくなった。

 

「これからどうするんだよい?」

 

 ヒューは顎に手を置き、考えるしぐさをする。一瞬にしてその場の空気が変わる。マルコはそんなヒューを見て汗が止まらなくなる。先ほどまでとは全く違うヒューの雰囲気にいつも白ひげの近くにいるマルコでさえ底知れない強大さは肌を伝って感じた。昔もよくヒューと会っていたマルコだったが、これほどまでの男だったのかと驚く。世界中どこを探してもこれほどの男はそうそう居ないと確信できるほどだった。

 

「懐かしい顔もちらほら見えるからなァ......挨拶がてら暴れてやろうか。」

 

笑みを深くするヒュー。ゆっくりと立ち上がると、羽織っているボロボロの海軍コートが風に揺れた。  

 

 湾内に降り立ったヒューがまずしたのは雑兵の排除だった。その場にいる誰もが動きを止めてしまう。海兵も海賊もヒューから発せられる圧倒的な威圧によって立っていることすらままならなくなっていた。

 

 バタバタと倒れる海兵と海賊。数百万人に一人しか扱えないといわれる覇王色の覇気である。残ったのは将校クラスの海兵と隊長クラスの海賊のみ。ヒューは歩みを進める。

 

「てめェら、全員まとめてかかってこい......遊んでやらァ。」

 

 かろうじて倒れなかった海兵達はこれから戦うヒューを目の前に、気絶していた方がよかったと思っていた。なぜヒューに対してこんなにも恐怖するのかそれは誰にもわからなかった。

 

 

 

 

 

 処刑台の上にいたガープ、センゴクは動き出した白ひげとヒューを見て内心焦っていた。

 

「なぜ今になって奴が動き出すのか謎じゃが......この状況はよくないぞセンゴク。」

「わかっている....!止むを得ん...七武海を奴に充てる。白ひげは巨人部隊とボルサリーノに対応してもらう。」

 

そう言ってセンゴクは拳を握りしめたまま、戦場で暴れる大海賊二人を睨んでいた。

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