一匹狼の大海賊   作:篤志

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衝突、虎狼vs海軍

 ヒューと白ひげが動き出した一方で、向かってくる海兵達を薙ぎ倒して処刑台へ走るルフィの姿があった。隣に革命軍幹部であるエンポリオ・イワンコフと先ほど王下七武海を抜けた海侠のジンベエが脇を固めている。

 

「イワちゃん!あのおっさん誰だ?!」

 

ルフィは突然現れたヒューを見て叫んだ。イワンコフはウィンクをして海兵を倒すという異色な技で前に進みながらルフィの質問に答える。

 

「ヴぁナ~タが知らないのも無理はないわね。あの男、ウォルフ・D・ヒューは大海賊時代以前から活躍していた海賊で最も海に愛されている海賊と言われていたわ。でも、大海賊時代の始まりとともにインペルダウンに幽閉されたッチャブルけどね。あの男の破天荒さというと伝説になっている程よ。」

 

ルフィは海兵を殴りながらイワンコフの話を聞く。横にいたジンベイもヒューのことを話し始めた。

 

「そうじゃルフィ君。あの男が起こした事件はそのどれもが常識では考えられんほどのものじゃ。バスターコールで召集された海軍をたった一人で壊滅させ、白ひげのオヤッさんとの長きにわたる決闘の数々。一人海賊でありながら新世界のある海域を支配し、そして、極めつけは天竜人の殺害じゃ。」

「天竜人を?!」

 

突如、巨人の海兵が驚くルフィの前に立ちはだかった。手に持った剣を振りかぶり、ルフィに向かって叩き付けようとする。ルフィは立ち止まり、親指を噛む。そして深く息を吸い込んで吐き出た。ゴム人間であるルフィの骨はもちろんゴムであり、空気を吹き込むと膨らんで巨人並みの大きさになる。それを敵に叩きつけるとどうなるかなど想像に難くない。簡単に地に沈む巨人の海兵。

 

しかし、反動が大きいのが難点だった。

 

「くっそ〜、またちいさくなっちまった〜。」

 

骨に溜まった空気が抜けて幼児ほどの大きさになるルフィ。イワンコフもジンベイもその姿を見て呆れる。

 

「ヴァナ〜タも相当規格外ッチャブルね。デス!ウィーンクッ!」

 

隙ありと言わんばかりにルフィに襲いかかる海兵。それをイワンコフとジンベイが蹴散らす。しかし海兵の攻撃は止むことがない。

 

「ルフィ君!お前さんはエースさんの事を考えておくだけでええ。周りの海兵はワシ等が食い止める!『鮫瓦正拳』!」

 

ジンベエの放つ攻撃は向かってくる海兵を吹き飛ばし、その隙にルフィが処刑台へと駆ける。

 

「絶対に助けてやる!待ってろエース!」

 

叫ぶルフィに対し、エースはただ下を向いてこの戦場を見ていなかった。

 

元は自分が勝手な行動をしたばかりにオヤジや仲間達、弟までにも俺のために命をかけている。エースはそんな事を考えながら悔しさで押しつぶされそうだった。俺が弱くなければ、俺がロジャーの息子でなければ、......俺が生まれてこなければ。

 

顔を上げるエース。一心不乱に処刑台へと向かってくる弟を見て思い切り息を吸った。

 

「来るなッ!!ルフィ!!!」

 

走っていたルフィがエースを見る。ルフィはエースと目が合うと満面の笑みになった。

 

「エース!今助けに行くからな!!」

「来るなっつってんだろうが!これは俺のせいで起きた戦争だ!自業自得なんだ......だからお前は関係ねぇんだよ!ルフィ!!!」

 

エースの叫びにルフィは海兵を殴り飛ばしながら負けじと叫ぶ。

 

「兄貴を助けに来て何が悪い!!!俺は......」

 

ルフィの声が戦場に響く。

 

「俺は弟だァ!!!」

 

ルフィがそう言うや否や海兵達の表情が引き締まった。エースの弟と言うことはロジャーの息子かもしれない。ここで逃がす訳にはいかないと、ルフィに襲いかかる。すると処刑台にいるセンゴクが再び口を開いた。

 

「ルーキー1人に何を手間取っているのだ!其奴は幼少期にエースと兄弟杯を交わし、其奴もまた危険因子を引く者。世界的犯罪者、モンキー・D・ドラゴンの息子だ!ウォルフ同様、決して逃がしてはならん!」

 

またも世界中に衝撃が走る。モンキー・D・ドラゴンといえば、世界で猛威をふるっている集団、革命軍のリーダーの名である。ドラゴンは素性を一切明かさず、指名手配されてはいるものの、全くと言っていいほど尻尾を掴めていないのが今の状況である。そんな謎だらけの男に息子がいたことに世界中が動揺していた。

 

「グラララララ、そういうことかガープ。」

 

白ひげは海兵を吹き飛ばしながらルフィを見据える。なす術もなく海兵達は白ひげの餌食になっていた。その反対側ではヒューが豪快に笑いながら海兵を殴っていた。ボコボコに膨れ上がった海兵の顔面を見て怯む他の海兵達。ヒューはそんな彼らに問いかける。

 

「次は誰だ?」

「手合わせ願おうか。」

 

その声に反応するかのように1人の男がヒューの前に立った。ヒューは笑みをさらに深くし、掴んでいた海兵を放り投げる。

 

「海軍じゃねえな?誰だお前。」

「ジュラキュール・ミホーク。一介の剣士をやっている。」

 

ヒューの前に立ったのはミホークだった。ゆっくりと背中に手を伸ばし、黒刀『夜』と言う名の世界最強の剣を持った。一瞬にして空気が変わる。

 

「伝説と言われる其方の実力、見せてもらおう。」

 

ヒューはその剣を見て何かを感じたのか何も言わずミホークを見ているだけ。まるでミホークの攻撃を正面から受けるとでも言うかのようにヒューは微動だにしなかった。

 

「外すんじゃねぇぞ......若造。」

 

次の瞬間、ミホークが放った斬撃がヒューに襲いかかった。ヒューはそれを何ともないかのように手刀でぶった斬る。しかし斬撃の威力は落ちることなく四方に飛んで行き、軍艦、海賊船、氷塊を真っ二つにした。

 

「なるほど......武装色の覇気か。それも練度が並外れているな。」

「ダッハッハッハッハ!いい斬撃だ!ミホークとか言ったな。俺のとっておきも見せてやろう!」

 

そう言うとヒューは軽く息を吐き、拳に力を入れる。

 

「ムッ!?」

 

ミホークの身体が強張った。威圧と共に覇王色の覇気がその場を支配する。ヒューは武装色の覇気を指先一点に絞り上げた。

 

「見ておけ若造共......これが覇王の覇王たる所以だ。覇気を扱う者は平伏し、覇気を知らぬ者は怯え、逃げ惑う。」

 

その言葉通り、周りの海兵や海賊達は皆、膝をついていた。意識を失う者もいれば、怯えたように歯をガチガチと鳴らして泣いている者もいた。ミホーク自身も味わったことのない感覚に驚く。

 

「これほどとは......」

「『覇撃』」

 

ヒューは武装色の覇気を纏った右手を振り上げ、素早く振り下ろした。ただの手刀と呼ぶにはふさわしくないほどの威力を持った嵐のような斬撃が全てのものを巻き込みながらミホークに襲いかかる。手に持つ『夜』でなんとか耐えるが、足場が限界だった。ボロボロと崩れる氷。ミホークは剣を上に振り上げ、斬撃の軌道を逸らした。直後、ドカアァァンという音がするとともにマリンフォードの一角が半壊した。そしてその斬撃は止まらず四方を囲んだ氷の壁までも破壊したのだった。

 

言葉を失う海兵や海賊達。ヒューはその光景を見て大声を上げて笑っていた。

 

「ダーッハッハッハッハ!ダハッ、ダハハハ!!!」

 

何が面白いのか大笑いするヒューの後ろに迫る影。それに気づき、ヒューは後ろを振り返った。

 

「もう下がってなよ鷹の目。」

「そうか......ならば私はあの麦わらの男を追うとしよう。」

 

ミホークはそう言ってその場を離れる。

 

「そうかい......アーララ、あんなにやっちゃって。こうなったらこっちも黙ってられないよ、虎狼のウォルフ。」

 

ヒューの目の前には半分氷の男が立っていた。海軍大将青雉こと、クザン大将である。

 

「やっと見知った顔が出て来やがったか......よりによってテメェか中将のクソガキ。」

 

そう言いつつ拳を放つヒュー。クザンは後ろに飛んでそれを回避した。そして掌の上に氷の槍を作るとヒュー目掛けて発射する。ヒューは最小限の動きで槍を躱すと拳を氷の地面に叩きつけた。盛り上がる氷がクザンを襲う。しかしそこは氷人間、盛り上がった氷をさらに凍らせて動きを止めた。

 

「相変わらず厄介な覇気だこと。アンタ、いい加減死んでくれないかな。」

「フン!クソガキに殺されるほど耄碌してねェぜ。『覇拳』」

 

ヒューは一瞬でクザンの目の前に迫り、拳を放った。氷になり爆散するクザンの身体。そして空中でゆっくりと身体を再構成して行く。

 

「『アイスボール』」

 

クザンの声が聞こえると共に氷がヒューを覆った。一瞬にして氷の塊ができる。クザンはその氷の前に降り立つ。その氷の塊を中にいるであろうヒューと共に叩き壊そうとして拳を振り上げるが氷の中にヒューはいなかった。気配を察して振り返るクザン。しかし迫っていたヒューの拳により吹き飛ばされた。

 

「オゥオゥやってくれるじゃないの全く......アンタ1人にどれだけの海兵が犠牲になるんだろうね。ホント、やってらんねぇなァ...」

「フン!大人しくしてろとでも言うつもりか?悪いな......」

 

ヒューの足がすでにクザンの目の前に迫っていた。回避しきれないと思ったのも束の間、吹き飛ばされるクザン。

 

「俺ァ海賊だからなァ......」

 

吹き飛ばされたクザンはすぐにヒューに反撃しようとするが、1人の男がヒューとクザンの間に立った。

 

「ウォルフの兄貴!後は俺に任せてくれ!」

 

野太刀を手に持ち、構える男。白ひげ傘下の海賊スクアード。ヒューは、何も言わずゆっくりと歩みを進め始める。その背後でスクアードの雄叫びが轟いた。

 

「野郎共!海軍大将青雉の首を取るぞ!俺に続けェ!」

 

 

 

 

 

ヒューの視線の先には同じ容姿をした數十体の巨大な男が口を開けてビームを連射していた。それを見てヒューは呟く。

 

「......ゲロでも吐いてんのかありゃ。」

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