バトルは苦手だ(再三再四)
もう少し描写をくどくしたい
くどく、癖になるくらいくどく
『貴方の能力、「シンクロする程度の能力」についておさらいしておきましょうか』
『おさらいも何も、ぼぼ何もわかってないじゃないか』
『そう? 私はだいたいの予想はついてるわよ。と言うより、確定レベルで』
『マジで?』
『マジマジ』
『わかったよ、永琳。そこまで言うなら教えてほしい。「シンクロする程度の能力」はいったい全体、どんな能力なんだ?』
『それならば対価として、貴方が隠してることを話して貰おうかしら。信頼と信頼の等価交換よ』
『……』
『なんてね。信頼は押し売るに限るわ。貴方が気が向いた時にでも話して頂戴』
『……なんで』
『何かしら』
『なんで、わかるの?』
『医者だからよ』
『僕の知ってる医者とは違うね』
『天才ですから』
『自分で言うんだ……』
『さて、話を戻すにしても永くん。まず貴方は自分の能力に自覚を持たなくてはならない』
『自覚って言ったって、何もわからないのに?』
『たぶん、貴方の話したくない過去と照らし合わせれば、この能力の一端が見えてくるんじゃないのかしら?』
『……』
『トラウマは忘れるだけじゃ意味がないのよ。トラウマからわかることもある』
『……それで、わかったとして』
『わかったとして?』
『どうやって使えばいいんだ、それは』
『他人事みたいな言い方ね。心を落ち着かせること。暴走して、無茶苦茶しないで、ただ心を落とし着ける。それだけ』
『それだけって……随分と雑だな』
『深く考えすぎなのよ。能力なんて天性のもの、意識したって仕方ないわ。心の波を消してやればいいだけよ。少なくとも貴方は』
『……はあ、わかったよ。心を落ち着かせることね』
『貴方の能力は、とてもじゃないが最強と言える能力ではないわ。だからと言って最弱でもない。中途半端に弱く、中途半端に使いづらいことになると思う』
『……』
『でも逆に貴方の能力は、誰が相手にも互角になれる。最強だろうが最弱だろうが、タイマンでもっとも相討ちが得意なのは、人類において貴方しかいないでしょう』
『ねえそれ褒めてるの? それとも皮肉?』
『とにかく、行ってらっしゃいな。姫はああ言ったけれど、男の子なんだから、鈴仙を守らなくちゃ』
『なんか話を反らされた気がするんだけど』
回想終了。なんかこうして思い返してみると、永琳が言ってることが抽象的でいまいち的を射ない。どこかあの八雲紫と話し方が似ている。
僕が何故こんな回想をしているのかは、順を追って説明しなければならないと思う。
順を追って、結論から言おう。
順を追うと結論になるんだから仕方ない。
つまり、鈴仙の目から放たれたレーザーールナティックブラストは当たらなかった。たった一つだけ、たった一つだけ彼女にミスがあったとするなら、念には念を入れすぎてしまったことだ。
“外れないように、服を巻き込んで柔道のように掴んでしまったことだ”。
……洋服は柔道着じゃないんだから、破れるに決まってるだろ……。
服を破くことで拘束から脱した橙は、自信の裸体を隠すことすらせず、距離を取って唸った。
猫の習性……みたいなものだろうか。
鈴仙はついに力尽きたのか、膝をついて息も絶え絶えだった。胸の穴から痛々しく出血している。しかしそれでも、彼女は僕のことを見て、小さく「逃げなさい」と呟いた。
「……お前は、なんで昨日会ったばっかのやつに命を張れるんだよ」
「……そんな……当たり前のこと……聞かないでよ……」
鈴仙は一息ついて、誇らしげに笑った。
「お師匠さまの弟子……だからに……決まってるじゃない」
あくまで患者を心配させないように笑う。
ああ、もうーー大馬鹿野郎だよ、お前。
自己犠牲なんてされても後味悪いだけじゃないか。
本当に。
「救いようのない大馬鹿野郎だよ……!」
心を、落ち着かせろ。心頭滅却し全てを無にしろ。
個性なんて捨てちまえ。あの時のように全てを融かし混んでしまえ。猫に睨まれてすくむんじゃない。波を消せ。あれはただの一面の絵画だ。ただそこにある大樹のように、ただ吹き荒ぶ風のように、当たり前を認識しろ。当たり前になれ。波長を合わせろ。真っ直ぐに張った糸のように、無言と無限を両立させた線のように、ただ静かで無心になれ。水面の波を消すような感じではない、水中に沈んでいくような集中だ。落とし入れて落とし着けてーーただ、ただ。
「『
一歩進む。猫は動かない。
二歩進む。猫は唸っている。
三歩進む。猫が震えた。
四歩五歩六歩進んでも、目の前に立っても、猫は何も反応しない。
「世界に存在し、みんながそれを認識しながら意識はしない存在、それは空気だ」
だから僕は、存在感を空気と同調させた。
みんながそこに空気があることを当たり前だと思い、普段気にもしない存在感をシンクロさせた。
全ての生物は、空気がそこにあることを理解しながら、空気を読むことを覚えながらも、そこにある気体に意識を向けることはほとんどない。
特に戦闘中は、だ。僕は自身の存在感を、空気たらしめた。
“ものや人と同調し、ステータスを同値にする能力”ーー簡単に言うとそういうことだ。
なるほどこれはーー中途半端だ。
「不意を討つようで気に入らないけど、そんなことは言ってられないな」
僕は橙の頭を掴む。さすがにそこまでされれば僕の存在を認識するだろうが、困惑と当惑が混ざり合った意識の中で、ただ攻撃に移ることはできないだろう。彼女にとってはいきなり頭を掴まれたようなものなのだから。
だから瞬間的にーー刹那ほど後に僕は一瞬だけ能力を解除する。本当に一瞬だけ解除して、鈴仙と同調する。
途端に、胸に風穴を開けたような(というかそのまんま)激痛が駆け抜ける。呼吸が出来ない。息苦しい。血が流れたかのような錯覚を得る。全身の力が抜けていき、意識を保つことすら朦朧とする。
これが鈴仙の痛み。
それでも誰かを助けようとする強み。
「本当、バカ野郎だよ」
僕はそれだけ言って、静かに笑い。
赤く染まってるであろ眼で黒猫を睨み付け。
たった一撃。
「 赤眼『
今度のレーザーは、ちゃんとしっかり黒猫を飲み込んだ。