新章になります
ええ、起承転結なんてありませんごめんなさい落ち着いてください
僕と朝御飯と手厳しさ
不死身。
不死の存在。
例を挙げるなら輝夜や、永琳は不老不死であるという。妖怪などの人外の中には、彼女らほどではないにしても、およそ不死と呼べるような者も存在するらしい。
そしてこれは後から聞いたことなのだけどーー妖精などは死んでしまっても
とにもかくにも、僕が今考えているのは果たして、“不死は生きているのか”ということだ。
あまり深く意識していたことではなかったけれど、不死は生きているから不死なのか、不死は死んでいるから不死なのかーー
生まれ生まれ生まれ生まれて生のはじめに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥しとは、弘法の言葉だったか。
ならば不死の者こそ、まさに生死すら知らないのではないだろうか。
生まれ生まれ生まれ生まれて生は終始暗い。
死に死に死に死んで死は永劫冥い。
今度それは不死の人々に聞いてみるしか答えはないのかもしれない。しかしそんな話を人でなしこと僕、夜明永が図々しくも訊いてしまうのはいささか気が引ける。
まあ、いずれにせよ。今回の僕の疑問についてはそっちのことではなく、その話から“ならば”と加えて話を発展させたことだ。
“不死者が生きているとも死んでいるとも言い難いとするならば、死者は不死と呼べるのか否か”ということだ。
幽霊は、亡霊は。
生きているとは、言えるのだろうか。
「私たちが生きているかは死んでいるかはどうでもいいことよ。私たちは、そこにいることに意味があるのだから」
後々になって、彼女は僕にそう言った。
幽霊とは、そう言うものだと。
まあいずれにせよ。そんなことの答は、あの時あの場所の僕にはわかるはずもないことは全くの事実であり、僕の幻想での将来の転換期は、間違いなくあの時間にあったとは言えてしまうだろう。
だから語ってしまおう。
これは橙が僕らを襲撃した、すぐ後の出来事だ。
「まさか配達ひとつ出来ないなんてねえ……」
「死にかけてるんだし、それくらいは目を瞑っていただきたいんだけど……」
鈴仙を担いで、なんとか輝夜と永遠亭に逃げ帰って来た僕だったが、そんな僕を待っていたのはまさかのダメ出しだった。
他者に厳しく姫に甘い永遠亭である。
呆れたように言う永琳ではあるが、呆れたいのはこっちである。あんな堂々と命を狙われるとは思わなかったし、足手まといの僕がいたとはいえ、護衛の鈴仙は力尽きてしまったのだから。
あの人外が現れなかったらーー引いては輝夜が助けに来なかったらと思うと、ゾッとする。
「まあ、でも、いい顔付きになったわ。色々吹っ切れた感じ。だいたい掴めたかしら? 『シンクロする程度の能力』」
「解ったけれども、解ったけれども! 解らなかったらどうするつもりだったんだよ!?」
あの場で全滅しなかったのは、控え目に見ても、僕の頑張りがあったことは正直言って間違いないと思ってる。
拮抗したとはお世辞にも言えないし、時間稼ぎにはなったかなといったくらいだけれど、あの踏ん張りがなかったらと思うと。『
突っ掛かる僕に対して永琳は気にも留めてないような素振りで、「さあ、朝御飯にしましょう」と話を切った。
「永琳に
輝夜が永琳をフォローしているのか、僕を諌めたのか、本心はわからないけど慰めるように言う。
彼女なりの気遣いだろうか。
「姫様~」
僕らがそんな話をしていると、ヒョッコリと小さな少女が、姿を現した。頭にはやはりと言うか兎耳。段々とこの世界のキャラクターには驚かなくなってきた。
猫耳少女に殺されかけてるんだから、まあ仕方ないと言えば仕方ないとは思うけれど。
「あら、てゐ。頼んでた調査は終わったの?」
「文字通り、私にかかれば朝飯前だね。で、まあ、人だったよ。生きた人間だった」
「そう……ありがとう」
てゐ、というのは聞き覚えがあった。因幡てゐ。確か鈴仙がそんな名前を出していた。永遠亭の周りに仕掛けられた無数の罠を設置した人物であるという。
随分とイメージをぶち壊してくれるものだ。
しかしそんなことより、今の会話が非常に引っ掛かったので、少し掘り下げてみることにする。
「人間って? 何の話?」
「アンタにゃ話してないよ、冴えない顔したお兄ちゃん」
なんだろう、地味に当たりが強い。
「ほら、鈴仙がボロボロだから苛立ってるのよ」
「なんでそうなる」
「ああなるほど」
「納得するなよ」
仲良しこよしというわけか。なら仕方ない。
「冗談はその程度にして、後で教えてあげるわ。食事の時にでもね」
そう呟いて輝夜は、玄関を上がっていった。
……まだ永遠亭に上がっていなかったのも、すっかり忘れていた。