二話かあ、全く慣れない……。しばらくはこんなギャグ一貫になるのかなあ
暫く歩いていると、ポッカリと開いた広場に出た。空を見上げると太陽はまだ東の方にある。生憎、僕は太陽の位置だけで時間を把握できるようなスペックは持ち合わせてないので、だいたいまだ朝早いかなあ、と言った具合で感じることしか出来ない。
感覚が麻痺してきたのか、ひんやりとした土が心地よく感じられてきた。指の間をすり抜ける湿った土が、ニュルニュルとして……ふう。
さて、閑話休題。この開けた広場に話を戻すことにするけれど、ここにはポツンとーーこの場合ポツンという表現はおかしいのかもしれないけどーー屋敷が佇んでいた。
永遠を凝縮したような重厚な空気を纏う反面ーー歴史の重みこそ感じるが、見た目的には、古さやボロさは見てとれない。よく手入れが行き届いた屋敷であった。
こんだけ荘厳さに溢れているんだ、どんな大金持ちが住んでいるかはわからない(あるいは、資産家の別荘、隠れ家の可能性もあるのだけど)が、とにかくさぞかしな大物が住んでいるに違いない。
少なくとも、先ほどの藤原妹紅に施しを受けるよりかは、この家の人間に世話になる方が心の負担も少ないだろう。
仮に別荘だとしても、掃除婦さんや管理者さんに人里までの道を教わればいいのだ。
というわけで、とりあえず玄関に周り、ノックしてみることにする。
「ごめんくださーい、ごめんくださーい」
はいはーい、と、元気のいい声とトテトテと廊下を走る音が聞こえてきた。うむ、朝から元気いっぱいだな。どうやらいい子がいるらしい、お手伝いだろうか。
「お待たせしましたー、急患ですか?」
ガラッと引き戸が開き、ひょっこりと少女が……顔を……
ウサ耳。
ブレザー。
美少女。
「変態だあああああああああああああああ!!!!?」
「いきなり訪問しておいて何を言ってるのこの人!?」
ダメだ、僕は妹紅のやつにどんな場所を教わったんだ!完全に“そういう”お店じゃねーか!
「だ、だいたい貴方だって!!変人極まりない格好じゃない!?」
「な、何を!この夜明永、自らが変人足る要素は何一つない!」
「むしろ変人要素の塊じゃない!鏡を見てよ!!」
むう……この娘は、出会い頭に人のことを変人扱いするのか……コスプレイヤーの風上にも置けないやつだ。
「だいたい、僕のどこが変人だって言うんだ! ただ身体中土だらけで裸足で汗でパジャマが身体にピッタリと張り付いていて髪もボサボサで息が荒く人の格好を見て叫んだだけじゃないか!」
「意味が正しい方の確信犯!? 変人じゃなくて変質者だった!?」
むむむ、なんて失礼なやつなんだ。妹紅のやつめ、こんなとこに連れてくるなんて、今度会ったらどうしてくれようか。
「なによぉ……朝っぱらから煩いわね……」
「あ、姫様! 聞いてくださいよ、ここのいきなり現れた変質者が……」
「誰が変質者じゃ」
「じゃあ不審者が!」
「それなら否定はしないけどね!」
扉の奥から、眠たそうな声がして、ウサ耳が助けを求めるかのように背後を向いた。ウサ耳の背中のせいで、その人物を視認することは出来なかったが、どうやらウサ耳の上司らしい。
僕とウサ耳のやり取りを聞いていったい何を思っているのかはわからない。しかし、その“姫様”と呼ばれた何者かは、興が乗ったのかはわからないが、ウサ耳のことを押し退けて、僕の目の前に現れた。
初めてその少女を見た感想はーーヤバイだった。この少女はヤバい。少しでも気を抜けば、“心が持っていかれる”。
無意識的無自覚性超攻撃型の美とでも言おうかーー本人は自身の美には気付いていても、その危険性には気付いていないのかも、といきなり思った。
艶やかな黒髪を床の近くまで垂らし、白く透き通った肌、桜色の綺羅びやかな唇ーーそんなオーソドックスな美を極限まで突き詰めたのが彼女の美だった。
まあつまり。
僕の彼女への第一印象はーー怖いだ。
「ふむふむ、まあ、何となくわかったわ。鈴仙、貴方が人里に配達を初めた頃、稀有の眼で見られたでしょう? つまり、そういうことよ」
「いやどういう意味ですか姫様……」
「貴方、パッと見変態に見えるのよ」
「ドストレートだなおい」
そこはもう少しオブラートに包んでやれよ可哀想に……レイセン?とか呼ばれたウサ耳がだいぶ萎れているだろ。
それを見てなにかを満足したのか、姫様とやらはフフッと笑って、僕の方を見やった。
突き刺すような視線に、僕は何も言えない。
「で、どうせ貴方は外来人でしょう。今永琳がいないから、その辺りの説明が非常に面倒なのだけど……」
そう言って姫様とやらは、暫し考え込む。
とはいえ、わりと早く決断したのか。それともわざわざ僕がここまで来たことについて思案してくれたのか、レイセンにタオルと病衣(確か、入院患者に着せる服だったかな。ということは、ここは病院なのか?)を取ってくるように指示を出した。
「貴方には、とりあえず現状を知ってもらうことにするわ。さ、上がりなさい」
そう、手招いた彼女は、にっこりと優しく笑った。
まるで悪魔のように。
決して天使ではなく、女神でもなく、小悪魔のように笑った。
遅筆ですみません、精一杯なんです……