商人少女とお兄ちゃん竜   作:フドル

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誤字脱字報告ありがとうございます!


特訓の成果と保護竜の戦闘

「すーはー、すーはー……。」

 

 茂みの中で大きく息を吸って、吐く。もう一度同じ動きをしてから、遠くに見える標的を見据える。

 

 大丈夫、あれだけ厳しい特訓をしたんだニャ。いけるニャ。負ける訳がないニャ。そう何度も頭の中で呟くけど、手が震えて足は前に出ないニャ。

 

 理由は何となくだけど分かってるニャ。ボクはまたあの牙がボクの首に届くのを恐れているんだニャ。あの目の前が段々と暗くなっていく光景を思い浮かべて……また、そうなるんじゃないかと思っているんだニャ。

 

「不甲斐ないニャ……。」

 

 進まない足をそのままに武器を取り出してその場で素振りを行うニャ。ジャギィ達に負けて帰ってきてからボクは集会所で時間がある限りいろんな先輩達に話を聞いたニャ。

 

 自慢話、痛い目を見た話、騙された話、その人達が今まで経験したいろんな話があったニャ。だけどボクが求めていた話は何処にもなかったニャ。

 

 だからみんなに聞いたんだニャ。恐怖はどうすればいいのかと。どうやったら恐怖を無くすことが出来るのかと。だけどその話を聞いた先輩達はみんな揃ってこう言うニャ。「そりゃ無理だ」って。

 

 恐怖は無くすものじゃなくて付き添うもの。恐怖無くしてモンスターを狩ることは出来ないってみんなに言われたニャ。

 

 ボクには分からなかったけど、みんなにいつかは分かるって言われたニャ。今のボクは必要以上に怖がっているだけで、それを必要な分だけに収めることが出来るのならとも言われたニャ。

 

 先輩達の話を思い出しながら、素振りを終える。大丈夫、動けている。あとは進むだけニャ。

 

 一歩踏み出して、引っ込める。また踏み出して、引っ込める。そんな自分に嫌気が差して、何処までも綺麗な青空を見上げ、小さく呟く。

 

「ボクに必要なのは……ちっぽけな勇気。」

 

 呟きながら、また足を出して、また引っ込めそうになったときにもう一度呟いて……今度こそ次の一歩を踏み出すニャ。

 

 そうなると不思議なもので、ボクの足はさっきまでのは何だったのかと疑問に思うほどズンズンと前に進むニャ。段々と近くなる標的達。近付いているのだからもちろん奴らもボクに気付くニャ。

 

 1番ボクの近くにいる標的のジャギィは、身体に治りかけの傷がついているニャ。あの時、ボクがつけた傷とそっくりの傷ニャ。だけどあのジャギィはシュルルが殺したみたいなので別の奴ニャ。

 

「お前達からすると意味が分からないと思うけど、また来たニャ。だけど今度は負けない。ボクはお前達をハンターではなく、ニャンターとして討伐するニャ!」

 

 あの時と同じようにブーメランを手に持って、またあの時と同じようにジャギィに向けて投擲し、ボクの戦い(狩り)が始まったニャ。

 

 

 

 

 

 

 

 うん、特訓の成果が出ているな。地上の気配を感じながら、俺はその場を思わず頷いてしまう。上ではニャニャが常に駆け回り、ジャギィ達に囲まれないように立ち回っている。

 

 牽制のブーメランもそこそこの頻度で投げており、ニャニャを追いかけるジャギィ達も簡単には近付けない。その中で孤立したジャギィやジャギィノスにニャニャは近付いて、武器を振るう。

 

 鮮血が飛び出て、また1匹が倒れ伏す。これで2匹目。順調だな。それにアイルーらしい戦い方が出来ている。

 

 ニャニャはとにかくハンターの動き方が目立っていた。だからルルが提唱した頭のおかしい特訓をそれ幸いと利用して、ニャニャにアイルーとしてのやり方を教えた。

 

 と言ってもそんなに重要なことは教えることは出来ない。そもそも俺はアイルーじゃないから何がニャニャの戦い方に合っているのかは分からない。だから火山に住んでいるアイルー達の戦い方をニャニャにそのまま教えているだけだ。

 

 今回はニャニャにとにかく動くことを教えた。特訓中もニャニャが止まればすぐに攻撃して、動くことを叩き込んだ。地中に潜ったら逃げれるなどの甘い考えも全部先回りして潰し、ひたすら動かした。

 

 ゲームの時みたいに潜ればセーフなんて甘い考えは死を招く。そもそも俺みたいな地中に潜れる奴が相手ならその手は使えない。

 

 しかし潜ることが絶対にダメと言うこともできない。今のジャギィ達のように、地中に攻撃できる手段などを持たない相手には有効だからだ。

 

「ニャニャ!?」

 

 次はどんなことを教えようかと考えていると、ニャニャの驚くような声が聞こえてくる。地上に意識を向けるとジャギィ達はあと1匹になっており、その1匹がニャニャの武器を蹴り落としたようだ。

 

 ニャニャは怯みはしたが、すぐに後ろに下がってジャギィの追撃を回避することは出来ている。今は落とした武器の代わりにブーメランを片手に持ってジャギィを牽制しているようだ。

 

 お互いに睨み合って隙を探す。ニャニャは落とした武器を拾いたそうだが、ジャギィがさりげなく武器の真上に移動している。これではニャニャは武器を拾うことが出来ない。

 

 どうするのかと思っていたら、ニャニャが歯を強く噛み締めた後、手に持っていたブーメランをジャギィに向けて投擲すると同時に駆け出した。胴体を目掛けて投擲されたブーメランをジャギィが躱すにはその場を動かなければならず、予想通りジャギィは横に跳んでブーメランを躱した。

 

 その間にニャニャは武器を回収。だがまだ甘い、それだとジャギィが間に合ってしまう。

 

 武器を拾ったニャニャがジャギィに向き合った直後にジャギィの跳びかかりが襲いかかる。不意打ちのような攻撃にニャニャはもちろん躱しきれず、のしかかられる。奇しくもあの時と似たような場面になったな。

 

 ニャニャの気配が一気に怯えに切り替わった。トラウマを刺激されているものだ。仕方がない。助ける準備だけはしておくかと地上近くに移動しようとした時、ニャニャの怯えた気配にほんの少しだけ、覚悟を決めたような気配が混ざっていることに気付いた。

 

「ニャァァァァァ!!!」

 

 ニャニャが叫びながら片手に持った武器をジャギィの腹部に突き刺した。深く刺さった武器は明らかに致命傷だが、悲鳴を上げながらもジャギィはニャニャに噛みつこうと牙を剥く。

 

「ボクは!お前を倒して!その先に行くんだニャァ!!」

「グゥエ!?」

 

 ニャニャの首筋に噛みつくはずの牙は、ニャニャがギリギリで差し込んだ魚の形をした剥ぎ取りナイフに防がれる。暫く拮抗していたが、腹部に突き刺さった武器が決め手になったのか血を流しすぎたジャギィは力無くニャニャに倒れ伏した。……ニャニャの勝ちだな。

 

 

 

 

 

「ふぅー!ふぅー!」

 

 ボクの身体にのしかかっているジャギィを払いのける。早くトドメをささないといけないニャ。武器はジャギィの身体に刺さったまま回収し忘れたけど、隙を晒している今なら剥ぎ取りナイフでも十分ニャ!

 

 そんな思いで剥ぎ取りナイフを逆手に持ってジャギィの首に振り下ろそうとした時、何かが巻きついて腕が動かせない。周囲の警戒を怠っていたことに気付いて慌てて巻きついたものの正体を確かめると、それはシュルルの舌だったニャ。

 

「あとちょっとニャ、待っててほしいニャ。」

「シュルルル。」

 

 地中から現れたシュルルはボクを見て首を横に振る。それを見てからジャギィを見ると、既に息絶えていたニャ。

 

「……死骸に追い討ちは駄目ニャ。シュルル、ありがとうニャ。」

 

 荒い呼吸を整えながらシュルルにお礼を言うと、腕に巻きついていた舌が解かれる。自由になった手でジャギィに刺さっている武器を抜き取ったあと、死んだジャギィを剥ぎ取るニャ。

 

「ボク、やったニャ。勝てたニャ。」

 

 剥ぎ取りをやっていると、徐々に実感が出てくる。それと共に嬉しさも湧き上がってくるニャ。

 

「〜〜!やったニャァァァ!!」

 

 嬉しさが爆発して、思わず飛び上がってしまったニャ。一部のハンター達はクエストクリア時にガッツポーズをするって聞くけど、今ならその気持ちが分かる気がするニャ。

 

 嬉しさのあまりにシュルルの周りをちょこまかしながら踊るボク。もしかしたらシュルルには迷惑かも知れないけど、少しだけ我慢してほしいニャ。

 

「グゥオォォォォォォン!!!」

「ニャニャニャァ!!?」

 

 そんな気分で踊っていたボクだったけど、遠くの方から聞こえてきた狼のような咆哮に驚いてシュルルの顔面に張り付いてしまったニャ。シュルルのジト目がボクに突き刺さるけど、これは条件反射ニャ。ボクは悪くないニャ。

 

「グゥオォォォォォォン!!」

「ニャァ……、何だか滅茶苦茶吠えてるニャ。」

「シュルルルル。」

 

 遠くから何度も聞こえてくる咆哮。明らかに大型モンスターだからボクは早く撤退するのが得策ニャね。ジャギィと戦う前のボクなら勇んで突撃して返り討ちにあってたんだろうニャァ……。

 

「ニャ?シュルル、どうしたニャ?」

 

 ギルドに調査の報告をお願いしないとニャと考えを纏めながらキャンプに向かって歩きだしたけど、シュルルが着いてこないニャ。不思議に思って声をかけてみるけど、シュルルは咆哮が聞こえてきた方角を見たまま動かないニャ。

 

「シュルル〜?帰るニャよ?」

 

 動かないシュルルを押してみたり、顔に張り付いてみても全く反応しないニャ。

 

「グゥオォォォォォォン!!」

「……シュルルルルルル。」

 

 何度目かの咆哮が聞こえてきた時、やっとシュルルが反応したニャ。だけど何だかそれはイラついているようで、嫌な予感がするニャ。

 

「ジュラルルルル。」

「あ、なんだかボク、嫌な予感がビンビンしてきたニャ。ちょっとシュルルこっちを見ないでほしいニャ。」

 

 思わずシュルルから後退りをするけど、それよりも速くシュルルの尻尾がボクを掴んだニャ。

 

「ジュラルルルル!!!」

「ニャニャニャニャ!!?シュルル!止まるニャ!止まってニャァ!!」

 

 勢いよくシュルルが咆哮をしたと思うと、ボクを掴んだまま地面に潜り始めたニャ。ボクを掴んだままということはボクももちろん一緒に行くということ。静止の声を出すけどシュルルが止まる気配はなく、ボクは真っ暗な地中に引き摺り込まれていったニャ。

 

 

 

 

 

 地中を勢いよく掘り進む。目指す目的地は咆哮が聞こえてきた場所。理由は挑発されたから。別に俺だけを挑発したわけではないのだが、挑発されたからにはそれ相応の行動はしなければならない。

 

 これは火山生活をした時についた癖で、どうしようもない。火山は屈強なモンスター達が次から次へと出現するのでこの世界の住民達は勘違いしていそうだが、みんなが思っているより火山は生物が生息できる範囲が狭い。そんな火山だと相手に舐められたら面倒臭いことになる。格下の小型モンスターでも縄張りを奪おうと喧嘩を売ってくるようになるし、大型は我が物顔で他人の縄張りを徘徊する。それを追い返しても次から次へと……って感じでとにかく面倒臭い。

 

 一度経験をしてからは二度としたくないため、喧嘩を売られると誰であろうとついつい買ってしまうようになった。一度溶岩の中で生活しようかと考えたことがあったが、即座にやめた。溶岩に耐えれる甲殻や鱗があっても、溶岩の中で暮らすとなれば話は別だ。

 

 しかしここは火山ではなく渓流。俺の縄張りでも何でもないので無視が安定。最初はそう考えて苛つく気持ちを抑えて挑発の咆哮を我慢していたのだが、ニャニャを見てふと閃いたのだ。これはニャニャに大型の戦いを見せるチャンスなのでは?と。

 

 俺は我慢出来ずに戦える、ニャニャは俺と大型の戦闘を見れる。まさに一石二鳥じゃないかとニャニャに大型同士の戦闘なんて見る意味があるのかという冷静な考えを無視しながら逃げようとするニャニャを捕まえて即座に行動を始めた。

 

 目的地近くまで来たので勢いよく地中から飛び出して挑発を行ったモンスターを睨みつける。青い甲殻に白い体毛、辺りを飛び交う雷光虫は夜なら非常に映えるだろう。

 

「ニャニャ!?ジンオウガだニャ!」

 

 俺の尻尾の先端にしがみつきながらニャニャが驚愕の声を出す。というかニャニャ、俺が掴んでいるんだからニャニャが俺の尻尾を掴む必要なんてないんだぞ?

 

 全身を使って俺の尻尾にしがみついているニャニャに呆れていると、ジンオウガが一歩踏み出した。既に超帯電状態に移行しているようで、背中からは青い電撃がバチバチと弾けている。

 

「グルルルルル。」

「シュルルルル。」

「シュルル、帰らないかニャ?ボク、お腹が痛くなってきたニャ〜にゃんて?」

 

 体勢を低くしていつでも飛びかかってこれる姿勢で俺の隙を窺うようにジンオウガは近付いてくる。それに対して俺は首を伸ばして見下ろす形で迎えるが、後ろでニャニャが今考えたであろう帰る口実を口にする。

 

 張り詰めている空気がニャニャの発言で俺の方だけ解けてしまう。そんな隙を狩人と呼ばれるジンオウガが見逃すわけがない。

 

 視線をニャニャの方へ向けた俺にジンオウガが跳びかかり、俺の首を食い千切ろうと襲いかかる。まぁ、分かっているけど。

 

 伸ばしていた首を戻して頭部を下げる。ジンオウガからすれば噛みつく場所が首じゃなくて頭部に変わっただけの何の意味のない行動。生物であれば、そこが急所であることに変わりはないからだ。だが俺には角がある。

 

 俺に跳びついて勢いよく角に噛みつくジンオウガ。それを見てこいつはまだ成体になってから間もない個体だと確信した。経験を積んだ個体ならそれなりの勢いで突進したのにその場から微動だにしない相手なんて警戒するに決まっているからだ。ティガレックスみたいな脳死で突進する奴らなら微動だにしない?んなもん知らん!突進だ!となるが、ジンオウガなら警戒するはずだ。

 

 なのに警戒せずにそのまま攻撃、さらには自身の牙が刺さらない角を今も必死に噛みついている。これらの理由で俺はこいつを成体になったばかりの個体と判断した。それに成体になったばかりならあの考えなしの全方位挑発の咆哮にも納得がいく。

 

 それと同時に疑問が浮かび上がる。あまりにも警戒心がなさすぎる。全方位の挑発なんて普通しないぞ?自分より実力が上の個体を呼び寄せたらどうするつもりだ?死ぬだけだぞ。

 

 群れから甘やかされて育ったのか?それとも別の要因か?目の前のジンオウガがこうなった要因を軽く考えてみるがしっくりくる答えは出ない。しかしそろそろ角を齧られているのが鬱陶しくなってきたので反撃しようか。

 

 ジンオウガを角に噛みつかせたまま首を伸ばして頭を上げる。そこまできてもジンオウガは俺を離すつもりはなく、前脚は俺の頭部を掴んだままで後脚は徐々に爪先立ちになる。それを見ながら今度は勢いよく頭を下に振り下ろし、ジンオウガを無理矢理引き剥がす。

 

 そのまま間髪入れずにその場で反転、勢いをつけた尻尾をジンオウガに叩きつけて吹き飛ばす。

 

「ミギャァァァァァ!!死ぬ!死ぬニャ!!」

 

 あ、そういえば尻尾でニャニャを掴んでたわ、ごめん。地面に伏せた状態のジンオウガを横目にニャニャに視線を向けると、ニャニャが頭をふらふらさせている。

 

「シュルル?」

「大丈夫なわけあるかぁ!もしボクがシュルルの尻尾とジンオウガの身体に挟まってたらミンチになるニャ!アイルーのミンチなんて誰も食わないニャ!廃棄されるのがオチニャ!」

 

 いや、周りの肉食竜からは需要があるから安心しろ。あいつら腐肉でも食うからアイルーのミンチなんてご馳走だぞ?

 

 そんな冗談を考えながら未だに抗議を続けるニャニャを無視して地面に潜ってジンオウガの真下へと移動する。そして地上へ勢いよく飛び出してジンオウガを串刺しにしようとするが、残念ながらこの強襲は転がることで回避されてしまった。

 

 経験が少ないならこれで仕留められると思ったが、どうやら甘かったようだ。空中でジンオウガの様子を見るが、ギリギリで回避したらしく未だに立ち上がることが出来ずにいる。

 

 ならばと空中で体勢を変えて落下地点をジンオウガのいる場所に調整、頭部を下にして今度こそジンオウガを串刺しにしようとする……が。

 

「シュル!?」

 

 知覚外から飛んできた何かを視認し、俺に当たる直前で何とか身体をくねらせて無理矢理躱す。しかしそんな無理矢理の回避を行えば当然体勢を崩すのでジンオウガに追撃は行えない。ジンオウガのほぼ真横に落下した俺をジンオウガは見逃さず、立ち上がったと思えば右前脚を軸に身体が浮き上がるほど勢いをつけて回転、俺の顎に見事なテールアタックを決めた。

 

 だが俺を吹き飛ばすには至らない。首を使ってくらった衝撃を流し、お返しとばかりに着地硬直したジンオウガに尻尾……はニャニャを掴んでいるので使えないから角で攻撃しようとしたが、それを阻止するかのように再び先程の何かが飛んできたので前世では車庫入れ*1と呼ばれた動きで後ろに下がり、それを回避しながら飛んできた方向へ軸を合わせ、その攻撃を行ってきた相手を確認する。

 

「ニャニャ!?タマミツネだニャ!」

「シュルルルル。」

 

 隠れるつもりはないのか堂々と茂みの向こうから現れたのは恐らくユクモ村に行く途中で出会ったタマミツネだ。よく見れば一直線上に地面が濡れていることからさっき飛んできたのはタマミツネのブレスだと予想出来る。

 

 しかし何故ここに?ジンオウガの挑発で来たか?そう考えてみたが、当のタマミツネはジンオウガに襲いかかることはなく、なんならジンオウガの様子を伺っている。そしてジンオウガの無事を確かめると、今度は俺を睨みつけてきた。

 

 んー?これは渓流に現れた外来種を在来種同士で協力して討伐しようってことか?多対一なんて卑怯だ!なんて考えは一切なく、むしろ望むところ。楽しい戦闘になりそうだとワクワクし始めた気分を宥めながら、手始めにタマミツネ達に向かって突撃しようと身体に力を込めて──。

 

「シュルルゥ!お終いニャ!そろそろ帰らないとクエストが失敗しちゃうニャァ!」

 

 ニャニャの叫びで止まることになった。

 

 あー、あれか。時間制限か。火山生活の時に数日単位で火山に留まるハンターもいたことからこの世界には存在しないと思っていたが、ニャニャの言い方的に似たようなものがあるみたいだ。

 

 折角クエストクリアしているのに俺のせいで失敗になるのは申し訳ない……というかクリアしたのに俺のせいで失敗になったのをルルが知ればお説教は免れないのでこの場は引き下がることを決める。だけどこのまま素直に引き下がるのは新手のタマミツネから怯えて逃げたように思われそうだ。それは何だか癪なので最後にデカいのをお見舞いしようと思う。

 

「◼️◼️◼️◾️ルルルル!!!」

「!! クルルルル。」

 

 周囲が揺らぐ咆哮。それが終わると跳び上がって角を下に落下。地面に角が刺さると同時に急速回転し、荒々しく地中を掘り進んでいく。

 

 地中に潜ると今度はタマミツネ達を中心として円状に掘り進むが、ここでいつもは崩落を防ぐために出す粘着性の液体ではなく、爆破効果がある黒い液体を放出しながら進む。

 

 何度も何度もタマミツネ達の周囲を周りながら掘り、黒い液体で満たしていく。地上では経験が足りないためかその場に留まろうとするジンオウガにタマミツネが軽い頭突きをして俺の繰り出す技の範囲外へ逃がそうとしているが、間に合うかどうか。

 

 ジンオウガがタマミツネを見つめ、その場から逃げ始めたのと俺の技の下準備が終えたのは、ほぼ同時だった。

 

「ジュラルルルル!!」

 

 円状の中心から勢いよく飛び出し、全身が黒い液体まみれになっているニャニャを空へ放り投げてから地面に向かって腹から着地する体勢をとり、そのまま着地。俺の体重なら着地した衝撃で液体の起爆条件は充分に満たせる。俺が飛び出してきた穴に付着している液体が衝撃で起爆し、そのまま穴に爆発が連鎖していき……周囲が弾け飛んだ。

 

「ジュラルルルル!!ジュラルルルルルル!!」

 

 辺りを爆炎が覆い、衝撃で土は空へと巻き上がる。タマミツネ達の姿が見当たらないが、久しぶりに大技を出せた興奮で気にならない。落ちてきたニャニャを尻尾で優しく掴み取ってから、俺は何度も勝利の咆哮を渓流に響かせたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………で?何か言い分は?」

「シュルルルル……。」

 

 そんな楽しい時を過ごしながらユクモ村に帰った翌日、旅の支度を整えて村から出てきたルル達に追従すること暫く。人気がなくなったところで俺が見たのは、笑顔なのに何故か背後に激昂ラージャンの幻覚が見えるルルの姿だった。

 

 ……さて、言い訳を考えるか!

*1
主に獣竜種が軸合わせに行う行動の一つでハンターに対して振り向きながら後ろに後退すること。




オリ主……一度やる気がなくて喧嘩を売ってきた大型から逃げたら大変なことになったから好戦的。それに付け加えて娯楽の少なさから戦闘が楽しみになっており、売られた喧嘩は基本的に買う。この度後先考えずに大技を繰り出して渓流のエリア一つを更地にした。当の本竜は気にしていなかったが、激昂ルルを見て冷や汗がダラダラと出ている。

ルル……ニャニャは大丈夫かなぁと心配していたらハンターやギルドが慌ただしく移動していくのを見てしまい、本当に大丈夫かとウロウロしていたらニャニャが無事に帰ってきて安心。ホッとしたのも束の間でニャニャの身体からシュルルの爆破液の匂いがしたので色々と聞き、オリ主のやらかしを知った。

ニャニャ……わーいジャギィ倒せたー!という喜びを吹き飛ばす出来事に巻き込まれた。オリ主がジンオウガを尻尾で攻撃した時は、本気で生きた心地がしなかった。爆破液はオリ主に舐め取ってもらった。
ルルに質問された時は仕返しとばかりにあった出来事を全て包み隠さずに話したが、ルルの表情が徐々に笑顔で固定されていくのを見て少し申し訳なく思ったとかなんとか。

ジンオウガ……はぐれ個体。幼体の時に嵐に遭遇して群れからはぐれ、食事もままならずに死にかけていたところをタマミツネに拾われた設定。そのためジンオウガとしての生態は不完全で、全方位の咆哮もタマミツネを呼んでいただけ。いつも通りにタマミツネを呼んだのに代わりに不審なお兄さんが現れた。大技から逃げるのが遅れ、タマミツネに庇われる形で生存した。

タマミツネ……ジンオウガに呼ばれて行ってみれば、不審なお兄さんに攻撃されていたので慌ててブレスを撃った。とにかくジンオウガを逃してと色々考えていたら、大技が来たので急いで逃げた……が、間に合わず、ジンオウガを庇って大技をくらい失明した。天眼コース入りまーす!

ギルド……ジンオウガとタマミツネによる生態系の変化を調査しに向かうと、渓流に明らかに爆破属性を扱う個体の痕跡が残っていててんやわんや。本来の調査目的だったジンオウガとタマミツネは姿を消しており、爆破属性のモンスターにやられたのだと判断。詳しい情報を集めようとしたが、爆破で一帯が更地になったためそれも困難で断念した。この話を後に小耳に挟んだ小さな商人は冷や汗ダラダラだったらしい。





ジンオウガとタマミツネが好きな人に怒られそうでヤベェよヤベェよ。ちなみに2体の関係は現実世界でも似たようなことがあるからないことはないかなとぶっ込みました。はい。

タマミツネ書いてるとガムートの復活はいつかなぁと思ってしまう。あと水中も復活しないかなぁ……。
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