「次の町で護衛を雇おうと思います。」
次の町まであと少しという場所で最後の休憩をしていた時にやらかしハンターさんと別れてからずっと考えていたことをシュルルたちに伝えると、シュルルの背後に巨大な雷が落ちた……ような気がした。
「シュル!?シュルルルル!!?」
「今から理由を説明するから落ち着いて、シュルル。」
慌てた様子で私に詰め寄ってくるシュルルを宥める。しかしシュルルは止まらず、私がいる屋台に頭を突っ込んできた。
「ブホォ、ブ「シュルルル!」……ブホォ〜。」
ブホーもシュルルを宥めようと近寄って来たけれど、すぐ真横にシュルルの尻尾が叩きつけられ、ひび割れた地面を見るとすごすごと尻尾が届かない場所へと逃げていった。
「シュルル!落ち着いてってば!」
「シュルル?シュルルルル!!」
シュルルの角を撫でて落ち着かせようとするが、全く効果がない。無理矢理頭を突っ込んでくるせいで屋台が軋み、このままだと何処かが壊れるかもしれない。
聞く耳を持たないシュルルに苛立ちと屋台が壊れるかもしれない焦りが混ざって右手に力がこもる。やりたくなかったけど、こうなれば1番手っ取り早い手を取るしかない。
「こ……の!落ち着いてって……言ってるでしょう……がァ!!!」
「シュベェ!?」
繰り出した私渾身の右ストレートがシュルルの左目に命中し、無事に屋台から退けることに成功した。全くもう!
「──ってこと!分かった!?」
「シュルルルル……。」
殴った後でシュルルの目の心配をしたけれど、シュルルは少し目をシバシバさせただけで特に何もなさそうだったのでお説教と何故護衛を雇おうかと思った理由をシュルルに説明した。
シュルルは少し心配そうな顔をしてたけど、最後には渋々といった感じで了承してくれた。
「シュルルも理解してくれたし出発するよ!今日中には町に入っておきたいからね!」
「ブホォ!」
「ブホーは元気がいいね。あとちょっとだけお願いね?」
「……ブホォ。」
遠くでいじけているシュルルを無視して元気よく近付いてきたブホーに固定器具を装着する。いつも聞いてるブホーの声の発音的にブホー自身の意見を私に聞いて欲しそうな感じがしたけど気のせいでしょ!
「ほら、シュルルはいつまでもいじけてないで早く立って!ブホーも急に落ち込まない!出発だよ!」
「それじゃあ行ってくるからシュルルはいつも通り待っていてね?」
「シュルルルル。」
遠目から町の入り口が見えてきたのでいつも通りルルたちを見送ってから地中に潜り、人目のつかない場所へと移動してから地上へ飛び出す。
本来なら次の行動は周りの見回り、食事、昼寝のどれかなのだが、今回はそれどころではなかった。
ルルが護衛を雇う。このことで俺の頭が一杯だからだ。最初は知らぬ間にルルの失望を買ってお役御免になったと慌てて詰め寄ってしまったが、愛あるパンチを左目にもらったことで正気に戻れた。
正直言って目を直接攻撃されたのは初めてで、どうなってしまうのかと思ったが瞬膜があったお陰で特に何もなかった。
その後の説明でも一応は納得できた。簡単に言うと俺がなんらかの理由で地上に出れなくなった時のカモフラージュとして雇うとのこと。
なんらかのとこはほぼ確実に前みたいに俺のことを知らないハンターなどが近くにいる時だと思うのだが、ぶっちゃけルルに危機が迫れば俺は周りの目なんて気にせずに出るつもりなので必要ないと言いたい。しかしルルのかわいい上目遣いと心配してくれた嬉しさと兄心で許可を出してしまった。
でも、でもだ。もしルルが女性ではなく男性の護衛を連れてきたとしよう。出来る限り俺が退けるつもりだが、これからも旅を続けるのなら幾度となく危険な場面は出てくると思う。それを乗り越えることで2人の距離が段々縮まっていって……。
『シュルル!私、この人と結婚することにしたの!』
『シュルルさん……いえ、お義兄さん!ルルさんは僕が必ず幸せにしてみせます!』
ぐぅぉおおおお!!!駄目だ!とても耐えれることじゃない!!考えるだけでもこんなにもダメージがぁ!!お兄ちゃんは俺をノーダメ5分針討伐することが出来る程の実力を持った人しか許可しませんからね!!
妄想で浮かび上がったルルとルルの相手がイチャイチャしている光景に、ルルとの結婚条件を叫びながらゴロゴロと地面を転がる。
近くにいた鳥たちが迷惑そうな目で俺を見た後に飛び去っていくのが視界の端に入ってくるが、妄想に耽っている俺は気にすることなくそのまま数十分ぐらいゴロゴロと転がり続けた。
はぁ、今更後悔しても仕方ない。飯でも食って気を紛らわせよう。腹一杯になれば少しはこの気持ちもマシになるだろ。
そうと決まれば地中に潜ってルルたちと移動中の時に見つけておいた川に移動する。その際に転がったことで荒れてしまった地面には目を向けないことにする。
川につけば辺りの草や地面を適当に舌で探り、魚の餌になる虫を見つけるとその周りを舌で丸ごと採取する。
今度は川の流れが比較的緩やかで魚たちが集まっているところにそっと舌で捕まえた餌を浮かべる。そのまま顔を水面に浸かるギリギリまで近付けてジッと獲物がかかるのを待つ。
ぽちゃんと川の水が跳ねて餌が魚に食われたのを知覚するのと同時に舌をその場所に目掛けて突き刺す。
舌に貫かれて暴れる魚を口に含んで咀嚼。うん、美味しい。別に餌を囮にしなくても舌でそのまま魚を突き刺すこともできるのだが、ハンターが一番最初に教えてくれたことなので俺はずっとこの方法をとっている。
今回の町の大きさ的にルルが出てくるのは数日後になると思うし、その間に後々確定で騒がしくなる奴を追い払っておくかぁ。
ルルが中で
「よし、頑張るぞ。」
人通りの多いところで屋台を展開し、前もって決めたノルマ以上の商品を売ることに成功した後、ここからが本番だと胸の前で拳を作って意気込む。
手元にある資金は充分……だと思うけど、残念ながら私が護衛を雇うことは今回が初めてなのでこれが適正価格なのかは分からない。
昔に所属していた商隊の護衛に必要な金額を見ておいたらよかったなぁと少しだけ後悔するけど過ぎてしまったものはしょうがない。まぁ私の話術があれば護衛の1人や2人はすぐに見つかると思うけどね。
今回の護衛はあくまで見せかけ、雇われる人には失礼だと思うけどモンスターを追い払う役目は引き続きシュルルにお願いするつもりだ。雇った護衛の役目は項目上は私を守ることにするつもりだけど本当の目的は旅の途中で出会った人の親切を上手く躱すためだ。
あのやらかしハンターさんみたいな道が同じだからついでに護衛してあげるよと言う人がこの先また現れる可能性は非常に高い。正直どこの誰だか知らないやつよりシュルルの方が安心できるのだ。なんならシュルルが出てこれなくなるお邪魔的な存在に見える。
1人ならまだいい。最悪口止めが出来るから。だけど商隊なら?その時にモンスターに襲われたら?私に危機が迫ればシュルルは周りの目を気にしないで出てくると思う。それで危機が去ったとしても大多数に見られて口止めなんて出来ない。
良い商人なら絶対に喋らないと思う。けど悪い商人なら寧ろ弱みを握ったと守ってもらったことを知らんぷりしてあれこれ要求してくる可能性が高い。その中で一番要求してくる可能性が高いのはシュルルの素材かシュルル本体を譲渡かな?
そうなればどうなるか?シュルルは私の静止を無視してその商人を殺すと思う。その後に商隊のメンバーも全員殺す。死人に口なし。目撃者がいないならどうなろうが問題無しと言わんばかりにシュルルは動く。
シュルルは私には甘いし、大抵の言うことは聞いてくれるけどそれ以外はかなりドライだ。どうでもいいとさえ思っていそう。それゆえに私の邪魔になるものが出たとシュルルが判断したら排除に移る。
それを防ぐための護衛なのだ。護衛さえいれば護衛がいないことを危惧して親切心からくるやらかしハンターさんみたいな人を連携がなんたらと言って断ることが出来るし、商隊がともに行動しようと言ってくれば急ぎの依頼があると逃げることも出来る。
雇うならほぼ確実にハンターになるのがちょっと……いや、かなり嫌だがしょうがない。祖母のハンター活動を聞いていたお陰で私のハンター評価はギリギリプラスに向いているけど、祖母がハンターをしていなかったらマイナス通り越して近寄ってこないでレベルになっている自信がある。
私の運が悪いとしか言えないんだけどね。なんだかこの護衛探しも嫌な予感がしてきたなぁ。
嫌な予感を振り払って雇用内容を書いた紙を持つ。大丈夫、きっと悪い運はやらかしハンターさんで使い切ったはずだ。だから問題はないはずなんだ。
何度も見直したので問題はないと思うけど最後にもう一度だけ書き間違いや誤字脱字がないかを見直してから紙を胸に抱えて近くのハンターさんらしき人に向けて歩き出す。昔に聞いたことがある二度あることは三度あるという諺が頭に浮かんだが、意識してそれを思考から消した。
「ごめんね?私には無理だわ。」
あれ?
「うーん、報酬は良いんだけどなぁ。悪い、無理だ。」
あれあれ?
「すまない、他を当たってくれ。」
あれあれあれ?
おかしい。あれから何人ものハンターさんに声をかけているけれど、誰からも色良い返事をもらえない。みんな私の話を聞いている時は乗り気になってくれるんだけど、雇用内容を書いた紙を読むと顔を顰めて断ってくる。
雇用内容は一つを除いてハンターさん側が得をする内容だから1人ぐらいは頷いてくれると思っていたのだけど見通しが甘かったのかな?
「うーん、もうちょっとぼかして書いたほうがよかったかな?でも騙すようなことはしたくないしなぁ……。」
問題であろう最後の簡潔に書いた一文に目を通す。
『見たもの全てを雇用主以外に伝えてはならない。』
分かりにくい書き方をしようと思えば出来るんだけども、それをしてしまうと発覚した時に騙したなとハンターさんから恨まれてしまうかもしれない。
本来は雇ったハンターさんがシュルルのことを周りに教えないように書いた一文だけど、ハンターさんからしたらこれのせいで異常事態に気付いてもギルドに報告出来ないのだ。
私を通じてからギルドに報告することも出来るんだけど、そもそもこんな一文をわざわざ書いている時点でハンターさんから見れば私は良からぬことにハンターさんを巻き込もうとしている怪しい商人になる。
それに今気付いたんだけど、疑い深い人がこの一文を見てしまうとこれまでの内容全てが自身を陥れる罠に見えてくるはずだ。
「はぁ、失敗しちゃったなぁ……。もうこの町で雇うのは無理だろうなぁ。」
気付かないふりをしていたけど、私が新たなハンターさんに近付こうとしたら露骨に距離を離される。多分これ私のこと広まっているよね。さっきから距離をとって私についてくる人もいるし……。
このままシュルルのところに帰ってもいいけど、後ろからついて来ている人をシュルルが見つけたらどうなるかなんて明らかだ。最初はただ同じ道を行く人だと思って見逃すけれど、町が見えなくなった時点で追跡者の真下に移動して様子見。私を追っているとシュルルが確信すれば確実に襲う。絶対襲う。
「私が蒔いた種だし、私がどうにかしないといけない……よね?」
行き先をこの町のギルドに変える。絶対怒られるのは分かっているから今のうちに納得してもらえる言い訳を考えておかないと……。うぅ、お腹が痛くなってきた。
彩鳥を追い払ったり、餌を横取りしようとしてきたジャギィたちを巣まで追いかけ回すこと数日、そろそろルルが帰ってくる頃合いかな?
暇つぶしとはいえジャギィたちとの追いかけっこは楽しかった。逃げ切れる確信があるから餌を横取りしてきたんだろうと思い、追いかけてみたが本当に自信があったらしい。
俺では到底入れそうにない横穴に逃げ込んだのもそうだが、無理矢理入ってくることも想定していたのか知らないやつが入ればすぐに迷いそうなかなり複雑に入り組んだ横穴だった。俺には関係ないけど。
奴らの敗因といえばもっと俺を観察するべきだった。多分俺の図体だけを見てちょっかいをかけて来たのだろう。横穴を掘り進んで進行してきた俺を見て飛び跳ねるぐらい驚いていたからな。
巣まで俺がついてきた時なんて白目剥いて倒れていた。死んだ振りだろうか?周りのジャギィノスにしばかれて本当に死にそうになっていたが。
俺としては楽しませてもらったので尻尾の突起で騒動の原因であるジャギィたちを軽く小突いただけで終わらせた。ジャギィノスにボコボコにされていたのでこれ以上俺が何かしようとする気が失せたともいう。
あの後ジャギィたちは無事に解放されたのだろうかと考えているとルルが町から出たのを鱗の気配で感知した。
すぐさま地中に潜り接近、ある程度近付けは感じる気配は更に鮮明になる。感じた気配に思わず歯軋りをする。
一つ増えている。ルルは無事に護衛を雇うことに成功したようだ。つまりこいつがルルの
感じる気配は想像以上に弱々しく、本当に護衛なのかと首を傾げそうになるがルルの屋台と並んで歩いている時点でほぼ確定だろう。もし違うならルルは俺と合流するために適当な理由をつけて離れるだろうからやはり間違いない。
よし、一度仕掛けよう。ルルを守る実力があるかどうかを確かめるのは大事だからな。決して俺の私怨ではない。勘違いしてはいけない。
ゆっくりと地上に向けて掘り進む。地中を掘り進むことで地上は揺れていると思うがゆっくり進んでいることもあって歩いていれば気付かないレベルの振動だ。その振動にずっと行動を共にしているルルは気付いたようだが、
内心で減点しつつ、攻撃範囲に入ったので身体を丸めて力を込める。そのまま力を解放するように身体を伸ばし、勢いがついた尻尾を意中の相手がいる場所目掛けて地中から押し出すように叩きつけた。
一気に土が押し上げられ、地盤が捲れ上がる。
予定通り屋台から意中の相手が離れたのでそいつが体勢を立て直す前に地上に飛び出し長い身体で
これで準備は完了した。ここから対処能力を見るために色々攻撃してみようと思うが、まずはルルのハートを射止めた顔を見させてもらおうか。
そう思って視線を相手に向けるが、そこにいたのは──。
「ニャ、ニャ〜!」
んん〜?何でアイルー??
驚きで思わず地面を抉ってしまった。
(詐欺ニャ!これは絶対詐欺ニャ!旦那さん!会わせたい子がこんな怪物なんて普通誰も思わないニャァァァァ!!!)
旦那さん曰く、頼りになる優しくていい子の巨体に囲まれ瞳孔を狭めながら睨まれているボクは心の中で絶叫していた。
数日前、ニャンターとしてギルドから狩場に出る許可を取れたボクははっきり言って浮かれていた。調子に乗っていたともいう。そんな時ニャ、ボクの目の前をトボトボと歩く少女……後の旦那さんに出会ったニャ。
あんなに怒らなくても……と小声でボソボソ独り言を話している少女に、ボクは困っていると思って声をかけたニャ。
「困りごと?うん、実は護衛を雇おうと思っていたんだけどね?書き方が紛らわしくてギルドに怒られちゃったの。」
誤解は解けたけどここで雇うのはもう無理かなぁと肩を落として落ち込む少女にボクは言ったニャ。ボクに任せろニャと。
もう一度言うニャ。当時のボクは調子に乗っていたニャ。だから出された雇用内容を確認しても大して疑問に思わず了承したニャ。そんなボクを見て不安になった少女が詳しく内容を話してくれても任せろニャの一点張りだったニャ。
「それじゃあよろしくね?出発は2日後、2回目の朝の鐘が鳴るころに南門の前で合流でいいかな?」
「分かったニャ!旦那さん、これからよろしくニャ!」
それで当日、旦那さんと合流して町を出たニャ。ブホーと呼ばれている旦那さんの仲間であるアプトノスがボクを見て怪訝と気の毒が混ざり合った表情をしていたのにはここから始まるボクの冒険の旅に思いを馳せていたボクには気付かなかったニャ。
「念の為、もう一度説明するね?これから私たちは最後の仲間と合流して次の目的地……ユクモ村に向かうよ。」
「旦那さんの仲間ってどんな人かニャ?」
「そうだね〜、頼りになる優しくていい子だよ。」
「なるほど……。会うのが楽しみニャ!」
旦那さんから聞いた情報を頭でまとめると、優しげな人が浮かび上がったニャ。会って話をするのが今からとっても楽しみニャ!
楽しみでソワソワしているとブホーが頭を左右に振っている姿が目に入ったニャ。そうニャ、ボクは護衛なんだからもっとしっかりしないといけないニャ。
気を引き締めて歩き始めること暫く。旦那さんが急に嬉しそうな顔をし始めたのに気付いたニャ。
「どうかしたニャ?」
「うん、迎えに来てくれたみたい。」
迎えに来たと言うなら近付いて来た人が旦那さんが言っていた最後の仲間ということニャ。どんな人だろうと辺りを見渡していると──いきなりボクの身体が下からの衝撃で吹っ飛んだニャ。
「ニャァァァァ!!!フベッ!」
状況を理解出来ずに叫び声をあげていた僕を急に現れた黒い壁が受け止めてくれたニャ。壁に鼻をぶつけてしまって痛がっていると、壁が動いていることに気付いたニャ。
「シュルルルル。」
恐る恐る視線を上に向けると、見たことがない竜がいたニャ。思考が硬直しそうになるけど、旦那さんを逃さないといけないと震える足腰に鞭を打って立ち上がり、旦那さんの無事を確認するために振り返ったら驚きながらも恐怖などの感情が全くない表情をした旦那さんがいたニャ。
思わず旦那さんを凝視してしまったけれど、すぐに竜の身体で遮られてしまったニャ。そこで初めてボクが竜の身体に囲まれていることに気付いたニャ。
いつもならパニックになって地中に逃げているところだけど、最後に見た旦那さんの表情と迎えに来たと発言していたことからこの竜が最後の仲間である可能性が高いニャ。でも、一言だけ言いたいニャ。この竜のどこが優しいんだニャ!!!
って叫んだところで冒頭の叫びニャ。生き残ったら絶対旦那さんに眼のお医者さんを紹介するニャ。こんな殺意を振り撒いている竜が優しい訳ないニャ。
と、とりあえず自己紹介をするニャ。旦那さんの仲間になったと早くこの竜に伝えないと地中にしまわれる気配がビンビンするニャ。こうなりゃヤケニャ!ボクの自己紹介の迫力に度肝を抜くといいニャ!
「ニャ、ニャ〜!」
ボクのアイルー生の中で一番情けない自己紹介だったニャ。穴があったら入りたいニャ。あ、穴を掘ってくれたのかニャ?ありがたく入らせてもらうニャ。
オリ主……護衛を雇うだけなのに全く別の方向に思考が飛んでいっている。少し落ち着け。アホな思い込みをしていたせいで護衛はすっごいイケメンかムキムキイケメンだと思っていたが、まさかのアイルーだったので思考停止した。そのあとアイルーがオリ主が抉った地面に潜り込んでメソメソし出したのでさらに困惑している。
ルルとの婚約条件に5分針討伐と言っているが、本当に達成されそうになると地中に潜って逃げる気満々である。
ルル……シュルルのことを黙っていてもらうのだから雇用内容を充実させなきゃ!と思ってあれやこれやと詰め込んだら逆に疑われるはめになった。ギルドには独自の方法で商売をしており、周りに知られる可能性を極力減らしたかったと言い訳している。
ところで揺れている屋台の中にいるのに歩いているものが気付くかどうかの振動に気付くとかこの子何を基準にしてハンターの才能が無いと思ったのか不思議である。
ブホー(アプトノス)……慌てているオリ主をおちょくろうとしたところ、真横に尻尾を叩きつけられて今回はやめとこうと身を引いた。冒険に思いを馳せるアイルーを見て、でもこの子あと少しでオリ主に襲われるんだろうなぁと思っていた。
え?ご主人この子を雇うの?あー、町に行く前のシュルルさんの様子的に合流した時に襲いかかりそうだな〜。……アイルーさん、強く生きてね。
アイルー……ニャンターになれて浮かれていた時にルルと出会う。ルルの話から色々な人物像を想像していたが、出て来たのは黒い竜である。渾身の自己紹介をしようとしたが、鳴き声しか出なくて穴に引きこもった。なりたてゆえにそんなに強くない。そのうちルルにもっと強くなりたいと言ってしまい、善意でオリ主との模擬戦がセッティングされるようになる。
瞬膜……簡単にいえばワニとかの目についている半透明の膜のこと。ワニはこれで水中にいる時の視界の確保やゴミの侵入を防いでいるが、オリ主の場合は自身が出す液体の侵入と、爆風から眼を守る役割を持っている。