あたしのばあちゃんちに知らん人しか来ない   作:パイナップル焼うどん

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杉本佐一とかいうイケメンの場合 2

 

 

イケメンが泣いている。

別に比喩でもなんでもなく、とんでもねぇ顔整ったゴツい男がうちの玄関先で崩れ落ちてウホウホ男泣きをかましている。よしよし悲しいウホね。

 

嵐のように現れたイケメンの号泣。ギリギリ絵になる。イケメンだから。嘘だちょっと汚い洟水伸ばすな。

はて、と考えを巡らす、人違いか何かか。イケメンが咆哮をあげるなんて初めて見たぞ、嘘かもセカチュウ以来かもしれない。医者を呼んであげたらいいんかな⁇

 

「大丈夫かなぁ〜⁇んん?今お水持ってくるね‼︎

とりあえず日陰にどうぞどうぞ〜汗だくだね、タオルも取ってくるからね〜」

 

とりあえずはイケメンを落ち着かせない事には話も聞けない。イケメンだし優しく介抱してしんぜよう、特別待遇大大大贔屓よ。ギャルは面食いだギャルってかこの世が。

 

大急ぎで水桶で冷やしてたボトルの水と持ってきたタオルを引っ掴んで縁側に戻るとさらに状況は悪化していた。

 

「っあ、あじっりばざぁぁん‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎うっうあぁぁん、、うぉおおんん‼︎‼︎‼︎‼︎どっどうじで‼︎‼︎そんっっな‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

ウホウホと咆哮を上げるイケメンゴリラが見ているのは、縁側のある和室の側面に位置するお仏壇とその上方に飾られる代々の遺影。海外のお葬式の動画でしか見たことない咽び泣きに仰天。バズりそうな絵面。

 

一体誰なんだアシリパサン。謎は深まる

もしかして遠縁の親戚だったりするんかな、あたしは勿論知らない。

 

どうぞ〜‼︎と水とタオルを押しつけて様子を窺ってみるが未だイケメンゴリラに変化は見られない、弱り果てるしかできない。一応この機に乗じてイケメンの背中を摩っておく。イケメンに触れた、後でツイートしよ。

 

うえうえ嗚咽を生産し続けるイケメンの漏らす単語を繋げたことにはうちのひいひいおばあちゃんがアシリパサン⁇のよう多分。あの右端のおばあちゃんの写真⁇あれアシリパサンなんですか⁇へぇ初耳あたしって純日本人じゃないんかなリヴァイアサンみたい。え?和名は胡蝶辺明日子?あぁ胡蝶辺、なるほどうちだな

 

「 っぐずん、ふえんんわぁぁ‼︎‼︎‼︎」

 

ひっぐひっぐえぐえぐし続けるので追加でティッシュを押しつけておいた。幼女みたいに泣くなイケメンゴリラ情報量が多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いた?」

 

「いきなりすみませんでした‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

杉本佐一と名乗った男の顔には大きくサの字の傷が目立ち一見強面だが一度ニカリと笑えば本来の整った素顔が眩しく人懐っこい印象に掌を返した、やはりイケメン。プライドの欠片も無い掌クルクル。

 

もうすっかり夕暮れ時で泣き止むまでしばらく宥めていたが埒があかないからとせっせとあり合わせの夕飯を作っていた。

御御御付けで丸かめの味噌を持ち出そうとすると更なる発作まで誘発させてしまったのだからもう手がつけられない。え⁇味噌ですけど、はい祖母も曽祖母も大好きだったみたいで代々って感じでえぇこれでガチ泣きなの情緒どこ

まぁゆっくりしてきなよその顔に免じてな。

 

ばあちゃんたちを訪ねて来たのなら縁者なのだろう多分、似た親戚がまったく浮かばないけど突然変異とかだろ多分。

 

御御御付けと米と煮物とおひたし、振る舞う即席にしては頑張った方だ。

出来上がった料理をお盆に乗せれるだけを縁側の和室まで運んだ。

 

「「いただきます。」」

 

とりあえずはと夕飯を分け与えて話を聞こう。

ばあちゃんたちを知ってるなら願ってもないチャンスだ、アレの手がかりがあるかもしれない。正面の杉本はたっぷり手を合わせてから箸で料理を口に運んだ。それから何を食べても美味しいと褒めた。

 

「美味しそうにたべるね」

 

「本当に美味しいよ‼︎この煮物、特に旨い〜‼︎出汁も効いてて煮加減も絶妙だよ、んまい‼︎」

 

「そこまで褒められると照れる」

 

ちょっと気分が良くなり親切さに拍車が掛かる、神奈川から遥々やってきたらしい杉本(呼び方は指定された)に泊まっていきなよと胸を張ってしまった。

 

元気になってよかったウホね〜、デザートも出しちゃお。

 

あくまでこれは情報収集の一環と建前をこねくり回す時点でお察しだけど。杉本に風呂を勧め食器を片付けて干した布団を敷いてから水のシャワーしか出ないことに気づいたが既に石鹸の匂いのイケメンが現れたので遅かったみたいだ、ま仕方ない。明日業者を呼んで直そう。

 

「…なにか事情があって訪ねて来たんだよね」

 

わかりやすく肩を震わせた杉本を座布団の方まで誘導した。爽やかな匂いが漂った。

 

「恩人、なんだ。そのっ詳しくは言えないけど君のご先祖さまにとんでもなく世話になって。アシ(リ)パさんにっどうしても会いたくて。それで、」

 

「神奈川を飛び出して遥々北海道まできたんでしょ。お線香だけでも喜んでると思うよ。」

 

「ぐすん、」

 

いやこれで泣かないでよ、杉本お世辞とか本気にするタイプなんか

なんにせよ詳しいことが言えないとなれば無理には聞き出せない、あっちからはなしに来るよう促す方がまだ勝ち目がある

 

すっかり日が暮れたのに纏わりつく暑さを手の甲で拭った。

 

 

 

 

 

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