Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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アウレオ・ユーバー

 

 ――私立杜之宮学園理事長、アウレオ・ユーバー氏。

 

 同時に大学でも教鞭を執る教授でもある彼は、世間では理事長以上に有名な肩書がある。

 

 すなわち……VR技術発展の父。

 

 彼は、世界レベルで知らないものはいない、世界初のフルダイブ型VRシステムを開発し……しかもそれを利権を度外視し自身の利益よりも一般に浸透させるために尽力した人物だ。

 

 彼のその功績は実のところゲーム以外の分野、特に医療方面で貢献しており……今はNLDの基本機能として統合されている視覚補正技術の前身である、VR技術を応用しカメラを介した後天性の全盲の視覚障害者向けの義眼により再び光を与えたのがもっとも大きいだろう。

 

 もちろん関連技術の応用は幅広く、困難な手術の精巧なシミュレーションシステムや、危険や痛みを伴う神経接続手術も必要とせずにVRの仮想の手足と連動して現実世界で動かせる義肢、あるいは生活補助用の強化外骨格の発展など、医療に多大な貢献をもたらした。その評判は『現代の聖人』とまで呼ばれている。

 

 そんな彼は現在すでに齢八十ほどのはずなのだが……そのがっしりした体格、艶のある豊かな銀髪、まだまだ若々しい外見は、とてもそうは見えない。

 昔、四十代の頃の写真を記録で見たことがある紅には、それ以降歳を取っていないように見えるほどだ。

 

 そんな人物が……紅の憧れであり、将来の目標。あまりに遠く高い壁ではあるが。

 

 

 

 ――そんな彼が今まさに、紅の目の前でこちらを見下ろしている。

 

 この状況に、言葉も発せないほどに緊張している紅を見かねて……先に声を掛けて来たのは玲央の方だった。

 

「やあ、また会ったね。とても愛らしいドレス姿だ、よく似合っているよ」

「ど、どうも……」

 

 今度は経験を積んで心の準備もできたために、何をしようとしているのかを察して慌てず差し出した紅の手。それをサッと取り、その甲へと口を寄せる彼。

 

 

 ――あら……見て、彼が挨拶に行ったの、天理社長の娘さんよ。

 

 ――本当、絵になるわねぇ。

 

 ――二人並ぶと、まるで御伽話の王子様とお姫様ね。

 

 ――いいわねぇ、若いって。

 

 

 

 周囲から聞こえてくる、生暖かい雰囲気のヒソヒソ話に居心地悪い思いをしながら……紅はあらためて、玲央にこっそり手を引いて促されるままに、今度はユーバー氏へと向き直る。

 緊張は相変わらずであったが、玲央のおかげで少しだけ硬直は解けていた。

 

「は……はじめまして、私、満月天理の娘の満月紅と申します、この度は……」

「はは、そんなに緊張しなくても大丈夫だ。紅くんだね、天理さんから、話は聞いている」

「は、はい……」

 

 憧れの人物と相対したこともあり、ガチガチに緊張している紅へ、落ち着いた口調で宥めてくれるユーバー氏。

 

 そんな彼は、紅の肩にポンとその大きな手を置くと、フッと表情を緩める。

 

「君が、宙君と同じ道を目指していることも聞いている。教え子にして自慢の元部下の娘さんだ、何か興味があれば遠慮せずに私の研究室に遊びに来なさい」

「は……はい!」

「うむ……以前入学式の時も言ったと思うが、君ら若者は、私たち大人を好きに糧として大きく成長してくれるのが、私たちの望みだからな。君にも期待している」

 

 そう言って、離れていくユーバー氏。彼はそのまま、背後で面白がっている様子で見守っていた天理の方へと向かう。

 

「良かったね、紅ちゃん?」

「……うん、本当に」

 

 感極まり、余韻に浸っている紅に笑いかけてくる聖に……紅は本当に嬉しそうに笑ったのだった。

 

 

 

 

「しかし……よもや、お前の娘を我が学校に通わせることになるとはな。人生何があるか分からないものだな、魔……アマ……ス?」

「……その名はいわゆる『くろれきし』じゃから、やめて貰えんかのぅ。喧嘩を売るつもりならば買うぞ?」

「いや、すまない。ただ時代は変わった……と思っただけだ」

「変わったというと、お主は孫ができてからずいぶんと丸くなったもんじゃな。なんじゃ好々爺ぶりおって、別人かと思ったぞ」

 

 そんな紅たちの背後で、何やらシャンパン片手にコソコソと語り合う二人。そこには気の知れた仲らしい、気楽な空気が流れていた。

 

「……ねぇ玲央、うちの母さんと玲央のお爺さんって、NLDの開発で一緒に仕事する以前からの元々知り合いだったの?」

「おや、君は知らないのか。僕と君の家、お互い因縁の敵同士だぞ?」

「……嘘だぁ」

「……いや、本当なんだけどな」

 

 紅はもとより玲央だって時に気にした様子もなく、親同士に至ってはどう考えても悪友が戯れあっているようにしか見えない雰囲気に、敵という単語はあまりにもそぐわない。

 そのため、適当なこと言うなとそう疑いの視線で睨む紅の視線に、居心地悪そうに肩をすくめている玲央なのだった。

 

 

 

 

 

 





 「あちら」では色々アレなイメージがある彼ですが、こちらでは世間一般にはこんな認識だったり。
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