Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜 作:resn
「お招きいただき、感謝する、クリム嬢」
「よく言うわ、今回はお主の強引な一存であろうに」
いけしゃあしゃあと宣うソールレオンに、クリムが胡乱げな眼差しで睨む。
――今日は、毎週定例である魔王会談の日。
普段はギルド北の氷河拠点、ノバルディス城で行われていたこの定例魔王会談であるが、「君の拠点ができたのなら、今回はそちらでやろう」と興味津々に放たれたソールレオンの一存により、今回はセイファート城で茶会を開きながら行う事とあいなったのだった。
――最近、茶会ばかり開いている気がするのぅ。
そんな事を、クリムはルージュがアドニスの指導の元淹れてくれた、爽やかな香りがする香茶を堪能しながらぼんやりと考えていると……やがて最後の招待客が庭園に入ってきた。
「いやぁ、すっかり見違えて。随分と綺麗な庭園になりましたね」
「うむ、庭師が良いからな」
感心した様子の彼……『青の魔王』シャオに、自慢げに胸を張るクリム。
なんせこのセイファート城の庭師は、スペシャリスト中のスペシャリスト、樹精霊である。
庭木や花畑の手入れはお茶の子さいさい、園芸師としても優秀と、城と共に迎えたNPCにしてはやたらとハイスペックなのであった。
「それと……やあ、ソールレオンも久しぶり。遅れてごめんね」
「本当にな。何をしていたんだ?」
「ほら、僕は君らと違って、最前線でギルドの運営をしてるから。色々と指示を出さないといけないから忙しいのさ」
肩をすくめながら吐かれた皮肉に、今はギルドホームに篭っていたクリムも、所用によりログインしていなかったソールレオンも、ぐっと言葉に詰まる。
ルアシェイア、北の氷河の両ギルドとも、この数日は全くダンジョン攻略に貢献していない。
そのため……他のギルドからは戦利品を持って行かれないことに安堵する声が大多数だったとはいえ……攻略を他ギルドに任せっぱなしという負い目があったのだ。特に、残る一つのトップギルドとして奔走していた嵐蒼龍には。
そんな、半ばキレ気味なシャオから不穏な空気がクリムとソールレオンに向けられる一方で。
「あ、あなたがルージュちゃんね!」
「あ、ぇ、は、はい……」
こちらは、シャオの妹であるメイが、朗らかにルージュへと話しかけている微笑ましい光景が繰り広げられ始める。
「あたし、メイって言います! 以前の救出戦にも一応参加していたんだけど、仲良くしてくれると嬉しいな!」
「あ……よ、よろしくお願いします……」
ニコニコと差し出されたメイの手を、おっかなびっくり取るルージュ。多少強引ではあったものの……屈託ないメイに何か話しかけられているうちに、やがて緊張していたルージュの顔が時折笑顔に変わっていたりする。
どうやら、警戒心の塊なルージュの懐に早くも飛び込んでしまったらしいメイの姿に、クリムもさすがに舌を巻く。
「……凄いな、お主の妹」
「まあ、確かにあの子はコミュ力の塊みたいなものですからね」
はぁ、やれやれ……と、肩をすくめ溜息を吐くシャオ。身内を褒めたくないらしいその様子に、クリムは苦笑する。
……どうも最近、この一見腹黒い魔王の同僚の事がよく分かってきた気がする。
結局のところ彼は捻くれ者ではあるが、意外に人情家であり決して悪い奴ではないのだ。謀略好きではあるが。
あるいは普段の契約を重んじる姿勢も、「自分たちは情では動かない」という主張を周囲に知らしめるための……身内による小規模エンジョイ勢ギルドであるルアシェイアや、少数精鋭である北の氷河とは違う……広く門戸を開いた大ギルドである嵐蒼龍を率いる上での処世術であるのかもしれない。
「……何ですか、その目は?」
「いや、別に」
そんな事を考えていたクリムを、ジトっと睨みつけてくるシャオに……クリムはもう一度、苦笑するのだった。
◇
――そうして始まった、魔王たちの茶会。
「しかし……何故お主らまでそれぞれ給仕を連れて来ているのか、それが我には分からぬ……」
北の氷河からは、以前にも世話になったことのある、紫がかった銀髪を肩あたりで切り揃えたメイド少女、レティ。
メイドというと真っ先に思い浮かべるであろう、ロング丈のクラシカルなメイド服を隙なく着こなしてソールレオンの身の回りの世話を瀟洒にこなす様は、クリムの背後に控えている、本職であるアドニスをして「……やるわね」と感嘆させていた。
一方でルアシェイアのメイド服は……北の氷河同様に上品、清楚という基本は守りつつ、フリルやリボン飾りによって可愛らしさをプラスしたものだ。特に、まだ幼い姿のルージュのものは。
そして……残る嵐蒼龍、シャオが連れて来たメイは、また趣が違う。というのも、その服装がなんと古代中国の後宮侍女服なのだ。それも、おそらくは園遊会用の華やかなものに、薄絹のショールまで。
こうしてみると、なかなか三者三様の特色があり、見応えがあるな……と、クリムはぼんやり考えていると。
「……ゴホン」
「おい、赤の。おい」
不機嫌そうなシャオの咳払いと、ソールレオンが呼ぶ声に、ハッと我に帰ったクリムが慌てて聞く姿勢を取る。
「僕からは、イベントダンジョンについての報告だよ。明後日から本格的に四層以後の攻略を始めるって。どうやらどこのギルドも、前のクリムさんの呼びかけによる大攻勢の勢いが残っているうちに、本腰を入れてイベントダンジョンを終わらせるつもりみたいだね」
「そうか……分かった、私も早急に自分のギルドと合流しよう」
「我らも、皆の予定を聞いてなるべく合わせて攻略に復帰できるか相談してみるとするかの」
そう、三人それぞれ頷き合い、あとはいくつかの案件について報告しあって、今回の魔王会談は終了となったのだった。