Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜 作:resn
「食べすぎたです……」
「あはは、雛菊ちゃんも深雪ちゃんも、すっかりとポッコリお腹だねぇ」
「お、お恥ずかしいの……」
いっぱい食べて、すっかりお腹が膨れた雛菊と深雪が、照れた様子でお腹を隠す。
何故そんな事が分かるのかというと……ここが満月家のお風呂場であり、食事前の宣言通りに今、紅と聖、そして雛菊と深雪も一緒にお風呂に来ていたからである。もちろん、一糸纏わぬ生まれた時のままの姿でだ。
「もー、紅ちゃんもいい加減慣れたら?」
「ど、努力はします……」
やはりというか、まだ多少罪悪感の残る紅は、どうにかこの肌色多めな空間の中で目の置き場を探していたのだった。
……皆で背中の流しっこをしようという提案から始まった、このお風呂。しかし技量の関係で、背中を流す側は聖の独壇場である。
彼女自身お姉ちゃん気質なため、年下の女の子を洗うのは楽しくて仕方ないらしく、その幸せそうな顔を見ると止めるに止められない。
そうして……背中と言わず、すっかり手ずから全身を綺麗にされた雛菊と深雪は、蕩けた様子で浴槽の中で夢見心地であった。
「い、一回温泉でもお世話になりましたですが……」
「聖お姉ちゃん、洗うの上手すぎなの……」
といった感じですっかり骨抜きにされた二人の後、とうとう紅の番が回ってきた訳だが。
「……む、これって」
「……ん、聖、どうかした?」
紅の髪を洗い終え、丸めて頭に髪留めで留めてタオルを巻いた後、紅の背中を洗っていた聖が……不意に、何か異常を察し手を止めた。
なんだか、背後からかなりの圧の視線を感じる。その様子に不安に駆られる紅だったが……
「…………えい」
「ひゃわぁぁあああ!?」
唐突に体の前、特定部位に触れられて、紅が悲鳴を上げ、慌てて胸を両腕で隠す。
「な、ななな、何!?」
「……やっぱり、大きくなってる」
「……へ?」
聖の唐突な発言に、紅はポカンと呆けた声を上げる。
「ねえ紅ちゃん、正直に答えてね?」
「う、うん」
紅は目と鼻の先、間近に寄せられた聖の顔にドギマギしながら、コクコクと頷く。
「……最近、ブラがきつくなってない?」
「…………えっと、少し?」
「だよねー、だって前より間違いなく育ってるもん。というかあの時はまだ退院前でガリガリだったから、ようやく本来のあるべきお肉がついた体重に戻ったせいかな?」
「あー……」
そういえば、いつも見ている紅には実感薄かったが……退院直後くらいはまだ骨や筋の若干浮いていた体は、今はやや痩せ型ながらもふっくらと健康的な丸みを増した気がする。そして、それは胸も例外ではなかったらしい。
「せっかく雛菊ちゃん達もお泊まりに来てるし……今度、皆でお出かけしようか」
「あ、それは是非行きたいです!」
「私も、賛成なの!」
「……そだね、いいよ」
聖の思いつきに、バッと賛同する、今まで湯船で夢見心地だった二人。
それを却下するほど非情にはなれず……「たぶん、また着せ替えられるんだろうなぁ。今度は女の子三人掛かりで」と諦観の笑顔で遠くを見つめ、うなずく紅。
こうして今度、皆でお買い物に行く事がなし崩しに決定してしまった。
最後に、残る聖を三人がかりで泡だらけにして……あとはお喋りしながらのんびり湯に浸かり……こうして、さすがに女の子四人で集まると姦しい入浴を終えたのだった。
◇
入浴後は皆でドライヤーを持ち寄って髪の乾かし合いにもつれ込んだ。なんで女の子ってこう、ことあるごとにスキンシップしようとするのか、紅は疑問に感じつつ……皆が触りたがるのにまかせて総受けに回り、髪を乾かされる。
そのまま、紅たち女子が髪を乾かしている間にお風呂から上がり、所在なさげにしていた昴も引きずり込んでパジャマパーティーとなり……天理がコレクションから引っ張り出してきた旧来のゲーム機で、対戦ゲーム……主に、プレイヤー四人で吹き飛ばし合う奴だ……に盛り上がったりした。
最後にはテンション上がった天理が乗り込んできて大人げなく無双し、宙に引きずられて退場するというトラブルはあったものの、概ね楽しい時間を過ごし……そうしてお泊まり会一日目は終了となった。
……と、思っていたのだが。
「紅さん、あの、お師匠……!」
「ぅう……?」
皆すっかりと寝静まった頃。ペチペチと頬を叩く手の感触と、切迫したような抑えた声に、紅はふと目を覚ました。
寝ぼけ眼を開いた紅は、真っ暗な部屋の中で、側に座る一人の女の子を見つける。
「ぅ〜……ふぁ……どうしたの、雛菊?」
目を擦り、欠伸をしながら身を起こした紅に……目に涙を浮かべた雛菊は、現在起きている緊急事態について恥ずかしそうに口にしたのだった。
◇
「お師匠、そこにいますですか?」
「居るよー、大丈夫だよー……ふぁ」
――ひとりでおトイレに行くのが怖いです。
そう、恥ずかしそうに俯きながら相談された紅は、頼られるままに雛菊の手を引いてお手洗い前に来ていた。
そうしてお手洗い前の廊下に座り込んだ紅は、極力中からの音を聞かないよう意識から排除しながら、雛菊の呼びかけに欠伸を噛み殺しつつ返事を返す。
「……まさか、雛菊ちゃんにこんな弱点があったとはねぇ」
雛菊は年齢に比して随分としっかり者だと思っていたが、なかなか子供らしい欠点があったことに、ちょっとだけほっこりする。
ただ、幽霊が怖いのは紅も一緒なのだが、雛菊の場合は「夜にお手洗いに行く時限定」で苦手らしい。
「し……仕方ないじゃないですか、うち、広いのに人はあまりいない木造建築ですし、神社だから夜はちょっと不気味なんです。それに……」
「……それに?」
ごくり、と口籠った雛菊に続きを促す。
「小さな頃……本物を見たことがあるです」
「……それは、仕方ないね」
うん、仕方ない。
なんだか背筋が涼しくなった気がする紅なのだった。
「もう来年には中学生ですので、直そうとは思っているのですが……」
「なかなか、うまくいかないよね……」
同じく、今現在トラウマを克服したい紅には、雛菊の気持ちはよく分かる。なので、二人揃って大きな溜息を吐くのだった――……