Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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全てを賭した一

 

 ――皆が皆、全てのリソースをここで吐き出さんと決死の攻撃を繰り出す中。

 

 

 

「剣聖技……『閃連華』!」

 

 ソールレオンの双剣が霞むほどの速さの高速の刺突が、邪神クトゥルフの頭、いくつもある目玉の大半を正確に貫く。

 直後……まるで内部で爆ぜるようにして、四方に幾度も揺さぶられたその頭部。傷口からは、内部で爆ぜたものの正体らしき光が漏れ出していた。

 

 ――ォォオオオオッ!?!?

 

 視界の大半を潰されて、邪神がまるで混乱したかのような吠え声を上げる。すでに再生が始まっており、すぐに元の視界を回復するのだろうが……

 

 

 

「紫電の型、(はち)の太刀『紫電連閃』、です!!」

 

 そんな暇は与えないとばかりに、稲妻が落ちるような音と共に、全身を使い小さな身体を回転させながら、長大な炎の刃でクトゥルフの巨体を袈裟斬りに切り裂く雛菊の一閃。

 だがそれだけでは終わらず、着地とともに縦横無尽に駆け回った雛菊から炎の刃が振るわれるたびに、巨大な身体は蒼く燃えるダメージエフェクトが刻まれていく。

 

 

「おぉおおおぁ! 『ヴォルカニックマグナム』……ッ!!」

 

 絶叫と共に莫大な焔を纏い、竜人化した勇者スザクが、爆発的な加速力で真っ直ぐにクトゥルフへと突き進む。

 

 片手剣の豪炎の型、その中でもクリムが名前を覚えていた中ではかなり高等技である『ヴォルカニックマグナム』。

 それは、右手を矢を引くように引き絞り、左手を剣先に添えた状態で水平に構えた刺突の構えからの、全身に真っ赤な焔を纏っての爆発による推進まで利用した暴力的な突撃技。

 

 迫る触手を全て纏う焔で燃やし尽くしながら、その刺突は一直線に邪神の喉元へと突き刺さり、そのまま炎で頭部を炎上させる。

 

 

 

 

「仕舞いじゃ、最終鎌技『ヴォイド・クワイタス』!!」

 

 大鎌の秘奥、「空虚な死」の名を冠するその斬撃が、全てを食い尽くさんばかりの闇を纏い、巨大で禍々しい三日月を描き振り下ろされる。

 頭頂から股間まで両断するように、昏いダメージエフェクトを刻まれた邪神クトゥルフだったが……しかしクリムの攻撃はまだ終わらない。

 直後、追従して12の剣が並行に並んで同じ軌跡を描き、一斉に振り下ろされた。

 

 合計13閃。

 それだけの多重攻撃を一瞬で受けたクトゥルフが膝をついた――その瞬間、天に居るリコリスの背に、巨大な六枚の光の翼が瞬いた。

 

「皆、退避お願いします―― 『アイン・ソフ・アウル=バレット』……ッ!!」

 

 その砲から放たれた巨大な閃光が、天から宙を貫きクトゥルフを飲み込んだ。みるみる削れていく、残り僅かな邪神のライフ。

 

「やったか……ッ!?」

 

 誰かがそう呟く。

 皆が、勝ったと確信した。

 

 

 ――そんな時だった。

 

 

 突然地面を割って出現した無数の触手が、クトゥルフの下半身を飲み込んでいく。

 すると、あろうことかその全身から傷が消え――そのHP残量を示すバーが、あろうことか、伸びた。

 

「そ、そんな……!?」

 

 狼狽する、上空にて『アイン・ソフ・アウル=バレット』照射中のリコリスだったが、それは皆が一様に悪夢と思える出来事だった。

 

「ここに来て……回復だと!?」

「奴め、エリア中の眷属の触手を取り込んで回復しておるのか!」

 

 次々と地面から現れる触手をその身に取り込み、「アイン・ソフ・アウル・バレット」を受けて消失した欠損を補填していく邪神。

 大した数が残っていないためその回復量は決して早くないが……だがしかし、リソースを全て注ぎ込んだ後のプレイヤーにとってはあまりにも酷な量だ。

 

「駄目だ……足りぬ!」

 

 僅かにだが、クトゥルフの自己再生の方が強い。天から降り注ぐ『アイン・ソフ・アウル=バレット』の光が消えた後も、僅かながら体力が残る。

 

「くっ……総員なんとしてでも削り切れ!」

 

 焦りを見せるソールレオンの指示に、『アイン・ソフ・アウル=バレット』照射終了と同時に皆が殺到し、必死に削りきろうとしている。

 だがそれも徐々に回復する分を減らすのが精一杯で、完全に倒し切るには、あと一撃強力な火力が必要に……

 

 

 

 ――いや、有る。

 

 

 

 奴を削り切るだけの火力を得る切り札が、クリムだけでは成し得ない手段により、ある。

 

 だがしかし、今の状況で行うと……そんな逡巡を一瞬見せたクリムの手を、硬い鎧に包まれた別の手が握った。

 

 その手の持ち主は……フレイヤ。

 

「ねぇクリムちゃん……私、いけるよ?」

「じ、じゃがアレは、フレイヤの今の状態では……良いのか?」

 

 問い掛けるクリムに、キッパリと頷くフレイヤ。

 

「……分かった。頼んでも良いか?」

「もちろん。クリムちゃんの望むままに」

「そうか……すまんフレイヤ、()()()()()()()

 

 彼女の真剣な目に、クリムは迷いを振り切ってうなずく。彼女の躊躇無い肯定の言葉を聞き、ひとつ大きく深呼吸をすると、手にした『ラグナロクウェポン』を構え、呟く。

 

「……『変幻』」

 

 先程の攻撃により回収できたMPから極大魔法を使用する最低限のMPだけ残し、ラグナロクウェポンを可能な限り巨大化させる。そして……

 

「……『グリムサイズ』!」

 

 その巨大化したラグナロクウェポンが、クリムの残り半分ほどのMPも全て食い尽くした魔法により臨界寸前の状態で保持される。これでこの切り札である武器は、あと一撃しか振るえなくなった。

 

 だが――その一撃前に、もう一つだけバフを乗せることは可能だ……ただ一人、()()()()()()()()

 

 

「……すまんな、面倒を掛ける」

「いいんだよ、貸しひとつね?」

「は、ちゃっかりしとるのぅ。ああもちろんじゃとも、何だって言う事を聞いてやる……では、タイミングは任せる」

 

 そう告げて、クリムがフレイヤの手に指を絡めて握ると、体力ゲージを見つめてタイミングを計っていたフレイヤが、高らかに宣言した。

 

「EXドライヴ! 『聖女の献身』!!」

 

 叫んだフレイヤの背中から柔らかな翼のエフェクトが生じ、繋いだ二人の手が輝く鎖で結ばれた。

 

 

 ……フレイヤのEXドライヴ『聖女の献身』は、手を繋いだ双方のMPを共有する、ただそれだけの技だった。

 

 はっきり言って、他の者の『EXドライヴ』に比べたら数段見劣りするその効果は……だが、ハイエルフであるフレイヤが使用することで、何よりも強力な福音と化す。

 

「……『魔力の泉』!」

 

 続けて宣言された、フレイヤの種族特性『魔力の泉』……その効果は、()()H()P()()1()()()()()()()()()()に、()()()()M()P()()()()0()()()()

 

 その宣言と寸分違わぬタイミングで、クリムがひとつの魔法を詠唱し始めた。

 

 ――深淵魔法100、極大魔法『グリムリーパー』。

 

 詠唱完了後に一度だけチャージでき、一度しか振るえない超々高威力のバフを武器に付与するその魔法。

 溜め始めてから最大の威力になるまで『60秒』が必要であり、その間にいかなる理由であっても一歩でも移動したらチャージはそこで打ち切られる、完全にロマン砲特化の魔法だが……その分最大チャージ時の威力は想像を絶する。

 

 本来ならば、先程の『グリムサイズ』によりMPを使い切ったクリムには唱えられないはずの、二連目の極大魔法。

 しかしフレイヤにMPを接続されたために、極大魔法の使用に必要なMPはからっけつなクリムのものではなく、フレイヤの『魔力の泉』から供給され……最大HPが1となったフレイヤは、直後に毒のダメージで体力を全損した。

 

「あとは任せるね、クリムちゃん」

「ああ、任された……『グリムリーパー』!!」

 

 

 残光になって消えていくフレイヤに抱かれながら、クリムが新たに虚無の光が灯る『ラグナロクウェポン』を、眼前に掲げ持った。

 

 

 ――キンッ

 

 

 十秒が経過し、甲高い音を響かせて『ラグナロクウェポン』がその光を強めた。

 

 

 ――キンッ

 

 

 さらに十秒後。さらに輝きを増したその大鎌は、もはや直視できぬほどの光を放ち始める。

 

 本来であれば不可能な、極大魔法によるバフの重ね掛けという痛烈なシナジーより生み出された、おそらくこの『Destiny Unchain Online』において現状の理論上最大火力を秘めた武器へ変貌しつつあるその一振り。

 それを危機と見たか、まるで怯えているかのように他のプレイヤーを無視し始め、クリム目掛け触手を放つクトゥルフだったが……その間に割り込みを掛けた影は、スザクだった。

 

「お主……」

「はっ……こんだけ体を張ってやるからには、絶対にミスるなよ、魔王様ぁ! 来い、『竜血の英雄(ジークフリード)・偽』!!」

「……もちろんだとも。お主の献身、感謝する!」

 

 触手に貫かれ、打ち据えられ、幾度も死ねるダメージを受けながらそれでもクリムの前で剣を掲げて倒れずに立ち塞がるスザクの背中に、クリムはただ礼を述べ、あまりに長い一分間がジリジリと流れるのを睨み続ける。

 

 

 

 そして……その時は、来た。

 

 

 ――キィィィィ……ン!

 

 

 一際甲高い音を上げて、チャージ完了の音が廃墟の空に響き渡る。

 

 その時にはもう天に届くかというほどの黄昏色の光を立ち昇らせる『ラグナロクウェポン』を、肩に担ぐようにゆっくりと構え……クリムは最後にもう一つだけ、最後の一押しを口にした。

 

「……ブレイズ……ブラッド……『ノーブルレッド』ォ!!」

 

 それは――ブレイズ・ブラッドの効果をほんの一瞬に凝縮させる、MPではなく血を消費する固有魔法『血魔法』スキル100の最終秘奥『ノーブルレッド』。

 クリムの体内の血が一瞬で燃焼し、漏れ出た血煙で構成された翼が生え、全身を包むように血の衣が展開する。

 

 

 

 ――正真正銘のラストアタックだ、この一撃に、全てを懸ける!!

 

 

「――ぉおおおおおおおオオオオオオッッ!!!」

 

 喉など枯れよとばかりに絶叫を上げながら踏み出しただけで、足元の大地が焔を巻き上げて爆ぜる。

 疾駆した体が巻き起こす旋風は紅の輝きを放ち、触れた物をただそれだけで斬り刻む。

 

 一筋の紅い災厄と化したクリムは僅か一瞬で宙を駆け、必死の抵抗を続けるプレイヤーたちの頭上を飛び越えて、邪神クトゥルフの頭上へと飛び上がる。背中の翼を一振り羽ばたいて、その頭上目掛け急降下して――

 

 

 ――その体躯を、僅かな抵抗も許さずに頭から両断した。

 

 

 次の瞬間、その膨大な破壊力を押し固めた『ラグナロクウェポン』は形を失い、内包していたエネルギーをその地点で炸裂させ、巨大な光の柱となって立ち昇る。

 

 その光は――いつのまにか夜になっていた空を曙光の色へと染め上げて、長きに渡る死闘が幕を閉じた事を全てのプレイヤーへと伝えたのだった――……

 

 

 

 

 

 

 

 




(おそらく速攻修正パッチ食らって後々「昔はこんな事ができた」ってネタになるやつ)
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