Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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編入生

 

 ――到着した、教室前。

 

「あれ、なんだか教室が騒がしいね?」

「本当だ、何かあったのか?」

 

 休み明けだから、というだけではなさそうな、ざわついた教室の雰囲気に、聖と昴が首を傾げながら教室に入っていく。

 その後に続き、紅が教室へ踏み込んだ瞬間――教室の生徒の視線が紅へと集中し、喧騒がピタリと鎮まった。

 

「……え、な、何ですか?」

 

 思わず鞄を胸に抱え、不安そうに教室を見回す紅に、一人の女生徒が皆を代表して近寄ってくる。

 

「ねえねえ、これって満月さんだよね?」

 

 そう言ってクラスメイトの女の子の一人が、観ていた動画のウィンドウを可視化して、紅へと見せてくれる。

 そこに嫌な感じはせず、ただ好奇心にキラキラ輝いている目にホッと安堵しながら、その動画を覗き見ると……

 

 

『――皆の者、我らゲーマーが一同、この長かった、正直に言えば何度も何このクソゲーと投げ出しかけた夏のイベント最終日を、完全なハッピーエンドで飾って、運営にザマァみろと叫び、大団円で幕を下ろそうではないか……ッ!!』

 

 大勢の者達の中央で、拳を掲げ皆を鼓舞している、白髪の少女の姿。観客側から撮影されたらしき動画に映るその姿は……当然ながら、見覚えがあった。

 

 

「こ、ここ、これ、夏のイベントの時の……!?」

 

 顔を赤く染めて、女生徒を見上げる紅。その様子に、やっぱり、と納得したように女生徒が頷いた。

 

 その動画の配信元……それは、見覚えのあるVR配信者『霧須サクラ』の配信しているチャンネルの、VRMMOの旬を伝えるコーナーにあったトピックスの一つ。

 

「うぅ……こっちから話が広がるのは、盲点だったなぁ」

 

 多数のファンを持つ人気VR配信者による配信ともなれば、それを目にする層は一気に広くなる。

 

 この夏、最も熱かったゲーム内の場面として紹介されていたその動画により……『クリム』のことがDUOプレイヤーではない一般の人にも知るところになったのだと理解し、思わず頭を抱える紅なのだった。

 

 ……とはいえ、リアルアバターを使っていたのだから、遅かれ早かれ時間の問題だったしと、ぐっと飲み込む。

 

 そうして平静を取り戻した紅へ、女生徒は更に話を振ってきた。

 

「そういえば、満月さんは知ってる? この配信してる子、この学校の芸能科に居る先輩だって話だよ?」

「え、そ、そうなんだ……本当ならすごいね、もうこんな立派に仕事してるなんて」

 

 紅は彼女……霧須サクラの中身は社会人だと思っていたので、クラスメイトの言葉にビックリする。

 だがそう言えば、デビュー当時の数年前は、中学生という疑惑があったという噂は耳にしていた。

 なるほど、順当に年月を重ねていたならば、確かにそのくらいの歳だろう。

 

「凄いよねー、もし本当なら、会えたらサイン貰わないと」

「そ、そうだね……」

 

 クラスメイトの女生徒に相槌を打ちながらも、紅はますます膨れ上がる嫌な予感に引き攣った笑いを浮かべていた。

 

 よもや、身近にそんな話があるとは。

 あるいは、もう一人くらいふらっとゲームの知り合いが出てくるのでは?

 

 いやまさか……そんなことを考え顔を引き攣らせる紅だったが、担任教諭がすぐに教室に入ってきたために、思索を中断することになったのだった。

 

 

 

 

 

「えー、始業式の前に、少し話があります」

 

 朝のホームルーム。担任教諭の浅井先生が、そう最初に切り出す。

 

「私たちのクラスは満月さんが復学して間もないですが、今回新たに編入してくることになった生徒が居ます」

 

 ――編入生?

 

 以前、何やらそれに関係する話を聞いた気がすると、紅が記憶を探っている間に、浅井先生は、教室の外、廊下へと声を掛ける。

 

「では、()()()、入って来てください」

 

 その言葉と共に、ガラッと教室前の扉が開き、一人の人物が入ってくる。

 

「……げ」

 

 教室に入ってきた、一人の男子生徒。

 その姿が見えた瞬間、紅が思わず発した嫌そうな呻き声は……しかし教室を満たした主に女子生徒の黄色い声の大合唱に、飲み込まれて消え去った。

 

 

 ――スラッとした、平均よりはやや高いくらいの身長。

 

 ――中性的な、ともすればボーイッシュな少女と言っても通用しそうなほど整った端正な顔立ち。

 

 ――しかし、そのやや線が細い印象と裏腹に体は鍛えられているらしく、不安定さなど微塵も感じられない佇まい。

 

 一挙手一投足が人に見られることを意識したような所作もあいまって、それはまるで御伽噺から抜け出してきた、悪い魔法使いからお姫様を救い出す王子のような、絶世の美少年といっても過言ではないだろう。

 

 そして……流れるような、銀の髪。

 そんな人物を、紅は一人しか知らなかった。

 

 ――なぜ、ここに。

 

 その貴公子然とした姿、一目見たら忘れるはずもない。

 

「はじめまして。私はこのたびこちらのクラスへと編入してくる事となりました、『玖珂玲央』と申します」

 

 そう、胸に手を当てて、貴族か騎士のような仕草で頭を下げた青年は……一瞬、紅の姿を見つけ、笑ったように見えた。

 

 そう、彼は間違いなく……先日に神那居島で出会った理事長のお孫さん、ソールレオン改め、玖珂玲央であった――……

 

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