Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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砦攻め②

 

 狭く入り組んだ砦内では、大人数でまとまって行動するのはかえって混乱の元になると判断したクリムたち『連王国』側は……分断覚悟で、散開して探索することを決めた。

 

 

 必ず一つか二つのギルドが目視で確認できる範囲にいる状態で行動すること。

 

 見通しの悪い曲がり角や、天井のある場所、狭い門の場所などは、必ず他のギルドがフォローできる状態で踏み込むこと。

 

 それらを徹底するように指示を出した後、探索のために散開する。

 

 

 そうして……城砦都市攻略を開始してから数時間が経過した。

 

 

 

 

 ◇

 

「しっかし……本当に嫌な構造をしておるな」

 

 最前線を索敵しながら進むクリムが、忌々しげに呟く。

 

 とにかく、待ち伏せ分断に特化した街並み。

 

 さらには直進一本道かと思えば実は隠れた三叉路になっており、背後からゾンビなどが現れることも珍しくない。

 

 そのため探索は慎重に慎重を重ねることとなり、なかなか進まない行軍。

 

 ……このように徹底して敵兵を分断し迂回させる構造はたしか、日本の戦国時代の城、代表的なところでは姫路城などで見られる構造だったはずだ。

 

 そして、それを攻略する側となって初めて、憎らしいほどに有効な構造だというのがよく分かる。

 

 

 だが……それはあくまでも、通常のルートを通り攻略する場合の話だ。

 

 

『この先左手に折り返した先の、上り坂が兵を伏せさせる絶好のポイントになっています、注意を』

「うむ、了解した――!」

 

 アルベリヒの忠告を受けるや否や、側面のほぼ垂直に切り立つ石垣を蹴って駆け上がるクリム。

 

 瞬く間に()()()()()()()()()()、勢いのままに宙へと躍り出たそこには……やはり何者かの統率を受けているらしく、坂の下を見つめるように配置されたスケルトンの戦士と魔法使いの姿。

 

 後衛の中心に降り立ったクリムの作り出した大鎌が、ようやくのんびりと詠唱を始めたスケルトンをまとめて薙ぎ払う。

 それと同時に、背後からの強襲に慌ててクリムの方へ方向転換するスケルトン戦士たちの横っ面へと……外側の塀を直線路に見立てて最高速度のまま()()()()()()()雛菊と、こちらも速度を緩めずに()()()()()()()()()し無理矢理な方向転換してきたカスミが襲い掛かる。

 

 

 前衛が身軽で軽装な者が多いルアシェイアだからこそできる、縦方向の地形ショートカット。普段はデメリットにもなりやすいその特性が、今回は鋭利な矛となって城砦という盾を執拗に抉り続けていた。

 

 ……が、しかし。

 

「……クリム、上!」

 

 そのまま坂道の上、若干のスペースがある広場へとクリムが踏み込んだ瞬間――切迫したフレイの声に、クリムは嫌な予感に任せるまま、咄嗟に爪を振るう。

 

 バキッと、木を砕く重たい手応え。

 

 振り切られた爪に砕かれて、その横を通過していったのは……一本の、人が手で引く物とは明らかに違う、かなり大きな矢。

 さらに次々と上から降ってくるその矢を目にしたクリムが、慌てて坂に戻り、通路の壁に張り付くようにしてしゃがみ込む。それは、後から続いていた他の仲間たちやギルドも同様だ。

 

 曲がり角を覗き込むと……砦本体へ向かう途中の道に、頑丈そうな壁と狭い門を備えた櫓が見えた。

 

 軍団であればつっかえるその門でも、少数なルアシェイアならば突破も可能であろうが……しかし、そこまで目算で一キロメートルはあろうかという見通しの良い上り坂の通路。

 

 しかも、おそらくは連射性の高い据付式の連弩が、壁の上に多数配備されているのが見て取れる。

 

 地の利を生かした、遠隔攻撃による待ち伏せ。無策でいけば、蜂の巣となるのは必定。

 

「……いつか来るとは思ったが、予想以上に早かったな」

「どうしようクリムちゃん、私が前に出る?」

「いや、あの矢のサイズだとフレイヤでも耐え切れるかどうか……」

 

 先ほど砕いた矢はかなり大きく、その威力もかなりある。それにできればフレイヤには回復に専念してもらいたい。

 

「なら、いっそ火を放つか?」

 

 フレイが物騒な提案をするが、実際、一考の余地はある。だが……

 

「うむ……他に手が無ければそれもやむなしとは思うが、しかしあの櫓、奪うことができれば今後控えている本丸相手に狙撃戦を仕掛けられるな?」

「う、うん、なんとかいけると思うの」

 

 まだ若干遠くはあるものの、おそらくリコリスならばギリギリで、懸念していた砦本体の石落とし(下を通過する敵兵に岩などを落とすための出窓)を狙撃できるはずと、背後のリコリスをチラッと見ると……愛銃をギュッと抱きしめた彼女も、肯定するように頷く。

 

 それに、今後激しさを増すであろう攻城戦に向けて、仲間たちの救護拠点としても使用できるはずだ。

 

 ……というわけで、火計は保留。できれば拠点として確保したいという方向で話を進める。

 

「なあアルベリヒ、抜け道などには心当たりはあるか?」

『そうですね……』

 

 姿を消し、やはりすぐ横に控えていたらしきアルベリヒが、すっと姿を現す。

 

『十人くらいであれば櫓の横まで潜入できそうな道には、心当たりはあります』

「では、案内を頼む。普段であれば我らが出るところではあるが……」

『あなた方は、ここまでの道中で目立ちすぎています。姿が見えないとなれば不審に思われましょう』

「……じゃよなあ。我らはここで陽動するとして、ならば誰を制圧役に送り込むかじゃが……」

 

 そう、考え込み始めた時だった。

 

「魔王様、任せてくれ。俺たちが行こう」

 

 そう真っ先に手を挙げたのは……ルアシェイアのすぐ後ろをついてきていた銀の翼団長であるエルミル。

 彼は金属のプレートアーマーを装備解除すると、隠密用の装備らしき黒い革鎧へと着替えていた。

 

「流石に、何かちゃんと活躍しないと加入順で領地を貰ったって言われかねないからな、それは君にとっても良くないだろ?」

 

 そう、ニッと笑って見せる彼に、クリムもふっと頬を緩める。

 

「……分かった。人選は任せる。それと……セツナ、協力してやってくれ、斥候(スカウト)役は多くて困ることもないじゃろうからな」

「はーい、任されましたぁお館様!」

 

 元気に返事をするセツナに苦笑しつつ……手早く自分のギルドメンバーから人選を済ませて待機していたエルミルに頷く。

 

「では……任せたぞ、向こうの櫓で会おう」

「ああ、魔王様。任された」

 

 そう、彼と拳を合わせて……クリムら陽動役は主力を引き連れて敵正面へ、別働隊はアルベリヒの案内により別方面へ、各々の役割のために飛び出していくのだった。

 

 

 

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