Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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放課後のゲーム部

 ――休み明けの、月曜日、放課後。

 

 授業こそ終わったものの、先日の紅と聖のように、今日は佳澄と玲央が採寸のために教室に残っている。

 そのため、それが終わるまでを待つ間が暇になったのと……先日の出来事で相談したいこともあり、紅、聖、昴の三人はゲーム部に顔を出していた。

 

 

 

「そうか……ベリアルの奴、大人しくしていると思ったらそんなとこに居たんだな」

 

 先日の、ガーランド砦攻略の最後の出来事をあらかた説明されて、黙って真剣な目で聞いていた朱雀が苦々しく口を開いた。

 

「うん。何を企んでいるかはさっぱりだけど、もしかしたら南西の未開の領域に逃げたかも」

「南西部か……」

 

 その話を聞いて、朱雀は眉間に皺を寄せ、どこか難しい顔をする。

 

「……始まりの街周辺も、なんだかきな臭い流れが始まっているからな。ダアトを連れて新しく開拓される南西辺境に拠点を移すのも悪くないかもな」

「ん? 先輩、ヴィンダムで何かあったんですか?」

「ああ。といってもプレイヤー間の問題なんだけどな」

 

 そう前置きしつつ、肩をすくめる朱雀。どうやら、あまり愉快な話ではないらしい。

 

「――最近、治安自治ギルドがなんだか不穏な空気になっている」

「不穏な空気?」

「うん……自分たちは初心者向けのエリアの治安を守っているのだから、そこにいるプレイヤーは自分たちに協力するべきだ……ってね」

 

 首を傾げる聖に対し、朱雀の話を継いで答えてくれたのは、ここまでお茶しながら耳を傾けていた(はる)先輩だった。

 なんでも最近、一部の治安自治ギルドのメンバーに『自分たちはお前らを守ってやっているのだ』と初心者に対し高圧的な者が散見されているのだという。

 

 大昔、スタンフォード監獄実験(尤もこれはやらせ説があるが)などの例もあり、立場が本来善良だったはずの人を変貌させることは、無いとも言えない。

 

 ちょっと警戒すべきかもしれないと、朱雀と桜の二人は厳しげな表情をしていた。

 

「ま、溜まりに溜まっていた不満がちょっと表面化してきただけだろうがな」

「朱雀君も、なまじ勇者なんて称号持ちだからねぇ。『君も魔王共が分割統治する1鯖の現状に不満があるはずだー!』って付き纏われて、大変みたいだよ」

「うちの鯖の人間って不甲斐ないっスからねぇ」

「あはは、初期段階でカリスマ発揮したプレイヤーは、みんな魔族だったもんねー」

 

 事実、正式サービス開始後しばらくして新規追加された二鯖は、人間と魔族半々くらいの割合で、無数の勢力が群雄割拠した戦国時代の真っ最中らしい。

 

 一方で一鯖はというと、早々にクリムら三魔王による三大国体制で硬直したため……皮肉なことに、魔王たちによる分割統治によりすっかり大陸は平穏になっていた。

 

 そのため、GvGにあまり興味無くて安定して遊ぶなら1鯖、ガチガチにギルド対抗戦がしたいなら2鯖、という風潮があるという話は、紅も耳にしていた。

 

 ……おかげでルアシェイア、北の氷河、嵐蒼龍各ギルド間が仲が良いために半ば談合状態になっている現状に対して批判が少ないという事情もあるのだが、一方で面白くない者が居るのも確かだった。

 

「むぅ……私も、朱雀君について行っちゃおうかなぁ」

「それは……まあ拗ねそうな奴は居るけど置いといて、俺は別に構わねっスけど、大丈夫なんですか?」

 

 桜は……『霧須サクラ』は公式の役割のために与えられたキャラクターだ。そちらの意図を無視して動かすことは難しいはずだが……

 

「ま、向こうに融通させてオフでお忍びで遊ぶ用のサブキャラを作らせてもらうわ。何か辺境旅日記みたいな企画でも出してみたりしてね。というかー、私もたまには自由に遊びたーい!」

「ま、そっちが部長の本音っスよね」

 

 駄々をこね始めた桜を宥めながら、朱雀が苦笑する。

 

「……ってわけで、そっちで会ったらよろしくねー」

「はは……ええ、こちらこそ」

 

 あ、これはマジで実行するな。

 そんな意思を桜から感じ取った紅は、苦笑しながらも快諾するのだった。

 

 

 

「それで……ゲーム部では、学園祭では何かやるんですか?」

 

 不意にそんな疑問を発したのは、黙って話を聞いていた昴。

 

 

 ――紅たちは、部活はどうするかを教師たちにせっつかれていたのもあり、このゲーム部に入部届けを出して在籍していた。

 

 特に紅と昴に関しては、学年内でも文武に優れた優等生であり、他の部活で活躍を望んでいた先生方にはあまり良い顔はされなかった。

 しかし紅と昴は高名なVR技術者の子である上に、本人の進路希望も同じ道であるため……無駄と一概に言い切れないのに加え、基本的には外で活動が難しい紅の体質なども鑑みて、最終的には仕方ないと方面で落ち着いた。

 

 

 そんなわけで、部員として協力することはあるかと尋ねてみたのだが……

 

「うちは何もやらないから、自由に楽しんできていいわよー」

「というか、部長はずっとメインステージで司会っすよね」

「そうなのよー、さすが理事長ってばソツがなくてねー。在校生だから協力しろって言われたら断るとこだけど、あの人最初から事務所に正式に仕事として依頼してきたから断れなくて」

 

 困ったように肩をすくめる桜だったが……一方で紅たちは、驚愕に目を見開く。

 

「じゃあ、今年のメインパーソナリティは『霧須サクラ』が?」

「うん、そういう事。まあ光栄なことだと思って頑張ってくるわ」

「いや、凄いじゃないですか……!?」

 

 紅の確認にあっけらかんと答えた桜だったが、昴は驚きの声を上げる。

 私立のお金持ち校であるこの学校の学園祭、そのメインパーソナリティというと、毎年結構有名な著名人に依頼をしている。そこに抜擢されたというのは、本当にすごい事なのだ。

 

「……そだ。ね、ね、『クリムちゃん』。一緒にステージに立たない?」

「勘弁してください……」

 

 嬉々として誘い掛けてくる桜に、紅はガックリ肩を落としながらお断りするのだったが……しかし他の三人は、その会話に『フラグが立ったかな』とこっそり胸の内で思うのだった――……

 

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