Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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逃避行

 

 ――なんか1-Aのクラス展示がすごいぞ。

 

 そんな話題が流れ始め、評判が評判をよぶ形で未曾有の大繁盛となった『ナイトメアハウス』だったが――

 

 

 

 ところで……紅たちのクラスで出しているメニューは、ケーキ類とドリンクのみ。

 それも日持ちがして盛り付けに手間のかからないものということで、生クリーム等はキャロットケーキの横に出来合いのものを絞るくらいにしか使用していない。

 

 そして……これらは前々日あたりからクラス皆で大量に作り、冷蔵していたものだ。当日出す分を作る余裕など、もちろんだが無い。

 

 つまり……これだけ大量の来客があれば、当初かなり余裕をもって想定していたよりもずっと出て行く量がある訳で。

 

 

 

 

 

「はぁ……怒涛のような一日だったね……」

「つっかれたぁ……」

 

 ぐったりと座り込む、紅と聖。

 最後まで店に残り客を見送った二人は、皆より遅れて更衣室代わりに使っている空き教室で仮装を解いて制服に着替えていた。

 

 時間は午後の3時過ぎ。まだ外部から観客が帰るまでにはあと一時間あるが……これ以上在庫のケーキを提供すると明日の分まで手をつけることになるという事で、急遽本日完売の看板を掲げることになったのだった。

 

「でも、調理担当の人らはこれから明日の分のケーキを追加で焼くのかぁ」

「どうする、手伝いにいく?」

「うん、そうだね……ん?」

 

 慌ただしく追加のケーキを用意しているクラスメイトを手伝うべく、紅と聖が疲労の溜まった体に喝を入れて立ち上がった……その時。

 

「二人とも、着替えは終わったか?」

 

 更衣室代わりの空き教室の外から、昴が呼びかける声が聞こえてきた。だが何故か声を顰めたその様子に、首を傾げる。

 

「紅、紅、それと聖もちょっとこっちに来い」

「ん? 昴、どうかした?」

「いいから、あまり音を立てずに出て行くぞ」

 

 そう言って廊下の様子を見ながら手招きする昴に、顔を見合わせて首を傾げながらも、紅と聖が続く。

 そのまま廊下の角を曲がった辺りで……バタバタと足音が聞こえ、俄に騒がしくなる1-A教室前。

 

 

 ――失礼します、こちらが開会式で司会をしていたあの子のクラスですか?

 

 ――あの、よろしければお話を……!

 

 

 報道関係者らしき声。その目的が自分であることを察して、紅の頬が引き攣った。

 

「ってわけで、なんでも無名ながら今朝のステージで目立っていたお前に目をつけた記者たちが、話を聞きたくて学校をたむろしているって訳だ」

「な、なんで今頃?」

「ま、さしものマスコミも学園祭、しかも芸能科でもない一般学生という事で配慮はしてくれたんだろ」

 

 流石に今のご時世、一般人の女生徒を追いかけ回すわけにはいかないだろう、そんなことをしたら翌日には大問題となってニュースを賑わすのが今の世の中だ。

 

 というわけで……人もだいぶ減ってきて、しかもクラス展示の『ナイトメアハウス』を閉めた今ならばと狙ってきたのだろう、そう昴が予想を締めくくる。

 

「でも、だったら素直に取材を受けても……」

「まぁ、そうだけどな。けど明日はまた忙しくなるだろ。俺らはともかく、お前が学園祭を楽しめるチャンスは今だけだ」

「それは……」

「っていう訳で……お前ら二人は明日も主戦力を張ってもらうことになるのだし、今日は手伝いはいいからさっさと抜け出して学園祭を楽しんどけ、って僕らで話し合いして決まった訳だ」

「みんな……」

 

 クラス皆の暖かい心遣いに、紅は目頭が熱くなるのを感じていた。そんな紅の背中を、昴は軽くトンと押す。

 

「さ、お前は行け。記者は玲央のやつが対処してくれてる」

「……うん、ありがとうって、みんなに伝えて!」

「昴も、ありがとうね!」

 

 そう精いっぱいの笑顔で返し、背中を押された紅は聖の手を取って、まだまだ賑やかな学園祭へと繰り出した。

 

 

 

 そうして――マスコミの目を避けながら、二人の逃避行(デート)がスタートしたのだった。

 

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