Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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逃避行②

 

 クラス皆の手引きにより、学園祭に繰り出した紅と聖の二人。

 

 初めこそ、周囲を気にしながらあちこちの屋台を巡っていた二人だったが……すぐに、そこまで気にしない方がいいという事に気がついた。

 

 今の紅は変装用の髪飾りを外し白髪に戻っているため、たまにギョッと振り向く者は居ても、案外と開会式の少女であることを気付かれることはなかった。

 

 実際、ヒヤヒヤしながら報道関係者とすれ違ったりもしたが、数回はやり過ごすこともできていた。

 

 

 

 だが……勘のいい者というのは居るもので。

 

「あ、そこの君、その顔もしかして……良かったら話を……」

「聖、こっち!」

「あ、待って……ひゃ!?」

 

 記者のパスを首に掛けた男性が声を掛けてきた瞬間、紅は彼に心の中で謝りつつ、聖の手を取って走り出す。

 

 慌てて手を引かれるまま後をついてくる聖の様子も気にしつつ、廊下の曲がり角を曲がり……すぐにそこにあった階段裏の物陰へと飛び込んで、聖を腕の中に抱き留めるようにしながら息を殺す。

 

「あ、あの……こ、紅ちゃん?」

「しー、静かに」

 

 何やらガチガチに固まっている聖の耳元で静かにするよう囁き、そのまましばらく隠れていると……やがて、息を切らして追いかけてきた数人の足音が、紅たちが裏に潜む階段を登っていってしまった。

 

 

 ……一秒、二秒、三秒。

 

 

 どうやら気づいて戻ってくる様子はなく、ホッと肩の力を抜く。

 

「……うん、もう大丈夫みたい」

「な、なんだか変な状況になっちゃったね」

「はは……気分はお姫様と一緒に逃げ回ってる主人公だよ」

 

 実のところ、こうまでして逃げる必要があるのかというと、紅もちょっと自信無い。

 だが、必要か必要でないかはさておき、この逃避行自体が楽しくなってきているのを感じていた。

 

 そんな紅の様子を微笑ましく眺めながら、聖が紅へ手を差し伸べる。

 

「それじゃ……いこっか、お姫様?」

「え、私がそっち!?」

「だって、追われているのは紅ちゃんでしょ?」

 

 悪戯っぽい笑みを浮かべた聖の言葉に、ぐぅの音も出せずプッと膨れながら、差し出された手をしっかり握る。

 

「でも、このままだといつか捕まっちゃうねぇ」

 

 聖のその言葉は、紅も懸念していた。思ったよりも紅の話を聞こうとしている者が多い。いずれ逃げられないタイミングでバッタリ、ということもありそうだ。

 

「そうだね……それじゃ一般客がいなくなるまでの間くらい時間の潰せる、暗くて静かな場所に行く?」

「……え? えぇえ!?」

 

 何気なく放った紅の言葉に、聖は思わず驚きの声を上げるのだった。

 

 

 

 

 ◇

 

 そうしてやって来たのは……今朝、紅が司会を務めたホール。

 

「あ、なるほどステージ発表かー……」

 

 何故か少しだけ残念そうな、一方で少しホッとしたような声を上げる聖に首を傾げつつ……紅はホール内、やや人も少なく目立たない端の方の席へ腰掛ける。

 

「あ、ほら聖、ちょうど藍華先輩と黒乃先輩が出てるよ、ほら」

「あ、そうか、今日この時間って……」

「うん、文化祭1日目は芸能科の発表だから、今はそのラストになる科全体での劇だね」

 

 確か演目は、昔有名になった恋愛映画を元にしたもの。旅先で滞在していた場所から飛び出したお忍びの王女が、一般人の新聞記者とあちこち観光して回るという話だ。

 

 そして今はちょうど、藍華が王女役、黒乃は新聞記者役として、ステージ上で熱演している最中だった。

 

「やっぱり、先輩はすごいなぁ……」

「あの人たちが、紅ちゃんに教えてくれた人たちなんだよね?」

「うん、ヒロイン役が声優の園宮先輩、主人公の人が役者の姫崎先輩だね」

「はー、圧倒されるなぁ」

 

 すっかり夢中で舞台上に釘付けとなっていた二人だったが……ふと何かに気付いたように聖が口を開く。

 

「なんだか、今の私たちの状況そっくりだよねー」

「そうかな? あはは、たしかにそうかも」

 

 そう、なんとなしに笑い合いながら、先輩達の熱演を見つめる。その最中で二人の手は、まるで惹かれ合うように自然と結ばれるのだった――……

 

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