Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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和気藹々

 

「すまんなぁ、騒がしくして」

「いえいえ、構いません。この里ではあまり新規のお客様は来ませんから、新鮮で私も楽しいです」

 

 恐縮するクリムに、そう、穏やかな笑顔のエルフの男性……この茶屋の店長が、見事な手付きで茶を立てながら答える。

 

 若く見えるがそこはエルフ、すでに三百歳近い(ちなみにこの世界の一般的なエルフの平均老衰年齢は四百歳くらいらしい)のだという彼は、まるで帰省した孫たちを眺めるような目で、クリムたちのいるテーブルをカウンターから眺めていた。

 

 そんな、排他的な雰囲気とは無縁そうな店長の様子にホッと安堵しながら、クリムも入れてもらったばかりの蜂蜜がほんのり香る紅茶を口にする。

 

 その視線の先、テラス席では……

 

 

「ほらエイリーちゃん、フルーツヨーグルトも美味しいよ、果物ほんとに美味しいから食べてみて!」

「こちらの抹茶プリンも絶品です、一口食べてみるのです」

「あ、私のレアチーズケーキも一口食べる?」

「私のフルーツタルトも、是非!」

 

 リコリス、雛菊、カスミ、セツナがせっせと餌付けしているのを、エイリーは一口ずつ味見しては、無表情ながらもどこか幸せそうな顔をしていた。

 

 

 どうやら手ずから食べさせるのが楽しくなっているらしい女性陣に、クリムは流石に呆れてカウンターへと移動していたのだった。

 あとあのままあの席に居たら、クリムも巻き込まれる予感もしたし。

 

「ルージュは、団子は美味いかの?」

「うん、お姉ちゃん。胡桃の風味が濃厚で、優しい甘さで、すごく美味しいよ」

「うむ、ならば良かった。ほれ、たんと食え」

 

 同じく避難してきてクリムの隣に座り、もくもくと幸せそうに団子を頬張っている妹分に満足げに頷きながら……クリムは、店内の平和な光景を眺めて呟く。

 

「なんじゃろなこの状況、と思っている我がおかしいのじゃろうか?」

「安心しろクリム、お前は正常だ」

 

 自信が無くなってきたクリムの呟きに返事をしてくれたのは、ルージュとは反対側の隣のカウンター席にて、苦々しい表情で頭を押さえながら、あえて苦味を効かせたハーブティーを口にしているフレイだった。

 ちなみにフレイヤは、すでに食べさせるものが無くなったため餌付けには参加していないものの、甲斐甲斐しく口や手を拭いてやっているため「あっち」側である。

 

 

 ……クリムたちとて、日夜ランキングで覇を競っているトッププレイヤーの端くれ。戦闘には手加減抜きの真剣に望んでも、その戦闘が終われば恨みっこなしのノーカウントが常である。

 

 それ故に、戦闘中ではない今、彼女と仲良くしている事まで咎めるつもりはない。

 

 とはいえ、あまりに緊張感に欠ける光景ではと思うのだが……どうにもこの悪魔の少女は、オンオフきっちり分け、オフはしっかり楽しむ主義らしい。

 すっかり皆と馴染んだその様子は、もはや天晴れと諦めるしかなかった。

 

「……そうじゃ、お主はなぜベリアルがそちらに付いたのか、知っておるのか?」

「ふぇ、ふぇりふぁるふぁんのふぉほ? (え、ベリアルちゃんのこと?)」

 

 不意のクリムの質問に、十三本目の団子に食いついたまま首を傾げるエイリー。

 

「うむ。以前それとなくうちに居るダアトに聞いたことがあったのじゃが、それとなくはぐらかされてしまっての」

 

 結局、なぜ獅子赤帝に付き従っていた彼女が悪魔へと落ちたのか、それがいまだに分からない。

 もしかしたら彼女ならば教えてくれるかも、と思ったのだが。

 

 そんな期待の視線を受け、彼女は黙々と団子を飲み込むと、口を開く。

 

「あー、うん。ベリアルちゃんは、一途な乙女なのよ」

「ほぅ……乙女、とな?」

「クリムちゃん、そこで露骨に興味を示すのは趣味が悪いよー」

「言うても、フレイヤも興味津々ではないか」

「あ、あはは……」

 

 クリムをたしなめながらも身を乗り出し食い気味なフレイヤに、クリムは半眼でツッコミを入れる。

 

 クリムとフレイヤだけでは無い。掲示板などではビッ◯扱いだったベリアルへの、同僚からの意外な評価に……同席している皆、エイリーの話の続きに期待に満ちた目を向けていた。

 

 

「うん、あの子は皇帝様ガチ勢だったから。敬愛していた獅子赤帝が拓いた国が、腐敗した人たちに好き勝手されるのが我慢できなくて――」

「あらぁ? 何を余計なことをベラベラ喋っているのかしらぁこのバカお姫様は?」

 

 不意に、これまで居なかったはずの人物の声。

 いつのまにか店内に居たのは……もはや見慣れた感のある、ベリアルの姿。

 

「あのベリアルちゃん、痛い」

「うふふそれは良かったわ、その脳みその代わりにわたあめの詰まった頭にも痛覚はあるみたいでね、当然わざと痛くしてるのよぉ……ッ!」

 

 満面の笑顔で……しかし額に青筋をはっきり浮かべて……エイリーの後頭部にギリギリとベアクローを掛けているベリアルに、真っ先に再起動したクリムが慌てて立ち上がる。

 

「何をしにきた貴様、ベリアル!?」

「今あんたらとやりあう気も馴れ合う気もなくてよ、今日の私は、このバカ姫を回収しにきただけですわ!」

 

 バンっ、とテーブルに何かを叩きつけたきりクリムたちには一切興味を示さず、ベアクローは解いて代わりにエイリーの首根っこを捕まえ、ズルズルと引き摺りながら店の出口へと歩いていくベリアル。

 

「待ってベリアル」

「……何よぉ?」

「……お団子もう一本おかわり。じゃないと口が寂しくて、うっかり有る事無い事大声で話しちゃうかも」

「こンのクソガキ……ッ!」

 

 クリムたちの方まで、ピキッという音が聞こえたような気がしたが……しかし彼女は店主へ投げつけるようにコインを放る。どうやら弱みを握られているらしい。

 

「……そこの店員、これで足りるでしょう団子十本くらい包んでちょうだい後で取りにくるから! バカ姫アンタ、覚えてなさいよ……!」

「うん、ベリアルちゃんそういうとこ優しい好き」

「〜〜ッ!?」

 

 そんな感じで騒々しくしながら、店から出て行く悪魔二人。

 

 

 ――あの娘、最強じゃなぁ……

 

 

 ()()ベリアルが毒気を抜かれ完敗している様を見せられて、しみじみ思うクリムだった。

 

 そんな珍しい光景にあっけに取られていたクリムたちのテーブル上には……エイリーが飲み食いした代金を支払いをして、お釣りが出るだけの硬貨が一つ、鈍い光を放っていたのだった――……

 

 

 

 

 

 





ベ「あんたらに借りなんて絶対作らないんだから……!!」
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