Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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人事を尽くして天命を待つ

 

 ――黒の森深部にある、ジメジメとした洞窟内。

 

 クリム、フレイヤ、フレイの三人は、薬の材料を求めて入ったその洞窟内で、ここにだけ生息する特殊な蛾の大群との死闘を制していた。

 

「ふぅ……これが、目的の『月光蛾の卵』か。なかなかこう……すごい見た目だな」

「うぇえ……私これ見た目から無理ぃ」

「はは、フレイヤは休んでおるがいい、我らがやっておくから」

 

 軽い集合体恐怖症であるフレイヤの苦手なものにバッチリ該当する、びっしり岩にくっついた虫の卵。

 

 洞窟の岩肌のあちこちに纏まった数がくっついているその、暗闇の中でほの蒼く光る球体が、クリムたちが受け持った目的の素材である『月光蛾の卵』。

 それを、潰さないように慎重に岩盤ごと切り出して確保する。

 

「よし……では、フローリアへ戻ろう、おそらく皆もそろそろ戻っている頃じゃろうからな!」

 

 

 

 

 ◇

 

 クリムの予想通り……フローリアの街に帰還した時には、セレナの家の前は、あちこちから薬の材料を集めてきた者たちでごった返していた。

 

 肝心の薬の材料も、想定以上に集まっている。これならば何度か失敗したとしても、十分な保険は有るだろう。

 

「ま、私たちが協力したのですから当然の成果ですわ」

「幼い子供を助ける為なんだろう、もちろん張り切って集めて来たとも!」

 

 胸に手を当ててドヤァ、と自慢している縦ロールの金髪少女と、騎士鎧の精悍な青年……薬の材料集めに駆けつけてくれたホワイトリリィとエルミルだ。

 

 かなりの余裕をもって集められた素材の山に驚き目を瞬かせているセレナに、連王国の主要ギルドマスターたちは次々と、自慢げに己が採取の成果を披露する。

 

「……まあ、子は宝ですから、ね。出生率の低い我らエルフにとっては」

「その一大事に、派閥も何もありませんわよね」

 

 渋々と言った様子で語るのは、集めてきた素材を差し出す伝統派の若者と、そんな彼に苦笑する融和派の女兵士。

 

 他種族と、他派閥、そんなのは関係ないとばかりに集められた薬の材料の山が、次々にテーブルに並べられていく。

 

「うーん、やっぱり皆で何かを協力して成し遂げるって良いよね!」

「良いよねー」

「っても俺らで働いたのほとんど俺なんだけどなぁお嬢様方ァ!?」

 

 ダアトと二人でハイタッチしながらまとめに入るハルに、スザクのツッコミが入り、皆から苦笑混じりの笑い声が上がる。

 

 そんな和気藹々とした雰囲気の中……ついに、薬の材料が全て揃った。

 

「……ありがとう、本当にありがとうございます、皆さん」

「うむ。じゃが我らにできるのはここまでじゃ。あとは……お主が、弟を救うのじゃぞ?」

「……はい!」

 

 涙を流しながら満面の笑みを浮かべる少女に、集まった皆が最高の報酬を得たとばかりに満足気に笑う。

 

『それじゃ、誰か彼女についていって、通信窓の維持よろしくねー』

「それじゃお館様、その役割は私がやるわね」

 

 通信が繋がる誰かが同行しなければ、教える事もできない。師匠役であるジェードの要求に、そうセツナが立候補すると、彼女は集まった材料を担いで緊張した様子のセレナについていく。

 

 

 ――あとは、彼女の頑張り次第。

 

 

 一応は余分に材料は確保してきたとはいえ、クリムたちに出来ることはもはや、良い結果となる事を天に祈ることだけだ。

 

 

 

 ……そうして、少女の背中を見送った後。

 

「皆さん……本当に、ありがとうございました」

 

 不意に、新たな者の声が掛かる。

 それは、どうしても手薄になる街の守りを一手に引き受けてくれていたスフェンだ。

 

「姉上も、我がフローリアの大切な住民を助けてくれた事、とても感謝しているそうです」

「おっと……すまなかったなスフェン、街の守りを全てお主に押し付けてしまった」

「いえいえ、これくらいお安い御用です。私もできることなら協力したかったのですが」

 

 戦える者のほとんどが留守になるため、その間フローリアを離れられなかった事を、心底残念そうにしていたスフェンだったが……すぐに、真面目な顔になって、クリムに頭を下げる。

 

「クリム様。それとフレイヤ様とフレイ様に、我らが女王陛下からの使者として茶会の招待状をお持ちしました。用意は余裕を持って行っていますので、他の皆様もどうぞご自由にとのことです」

 

 そう言って封書を渡すと、スフェンは伝統派の先頭に居たロウランにも向き直る。

 

「……それと、ロウラン様たちも。よろしければぜひ、お話したいと」

「そうか……分かった、お邪魔させてもらう」

 

 硬い表情で告げるスフェンの言葉に、こちらもスッと真剣な顔になり頷くロウラン。

 

 クリムたちが呼ばれた事といい……どうやら、女王はこの追い風が吹いている流れのうちに内部の問題にケリをつけるつもりのようだと、クリムは気を引き締める。

 

「それじゃ魔王様、私は帰りますわね」

 

 用事は済んだと、素材集めに協力してくれていたリリィガーデンの長……『ルアシェイア連王同盟国経営顧問』という役職を押し付けられているホワイトリリィ女史が、何かを察して速やかに踵を返す……が、その肩をクリムがガッと掴む。

 

「おっと。ホワイトリリィ、お主はこちらじゃ……絶対に逃がさんぞ」

「なんだかまたぞろ面倒な仕事を押し付けられる嫌な予感しかしない言い回しですわね!?」

 

 思わずと言った調子で抗議する彼女だったが……生憎と彼女は、今回の話に必要な人材だ。

 そうして嫌な予感にジタバタしている縦ロールのお嬢様も伴って……クリムは、案内の者について女王との茶会に臨むのだった。

 

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