Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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女王の茶会①

 

 ――フローリアの庭園に設けられた、茶会の会場。

 

 周囲に巡る清流に蓮の葉が咲き乱れる華やかな景観の中、並べられたテーブルにはさまざまな果実を用いられた甘味が立食形式で並べられ、招待された者たちは思い思いに談笑しながら楽しんでいた。

 

 

 

 ――そんな茶会の会場の、女王の席。

 

「このたびは、ご招待いただきありがとうございます」

「あ、ありがとうございます、女王陛下……」

 

 そつなく挨拶を交わしているフレイに比べ、フレイヤはやや緊張気味。

 そんな同族ハイエルフの二人の様子に苦笑し、女王は緊張しているフレイヤに笑いかける。

 

「そんな畏まらないでくださいませ。この度は皆様方へのお礼です、無礼講で行きましょう……それより、外の世界で暮らすあなた方同族の話に興味がありますわ」

「あ……はい」

 

 女王の気遣いに、ようやくフレイヤが普段の調子に戻る。

 

「ですが……その前に、厄介な話は終わらせてしまいませんと、折角のお話を楽しめませんわね」

 

 そう言って、彼女は真剣な表情で姿勢を正し、口を開く。

 

「まずは……盟主様、我が国の住民のために尽力してくださったこと、本当にありがとうございました」

「うむ、気にしないで欲しい。我は、顔見知りとなった者に助力したかっただけじゃからな」

 

 深々と頭を下げる女王に、クリムは照れながら気にするなと告げる。

 

「そして、ロウラン。貴方ならば、何を言われるかは分かっていますね?」

「……はっ」

 

 顔を上げた女王は……次に、居心地悪そうにしているロウランへ視線を向ける。

 

「今回の件で分かったでしょう。貴方の外界からの往来を封鎖し、私たち自身の手で私たちの誇りを守るべき、という想いはよくわかります」

 

 実際、エルフたちは他種族に苦渋を舐めさせられた種族であり、排他的になるのもまた、彼らの生存戦略なのだ……が。

 

「ですが……それが永遠に続けられるわけではありませんよね? 私たちだけでは立ち行かなくなる時というのはいつか来るのです。そうは思いませんか?」

「…………はい」

 

 たとえ他種族を排除しても、いつか侵略に晒される可能性は高い。どころか『どこにも属していない』完全中立というのは、言い換えれば全て味方ではなく、有事にどこかに頼ることもできない。

 

 ――まさに、いまこの小さな国が、空を埋め尽くす蟲相手に手詰まりなように。

 

「それに……貴方のことだから、どうせ盟主様の要求なんて聞いてませんわよね?」

「ぐっ……」

 

 にこやかに釘を刺す女王の言葉に、ロウランが呻き声を漏らす。

 やはりですか……と、ロウランの反応を見て溜息をついた女王は、クリムへ確認の視線を投げかける。クリムはそういえばそうだったと思い返し、頷く。

 

「せっかくのお茶会ですし、色々と話を聞かせていただけませんか、盟主様?」

「う、うむ、喜んで」

 

 

 そうして、クリムは出される美味な茶や菓子を楽しみながら、ここまで来た顛末を語って聞かせる。

 

 セイファート城を入手した経緯と、そこに住まう精霊ダアト=セイファートの話。

 

 行方を追っている悪魔の一人、ベリアルのこと。

 

 そして……

 

「我らは、この先にあるという妖精郷に向かい、世界樹が今どのようになっているのかを知りたくて、ここまで来たのじゃ」

「……は、それだけ……か?」

「うむ、友誼を結べるならばそれに越した事はないとは思うが、本来の目的はそのための先行偵察じゃな。我は『ダアト=セイファート』なる世界樹の精霊から、世界樹セイファートを助けて欲しいと頼まれていたのじゃ」

 

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするロウランに、クリムは事情を説明する。

 

「……そうか。盟主どのが、敵対の意思はないというのはよく分かった」

「うむ。我ら連王国はそもそも、武力による併合は禁止としておるからな」

 

 クリムが国を作ったのは、この大陸に安寧をもたらすため。侵略戦争にはすこぶる否定的なのであり、それは連王国の仲間たちも承知の上で盟約を結んでくれている。

 

「……分かった。交流を持つのは陛下に任せる。私は……」

 

 少し考えた後、ロウランは女王に向き直り、告げる。

 

「私たち伝統派のメンバーからは、両国の関係についての監査機関を作りたいと思います……盟主どのらの側に少しでも何かおかしな動きがあった時は、覚悟しておけ」

 

 最後にクリムたちへ釘を刺すようにそう言って、フン、とクリムから視線を外したロウランは、女王へと再び向き直る。

 

「女王陛下、そういう事でよろしいですね?」

「ええ、私があなた方に求めていたのは、まさにそんな役割です。外の者を信用していない貴方ならば、きっと妥協はせずに私が間違った方向に行きそうな時は苦言をくださいますでしょうから」

 

 そう言って、優雅に一口カップに口をつける女王だったが……ふと、顔を上げロウランに笑いかける。その顔を見た彼は、うっ、と呻き声を上げた。

 

「ああ、でも外の者を信用していないというのは……もう、間違いかもしれませんわね。人事を見直すべきかしら?」

「陛下……ッ!?」

 

 声を裏返し、顔を赤く染めて慌てふためくロウランに……悪戯に成功した子供のような無邪気さで、ロウランとクリムの方をチラチラと見比べながら、くすくすと笑っている女王フローライトだった。

 

 

 

「さて……では我らも、この交流の件について一任する者を紹介せねばな。こちらのホワイトリリィ女史に、ギルド共々この花の都にて、外交官に任じることとした、よろしく頼む」

「はいはい、話の流れから押し付けられる気がしてましたわよやれば良いんですわよね!?」

 

 ぶつぶつと「これも良い経験……そう思うことにしますわよ、もう」と愚痴を口にしていたホワイトリリィだったが、すぐに気を取り直してスカートを摘み、頭を垂れる。

 

「という訳で、ご紹介に預かりましたホワイトリリィですわ、フローリアの皆様方、どうぞよろしくお願いします!」

「ええ、よろしくお願いしますわ、ホワイトリリィ女史……ええと、リリィさん?」

 

 そう、にこやかに握手を求める女王フローライト。

 その手を恐る恐る握り返し……「うわぁ、流石エルフの女王様ですわね……」と握手した感触の残る手を呆然と見つめていたホワイトリリィだったが。

 

「ああ、よろしく頼む……何やら大変だな、そちらも」

「分かってくださいますか……?」

「うむ……まあ、才を示せば重要な仕事を振られるものだからな」

 

 同情的な視線を向けるロウランに、彼女はがっくり肩を落としながら愚痴を口にする。

 

 何やら意気投合しているホワイトリリィとロウラン。

 そんな二人をクリムは首を傾げながら、女王フローライトは「あらあら」と楽しそうに眺め……こうしてルアシェイア連王同盟国に、エルフたちの国『花の都フローリア』が加入する運びとなったのだった――……

 

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