Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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作戦会議②

「〜〜♪」

 

 少女の高い音程による鼻歌が響く、満月邸の浴室。

 

 その上機嫌な調子の鼻歌の発生源……あらかた髪と身体を洗い終えた紅は、浴槽のお湯が適温であることをつま先で確認してから、全身をお湯の中へと沈み込ませる。

 

「はぁぁああ……」

 

 精神的、肉体的、双方の疲労がまるでお湯に溶けていくようで、紅の口からは思わず気持ち良さそうな声が漏れた。

 

 

 ――以前は、そこまでお風呂好きというわけでもなかったのになぁ。

 

 

 これも身体が変化した影響なのか、最近はすっかりとこのひとときが楽しみになっている事に首を傾げる紅なのだったが、そんな疑問はすぐに快楽に押し流されていく。

 

 そのまましばらく肌を伝うお湯の感触を愉しみながらボーっとしていると……どうしても目に入ってくるものがある。

 

 その、初めの頃は『つるんぺたん』という擬音がよく似合う筈だったその場所は、今は小さいなりにすっかり女の子らしい丸みを帯びて膨らんでいた。

 

「むぅ……また微妙に大きくなってるよなあ……」

 

 そう憂鬱げに呟きながら、最近柔らかさを増した気がする膨らみを軽く押してみる。

 まだサイズを上げるほどではないだろうが……夏休みにBに上がった下着も、最近また少しキツくなっている気がする。

 

 また体型も、相変わらず小柄ながらもどんどん女の子らしくなっていた。

 すっかりガリガリ体型から脱却し適度なお肉がついたせいか、こころなしかお尻や太ももが丸みを帯びて大きくなり、おかげで腰のくびれが目立つようになった。

 

「……というかこれ、太ってない? これ大丈夫?」

 

 揉むとふにふに柔らかいお腹に不安を感じながら、一人呟く。

 

 ちなみに以前、不安になって聖に聞いた時は「紅ちゃんは全然太ってないよー、何でそんな事聞くのかな?」と、目だけが笑っていない満面の笑顔で言われた。あの時の蛇に睨まれたような感覚は、今でも思い出すだけで震えがくるほどだ。

 

「あー、やめやめ、こんなの悩んでてもしょうがないし!」

 

 そう思考を切り上げて、浴槽に身体を預ける。

 

 考えるのをやめ、お湯に揺蕩って脱力していると、途端に襲い来るのは……睡魔。

 

 心地良い暖かさにより疲労がお湯に溶け出した身体へと、まるで代わりに染み込んでくるようなその眠気に、だんだん意識が弱くなっていく。

 

 ……あ、やばい、寝そ

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん、約束の時間の5分前だよ?』

「――っ!?」

 

 心配そうに呼びかけてくるルージュの声に、バシャッと水飛沫をあげて、紅が跳ね起きる。

 

 ――やばい本当に寝てた!?

 

 紅はすっかりとぬるくなった浴槽から飛び出し、湿気を拭く時間も惜しいと……お肌や髪への影響が気になって普段はやらないことではあるが……魔法により体や髪に付着している水分を掌に集め浴室に放り捨てる。

 今からパジャマまで着ている時間の余裕は無く、仕方なしに下着とキャミソールだけ慌てて着用し自室へと駆け込み、ベッドにダイブすると即座にNLDを起動した。

 

 ……約束の21時まで、残り2分。

 

 どうにか間に合ったと安堵しながら、紅は速やかに『Destiny Unchain Online』へと飛び込んでいくのだった。

 

 

 

 ◇

 

「すまぬ、遅くなった!」

 

 すでに客人であるハル、そしてフレイとフレイヤが揃ってお茶をしている、いつものセイファート城中庭のガゼボ。

 

 クリムが駆け込むように席に着くと、苦笑しながらアドニスが眼前に紅茶の注がれたカップを置いてくれる。

 

「さてはクリムちゃん、お風呂で寝てたでしょ?」

「うぐっ」

 

 遅刻の原因は、フレイヤにあっさりバレた。

 ちょっと窘めるような彼女の言葉に、図星を突かれたクリムは言葉に詰まる。

 

「おいおい危ないな、下手したら溺れてただろうがそれ。ルージュが起こしてくれたのか、ありがとうな?」

「えへへ……」

 

 フレイは呆れたようにクリムに苦言を呈しつつ、そんなクリムを救ったルージュを褒めながら撫でている。彼女も満更でもないようで、クリムは悔しいやら羨ましいやらで「ぐぬぬ……」と呻く。

 

「疲れてるなら、ちゃんと休まないとだめよー? 最近イベント続きだったからねぇ」

「き、気をつけます……」

 

 たしかに、文化祭からずっと忙しい日が続いている。クリムは心配そうなハルの言葉に改めて反省するのだった。

 

 

「で……じゃな」

 

 コホンと一つ咳払いして、クリムは本題に話を戻す。

 

「とりあえず、シャオからは返答が来た。ブルーライン共和国としては加盟ギルドの自由意志に任せるそうじゃが、ギルド『嵐蒼龍』単体としては協力しても構わぬそうじゃ」

 

 目下懸案事項である遠隔攻撃部隊は、彼らとあと、NPCのエルフの衛兵隊もいればなんとかなるだろう。

 

「……貸し一つ、と言われたがの」

「……あいつに借り作るとか怖くないか?」

「うむ……まあ、背に腹はかえられぬさ」

 

 それに、なんだかんだでシャオは、理不尽に思える要求はしてこない奴だと、クリムは思っている。

 おそらくは『一時的な利益のために信用を失うのは結果として損ですからね』とでも言うのだろうが。

 

 クリムは給仕の仕事を終えたルージュを自らの膝上に招くと、話を続ける。

 

「ノールグラシェ北方帝国も、なんだかんだで皆乗り気みたいじゃな。向こうは宗主国の影響で皆血の気が多いからのぅ……」

 

 実際、北の傘下に入った理由についてのアンケートぶっちぎりの一位は『ボスエネミーと戦う機会が多そうだから』。

 

 故にクリムは、もうあのノール・グラシェ北方帝国は戦闘民族だと思うことにした。そんな彼らが未攻略のレギオンレイドに参加するのは、よく考えたら当然の流れなのだろう。

 

「というわけで、若干人数に不安はあるが、戦力としては申し分無い感じにはなってきておると思う。あとは、どうにかして参加人数を稼ぐかだが」

 

 だがはっきり言って、今回のレイドバトル会場は辺境も辺境だ。

 

 公式の調査によれば、クリムたちのいる第一サーバーの登録ID数が現在だいたい50万件と言われ、その中でも同時接続者数が多かった夏休みで10万人くらいだそうだ。

 だが、ここまで来れるプレイヤーはトップの一部およそ2%程の、二千人居るかいないかくらいだろう。

 

 その中で、これ以上増やすにはどうしたら良いか……膝に抱かれ真っ赤になっているルージュに手ずからマカロンを与え、もぐもぐと口を動かす彼女の姿に思わず笑みを浮かべながら、クリムが悩んでいると。

 

「それなんだけどクリム、僕に良い考えがある」

「フレイ? そのセリフは嫌な予感しかしないんだが、何じゃ?」

 

 何やらやけに自信満々な幼なじみに訝しげな視線を送りながら、クリムはフレイに話の先を促す。

 

「思い出してみろ、ルルイエでの出来事を。プレイヤーを最も奮起させたものは、一体何だった?」

「フレイ、お前、まさか……」

「そう……『可愛い』だ!」

 

 堂々と言い切った彼に、周囲一同から冷たい視線が突き刺さる。

 

 だが、残念ながら否定できないのも事実。現にルルイエではプレイヤーに対し猛威を振るった『可愛い』存在がいるのだから。うち一人は今まさにクリムの腕の中に。

 

「……ベリアルの時はルージュが、クトゥルフの時はルゥルゥが、それぞれ救わねばならぬ可憐なヒロインとして存在した。ならば今回もそんなプレイヤーたちをまとめ上げる、庇護欲を誘う可憐な偶像(アイドル)は居ないか……」

 

 そして彼は眼鏡を抑え、まるで天を見上げるような姿勢から目線だけはクリムたちを見下ろし……とても筆舌に尽くし難い邪悪な笑みを浮かべ、言った。

 

「居るじゃないか、とびっきりの偶像が……皆、大好きだろう? ()()()()()()()ってやつがさぁ?」

「お前いつか刺されても我は知らんからな」

 

 完全に悪役の顔で曰う幼なじみに、クリムは膝に抱いているルージュの目を両手で塞ぎながら、半眼でツッコミを入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 





Q.なんで唐突にお風呂シーンが入ったんですか?
A.前回の引きがお風呂に向かうところだったので魔が差しました。反省はしていない。

 男だった時と比べて柔らかいため不安になってるだけで、紅ちゃんはむしろ痩せてる方。
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