Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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終わりと、始まり

 

「やー、みんな、本当にお疲れ様!」

 

 皆が思い思いに休む中、明るく声を掛けてくるのは、これまで『アイドル・オーダー』維持のために歌い通しだった霧須サクラだった。

 

「うむ、お主も本当にお疲れ様じゃったな、おかげで途中で諦めずに戦い切れた、感謝を」

「あはは、皆が頑張った結果だよー」

 

 ようやくステージから降りて来たサクラの声は、流石に少し枯れていた。そんな彼女に労りの言葉を掛けていると……続いてもう一人、やって来る者がいた。

 

「皆さん、お疲れ様です……えっと、クリムさん、でいいんですよね?」

 

 縮んでいるクリムに疑問符を浮かべながら、労いの言葉をくれた彼は……エルフの実働部隊のリーダー、スフェンだった。

 

「おおスフェン、お主らエルフたちには被害は無かったか?」

「はい、おかげさまで。森の被害は大きかった割に、人的被害はほぼゼロでした」

 

 そう嬉しそうに宣うエルフの王子様に、クリムたちもホッと安堵する。

 そんな中で、恐る恐る挙手する者がいた。心配げな表情をしたリコリスだ。

 

「あの、スフェンさん。女王様は……」

「それと、結界を維持していたロウランもじゃな。だいぶ無理をしていたと思うのじゃが……」

 

 リコリスとクリムの問いに、スフェンは安心してくださいと微笑む。

 

「そちらも、おかげ様で大丈夫です。とはいえ二人とも疲れたみたいで、皆が休むよう連れて行ったらしく通信はありませんが、安心してください」

「そうか……ならば良かったのじゃ」

 

 どうやら、本当の本当に人的被害は無しで済んだらしい。例外は大量に戦闘不能者が出たプレイヤーだが、まあ復活するため実質ゼロという事でいいだろうと安堵の息を吐く。

 

「しかし……どうしたものじゃろうな、この惨状は」

 

 主戦場となった『白の森』北部は、森どころかすっかり草すら生えぬ不毛の荒野となるまで破壊し尽くされていた。

 フローリア周辺はまだきちんと森の体裁を残しているのは幸いだったが、いったいこの地が森として復活するには何十年かかるやら、といった様相である。

 

「仕方ありません、気長に植林しながら、生育を見守るしか……」

「あ、それなら妾がなんとかしてあげるのよ。元はと言うと妾のせいだものね」

 

 そう、不意に話に割り込んできた幼い少女の声。

 それは、そもそもの元凶である敵首魁、バアル=ゼブル=エイリーだった。

 

「なんとかって、どうするのじゃ?」

「あら、私は気高き主(バアル・ゼブル)よ、忘れたの? まあ、見ていてちょうだい」

 

 そう言うと、手を組んでまるで天に祈るように空を仰ぐエイリー。

 しばらくして……クリムの頬に、ポツリと水滴が落ちてきた。

 

「……うん、雨?」

 

 それも、冷たくない、暖かく心地良い雨だ。なんだか疲れが消えていくような、『慈雨』という言葉がぴったりの雨だった。

 

「ねぇクリムちゃん、これ……」

「……草が、生えてきておる?」

 

 フレイヤの呟きに、クリムも同じく焼け野原の大地を眺めて愕然とする。

 雨に濡れた大地から次々と芽吹いていく、新しい緑色の新芽たち。それはみるみる成長して、大地に広がっていく。

 

「……と、まあとりあえずこんなものかしら?」

 

 そう彼女が祈るのをやめ、雨が止んだ時……周囲にはもう、流石に森とまではいかないものの、ところどころ若木の芽生えた草原くらいまで植生が回復していた。

 

「……そういや、『バアル・ゼブル』って元は嵐と慈雨を司る豊穣神だったな、それも主神クラスの」

「なるほど、今は『クリフォ2i』が無効となっていて悪魔に堕とされる前に戻っているから、こんな事もできたのじゃなぁ」

 

 ベルゼブブ、その前身となった神の逸話を思い出して、納得したように頷くクリムとフレイ。「お前らよくそんなポンポン知識出てくるな……」と呆れた様子のスザクに、皆が同意するように頷いていたがそれはそれ。

 

 無表情ながら「どやぁ……」と胸を張っているエイリーに、悔しながらも賞賛の拍手を送る一行なのだった。

 

「ま……まあ、これで一件落着という事で。落ち着いたらまた、姉上から感謝の言葉があるかと思いますが、私からも……本当にありがとうございました」

 

 そう深々と頭を下げるスフェンに、ようやく全てがひと段落したという弛緩した空気が流れる。

 

 クリムたちもこのまま解散して眠ってしまいたいのは山々だが、しかしまだやるべき事がある。

 

 すっかりと回り道になってしまったが……ようやく解放されたであろう、妖精郷の確認というこの辺境までやって来た本来の目的が。

 

「よし、それじゃあ問題も概ね解決したし、ひとまず次のエリアを解放しに……」

 

 そう、クリムは小さくなった体をよっこいしょと起こした――そんな時だった。

 

 

 

『――クリム、聞こえるか、大変なことになった』

「む……リュウノスケか、どうした?」

 

 突然、切迫した様子のリュウノスケからの通信。

 何かただならぬ事があったに違いないと、皆が通話中のクリムに注目する中で、クリムは彼に話の続きを促す。

 

『……始まりの街ヴィンダムの周辺地域を支配しているギルドが、第二サーバーから流入してきたプレイヤーたちも取り込んでユニオンを組んだ。どうやら俺たち連王同盟国に宣戦布告してくるつもりらしい』

 

 そんな予想を遥かに越えて深刻なリュウノスケの報告に、今度こそ場の空気が固く緊張したのだった――……

 

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