Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜 作:resn
「まあ色々と大変なことになってしもうたが……皆、探索完了お疲れ様だったのじゃ!!」
そんなクリムの音頭と共に、皆が一斉に手にしたジュースのグラスを掲げ、「乾杯!」とグラスを打ち合わせる音があちこちから鳴り響く。
――現在の場所は、セイファート城庭園。
今は北の氷河を始め『妖精郷』の探索を手伝ってくれたギルドの面々も居るため人数が多く……中庭では手狭かと思い、屋外練武場の周囲にテーブルを並べ、アドニスたちが用意してくれた立食形式のささやかなパーティーを開いていた。
「しかしまあ……お前ら、よくあんな大事件の後に平然とパーティーなんて開けるよな。図太いというか何というか……」
呆れたように呟くスザク。彼としては一刻も早く行動に移りたいのだろうが、しかし。
「まあそう言うな、非日常と日常の区別をきちんと付けなければ、三か月という期間はキリキリと神経を尖らせているには長すぎるぞ……特に、我やお主はな」
「……そりゃ、バレてるよな」
「うむ。お主、ダアトと戦闘中に進化したな?」
クリムの追及に、スザクが渋々と認める。
ただでさえ種族進化を果たしたキャラクターを御するのは非常に神経を使うのを痛感しているクリムの言葉だからこそ、スザクも大人しく従っていた。
「ていうか、お主、今度は目が金色に変化しておるからの。瞳孔もドラゴンのものと同じ縦長になっとるぞ?」
「うげ……また厨二っぽくなってるじゃねえか」
「何、我に比べたらまだまだ序の口じゃろうが」
露骨に嫌そうな顔をするスザクに、苦笑しながら『赤目アルビノ吸血鬼(悪魔の羽追加バージョン)』という出で立ちのクリムが慰める。
「……『
「なるほどのぅ……人間種の、特殊条件を満たした特殊進化みたいな感じかの」
スザクの説明に、クリムは納得して頷く。
「あの時、ダアトと戦っていた際の腕は……あった、この種族特性だな。『ドラゴンアーマー:ファーヴニル』って言うらしい」
ステータスをスクロールして流し見していたらしいスザクが、見つけた項目を読み上げる。
「ああ……俺の場合、君とは違って普段はこれまでと変わらないみたいだ。進化の恩恵はこのアビリティを使用しないと受けられないっぽいな。なんでも体の一部、あるいは全身を竜化できるらしい。こんな風にな」
そう言ってスザクが、実際に右手を白銀の甲冑を纏ったような姿にして見せる。
だが確かによく見るとそれは少し生物的な雰囲気もあり、指先などは武器を持つのには邪魔にならない程度の鋭い爪になっている。
「全身も変化できるんじゃよな、どうなるのじゃ?」
「お師匠、私もすごく興味あるです!」
「待て、分かったやってやるから待て……密着すんな!」
聞きつけてやって来た雛菊共々、詰め寄るクリム。
そうして女の子二人に詰め寄られ、せがまれるままに、真っ赤になっているスザクが慌てて全身を変身させた。
「「おぉー!?」」
「かっこいいです、スザクさん!」
「何というか……良いのう!」
スザクの変身した姿に、感激の声を上げるクリムと雛菊。その頭まで全てを覆う程に全身を変化させた姿は――全身甲冑という鈍重なイメージはまるでない、シュッと細身の姿の白銀の騎士。
特撮ヒーロー……というにはやや棘が多く攻撃的で禍々しい風貌ではあるが、その姿は非常に颯爽としており実にヒロイックな出で立ちだ。
そんな変身を見た雛菊とクリムは目を輝かせて至近距離にかぶりつき、夢中になって検分を始め、スザクを困らせるのだった。
◇
「クリムちゃん、楽しそうだねぇ」
「まあ分かる、僕もちょっと羨ましいしな」
「フレイも憧れるの?」
「うん、ああいうの、やっぱり男の子は大好きだよ。あの二人とも女の子だけど」
そう、すっかり夢中な二人を眺めながら苦笑するフレイ。だが実際、ソールレオンや果てはリュウノスケまで、おおよそ男たちはそわそわしていたからあまり二人だけを責めることもできまい。
「飛翔アビリティもあるんじゃよな!?」
「羽生やせるんです!?」
「待て、今やってやるから……こうか!」
「「おー!!」」
せがまれるままにスザクが真っ白な鱗を持つドラゴンの翼を生やしたのを見て、クリムと雛菊が感嘆のため息を漏らす。
すっかりヒーローショーの子供と化している二人に、フレイとフレイヤはただ、困った子を見るような眼差しで肩をすくめていた。
◇
「えー、コホン。ところでスザクよ」
「おいまおーさま、今更取り繕ってもブレイクしたカリスマは戻ってこないぞ」
「うっさいわ!?」
我に返り、小学生と同レベルではしゃいでいたことを思い出して顔を真っ赤にしたクリムが、今も白銀の騎士状態のまま頭を抱えているスザクのツッコミに噛み付く。が、すぐにやるべき事を思い出してコホンともう一度咳払いする。
「未変身状態ならば、特に戦闘に支障はないのは分かった。じゃが、今の状態ならばどうなのじゃ?」
そう尋ねるクリム。周囲の皆も、それが気がかりだとばかりに一斉に頷く。
「いや、俺はまおーさまみたいに出鱈目なスピードがあるわけじゃないし……」
「という訳で、いいからほれ。受けてやるから打ち込んでくるが良い」
「……怪我しても知らねぇぞ?」
「心配するでない、胸を貸してやる故に全力で来るが良い」
そんなクリムの挑発に、スザクは腰をやや落とし、姿勢を低くした状態で構える。
――どっかで見た光景だな。
当時居なかったスザクとハル以外の皆がそんな既視感に襲われている中で、スザクが脚に力を込め、地を蹴った。
――庭園に響く爆発音。
ドン、とセイファート城の屋外練武場に、激しく土煙が舞った。しばらくしてそれが収まった時……
「……ま、ダアト救出は前途多難じゃな」
練武場……の外、庭園の生垣に頭から突っ込み足をバタバタさせている白銀の騎士の様子に、クリムは「はぁ……」と深い溜息を吐くのだった――……