Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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赤髪の青年

 

 

「……って事が、昨日あったんだ」

 

 そう、昨日遭遇したソールレオンの妹に関する話を締め括る紅。

 これまでその話に対し興味深そうに耳を傾けていた聖が、はー、と感嘆の吐息を吐く。

 

「へー。お姫様の女の子かぁ。私も会ってみたかったなぁ」

「あはは、まああの子も私たちのお城に興味津々だったから、そのうち連れて遊びに来るって。その時に紹介するね」

 

 そう言って紅は仰向けに体勢を入れ替えると、正面に見上げている聖へと笑い掛ける。

 

 紅は現在、聖の膝を枕として、ソファに横たわっていた。

 

 決して、ただイチャついている訳ではなく、ちゃんと理由はある。尤も半分くらいの理由はただイチャつきたくてイチャついている訳なのだが。

 

 

「ごめんな、せっかくのクリスマスイヴに、出かける予定全部キャンセルさせて」

「あはは、仕方ないよー……急に来ちゃうのはねー」

 

 ――クリスマスイヴという、恋人たちにとって一大イベントであるはずのこの日。

 

 しかし紅と聖が家で二人きりでダラダラしている理由は……普通の人より周期が長い分振れ幅が大きいと天理談の、紅の「あの日」が予定よりかなり早く来たせいであった。

 

「それに……こうしてのんびりお家デートっていうのも、嫌いじゃないよ、私は」

「うん……ありがと」

 

 そうして人で混み合っているであろうクリスマスの街に出かけるのを早々に断念した紅と聖は、満月邸の片隅にある(父、宙の趣味により設けられた)ホームシアターで、二人で部屋に保管されている古い映画などを鑑賞しながらダラダラしていたのだった。

 

「パパたちは、もう温泉かな?」

「そうだね、ぼちぼちお昼だからもう着いた頃かな」

 

 各種娯楽サービスがクリスマス商戦に沸き立つ中、しかし天理たち『NTEC』はプレイヤーも社員たちもこの時期は多忙だろうと、その流れには乗らずに静かなものだった。

 そんな『Destiny Unchain Online』は現在、ちょっとだけ嬉しい便利アイテムが手に入るくらいの簡単なアイテム収集クエストだけを展開して、スタッフも最低限で休暇を回しているらしい。

 

 ならばと紅たち三人はお互いの両親に、日頃の疲れを癒して欲しいと考えて……S市からほど近い湯治場として有名な温泉街のパスを贈っていた。そのため満月家、古谷家共に両親は外出中だ。

 

 では、姿の見えない双子の片割れ、昴はというと。

 

「昴は、深雪ちゃんとデートだっけ?」

「そだよー、昴がそう認識してるかは怪しいところだけど」

「はは……あいつ、女の子に自分が好意持たれるなんて思ってないからなぁ」

 

 そんな紅の言葉に、揃って「はぁ……」とため息を吐く二人。

 

 彼は今、『今度旅行に行くときにスキー道具で欲しいものがあるから、買い物に付き合って欲しい』という、引っ込み思案な少女の精一杯のお願いを聞いて、今朝早くに出かけていたのだった。

 

「まあ、あまり私らが口出しするのもねー」

「うん……深雪ちゃんも、そんなお節介は望んでないだろうしね」

 

 そんな事を語り合っていた時……ちょうど、二人のNLDに同時にメッセージの着信があった。

 やはりというか二人一緒に……正確には昴も含めた幼なじみ三人だけのグループチャットに、昴から一件の新着メッセージ。

 

『勘違いしていたら深雪ちゃんに悪いし、二人に聞きたいんだけど』

『今の街の空気の中で、深雪ちゃんと二人で歩いているとまるでデートみたいっていうのは気のせいだよな?』

 

 そんな二回に分けられたメッセージに、みるみる目が据わった紅と聖の二人は。

 

『知るか馬鹿』

『お姉ちゃんから命令、自分でちゃんと考えなさい』

 

 思わずそう、辛辣な返信を返してしまうのだった。

 

 

 

 

 ◇

 

 ――同日、昼下がり。

 

 

「うぅ……結局外出する事に……」

「あはは……そういえば、ケーキの事すっかり忘れてたねぇ」

 

 大寒波が来ていたということで、わさわさと大粒の雪が降り頻る住宅街。

 ホワイトクリスマスというには真っ白過ぎる街の中、泣き言を言いながら目的地である近所の洋菓子店へ続く道を歩く紅を、聖が苦笑しながら慰めていた。

 

 

 ――今晩のクリスマスイヴの食卓を飾る夕食は、すでに昨夜には天理や宙、それに聖たちも交えた皆で作り終えている。

 

 あとは順次オーブンで焼いていけばいい段階まで支度を済ませて、今は冷蔵庫に眠らせていた。

 

 しかしケーキだけは近所の洋菓子店に頼んでおり……本来であれば夕方、紅たちがデートからの帰宅途中に受け取りに行く事になっていたのを、そのデート計画が御破算となった際にすっかりと失念していたのだ。

 

「まあ早く受け取って、また暖かい部屋でのんびりしよう、ね?」

「うん……」

 

 労りの言葉を掛ける聖に、しくしく痛むお腹を押さえながら、そう頷く紅だったが――その時。

 

「……あれ?」

 

 視界の端に、不意に横切った赤い色彩。

 どうしてもその色が気になって、なんだろうと思って紅が振り返った先には……一人の、ハーフコートを纏った長身の青年が歩いていた。

 

 紅の視界に映った赤い色彩は――その青年の髪色。

 

「え、紅ちゃん!?」

 

 背後から、聖が驚きの声を上げたのが聞こえた。

 しかしその青年の真紅の髪を目にした瞬間、紅はお腹の痛みも忘れて、青年の方へと走り出していた。

 

 

 ――あの髪色には、見覚えがある。あれは小学校時代、まだ剣術を学んでいた頃に……

 

 

 衝動に駆られるまま、もう十分なくらい近づいてきたその青年へと紅が大声を張り上げて、呼び止めた。

 

「……あの、剣術のお兄さんですよね!? 昔、何日か支倉道場で指導してくれた!」

「……んぉ?」

 

 唐突な紅の呼びかけに……しかし青年は確かに反応して、紅の方へと真っ直ぐに振り向く。

 

「その白い髪にその顔……あー、お前さんもしかして、天理さんとこの紅の坊主か!?」

 

 訝しげな様子で振り返ったその赤毛の青年は――しかし紅の姿を見るなり、そう驚きの声を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 




イッタイダレナンダロウナー。
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