Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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護衛依頼

 

 

「そういえばイリスさんは、脚が悪いのですね?」

 

 風呂から上がり、脱衣所へと戻って着替えをしている最中。

 チラチラとイリスの足元を気にしていた聖が、不意にそんな質問をする。

 

「はい……それでもこうして歩けるのは、お父様や、二人のご両親が作ってくれたこの『N(ニューラル)L(リンケージ)D(デバイス)』のおかげですね。感謝してもし足りないです」

 

 そう、己が首に嵌ったチョーカー型の機械に触れ、微笑むイリス。

 

 彼女の細い両脚には……膝裏側から支え、覆うようにして銀色の金属フレームが装着されていた。たしか極力衣服への影響を残さないよう細いフレームで構成された最新型の、足が不自由な人用のNLD制御式強化外骨格だったはずだ。

 

 ……とはいえ。

 

「ただ……そろそろ、もう少しお腹が大きくなったら、安全のため使用禁止になるんですよね」

 

 重量の増加や体型の変化への対応の不安などもあり、この手の脚部用強化外骨格は、妊娠中期から後期での使用を禁止されている。

 

「そのあとは、どうするんですか?」

「はい、玲史さんの実家のお義母さんたちのところに少しお世話になってから、早めに入院という事になりますね」

「え……それじゃあ、師範の家に滞在を?」

「ええ、だからしばらくの間ご近所様になるからよろしくね、紅ちゃん、それと聖ちゃんも」

 

 

 そうして会話しながら着替えを済ませ、脱衣所から出たところで、心配そうに廊下をうろうろしていた玲史とばったり遭遇した。

 

 イリスに関してはもう大丈夫だろうと、あとは彼に任せて紅たちも食堂を兼ねたリビングへと向かう。

 

 

 

「紅よ、どうやら『あやつ』の話は聞けたみたいじゃな?」

 

 その途中の廊下で待っていた母、天理の問いかけに、紅は頷く。

 

「うん……なかなか、すごい人だった」

「そうか……あやつはああ見えて、玲史の坊主共々たくさんの修羅場を潜っておるからな。色々と聞いてみると良いぞ。さて、夕餉の時間じゃな」

 

 そう母に促されて入った食堂では、もう既にまばらに席に着いている他の宿泊客の人々。

 

 思ったより少ないなと紅は思ったが……天理によればまだまだ仕事の都合などで来れない者も多いそうで、明後日に全員が揃う予定らしい。

 

 そうして夕飯の席に着いた紅たちの前に並んだのは……野菜が溶け込んだトロトロのクリームシチューと、美味しそうな焼き色のついたポークのソテーに、素朴だが噛めば小麦の香りと味がしっかり伝わってくるブラウンパン。その他様々な温野菜と各種オードブルといったメニューであった。

 

 ちなみに、事前に肉類がダメだと告げてあった紅にはポークソテーの代わりにトロトロな飴色玉葱を包み込んだボリュームのあるオムレツが用意されており、嫌な顔せずに対応してくれた料理人さんに感謝しながら、ありがたく頂いたのだった。

 

 

 

 ◇

 

 そうして料理に舌鼓をうち……お風呂も、夕飯も終えて、現在時刻は夜の18時。少し早いけれど、あとは寝るだけとなったこの時間。

 

 紅たち――紅、聖、昴、佳澄、そして深雪の別館組に加え、桔梗の元から抜け出してきた雛菊というメンツが、紅たちの借りている別館の寝室へと集合していた。

 

「さて――今日皆に集まってもらったのは、我々に他ギルドからヘルプの要請が入ったからに他ならない」

 

 客室に思い思いに寝転んでログインした『Destiny Unchain Online』内、泉霧郷ネーブルのテレポーター・プラザ前。そこに居並んだ皆を前に、クリムが声を掛ける。

 

 ……先ほど、入浴後にNLDの新着メッセージを確認したところ、一通の手を貸して欲しいという頼み事が届いていたのだ。

 

「救援要請者は皆もよく知る『北の氷河』。依頼内容は――お姫様の護衛だ」

 

 よもやこんな台詞を現実に言う日が来ようとはとちょっとだけ感動に浸りながら、クリムが皆に伝える。

 

「なお今回の件は北の氷河と合同となる。向こうは何やらフルメンバーとかいうちょっと大人気なさすぎる編成じゃが、皆も油断せずに頑張って欲しい!」

「……ねぇ昴。正直、北の氷河さんだけでもう過剰戦力よね?」

「シッ、それは言っちゃいけない」

 

 呆れたように苦笑するフレイヤに、そう警告する同じく呆れたようなフレイ。

 本当は最大のライバルにして友人である玲央のシスコン具合にクリムも呆れ気味なのだが、まあ少女のためというのならば是非もない。

 

「今回の任務は、ヴィンダムからセイファート城まで、ユリアちゃんをエスコートしてくること。タイムリミットは、ユリアちゃんがお眠りになるまで。結構強行軍になるけど、良いな?」

「はいです!」

「ユリアちゃんのため、頑張って案内するの!」

 

 年少二人のやる気に満ち満ちた返事に、クリムも満足そうに、うむ、と頷く。

 

 

 ……本当であれば、こうした任務ならば最高クラスのスカウトであるセツナもいれば良かったのだが、生憎と彼女は今、ログインできない状況だから無理と残念そうに返信があった。

 

 そして……リュウノスケ、そしてジェードとサラはすでに部屋で出来上がっているので不参加。

 まあ今回に限らず仕事から解放され自由な時間を満喫する大人組はいつも通りなのでヨシ! ということで満場一致した。

 

 

「それじゃ、何か質問は?」

「あの……ところでママたちの時みたいに、ユリアちゃんを連れて転移してくる事はできないの?」

 

 おずおずと挙手してそんな質問をしてくるリコリスに、クリムはうむ、と一つ頷いて答える。

 

「うむ、ジェードやサラの時のやつは、同じギルドに加入したからこそできる手段じゃからな」

「あ、そうか、ユリアちゃんはお兄さんと……」

「うむ。今回ユリアちゃんはすでに『北の氷河』のギルドメンバーゆえ、同じ手は使えん」

 

 当然あのシスコンが、可愛い妹分をフリーにしておくわけもない。残念ながら既に売約済みである。

 

「ユリアちゃんも、同じギルドで一緒に遊びに行けたら良かったのにねー」

「うんうん、すごく良い子で、可愛かったなー」

「まあ気持ちはわかるけど、向こうは本物の親戚同士だからね、それを引き剥がすような真似はできないさ」

「残念です……」

 

 そう語るのはフレイヤとカスミ、そしてフレイと雛菊。どうやら彼らもこれ以上、質問は無さそうだ。

 

「では……ギルド『ルアシェイア』、出陣じゃ!」

「「おー!!」」

 

 クリムの号令に対する幼少組の元気いっぱいの返事と共に――クリムたちは始まりの街へ続くテレポーターへと飛び込むのだった。

 

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