Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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集ってしまった魔王たち

 

「昨夜は申し訳ありませんでした……!」

 

 

 

 ――ペンションでの生活二日目。

 

 朝目覚めた紅が、少し散歩に行こうと部屋のドアを開けた瞬間飛んできたのは……そんなユリアの謝罪だった。

 

「えっと……何が?」

「その……せっかく皆様が案内してくださっていたのに、うっかり眠ってしまって……」

 

 申し訳無さそうに腰の辺りで手を組み、俯きながら謝る少女に、紅は、あー、と昨夜のことを思い出した。

 

 

 ……結局、もうあと鬼鳴峠と黒の森さえ抜ければ目的地、といったところでついに少女が寝落ちして、昨夜のエスコートは中断したのだった。

 

 

 が、紅をはじめとして誰もその事を責めるつもりもない。むしろ寝落ち直前までよく頑張ったと思っているくらいだ。

 

 なので、紅はそんな申し訳無さそうに縮こまっている少女の頭に、ポンと手を置く。

 

「大丈夫、気にしないで。元々結構無茶なスケジュールだったし、また今夜頑張ろう?」

「……は、はい、よろしくお願いします!」

 

 笑顔でそう慰める紅に、パッと笑顔になって丁寧に頭を下げるユリアだったが。

 

「それより、もうちょっとで朝ごはんだし、戻って着替えてくると良いよ。髪も寝癖ついてる」

「ふぇ!?」

 

 慌てて紅が指差した部分、そのサラサラなはずの長髪が寝癖でぐちゃっとなっている箇所を押さえ、ユリアが真っ赤になる。

 

 ――やっばい。可愛いなぁ。

 

 そうほっこりした眼差しで見つめながら……ふと、気になった事があったので尋ねてみる。

 

「そういえば、よく私たちの部屋が分かったね?」

「は、はいっ! この方が、案内してくださいました……っ」

 

 そう、ユリアが傍に立つ人物を視線で指す。

 

 そこに立っていたのは……紅より少し背が高いくらいの、清潔に切り揃えられた黒髪を後ろだけ長く伸ばしてうなじのあたりで髪結い用の組紐で結んでいる、中学生くらいと思しき少年だった。

 

「君は……」

「はじめまして。僕、このペンションを管理している風見誠の息子で、風見曉斗(あきと)と申します」

 

 そう、にこやかに笑いながら握手を求めてくる少年。

 一見すると人畜無害そうながら、どこか裏で何か考えていそうで信用しきれない不安感が付き纏うこの笑顔は……

 

「……もしかして、シャオ?」

「おっ……と、驚きました、正解です」

 

 紅の疑問に、最初は軽く目を見開き、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべて肯定する少年。

 

「へー、君、ゲームだと私と同じくらいの身長なのに、リアルだと身長高いんだねー?」

「ええ、僕は童顔ですから、せっかくだしゲームだと限界まで身長を縮めていますから。結構お姉様方ウケは良いんですよ?」

「はは……」

 

 本気か冗談かイマイチわからないことを曰うシャオ改め曉斗に、紅は呆れた笑いを漏らすのだった。

 

 

 

 ◇

 

 ――そうして朝食の時間、食堂にて。

 

 本日の朝食――鱈のムニエルにトマトソースを添えたものと、コンソメスープにサラダ、そしてキッチンにある窯で焼いたというバターロールという朝食を皆で摂っている……そんな時だった。

 

「あなたが噂のお姫様ね、私は風見明莉(あかり)、よろしく!」

 

 雛菊と深雪、そしてユリアの三人が着席するテーブルに、そう言いながら自分の分の朝食を置いたのは……深雪と似た背格好、曉斗によく似た風貌の、しかし彼よりは闊達そうなポニーテールの少女だった。

 

「あ……はい、よろしく」

「お兄から話は聞いてるよ……ユリアちゃんよね、隣、失礼してもいいかな!?」

「あ、はい、どうぞ」

 

 元気な少女に気圧されるようにしながらも、微笑んで快く快諾するユリアに、礼を述べながら隣へ着席する明莉と名乗った少女。

 どうやら面食らったりはしたものの、悪意は感じられない元気な少女であると認識したようで、ユリアとしても特に忌避感などはないらしい。

 

 

 ……ちなみにユリアの両親はと言うと。

 

「ふふ、見て玲史さん、あの子にあんな沢山の同年代のお友達が」

「ああ、連れて来て良かったなぁ」

「ええ、本当に……」

 

 と、そんな感じでのほほんと少女たちが食事をする光景を優しく見つめていた。

 

 

 一方で子供たちのテーブルの隣、六人がけのテーブルでは、紅と聖や昴、そして佳澄……さらに、玲央と曉斗が相席していた。

 

「いやはや、我が妹ながら、本当に強引で申し訳ありません」

「あはは……じゃあ、あれがメイちゃん?」

「ええ。ゲーム内同様騒がしいでしょう?」

 

 そんな暁斗の言葉に、紅は曖昧に笑い言葉を濁しながら、朝食の(たら)のムニエル(ちなみに白身魚は生でなければ克服済みである)を切り分けて口に運ぶ。

 

 小麦粉をまぶし、バターでカリッと焼かれた鱈は口の中でほろっと解れ、さっぱりしたトマトソースが程よくしつこさを緩和してくれる。

 

 そんなトマトの余韻が口内に残るうちに、まだ暖かいバターロールをちぎって頬張りながら、紅は眼前の面子について思いを馳せる。

 

「……よもや、三魔王全員がリアルで揃うなんて」

「全員、親が『Worldgate Online』の関係者とはな」

「偶然ってあるんだねぇ……」

「あはは……」

 

 しみじみとそんな事を呟く紅、それに昴と聖の三人に、苦笑する佳澄なのだった。

 

「ところで二人とも」

「んむ?」

「ん?」

 

 突然、曉斗が紅と玲央に声を掛ける。

 

「何やら、面白いことをしているみたいですね。掲示板が賑わっていましたよ」

「掲示板……?」

「何の事だ?」

 

 曉斗の言葉に、その手の掲示板は精神衛生上なるべく見ないことにしている紅と、そもそもネットの匿名掲示板になど興味の無い玲央が、揃って首を傾げる。

 

「……あなた方は一鯖を代表する有名人なんですから、もうちょっと自分たちに関する情報収集はちゃんとするべきと思いますが、まあいいです。またユリアちゃんの護衛は続けるんですよね?」

「勿論だ」

「昼は皆で遊びに行くから、また今夜行くつもりだけど……」

「両親の仕事の手伝いもひと段落したので、せっかくだから、今度は僕と妹もご一緒していいですか?」

「それは勿論構わないが」

 

 そう、トントン拍子にシャオの参戦が確定する。

 

「……とうとう三魔王総出の護衛になったな」

「ユリアちゃん……恐ろしい子……!」

 

 側で聞いていた昴と聖のそんな呟きに、事情が分かっていない当のユリア本人はというと……サラダの上に乗っていたプチトマトを頬張って幸せそうな顔をしたまま、きょとんと首を傾げているのだった――……

 

 

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