Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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増えるご近所さん

 ――その後復帰した聖達も加えて、しばらく低い場所でユリアと聖の練習がてら、のんびりと何往復かして……すっかりお昼時の終わり頃となり、まばらになっていたゲレンデの人も戻り始めた頃。

 

 

 

「玲史さん、それに皆さんも。そろそろ昼食にしませんか?」

 

 レストハウスまで降りてきた時、そんなスキーとは無縁なカジュアルな防寒着に身を包んだ銀髪の女性……イリスの声に、玲史がはっと顔を上げる。

 

 そんな彼女はというと、何やらエスコートするようなポジションについている金髪の少女と手を繋ぎ、その後ろには紅達の見知らぬ夫婦らしき二人を伴っていた。

 

「お、イリス、こっちに来たのか」

「ええ、隼人君も一緒なら玲史さんも安心だと思って。それに、そろそろユリィもお眠かなって思ったから」

「はは……流石の読みですね、叔母上」

 

 そんな彼女の読み通り、玲史と玲央に挟まれるようにして手を繋いでいたユリアはすでに船を漕いでおり、今は二人に手を引かれてどうにか歩いている、といった感じだった。

 

「そうか……ありがとな隼人、イリスを守ってくれて」

「いえ、俺らの仲ですからね、気にしないでください」

 

 そう言いながら握手を交わす玲史と、隼人と呼ばれた逞しい青年。そして……

 

 

「やっほー、お館様ー!」

 

 イリスと手を繋いでいた金髪の少女が、紅に軽く抱きつきながらそんな事を言う。

 

「君は……もしかして、セツナ?」

「うん、そうだよー! 私、飛田雪那。名前を読み替えてセツナだよ! ね、ね、リアルの私も可愛くてビックリした?」

「あはは……そうだね、ビックリしたよ」

 

 ふふん、とドヤる彼女に、話を合わせる紅。

 実際に、彼女はあまりこの国ではお目にかかれないような明るい金髪をツーサイドアップに括った、ちょっとそうそう見られないような闊達な美少女であった。

 

「まー、本当にお前さん達は顔面の偏差値が高いこと」

「あはは……パパとしては、創作意欲も捗るんじゃない?」

「まあ、確かにな。ただやっぱり目立ってるな」

 

 背後から聞こえてきた龍之介と深雪の言葉に、今、紅達のグループがひどく注目を集めている事に気付き、皆でそそくさと移動を始める。

 

「ところで、雛菊ちゃんは?」

「今はお母さんと家に帰ってるよ。大晦日からお正月の準備に忙しいんだって」

「ふーん、残念ねえ」

「でも、夕飯頃には戻るそうだから、後から会えると思うよ。雪那ちゃんも今夜は一緒の宿なんだよね?」

 

 そう、紅の回答に残念そうにする雪那を、まあまあと慰めるが、その一方で。

 

 

 ――とうとう今夜のユリアちゃんのエスコートは、ルアシェイアもフルメンバーになりそうだな。

 

 

 こっそりと、内心でそんな事を考えて苦笑するのだった。

 

 

 

 

 ◇

 

「――転入?」

 

 すっかり人もはけたスキー場のレストランで、温かい鍋焼きうどんを啜っていた紅が、対面に座る雪那の言葉に首を傾げる。

 

「そうなのよ。冬休み明けから、私もお館様と同じ杜之宮の中等部に転入する事になってるの。だからよろしくね、センパイ」

 

 語尾にハートマークがつきそうなイントネーションで、ウインクしながらそんな事を曰う雪那。

 

「それじゃ、三学期からは一緒の学校になるのね?」

「しかし、変な時期の編入だな?」

「それはお父さんの仕事の都合という奴です!」

 

 聖と昴の質問に、そう特に意味もなく胸を張りながら答える雪那の様子を見て、紅は隣に座っている隼人という青年に目で問いかける。

 

「ま、そういうわけだから、君らもこの子のことをよろしく頼むな?」

 

 そう、苦笑しながら頭を下げる隼人。

 一方で、紅達から見るとまだ20代前半、隼人と比べるとだいぶ年下に見える金髪の女性……雪那の母だというアイニという名前の女性が口を開く。

 

「それに……ユリアちゃんも三学期から初等部の五年生よね?」

 

 そう、ユリアに……というのは当の本人が自分の目の前にあった焼きおにぎりを平らげた途端、すぐに隣の母親にもたれかかり寝息を立てていて無理だったので……もたれかかられている本人、慈愛の眼差しで娘の髪を直してやっていたイリスに尋ねる。

 

「ええ、私の出産と、その後の半年の産休の間……だいたい初等部卒業までかしら。それまでの間は、ユリィにはこっちで学校に行かせるつもりなの」

「ま、家庭教師とかはつけて勉強してはいたが、いい加減俺らにべったりって訳にもいかないしなぁ……俺は別に構わないんだが」

 

 そう、本音では手放したくないと顔に出ている玲史の言葉に、イリスも流石に苦笑していた。

 

「幸い俺らの新住居は玲史にーちゃんの実家に近いからな。ご近所様のよしみで、君らも登下校時には気にかけてやってくれると嬉しい」

 

 そう言いながら、保護者代表として再度頭を下げる隼人。急な話の推移に紅たちが呆気に取られていると。

 

「ついでに、私も君らのご近所に引っ越す事にしたからよろしく頼むな」

「は、玲央、お前も!?」

 

 不意の玲央の発言に、思わず声を上げた紅。それを眺めていた傍のイリスが、事情を解説してくれる。

 

「満月さんの家の近所の大型商業施設の側に、いつも人のいない家があるでしょう?」

「え、あの最近リフォーム会社が何かしてた家ですか?」

 

 イリスの言葉に、昴がここ最近近所で頻繁に業者の入っている家を思い出し、聞き返す。

 だがあの家は紅が知っている限り、物心ついた時から今まで保守管理こそされているにもかかわらず誰も住人を見た事のない、謎の家として有名だったのだが。

 

「そう。実はあそこは、お父様が管理してるユーバー家の別荘なの。私も住んでいたことがあるんですよ?」

「「そうなんですか!?」」

 

 そんなイリスの口から明かされる衝撃的な事実に、紅と昴が揃って驚きの声を上げる。

 

「叔母上たちがこちらに滞在中の間、そこを私と、私の両親がしばらく住居とする事になってな。同じ町内のよしみで、よろしく頼む」

 

 してやったりといった表情で告げる玲央。

 なんだか身近にやたら知り合いが増えていく状況に……

 

「三学期の朝は、賑やかになりそうだねー?」

 

 そんな、山菜蕎麦をのんびり啜りながらのほほんと曰う聖の言葉に、紅はただ頭を抱えるのだった。

 

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