Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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光翼種

 

 ――セイファート城での宴もすっかり解散ムードとなり、皆がぼちぼちログアウトし始めたころ。

 

 同じくログアウトした紅と聖は、すっかり遅くなってしまった入浴を済ませにペンションの大浴場へと来ていた。

 

 

「うう、あちこち痛い……あたしゃお婆ちゃんになっちゃったよ……」

「もー、聖、ただの筋肉痛で何言ってるのさ」

 

 昼間動いたために汗をかいた体を洗い清めるのも済んで……すっかり筋肉痛で脚をガクガクさせ、紅の肩に掴まって歩く聖に、紅が苦笑しながら先導する。

 

 そうして今日もやって来た露天風呂には……

 

「おっと、先客だね」

「あ、ユリアちゃん、お疲れさまー」

「あ……は、はい! 紅お姉さん、聖お姉さん、お疲れ様でした!」

 

 先に湯船に浸かってウトウトしかけていたユリアに、聖がにへらと笑いながら手を振る。

 

 そうして紅と共に少女の隣で湯に浸かり、ようやく「はぁあ……」と盛大に息を吐く聖。

 

「その……聖お姉さん、大丈夫ですか?」

「うん、ありがとーユリアちゃん。はー、やっぱり運動不足かなぁ」

「それに、今日は普段使わない筋肉もいっぱい使っただろうからね。ユリアちゃんは大丈夫?」

「あ、はい、なんともないです」

「うぅ、紅ちゃんも全然平気だし、私だけぇ?」

 

 ユリアの心配そうな声に対して彼女を安心させるよう笑いかけると、ちょっとお湯の下でお腹周りのお肉を気にしている聖。そんな彼女を、紅が苦笑しながら慰める。

 だがしかし紅どころか、ずっと玲史がサポートしていたとはいえ同じく初心者であったユリアが平気なのを見て……やはり聖としては気になるようで、不満げな声を上げるのだった。

 

「それで、ユリアちゃんはどうして一人でこっちに?」

「子供たちは皆、今日もサウナで我慢比べしてた気がするけど」

 

 今回は翡翠と沙羅が、子供たちに手を引かれて引率としてサウナに入っていったのを先ほど見かけた。

 てっきり彼女もそちらだと思っていたのだが……

 

「その、私は熱いのが苦手で、昨日はサウナから出た後はなんだか肌がヒリヒリして」

「あー、わかる。私も肌が弱いせいか、あまり熱いお湯とかサウナとか苦手なんだよねー」

「私もー。露天風呂の方は外が寒いせいか、少しぬるめで良かったよねえ」

 

 そんな感じに「わかるー」と言い合ったあと、三人揃って「はぁぁあ〜……」と実に気持ち良さげなため息を吐く。

 

 すっかり湯に溶けて脱力したまま、ボーっと時間だけが流れていく中で。

 

「……ユリアちゃんは、今日、楽しかったかな?」

 

 ポツリと、紅が問い掛ける。

 

 もちろん、今日の『Destiny Unchain Online』でのことだ。二日続けての強行軍だったため、無理をさせて付き合せてはいなかったかと心配で尋ねたのだが。

 

「はい、とっても! お城は綺麗だったし、タコさんや妖精さんは可愛かったし、本当に楽しかったです!」

「そっか、それは良かった」

「せっかくテレポーターの登録もしたんだし、ギルドとか気にせずいつでも遊びに来ていいからね?」

「はい!」

 

 そう、この時ばかりは年相応の満面の笑顔で答えるユリアに、紅と聖も穏やかな気分で自然と笑みが浮かぶのだった。

 

 

 

 

「ところで、気になっていたんだけど」

 

 またも、不意の紅の言葉に、ユリアが首を傾げて紅の方へ振り返る。

 

「秘密なら秘密で良いんだけど、今日ゲーム内で回復魔法を使う時、光る翼が生えてたよね」

「あ、それ私も気になってたんだ。綺麗だったよねー!」

 

 彼女が魔法を使用する際に見えた、光で形作られた三対六枚の翼。

 短い時間だったため見間違いを疑いもしたが、聖も見たと言うならばその可能性は低いだろう。

 

「あ、あれは……綺麗なんてそんな、私なんてお母様にくらべると……」

「……ん?」

「……ユリアちゃん?」

「あ、いえ、何でもないです!」

 

 一瞬だけ見せた、ユリアの少女らしからぬ表情の翳りに紅と聖が眉を顰めるが……彼女はすぐにパッと笑顔を浮かべ、そう言う。

 

 明らかに何かを誤魔化した感じではあるが……しかし無理に踏み込むのも躊躇われ、今はそれ以上追及はやめておく。

 

「言いたくないなら無理に聞いたりはしないけど、もしかして、レアな種族?」

「あ、はい。キャラメイク時に、ユニーク種族を選べるって言われて」

 

 ――私の時と同じか。

 

 紅はもうずっと昔な気がする今年の三月、初めて『Destiny Unchain Online』にログインした時のことをぼんやり思い出しながら、ユリアの話に耳を傾ける。

 

「その……『光翼種』って言うらしいです。主な種族特徴が、回復魔法の使用時に回復量のボーナスと」

「へぇ、ヒーラー向きの種族なんだね」

 

 なるほど、確かあの時は体力の高い上級のオーガのHPを二割くらいも回復していたし、始めたばかりの初心者の初級回復魔法『ヒール』にしては、ずいぶんと効力が高かった筈だ。

 

「それと……翼を出している間、周囲を浄化する能力、らしいです」

「……浄化?」

「……って、何をどんな状況で?」

「わ、分かりません。今まで一度も使用するような機会が無かったので……」

 

 そう、紅たちの疑問に対し申し訳無さそうに答えるユリアだったが……紅は彼女の言葉を聞いて、真っ先に思い浮かんだのは世界樹セイファート――『汚染された魔力を浄化する』樹の存在だった。

 

 

 ――もしかしたら、今後の展開においてこの少女が重要な鍵を握るかもしれない。

 

 

 ひどく漠然としたものながら、そんな予感がする紅なのだった――……

 

 

 

 

 

 




 その日のうちとか次の日には筋肉痛が来る若い人が羨ましい今日この頃。
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